No.29655

空は蒼く、末期は紅い

2008-09-07 23:58:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:605   閲覧ユーザー数:588

辺り一面を覆うように、紅く咲き乱れる花達

他には木も草も動物も含めて何もかも・・・

そこには何も見当たらないというのに

 

しかし荒れ果て寂れた、そんな土地だからこそ

こんなにも映えて見えるのか

蒼い空との対比も相成って、凄惨なまでに美しい

 

 

 

高く昇った陽も落ち際になり

夕に暮れるにつれ徐々に、空を雲の灰が塗り潰す

俄かに湿り気を帯びた大気を吸う毎にその密度は増える一方だ

 

そして変化は一瞬だった

 

 

最初の一つの滴りが大地に染み入るのを皮切りに

今度は堰を切ったように、瞬く内に土砂降りとなる

一過性のものですぐに止みはするだろうが

深紅に染まった花達を容赦無く叩いた所為で、その色を急激に流し去っていく

 

 

一つ、また一つ

次々と散らされていく紅

 

まるで悲しみの涙に、身を漱ぐかのよう

 

 

 

 

風に切られた雲が何処かヘ飛ばされて

後に残ったのは、物言わぬ花と群がる獣

 

大地を照らす陽は残酷なまでに美しい

 

 


 
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