No.296298

恋姫無双 ~決別と誓い~ 第八話

コックさん

ようやく交渉編が終わります。

長かった・・・・。

誤字脱字等指摘お願いします。

2011-09-09 10:20:43 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3473   閲覧ユーザー数:2997

慰問団が謁見の間へと到着したのは亞莎の件からおよそ一刻後のことだった

 

慰問団の長官は郭嘉と程昱である。

またこの会談には祭殿と小連様を除く呉の首脳陣が全員参加していた。

 

「本日は遠路遥々御越しいただきまして有難うございます。

 

程昱殿。郭嘉殿」

 

郭嘉は申し訳なさそうに俯きながら

「とんでもない。感謝するのはこちらの方です。

 

敵国の対しこのような御好意。

 

感謝します」

 

と云って、ひたすら恐縮しているようだった。

確かに敵にこのように歓迎されるとは誰が予想しようか?

 

郭嘉の反応は当然と言えた。

 

 

しかし、この会談に魏の幹部を二人派遣してきたことに私は若干、違和感を感じた。

 

自らの過ちを謝罪するのだから責任者がでてきて当然なのかもしれないが、この二人の組み合わせに違和感を感じざるを得なかったのだ。

 

聞けばこの二人、魏の軍師になる以前から付き合いがあったらしく息のあった有能な二人組だと聞いている。

 

そう。

 

まるで何か交渉にでも来たとでも言うような・・・・・。

 

(曹操の奴。もしや・・・・)

 

「冥琳様?」

 

隣にいる亞莎が心配そうに伺っているのに気が付き、話を進める。

 

「では本題へと移りましょうか。

 

どうぞおかけになってください」

 

慰問団は椅子に腰掛ける。

 

慰問団の数は思った通り少数だった。

 

呉の国民を刺激しないように配慮したのだろう。

 

服装も悟られぬよう皆平民が着る質素な服を着ている。

 

「こちらが王であられる曹操から謝罪文です。

 

御受取りください」

 

郭嘉がその謝罪文を私に渡すと同時に目を通す。

 

手紙の内用は、

 

《このような不埒な行為をどうか許して欲しい。

 

また今後このような事が起こらぬよう兵に厳しく云っておく。

 

また義に背いた我々は如何なることをしてでも呉に償いをしたい》

 

 

と書かれてあった。

 

 

(やはり・・・・・)

 

文を読み終え、連華様に渡した。

 

連華様は私と同じ考えを抱いていたらしく、読み終えるとその疑念が確信に変わったようだった。

 

私に小さく頷き、話を進めるよう目で合図を送ってくる。

 

「またこちらが死罪に処した兵たちの首です~」

 

程昱が机の真ん中に丸い包を置いた。

 

事前に通達があったので首を持ってくることに驚きは無かったが、心境は複雑だった。

 

これを見せたからといって我々の悲しみが晴れることはないし、憎しみが晴れることもないのだ。

 

しかしそれを顔に出すことなく話を進める。

 

 

「誠意ある対応感謝します。

 

国民には我々がよく云っておきますのでご安心ください。

 

それとこの文にはあらゆる償いをしたいと書いてありますが、これはどうゆう意味なのですか?」

 

 

「今回私たちが来たのは慰問をだけではありません。

 

貴国と話をするため我々二人が選ばれたのです」

 

 

「つまり?」

 

私が問うと程昱がのんびりとした独特の口調で話を進める。

 

 

「はい~。

 

私たちは貴国と和議を結びたくてここに来たのですよ~。

 

お姉さん」

 

「・・・・和議とは?

 

曹操らしくないですが・・・・・」

 

 

「らしくないと言えばそうなのかもしれません。

 

しかし我々も貴方がたと戦い考えを変えざるを得なかったのです」

 

郭嘉が眼鏡を中指で上に持ち上げながら答え、程昱が畳み掛けるように

 

 

「あの戦いで曹操さんはよほどの脅威を感じたそうなのですよ~」

 

 

これには私も驚いた。

 

曹操も私と同じ考えに至っていたとは・・・・

 

私も曹操が和議を結ぶであろうという考えは確かに最初よぎったが相手は

 

 

《乱世の好奸》

 

 

 

と謳われる曹操。

 

それはありえないとその考えを否定していたのだが・・・・・。

 

(なるほど。なりふりかまってはいられない・・・・・か)

