No.287375

真・恋姫無双SS ~この地に生きるものとして~ 第8話「援軍」

SYUUさん

長らくお待たせしました。
8話目になります。

2011-08-28 23:33:00 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:6326   閲覧ユーザー数:5430

 

真・恋姫無双SS ~この地に生きるものとして~

 

 

第8話「援軍」

 

 

「かしら~!街から誰かでてきやしたぜ~」

 

「なに~!?何人だ!」

 

「一人だけでさ~」

 

「一人だけ~?」

 

手下からの報告に賊の頭は首をかしげる。

 

街の衛兵なら一人だけという事はありえない。

それにこの街を襲撃するように持ちかけてきた奴の話じゃ、

ここの県令は腑抜けた野郎で、自分が少しでも不利な状況になると

すぐに逃げ出すような根性なしだと聞いている。

それならなぜ・・・・

 

そう賊の頭は考えもしたが、相手はたかが一人。

気にするほどの事じゃねぇと判断し、手下にそのまま突撃の支持を出した。

 

 

一方、 賊を迎え撃つ為に街の外へと出た亜莎は、

迫り来る賊の大群に恐怖を感じながらも逃げ出すわけにはいかないと、

袖に隠した武器を握り締めながら己を奮い立たせる。

 

亜莎とて賊と戦うのはこれが始めてというわけではない。

しかし、ここまでの戦力差で味方もいない、こんな状況は初めてだ。

いくら己を奮い立たせようとも恐怖を感じてしまうのは仕方のないこと、

それでも 亜莎は逃げ出す事をよしとせず、立ち向かう決意をした。

 

賊共の雄叫びが近づいてくる。

自身の間合いまで後少しといった所で 亜莎は高らかに名乗りを上げる。

 

「我が名は呂子明!無法にも街を襲わんとする賊徒共!

 その罪科の果てに屍を荒野にさらせ!!!」

 

言い終わると同時に両手に構えた計6本の鉄針を賊団へと投擲すると

間を置かずに賊団へと駆け出した。

無手となったはずの両手に鉤爪を携えて。

 

 

当初、たった一人が何するものよと無視を決めていた賊徒達であったが、

その一人によって仲間が10人、20人と切り伏せられていく様に、

このままではまずいとその矛先を亜莎へと向けた。

 

周囲を賊に囲まれる亜莎ではその表情には若干の笑みが浮かんでいる。

しかし、その笑みはこの状況を一人で打破できるといった自信からくるものではなく、

自分が囮になる事により街人達が逃げられる事への安堵といった意味合いからだった。

 

そうして倒した賊徒が50人を超えたくらいから亜莎の動きが眼に見えて鈍り始める。

いくら相手がたかが賊といえど多勢に無勢。

ましてや周囲を囲まれての戦闘では精神的な消耗も激しい。

一刻でも長くと奮戦した亜莎ではあったが、疲労から足元に転がっていた屍に

つまずき転倒してしまう。

迫り来る賊徒にこれまでかと眼を閉じる亜莎であったが

その思考は、いい意味で裏切られた。

 

「亜莎を殺らせはしません!」

 

そう言って、倒れた亜莎に襲い掛かった賊を一瞬にして切り伏せる黒髪の少女。

それは先ほどわかれたはずの親友、明命だった。

 

 

「大丈夫ですか亜莎?」

 

「み、明命!?あなた逃げたはずじゃぁ」

 

「亜莎を置いて逃げるなんてできません。それに・・・「騎馬隊突撃!!!」

 援軍も来ました」

 

明命の言葉に割り込んで聞こえた号令に謎の騎馬一団が賊団に突撃していく。

突然の出来事に賊達は碌な対応も取れずに蹴散らされている。

 

「あれは?」

 

「救援に駆けつけてくれた義勇軍の方々です。

 それに街の方にも」

 

そう言って明命の指差した先では街門の前に立ち並ぶ槍兵と外壁に並んだ弓兵によって

賊徒が次々に駆逐されていた。

 

亜莎は自分の戦闘に夢中で気が付いていなかったが、

いくら亜莎が奮戦していたとはいえ賊の数はおよそ3000。

当然、一人で抑えきれるものではなく、街門にも押し寄せていた。

明命の救援が遅くなったのもこれを撃退していた為である。

 

この義勇軍の参戦により形勢は逆転。

その後は一方的な展開で賊団を蹴散らしていき、

終わってみれば快勝といっていい内容だった。

 

 

亜莎が明命に支えられて街に戻ると大歓声で迎えられた。

避難したはずの街民達もいつの間にか戻ってきていたのだ。

その皆が口々に亜莎を褒め称えた、

街を救う為に単身で数千の賊に立ち向かった英雄として。

しかしながらその大歓声で逆に亜莎は萎縮してしまい、

どうしたものかとあたふたしてしまう。

 

「胸を張ってください。

 貴方の行動をきっかけろしてこの街を守ることができたのですから」

 

そう言って亜莎と明命の前に進み出たのは二人の女性。

 

「あなたがたは?」

 

「亜莎、この方たちは街を守るのに協力してくれた方々です」

 

亜莎の問いに明命が弾んだ声でこたえる。

 

「そ、そうでしたか。あの、この度は本当にありがとうございました」

 

街を賊から守ってくれた方になんて態度を

と亜莎は深々と頭を下げる。

 

「頭をあげてください。

 我々は偶然、居合わせただけのこと」

 

「そ~なのですよ~。

 お礼なら駆けつけてくれた義勇軍の方々に言ってあげてください」

 

 

「お二人は義勇軍の方ではないのですか?」

 

自分が街門を守っている時に救援に駆けつけてくれた一団を率いてきたのは

この二人だったので、明命はてっきり義勇軍の人だと思い込んでいたが、

彼女達の言葉からすればそれは違うらしい。

 

「風達は義勇軍をたばねている方に頼まれて

 指揮を執っていたにすぎないのですよ~」

 

「ええ、あの時は驚きました。

 私達に気が付いたかと思うと、迎撃要因を委ねて

 自身は騎馬隊を率いて飛び出していってしまうのですから」

 

「風もあれには驚いたのですよ~」

 

二人から聞いた話に亜莎も明命も驚きを隠せない。

会ったばかりの人に指揮を委ねるなどどういった人物だろう。

よほどの大物かそれとも・・・・

そう思っているとひときわ大きな歓声があがる。

それ完成に促され振り返って見れば、

追撃に出ていた騎馬隊が戻ってきたようだ。

 

 

「風達も出迎えに行くのですよ~」

 

「あ、待ちなさい風!」

 

我先にと駆け出していく風と呼ばれる少女?を

眼鏡の女性が追いかけていく。

 

「明命、私達もいきましょう」

 

「はい♪」

 

それにつられて亜莎と明命も門へと歩き出すのだった。

 

 

 
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