No.286299

運命石のシュタインズ助手ルート

鳳仙鬼さん

新小説です。 コメディ重視の助手√って感じです。ネタバレはアニメ見てれば大丈夫な感じ。 挿絵は2章から入れます。全4章ぐらい。

2011-08-27 19:17:36 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3939   閲覧ユーザー数:1388

 

 

 

 

第一章

 

 

8月25日

夏も終わりに近づいた頃。

外は蒸し暑く、日々何をするもなく、ただ時間だけがすぎて行くのを感じる。

毎日毎日、何もしない。一日中一人でラボにこもってだらだら過ごす。だらけた青春ではあるが、こういう平和な毎日が、一番の贅沢ではないかと思う。

俺は溜まっていたレポートを書きながら夏休みを、18の夏の最後の青春を満喫してしている。

そのはずだったのだが・・・。 

「で?助手よ、ひとつ訪ねるがなんだこれは?」

「は?・・何って見てわかるでしょ、肉じゃがだけど?」

「どこの世界にみかんとレモンがまるまる入ってる肉じゃががあるのだ!!こんなもん食えるかアホ!!」

そこには皿の上に紫色の汁にみかんとレモンが2つ乗っただけの謎の汁漬けが置いてあった。ついでにタマネギの腐ったような異臭もした。

どう目を凝らしても、肉どころかじゃがいもさえ見当たらない。

「ちょっと、なによせっかく私があんたの野菜不足を気遣って、その、手料理作ってあげたってのに・・それに・・・あんたのためだけに作ったわけじゃないし・・・」

「じゃぁ、他の奴に食わせろ」

「おいダル、助手が作った肉じゃが食うか?」

隣で携帯ゲームに夢中になってる肥満気味の男に話しかける

「パス、僕はさっきメイクインニャンニャンで昼ご飯食べたからお腹いっぱいだお」

「おおおおおっ!!トゥットゥルー!!やった!!やったよ、オカリン!ジンロウガ倒したのです!!」

「碧玉出た?」

「まって今見るよ~♪」 

なんのゲームか知らんが、隣でまゆりとダルとるか子、そしてバイト戦士の鈴羽までもが4人で携帯ゲームをしている。 

「ぐぬぬぬ・・・おい!貴様ら!!俺は一人、だらだらと寝転がって何もしないという贅沢な夏休みを過ごそうとしていたのだ!」

「それを毎日毎日このラボに入り浸りおって・・・」

「いや、あんたそれ一番ダメな過ごし方だから。なにそのぼっち大好きみたいな言い方」

「ふん、助手にだけは言われたくないわ」

「オカリン仲間に入れて欲しいなら素直に言ったらどうかな?」

「うるさい、黙れ人質よ、べつにそんのもん興味ないわ」

「え~?面白いのに」

「そういえば電話レンジどうなったの?」

電子レンジ、少し前に俺達ラボメンは皆でDメールの実験をしていた。そう、そこまでは皆一眼となってやっていたのだが、

今は電話レンジはただのポンコツと成り果てていた。 

理由は、毎日毎日なん十通も送っていたらぶっ壊れた。しかも、Dメールを送ったハズの自分の携帯を川に落とし、機種変したら

アドレスも変わり、実験そのものが凍結した。

それから今まで、ラボメンは8人に増え、アメリカに帰るハズのクリスが今だこのラボに入り浸っている。

「Dメールなら一時中断だ、鈴羽がもうその実験はやらない方がいいと強く念をを押されたのだ。」

「そうそう、もうそれやんない方がいいよ、今奇跡的に上手く行ってるみたいだし」

そう言って鈴羽は何かのメータ見たいなものを持って来たが、俺にはなんなのかわからなかった。パネルには

 

 

『2.034278』

 

 

