No.294677

鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第四十話

NDさん

四十話記念。一番短いです。畜生

2011-09-06 22:29:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1592   閲覧ユーザー数:1551

死んだ者の儀式後の1時間後

 

船に、一人の隊員の情報により、ある重大な情報が入る。

 

その情報は、今までの聞いた情報の中では、聞いた事も無い

 

それ程の大きな物だった。

 

その情報を聞いたアンジュは、思わず耳を疑った。

 

情報を。思わず聞き返した程だった。

 

『……ウリズン帝国が……崩壊した?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~バンエルティア号~

 

『………そう、プレセアちゃんが……』

 

アンジュは、沈むような気持ちで答えた。

 

その気持ちは、正直な物だった。

 

ジーニアスはまだ、あの魔術を唱えてから一度も目を覚ましていない。

 

目覚めたとき、彼はどうなるのだろう。

 

そう考えると、胸が詰まった。

 

『………簡単にあの村の奴らを信用した俺達の責任です……。』

 

エドはそう言って、パーティの責任を全て自分で背負う決意をしていた。

 

その決意は、ソフィとアルを動揺させた

 

だが、二人は何も言えなかった。

 

自分達にも確かに非がある。いや責任があるのだ。

 

それらを全て背負う必要も、責任をちゃんと取り、プレセアを連れて帰る義務もある。

 

だが、その義務はまだ動けない。

 

情報が無さ過ぎるのだ。そして、プレセア捜索の為だけに日を潰すことも出来ない。

 

『………そう、なら責任を取らなきゃね。』

 

アンジュがそう言うと、エドの拳が強く握られる。

 

後悔、そして自分の無力さの憎悪だろう。

 

その答えに、アンジュは罰を与えた。

 

『プレセアちゃんが帰って来るまで、貴方達はこのギルドを抜けることを許しません。』

 

その言葉に、アルは少しだけ戸惑った。

 

それは、あまりにも

 

『それは……余りにも罰とは言い難いんじゃないですか……?』

 

アルがそう言うと、アンジュは笑顔で答えた

 

『あら?それは貴方達が元の世界に戻る方法を見つけても、ここでやる事が無くなっても、プレセアちゃんが見つかるまでは絶対に解雇もできないし、転職も出来ないのよ?』

 

その答えに、エドは少しだけ溜息を吐いた。

 

『……それはさすがに辛いな』

 

『だから……ね。ちゃんと連れて戻りなさい。それが私から出した、最高の罰です』

 

アンジュの言葉に、エドとアルとソフィは頷く。

 

そして、エドは笑顔になりながら答えた

 

『……じゃぁ、ここから出るのは結構早くなりそうだな』

 

『別に見つけたからと言って、このギルドから出て行くのは難しいかもね』

 

アンジュが、半分からかうようにそう言っていた。

 

その言葉に、エドは少しだけゲンナリした様子を見せた。

 

そんなに嫌なのかと、アンジュは少し呆れた表情をした。

 

『そんな顔しちゃ駄目だよ兄さん。仮にも住まわせて貰ってるんだから。』

 

アルがそう宥めると、エドは呟くように答える

 

『……アル、俺たちは”貰ってるん”じゃない。”利用されている”んだ。特に俺の場合はな』

 

その言葉に、アンジュは一瞬だけドキリとした。

 

徐々に、馴染ませて使いやすくしようと考えていたのがバレたのか。とも考えていた。

 

『……まぁいいや、とにかく…プレセア捜索にはしばらくの時間が要る』

 

エドはそう言って、アンジュの方に振り向く

 

『俺がこなす依頼は何だ』

 

エドがそう言うと、アンジュが依頼書の方に目を通す

 

『ええと……。それじゃぁこれなんかどうかしら』

 

アンジュは、一つの依頼書を取り出す。

 

その依頼書の差出人は、

 

『……おい、これお前が依頼した物じゃねえか。まーたろくな物じゃねぇだろ』

 

エドは、依頼人の欄を見てやる気を失くした。

 

その依頼人は、目の前にいるアンジュ当人の物だった。

 

そんな依頼は、この所で堂々と言われても困る。

 

『あら?ろくな物じゃない依頼なんて、私がしたかしら?』

 

『とぼけんな!嫌な奴とパーティ組ませたり、意味の無いクエストを用意してんのはどこのどいつだ!!』

 

エドのその言葉に、アンジュは冷静に答えた。

 

『今度は有意義のある依頼よ。ちゃんと内容を見なさい。』

 

そのアンジュの言葉で、エドは渋々依頼書の内容に目を通した。

 

依頼内容は、少なくともアンジュの得するものではない、今この現状に必要な依頼だった

 

『……キバの調査?』

 

それは、ラザリスがヴェラトローパに居た時に作り出した、ジルディアの一部だった。

 

それを皆は”キバ”と呼んでいる。その”キバ”という物の中に入り、調査をするものだった。

 

『そのキバは、オルタータ火山より出現しているの。』

 

オルタータ火山

 

その場所の名前を聞いただけで、エドはゲンナリした

 