 

「程昱殿。あなたは本気で曹操殿がそう言っているとお思いか?」

 

程昱はボーっとしている表情をわずかに呆れた顔にさせ、

 

「むむー。答えが分かっているのに問うとはなかなか悪趣味ですね~。お姉さんは」

 

 

「ふふっ。申し訳ないがこういった性格なので」

 

 

「恐らく、風はお姉さんと同じ考えだと思いますー」

 

 

「郭嘉殿もそうですか?」

 

 

「はい」

 

 

「・・・・・わかりました。では日程と何時正式に和議を結ぶかを取り決めたいのですが・・・。

 

よろしいですか?程昱殿、郭嘉殿?」

 

 

「はいはいー。構いませんよ~」

 

 

「はい」

 

こうして、和議が結ばれることになった。

 

内容は五年~六年にわたる長期の相互不可侵を守ることが決められ、また口約束ではなく効力を高くするため成文化することとなった。

 

また賠償金の支払いだが我が国に対し国家予算の一年分が支払われることとなり。

 

講話締結は三ヶ月後に荊州南郡で行われることになった。

 

この和議は事実上、魏の敗北を物語っていた。

 

「ではこれで閉会とさせてもらいます。

 

思春、明命」

 

「「はっ!!」」

 

 

「お前たちの部隊で慰問団を護衛しろ。なお、彼女らに狼藉は控えるように部隊の者たちには徹底させるように」

 

「「御意」」

 

 

 

「いやはやー、お姉さんはすごいですねぇ。風はずっと頭が上がりませんでしたよ~」

 

そう言って、程昱が去り際に話し掛けてくる。

 

彼女には敵、味方関係なく常に対等の立場で話してくる。

 

なるほど曹操が彼女をここに派遣したのはこうした彼女の長所を分かっていたからだろう。

 

(頭があがらないと云ってはいるが、私には終始寝ていたのを郭嘉に起こされていたようにしか見えなかったのだが・・・・・)

 

そんな考えを顔に出さず礼を言うと、

 

「おお!?風のボケをかわすとは・・・。お姉さんが初めてですよー」

 

 

「このような性格の人物が我が国にいたので・・・・」

 

「・・・・それは孫策さんのことですかねー?」

 

「・・・・・・・・・・」

私は無言は彼女の言葉を肯定していた。

 

《ねぇ冥琳。今度一緒に一杯どう?いいお酒が入ったのよ♪》

 

楽しかった日々。

 

《冥琳・・・。蓮華と一刀をお願いね・・・・》

 

彼女といた日々。

 

・・・・・・今はもういない親友。

 

「・・・・・・お姉さんは悲しいのですか?」

 

ふと程昱の声が聞こえて我に帰る。

 

 

「・・・・そう言うと嘘になります。しかし後ろを振り返っても孫策・・・、雪蓮は喜んではくれません。

彼女の願い、そして夢を実現し皆の記憶に彼女の存在が残るのことが彼女の無念を晴らす唯一の供養となると私は思っています」

 

 

ひと呼吸置き、程昱にそう言った。

 

あの墓前での誓いの後、彼女の事を回想することはなくなったがふとしたきっかけで思い出してしまうとやはりなんとも形容し難い感情が溢れ出そうになる。

 

彼もこのような気分を味わったのであろうか?

 

愛する人を目の前で失うという常人では耐えられない悲しみを彼は受けた。

 

しかし彼は強かった。信念を曲げることなく常に最善を尽くす。

 

愛する人から託された願いを叶えるために。

 

程昱は眠そうな顔を少し穏やかな表情にして、

 

「そうですかー。これは次に会う時が楽しみですねー」

 

「ええ。私もです」

 

 

程昱は台詞は、

 

(今度会うときは敵として相見える時だ)

 

 

と遠まわしにそう言っていた。

 

そして程昱はゆっくりとした動作で謁見の間を後にした。

 

そしてこのあと残った呉の首脳陣で会議が行われた。

 

「しかし、なぜ曹操は儂らと和議を結ぶという結論に至ったのかそれがわからん」

 

祭殿がそういうと小蓮様もそれに同意する。

 

「祭の言う通りシャオも訳わかんない。曹操のほうがまだ勝ってる筈なのに・・・」

 

「冥琳。祭と小蓮またほかの者にも説明がいるようだ。

 