と表示されている。

「それより助手よ、お前はいつまでここにいるのだ?」

「何よ、私がいたら迷惑?」

「迷惑などではないが、どこぞの天才少女がこんなところでだらだらすごして時間を無駄にしていいのか?」

「無駄って言うなし、いいだろ?私だってラボメンのメンバーだから好きに過ごしたって、私だってまだ遊びたいし・・・それに・・・あ、あんたも・・・いるし」

そう言いながらそっぽを向いた。

「ん?何か言ったか?」

「へ!?い、いやそんな生き急ぐ事ないかなって思ったの!別にあんたといたいからここに残ってるとか、

そんなの全然ありえないんだからな!!//////」

「ツンデレ乙」ダルが横でゲームをしながら答えた。

「まゆりちゃん、採掘の素材が集まらないんだけどどうすればいいかなぁ?」

「ルカくんそれはね、ルカくんのカチコチのキノコを調合すればいいんだよ」

「ちょちょちょ、まゆしぃまゆしぃ、ルカくんのカチコチキノコってもう一度言ってくれないかお?出来れば悩ましげによろ」

まゆしぃ「ルカくんのカチコチ・・・キノコ」

・・・・・・・・・・・

「ん~~文章じゃイマイチつたわんないお」

助手が何をやってるんだコイツ等といわんばかりに白い目でダル達を見た後、こちらに問いかけて来た。

「そんなことよりも岡部、、いっつもラボにいるけど、たまにはどっか出掛けて遊ぶとかいう発想はないのか?」

俺はその言葉を待っていましたと言うように、ニヤリと笑顔を浮かべてその場で立ち上がり、ちゃぶ台に足を乗せ、高らかに拳を天にかかげた。

「聞け!ラボメン諸君!!今から円卓会議第321回を始めたいと思うッ!!」 

「オカリン、こらヽ(`Д´)ノ!!行儀悪いから足おろしなさい、まゆしぃはオカリンをそんな子に育てた覚えはないのです」 

「ご、ごめんなさい」

足を下し、両手を天高く広げ、再び大声を出す。

「聞け、お前達!!今から宇宙への逃避行(コスモスインエスケープ)大作戦を行う!!」

「なんぞそれ?またオカリンの妄想かなんかか?」

「まぁお前たちの熱望も分かる、内容はこれから説明しよう」

「つまり、今週の土日を使って、ラボメン達の青春を謳歌(おうか)するために、ハワイ旅行ををしようと思う!!」

そう言うと、ラボメン一同から何言ってんだコイツ、やっぱりいつもの妄想か、と興味を無くしたようなしぐさをした。

その中で一人だけ、俺の幼なじみが目を輝かせてこちらを見てきていた 

「すごーい!オカリン!ハワイ旅行に行けるの!?」

「うむ!その通りだ・・・ってお前達!もっと興味を持て!ハワイだぞ!?ハワイ!」

「いや、いつもの妄想がまたハジマタと思って」

「そうよ、岡部、そんな旅費、万年金欠のこのラボの一体どこにあるのよ?つーかあんたパスポート持ってんの?」

「あぁ・・そうか私パスポート持ってないのです」

まゆりが一人しょんぼりした。

「そうだお、みんなで旅行に行くって所までは賛成だけど、もっと現実を見るべきだお」

「フゥーハハハハハ!!我に秘策有り!!」

「パスポート?そんなものは今から取ればいい!そんなことよりこれを見ろ!」

懐に入れていた大量の紙を差し出す

「!?それってまさか、旅行券!?」

「違うクリスティーナ、この紙は何を隠そう商店街の福引券だッッッ!!」

「先ほどルカ子やミスターブラウンから使わないと言われて大量に貰ったのだ」

「今からこれを商店街に持って行き、1等のワイハ旅行券を当て、ラボメン皆で遊びに行くぞ!!」

そう告げた瞬間全員の興味は別に移った

「っておい!行かないのか!?興味ないのか?一等ハワイだぞ!?南国海外旅行だぞ!?」

「あ、トットゥルー♪雷狼竜の碧玉出たよ!」

「え、ホント?まゆりちゃんすごーい」

さっきまで興味深々だったまゆりまでぇ~~~!?