『げえぇ――……またあのクソ熱い所に行かなきゃならんのか』

 

『世界の為よ、頑張ってらっしゃい。運が良かったらプレセアちゃん見つかるかもしれないでしょ』

 

アンジュはそう言っていたが、エドはそんな確信どころか、

 

そこにプレセアが居ないという事さえも分かっていた。

 

暁の従者は救いを求め。そしてとても我がままで卑劣だ。

 

そんな苦行な場所に行く等とは、とても考えづらい。

 

だが、ラザリスが作り出した空間というのは、自分でも知る必要があるだろう。

 

それを知れば、赤い煙によって姿を変えられた人達も変えられる可能性が見つけられる。

 

『………ああそう。で、今回の同行人は誰だ?』

 

エドがそう不満を言うと、アンジュは微笑みながら答える

 

『仲良し三人組よ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ユーリとエステルの部屋~

 

エステルが錬金術の勉強をしている隣で、

 

ルカが興味本位で錬金術の本を読んでいた。

 

その本を読んでいる途中、エステルが横で練習をしていた。

 

練成陣を床に描き、真ん中に割れたコップを用意している。

 

そしてエステルが両手を合わせ、両手を練成陣に置いた瞬間、練成陣が発光し、光に包まれる。

 

光の発光が終わった頃、その場に残ったのは完全なコップだった。

 

『やったぁー!!』

 

エステルが、歓喜の声を上げていた。

 

『ルカさん!見ました!?私、ついにやりました!錬金術完全に直すことが出来ましたー!!』

 

エステルのその言葉に、ルカは半分引き気味で笑顔で対応した。

 

そしてそのまま、錬金術関連の本を読んでいた

 

『……ルカさんも、錬金術に興味を持ったのです?』

 

エステルが質問をすると、ルカは本を読みながら答えた

 

『うん。この錬金術を習えば、医者になった時、不治の病の完治に可能性があると思ったんだ。それでちょっと興味本位でね……。』

 

ルカのその言葉に、エステルは笑顔になった

 

『それは良いです!それじゃぁルカ君も師匠の下で習ったらどうですか?』

 

エステルの言葉に、ルカは少しだけ微笑んだが、返事は少しだけ寂しい物だった

 

『……錬金術……かぁ』

 

『ええ!ある時には役に立って、師匠程にもなると、名の通る医者も夢ではありません!』

 

その言葉を聞いて、ルカは静かに頷く

 

『……確かに、エドワードの使う錬金術は医術方面に関して、とても可能性が広がるよ。でもね、……同時にリスクも高いんだ。』

 

リスクという言葉に、エステルは少しだけ首を傾げた。

 

その意味が、よく分からなかったからだ。

 

『例えば、……どのようなリスクですか?』

 

ルカは、表情を少し真剣にさせながら、口を開いた

 

『……例えば、この人体の練成……。錬金術ではこれは禁忌とされている。と書いてある。』

 

ルカが開いているページを見つめる。

 

そのページには、人間の絵と練成陣の構築式の構図等も描かれていた。

 

内容は、その代価の代償等は ほとんど書かれていなかった。

 

『つまりだ、医術に関するには、それは相当な……』

 

『おいルカ、こんな所に居たのか!』

 

ルカが説明をしている時に、二人の男女が入ってきた。

 

後ろには、一人の少年が立っている

 

『ひぃ…!ス……スパーダ…。イリア……。』

 

その二人を見て、ルカは恐怖していた。

 

だが、逆にスパーダとイリアは爛々とした目をしている。

 

明らかに何かをやる気満々だ。

 

『あ!師匠見てください!私、割れたコップをここまで直せたんですよ!』

 

『あーそりゃすげぇな お疲れさん。おいルカ、依頼が来たぜ。』

 

エドは、エステルの言った言葉を無視してルカの方を見ていた。

 

ルカは、助けを求めるようにエドの方を見ている。

 

エステルは、面白くなさそうな顔で、頬を膨らませてイジけていた。

 

『い……依頼?』

 

ルカが、ビクビクして怯えている状態で、エドに聞き返した。

 

『おおそうだ。それも俺とイリア、そして錬金術師様のエドワード君が同行した楽しい楽しいクエストだぜぇ?』

 

スパーダが、かなり面白そうな顔でルカを見つめていた。

 

ルカは、今にも泣きそうな顔で震えていた。それはまるで雨に打たれた子犬のようだった

 

『ほっほっほ。そうよぉ。このクエストの中、ルカちゃまはとても面白い面白い事件が起きちゃう依頼なのよぉ』

 

『あっ……あの……!これって………強制……!?』

 

『うん。強制』

 

その言葉に、ルカはさらにガタガタ震えた。

 

不安、そして嫌な予感が更なる事を襲ったのだろう。

 

『あの……今回の依頼って……。どんな内容……なのかな?』

 

ルカが、身体を震わせながら、声も震えて語りだした。

 

その質問に、エドが普通に答える

 

『まぁ、そんなふざけられねぇ依頼だけどな。』

 