説明をお願い」

 

蓮華様に説明を促された私は、

 

「亞莎。今回の魏での調査はどうだった?」

 

「はい。今回魏が受けた損耗は死者十万以上、重軽傷者はその倍を超えると云われています。

 

この数字は魏が大敗を喫したことを明らかにしています」

 

「しかし、あの魏が一回負けた程度でこんなに弱気になるなど・・・・」

 

そういう祭殿に対し亞莎は鋭い目付きをより鋭くし、

 

「祭様の言うことは間違ってはいません。あの大国である魏なら大群をもって再びこの国に攻め込み、なおかつ制圧することも容易いでしょう。

 

しかし問題はそこではないのです」

 

「「どうゆうこと(なのじゃ)?」」

 

 

「国民の評判です」

 

 

「「評判?」」

 

祭殿と小蓮様が声を合わせて同じ言葉を繰り返す。

 

亞莎はその二人に頷き、

 

「はい。曹操は今まで圧倒的な力をもつ将兵とその強力な将兵を意のままに操る彼女自身が持つ強大な統率力で今までの戦は圧倒的な勝利を得ていました。

 

曹操に信頼を寄せる国民たちは彼女がもつその圧倒的な力に信頼を置いていたのです。

 

《この王なら我々は戦火に巻き込まれることなく平和に暮らせる》と。

 

しかしその信頼を揺るがす不祥事が曹操の下に起きてしまいました」

 

 

「それが今回の策殿の暗殺と、敗北というわけじゃな?」

 

 

「はい。もともと曹操は忠義を重んじる人間。

 

今回の雪蓮様を伏兵による暗殺と敗北は大きな衝撃を国民に与えていました。

 

私が指示した間諜による意識調査では、

 

多くの国民が曹操の伏兵による奇襲への不服が凄まじいものでした。

《曹操がそんな情けないことをするまで堕ちたか》と。

 

また戦をするには莫大な費用がかかります。

 

その費用は国民の税により賄(まかな)われています。

 

それを曹操は今まで勝つことにより、負債をなくしていました。

 

領土を獲得することによる国力の増強。

 

市場の拡大。

 

そういった勝利により得られる恩恵により国民の不満が大きくなることはありませんでした。

 

しかし今回の戦では敗北により何一つ得られるものがありませんでした」

 

 

「う~ん。つまりお金ばっかりかかって、国民の負担が一層増えちゃったってこと?」

 

 

「その通りですよぅ。小連様~。その不満や敗北による動揺をがうまく利用したのですねぇ~」

 

穏がほのぼのとした雰囲気そう云って頭を撫でながら小蓮様を褒めた。小連様は照れ隠しなのだろう、「ふっ、ふん!こんなのシャオの手にかかれば簡単なんだから!」と頬赤くしつつ弱々しい悪態を付いていた。

 

私はそんな小蓮様をみて、なおさら癒されている穏を尻目に穏の台詞を継ぐように口を開く。

 

 

「亞莎は間諜を使い他国に風評をまき支持基盤を不安定にする工作を指示した。

 

確かにこの工作は曹操の城下である許昌では効果は薄かったが、これは許昌から離れれば離れるほど効果が上がっていった。

 

これはいくら曹操といえども影響力が遠くに及ばない故だ。広い領土をもったのがあだとなったわけだ。そうだな亞莎?」

 

 

「は、はい。そうです冥琳様」

 

 

私が入れ替わりそう云うと、亞莎は顔を赤くして長い袖で顔を隠し縮こまってしまった。

 

先ほど軍師の片鱗を見せた亞莎はいったいどこに行ってしまったのかと半ば呆れつつも話を進める。

 

 

「また魏、蜀だけでなく、異民族である五胡等にこの情報を流し曹操に圧力をかけるように促した、というわけです」

 

 

「なるほど、つまり曹操はこれを機に後手に回らざるを得なかったというわけじゃな?」

 

 

「そういうことです。しかし我々は曹操が和議を結ぶという選択肢を私はあらかじめ否定して交渉を行うと決めていました。

 

この選択肢に頼るほど愚かなことはないので・・・・。しかし曹操は見切っていたのでしょう。この交渉は長引くほど自分の首を締めるということに」

 

この交渉は長期になればなるほど不信感を芽生えた国民たちは呉に肩入れすることになるからだった。

 

(故意じゃないなら、なぜ謝罪しないのか?誠意を見せるべきでは?)