「オカリン、残念ながらその福引は最後まで当たりが出ないで有名なのです」

「そうだお、それは入ってないと噂される伝説の1等だお、ぼくのカンだと何も入ってないとおもわれ」

「す、すみません凶真さん・・・私がそんな福引券なんて持ってきて・・・・」

申し訳なさそうに、こちらをのぞくルカ子がいた。 

「いや、お前が残念がる必要はどこにもないぞルカ子よ!なぜなら今からこの鳳凰院凶真がその1等を当てさえすればいいのだからな!!フゥーハハハハハ!!」

「コラ」

コツんと後からチョップがふってきた。

「アイテッ  ん何をする助手よ!!痛いではないか!」

「あんたねぇ、さっきからなに無茶苦茶言ってんのよ、皆で遊びに行きたいなら素直にそう言いなさいよ、遠出は出来ないけど

近くなら行ってあげてもいいって言ってんの」

「クリスちゃんいいこと言うね、それはまゆしぃ大賛成なのです」

「わ、私もそれなら是非行ってみたいです」 

「ねぇそれって私も行っていいの?」

「もちろんだよ鈴羽ちゃん、ラボメン皆で参加だよ」 

「ぐ・・・ぬぬぬ・・・お前達!!あ、当てると言ったら当てるのだ!!、当たった後で吠えずらかくなよ!もし当たったら

俺の事を土下座して鳳凰院凶真様と言って崇めたててもらうからなあああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

バタン!!!ガタタタタタタンッ 

「あ、凶真さん!」

一人外に逃げるように走って出て行った。涙目だった。

「ったく一人でいきなりテンション高いと思ったら何なの?アイツ・・・」

「うううきっと私のせいですぅ・・私が当たりもしない福引券なんて持ってきたから・・・・ううううう」

巫女服の少女がしょんぼりしてうなだれた

「ほっときなさい、アイツの自業自得なんだから、お腹すいたらまた戻って来るでしょ」

「で、でも、きっと皆のために凶真さんは提案したんだと思います。皆んなで集まって遊ぶこと、ここ最近なかなか出来なかったですし

土日が空いてないか、皆んなのスケジュールをこっそり調べてたこと、私、知ってるんです」

「それなのに私ったら・・・あんな軽率なこと・・・ううぅ・・ふえぇ・・ひっく・・・ふぇぇぇぇぇん」

「・・・・・・・・・・・・」 

 

――夕方になった

 

カァカァとカラスが泣いている。そろそろ日が暮れるだろう。

俺は反日、秋葉近くの商店街の福引にいた。

その状況は当然だが汗だくで両手の袋にハズレのポケットテッシュが大量に入ったものを持っている。

「あら鳳凰院なんとかさん、大量みたいね」

「鳳凰院凶真、だ助手よ、俺の名ぐらいちゃんと覚えておけ」

こちらを振り向きもせず、くじ引きを睨んでいる岡部が見えた。 

「みんな心配してるわよ?そろそろ帰りましょ岡部」

「鳳凰院凶真と言ってるだろ、」

「ん~じゃぁ間をとってティッシュ岡部ってことで」

「・・・・・・・・」

「言い返す言葉もないぐらい凹んでるわけね」

「ぐ・・・うるさい・・ネラーのくせに」

「そ、その名で呼ぶなバカ、ほら、もう帰るわよ、どうせ全部ティッシュでしょ?」

岡部の目の前のガラガラには、無色の白い玉が大量に転がっている。何回挑んだのだろう・・・両手にもちきれないぐらいテッシュの束がある。 

「いや・・・あと最後の一回がまだ残ってる」

「もういいわよ、どっか皆で近場に遊びに行けばいいじゃない、そんな無理して遠出することもないって・・」

どう慰めてやろうか、その時私はそう考えていた。いつもの暴走に振り回されてるこっちの見にもなってくれと、岡部の腕を掴み、苦笑気味に私は思った。 

「月末に帰るんだろ?アメリカ。」

「へぃ!?」突然の岡部の言葉にドキッとして、素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げてしまった。