エドのその言葉で、ルカは少しだけ安心した表情になった。

 

『ジルディアの一部である、あのクソでけぇ”キバ”の調査をする為に、オルタータ火山まで直行して調査する……って内容だ』

 

『え』

 

内容に、ルカは固まった。

 

そして、そこで初めて事の重大さを知った

 

『………ねぇ、それって本当に僕なの?僕も行かなきゃいけないの?』

 

『ああ?当たりめぇだろ。一人だけ抜けがけんのは絶対許さねぇぞ?』

 

『ルカちゃまだけ居なくなるっ……て事はねぇ、私たちが帰ってきたら、面白い事になっちゃうかもしれないわよ?』

 

スパーダとイリアの言葉に、ルカはもう逃げられないと感じて、

 

そのまま首をガクリと落とした。

 

『……ぅぅ、もう分かったよぉ……。』

 

半泣きの姿のルカを見て、エドは少しだけ可愛そうに感じていた

 

『おぅそうかぁ!!じゃぁ早く行こうぜ!』

 

『いやぁーやっぱりルカちゃまはルカちゃまねー!お利口さんは違いますわ!!』

 

スパーダとイリアは嬉しそうな顔をしていた。

 

ルカが、救いを求めるようにエドを見つめていた。

 

エドはルカの目を逸らし、そのまま入り口まで進んで行った。

 

『……まぁ、とりあえず今回はあまりふざけないようが良いぞ。火山と異世界で、洒落にならねぇからな。』

 

エドがそう言うと、イリアは少し邪魔臭そうに答えた

 

『はいはいは~い。まぁ少しくらいは押さえてやるわよ』

 

そして、スパーダは楽しそうに答えていた

 

『そうだな。んじゃ、ちょっとばかりは押さえとくかな。所でエド、お前釣竿作れるか?』

 

その楽しそうな言葉に、ルカは何か嫌な予感を感じていた。

 

何に使うか分からないエドは、そのまま釣竿を練成した。

 

スパーダが釣竿を手に取った瞬間、不気味な笑顔がスパーダに浮かんだ。

 

その笑顔に、ルカは更なる恐怖を感じ、また身体を震わせた。

 

それを見たエドは、ただ普通に笑うだけだった。

 

『よし、んじゃとっとと”キバ”ん所行って、その”キバ”へし折ってやろうぜ!』

 

『『っしゃぁ!!』』

 

エドのその意気込みに、スパーダとイリアは活気ある声で息込んだ。

 

『……ぉー…。』

 

ルカだけ、小声で息込んだ

 

それをスパーダとイリアが指摘し、アンコールを要求した。

 

『おー……』

 

またルカが息込みをしたが、また声が小さかった。

 

『次に小声だったら、全裸な全裸』

 

スパーダのその言葉に、ルカは慌てる様子をし、

 

次はまた大きな声を出した

 

『おー!』

 

ルカがそう言った瞬間、周りに人が集まった。

 

ここは広場だ。人が集まってもしょうがない。

 

『はい!もういっかぁあい!!』

 

イリアが、からかうようにそう言った。

 

こう人が多いところで、さすがに大声は言えなかったルカは何も言えず、そのままうろたえるだけだった。

 

そして、ルカはそのまま首を横に振った。

 

『え!?何、こんなに人が多かったら言えない!?そりゃあしょうがないな。はい!!全っ裸!全っ裸!』

 

スパーダが、手を叩きながらリズムに乗っていた

 

『全っ裸!全っ裸!全っ裸!』

 

リズムに乗りながら全裸コールをしていた

 

『はい!全っ裸!全っ裸!全っ裸!』

 

イリアも、調子に乗りながら全裸コールをしていた。

 

『『全っ裸!全っ裸!!全っ裸!!!』』

 

集まった人の中で、何かの遊びだと勘違いして全裸コールに混じる馬鹿も居た。

 

さらに人が増え続け、全裸コールに混じる馬鹿が増えた。

 

結局、その全裸コールはルカが泣き出すまで続かれていた。

 

その後、ようやくパーティはオルタータ火山まで歩き出した。

 

エド達は、この依頼にはある可能性を感じている。

 

人を救う可能性、ラザリスの正体、そして星晶の変動の原因が分かるかもしれない。

 

この”キバ”の存在、その物に立ち向かう事で、何か自分達が変わろうとしていた。

 

エド達は、希望を感じながら”キバ”の調査へと着々と進んでいた。

 

一人、泣きながら歩いている者を除いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。ここまでは良かった。

 

この時は、ちゃんと希望を持っていた。

 

ジルディアの正体、そして世界の常識を知ろうとしていた。

 

そのキバには、それ程の可能性を望んでいたんだ。

 

だけど、調査だけでは駄目だったんだ。

 

 

 

 

 

俺にもう少しだけ力があれば、

 

いや、もしくは俺さえ居なければ

 

こんな事にはならなかったのかもしれない。

 

 

守れたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつが死ぬ事は、無かったのかもしれない。


 
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