 

などと国民に不信感に拍車を懸ける事態になりかねなかった。

 

 

「悪貨は良貨を駆逐する」

 

 

この諺どうりの展開になってしまうのを曹操は危惧したのだろう。

 

国民あっての政府。

 

そのジレンマ(北郷から教えてもらった言葉)が覇王たる曹操を大きく縛りつけていた。

 

 

「じゃあ冥琳。もし交渉が上手くいかなかったらどうしてたの?」

 

「小蓮様にあまり聞かせたくなかったのですが・・・・。

 

上手くいかなかった場合は・・・・、我らとともに道連れになってもらうという選択肢しか残っていませんでした。

 

つまり弔い合戦です」

 

「でも冥琳・・・・」

 

「小蓮様の言うことはわかります。しかしそれぐらいの覚悟がなければこの動乱の世を生き抜くことはできません。

 

向こうも莫迦ではありません。もしそうなったら、どうなるかぐらい彼女らも理解しているはずです」

 

二つの列強が戦争をした結果、再びこの大陸は混沌とした時代を再び迎えることとなる。

 

それは反董卓連合や黄巾党の頃の時代に再びもどることを意味する。

 

どうやっても魏に選択の余地はなかった。

 

まさかあの処刑された兵たちは思いもしなかっただろう。

 

自分が行なった独断専行が自分の祖国を苦しめることになろうとは・・・・。

 

 

「今回軍の戦闘配置が解かれていなかったのはそのためよ。祭。シャオ。

実際、この戦闘配置が解かれなかったのが曹操の間諜を、うまいこと踊らせたとも言えるわね。怪我の功名といえばそうなのかもしれないけど」

 

蓮華様が苦笑しつつ解説を締めくくるように最後話す。

 

 

「これがこの交渉の大まかな内容です。分かっていただけましたか?祭殿。小蓮様」

 

私がそう云うと二人は理解できたことに大変満足したのか

 

「うむ。ようわかった。そう考えると曹操も敵ながらあっぱれじゃな。」

 

「シャオも祭とおんなじ意見だよ」

 

 

そう云って二人はただひたすら感嘆の声をあげるのだった。

 

 

会議では

 

《蜀との軍事同盟だけでなく、貿易などといった通商関係を築くといった密接な関係の同盟締結を目指す》

 

 

といった方針が新たに打ち出された。

 

また思春が作った軍の改革案は文官等の圧倒的な賛成により実行に移されることがきまった。

 

蓮華様の提案によりこの会談の内容を全国に紛れている間諜を使い、情報を公開することが決まった。

 

「国民が何も知らないという状況は非常に不味い。国民にもこの国の現状を理解してもらいたいから・・・・」

 

と云う蓮華様の顔は以前のような幼さが抜けきれない少女の顔ではなく、今ある現状に対し最善の手を使わんとする王の顔になりつつあった。

 

(雪蓮。これでいいのよね?)

 

私がそう心で呟くとあの時のように優しいそよ風が頬を撫でた。

 

そのそよ風を一身にうけつつ私は会議の進行を促すため声をあげた。

 

どうも、コックです。

 

いや~なんとか一段落できました。

 

グダグダですみません。

 

いろいろな視点から書いてみようかなと思いまして(^^ゞ

 

だから蜀の観点からも書いたのですが・・・・。まぁ7話は外伝みたいなかんじで見てくれたらいいと思います。

 

交渉シーンは難しかったです。

いろいろと吟味した結果、このような結果となりました。

 

言い訳になるかもしれないですが、自国が他国に攻められたのにそれをおとがめ無しにするのは違和感があるかな?なんて思い今回のようにしたのですが・・・・。

 

今も昔も他国に大規模な軍事侵略を行なった際失敗した時の代償は歴史が物語っているとおもったので・・・はい。

 

交渉の参考にしたのは日清戦争の下関条約を参考にしました。

 

なお魏の国内の状況は日露戦争での日本を参考にしていただきました。

 

次回は一刀メインでいこうと考えております。

 

なお講話での場所は三国志を知っている方は知っているかもしれません。

現在この地域は江凌と呼ばれています。

 

ps:この交渉編で若干伏線なんかもいれたのですが・・・・、お分かりいただけたでしょうか?

 

  え?わからない?


 
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