「ど、どうして知ってるのよ、誰にも言ってないんですけど」 

「フン、この俺の魔眼にかかればすべてはお見通しだと言っておこう、お前に日本で作った思い出や仲間のことをすんなり忘れてもらっては

困るのだ。そのためにはハワイぐらい強いインパクトある思い出を作らなければ」

そう言いながら岡部は、視線はガラガラから目が離れなかった。

「思い出かぁ・・・なにあんた、私のそんなことのために、福引してたの?あんたバカじゃないの?私なんかのために一人で威勢よく啖呵切って

憤慨してさ、そんで反日ここにいて、・・・そんなので同情ひこうとでも言うの?」

何よ、なんなのよコイツ・・・一人で強がって、何一人で頑張っちゃってるのよ。汗だくだし、かっこわる。いつまで立ってもこれじゃ彼女出来ないわね。

 

 

そんなので引っかかるちょろい女なんて・・・・・・・

 

私ぐらいの物なんだからな・・・バカ・・・

 

「おか・・」  

 

いつものやっかみセリフを言おうとして、途中で涙声になりそうで、びっくりして止めた。そんな気持ちを知られたくなくて、私はまた、そっぽを向いた 

「ぐすっ・・・バカ岡部・・」

「どうした?」

「な!なんでもないわよ!!///////」

「ん?」

「こっち見んな!!バカっ///////」

うわ・・やばい・・今私ヒドイ顔してるかも・・・今コイツに顔見られたくない・・・・このまま走って帰ろうかな

そう考えた時だった

カランカランカラン!!と鈴の高い音が周囲に響きわたる。

「おおおおお!!」

「え、!?うそ、まさか本当にハワイ!?」

ガラガラの下を見ると、金色の玉が見えた。当然私は驚愕した。ウソ、コイツ当てやがった・・・だと!?

「三等、月の宮旅館一行ご招待~~~!!」

「うおい!!店主よ!!ハワイは!?俺はハワイに行きたいのだ!!」

「もう一回!!もう一回だ店主!!店主殿!!」

「いやいや待て青年!!もう玉は全部出切った!もういくらガラガラ回してもこれで終了だ」

「1等ハワイはどうした!」

「いやぁ~ハハ、どうだろう私は見てないんで知らないが誰かが当てたんじゃないのか?」

しらばっくれた。やっぱりハワイなんて最初から入ってなかったのだろう。こんな小さな商店街の福引でハワイなんて高価なものよく考えれば出るわけがない 

「ぐぬぬぬぬ・・・・これではあいつらの唖然とした顔が見れぬではないか」

「ってちょっと待て岡部!」

「なんだ助手よ、そんなに俺の負け面が見たのか、悪趣味な女め」

「違うってば、これ温泉旅館にみんなで行けるんじゃない!?」

「む、そういえば・・・だがしかしハワイとは違うし・・・」

「プハッ、クックック、アハハハハ!!」

バンバンッ

「イテテっコラ背中叩くな!一体何を笑っている助手よ!」

「凄いじゃん!!岡部!!私ハワイよりこの旅館がいい!!これならラボメン皆で行けるし、ぴったりじゃない!!」

 

18の夏、蒸し暑さの中に吹く風が心地よく、空は大きな入道雲に茜色と真っ青のグラデーションがかかり、綺麗だった。

 

 

年甲斐もなく、いや、年相応だったのかもしれない

 

 

残念そうな岡部をよそに私は

 

 

岡部の腕に両手をからませて

 

 

 

一人で無邪気にはしゃいでいた。

 

 

 

【つづく】

 

 


 
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