No.285209

いつものふたり?

陣海さん

某サイトで投稿したものですが、上条さんと美琴でバレンタインのお話。

2011-08-26 12:17:43 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:978   閲覧ユーザー数:952

 

 

今日は男女共にドキドキワクワクする年に一度の行事がある二月十四日。

いつも世界を飛び回っていた我らが主人公にして不幸なフラグ男、上条当麻は現在とある高校の三年生になっていた。

 

そして放課後のとある教室

 

「なあカミやん、今日はいくつチョコ貰ったんや?」

「………見てわからねえか? ゼロだよゼロッ!」

「そりゃそうだろうにゃー、毎日あれだけ愛の電撃追いかけっこ見てればどんな女の子も諦めるぜよ」

誤解のないように訂正しておこう。

どこぞのビリビリ中学生が俺のいるこの高校に今年入学してきた。そのことには驚いたのだったが、校舎や校門のところで顔を遇わせる度になにかとケチをつけてきてそれで追いかけっこになるというパターンがもはやこの一年で再構築されてしまっていた。

その所為で「お前ら付き合ってんの?」や「夫婦喧嘩は他所でやれよ」とか誤解をされてしまったのは言うまでもない。

つまり、愛の電撃追いかけっこではなく……只の電撃追いかけっこなのだ。

「だからっ、俺らは別に付き合ってもいねぇっての!」

「「そうは見えないから言ってるんだにゃー!(や!)」」

そう、こう返してはこう突っ込まれるのは毎度のことで……

「はぁ……不幸だ」

結果、お馴染みの台詞を呟くことになる。

 

 

少し後の校門前

 

「御坂さんまたあの先輩待ってるの?」

「えっ、いや…その、そんなことはないわよ」

「今日こそは頑張ってね」

と、ここで待ち始めてから既に同じようなことを何度も言われている。

 

『あれ? またあの上条のバカまってるの?』

『上条くん。待ってるの? もうちょっとかかると思う。』

『御坂さん、上条ちゃんを待ってるんですかー?』

『毎日毎日ご苦労様じゃん』

などこの他にも色々言われてしまった。

「アイツ、チョコいくつ貰ったんだろ……」

去年の調子だと紙袋一杯…なんて姿で現れて

『御坂、これ食べんの手伝ってくれないか?』

とか言うんじゃないかと若干去年のバレンタインを思い出してイライラしてきた。

そんな感じで校門のところで待っていると、目の前を見知ったというかいつも追いかけ回しているツンツン頭の少年がゆっくりと過ぎて行った。

「ちょっと、アンタ!」

「ん? どうした御坂」

いつもと少し違う反応。

「ったく、なんでいつもいつもアンタの検索範囲は……って、あれ? 今日は反応が早いわね」

「こっちだって無視してるわけじゃありませんのことよ、 にしてもどうした御坂、誰か待ってんのか?」

今日はなぜか聞いて欲しいことをズバズバと聞いてくる。

「うん、ちょっとね……アンタを待ってたのよ」

「………なにか、俺悪いことしましたっけ?」

しかし、こういうところの反応はいつもと一緒で鈍感。

「い、一緒に帰るくらいいいじゃない……同じ方向なんだしさ」

「あ、ああ」

いつもと違う、少し素直な態度で接したら……ちょっと照れてくれた。

 

 

帰り道、上条は御坂と二人帰っていた。

ちなみに言うと追いかけられているのが毎日と表現されるなら、一緒に帰ったりするイベントは週に1度くらいだ。

「にしても、今日は静かだな御坂」

「そ、そんなことはないわよっ」

意味が分からないが怒られた。

「まあ、なんだ…毎回言ってる事だけどさ、こんなことしてるとホントに勘違いされると思うぞ?」

そう、追いかけっこ以外にも勘違いな噂を流される原因は主にこれだったりする。

他には買い物の手伝いをさせられたり、中学時代からの名残で勉強を見てもらったりしている所為もある。

「そんなの私の勝手でしょ、勘違いしてる奴には勘違いさせとけばいいのよ」

「いや……はぁ、御坂がいいならいいけどさ、それだと好きな奴が出来た時大変だぞ……」

バチバチバチッ

「って、なんでもないっ、なんでもないからその電撃をしまって下さい!」

なんでこの話をするとあんなに怒るんだろうか……身近になったこの一年でも未だによく分からない。

 

 

なんでアイツはこんなにも分かってくれないのだろうか……

『それだと好きな奴が出来た時大変だぞ』

毎回その言葉を聞く度に私は叫びたくなる。

 

アンタのことが好きなのに、何でアンタは気付いてくれないの

 

しかし、その度に素直になれなくて何度か本当に言えそうなタイミングを逃している。

「み、御坂? 具合でも悪いのか?」

ずっと黙って下を向いていた所為か、具合でも悪くなったのかと心配される。

「ち、違うわよ…ちょっと悩み事」

「悩み事? 俺でよかったら相談乗るぞ?」

いつも世話になってるしな、と彼は笑って言う。

「れ、れれれ恋愛の悩み事でも大丈夫?」

「あー……御坂、悪いがそんなに詳しいアドバイスとか出来そうじゃないが…一応、話だけでも聞くぞ?」

うん、期待通りの回答だけど……もう、ここまできたら行くしかないと覚悟を決める。

「う、うん……その、さ…友達の、クラスメイトの子に聞かれたんだけどさ、片想いってどう思う?」

「お前面倒見よさそうだからな、相談されたのか……うーん、片想いってことは相手がどう思ってるか分からないってことだよな」

うーん、と少し悩んで彼は

「やっぱり想いを伝えるべきなんじゃないか? 片想いってどう思うの回答になってないかもしんねぇけど」

「ふ、振られたらどうするのよ」

「なるようになれって言うのは無責任かもしんねえけど……こればっかりはな」

そう言って彼は頭を掻く。

「じゃあ、さ……私が今、アンタのことをす、好きって言ったらどうすんのよ……」

あれ、言え…た。

「なっ、えっと…そう、だな……た、楽しそうでいいんじゃねぇか?」

顔を真っ赤にして答えてくれた彼は、私のことをこれで意識してくれるだろうか……

 

 

なんだろう…今日の御坂は物凄くおかしい……こんなこと言うキャラだったか?

「って、俺だけ恥ずかしいこと言ってんじゃアレだしな…み、御坂はどうなんだよ!」

「わっ、私?! 私がアンタに好きだって言われたら………」

頬を染めるどころか顔全体真っ赤にして御坂はオーバーヒート寸前になった。

聞き間違えであって欲しいと思うが、明らかに隣の御坂からバチバチと心臓に悪いスパーク音が聞こえる。

「み、御坂さん? 漏電はやめて頂きたいんですけど……」

「……あ、うん」

ほんと今日の御坂はおかしい……おかしいといっても素直なだけなのだが…

「あ、そうだ御坂」

「な、なに?」

声が裏返りつつそう答えた御坂。

「ほら、これやるよ」

上条は御坂に鞄に入ってたある物を渡した。

 

 

「これ…なに?」

彼が鞄から取り出したのは、ゲコ太のプリントされた小さな袋。

「いや、なんか去年にイギリス行った時さバレンタインって男でもするみたいだったからさ」

バレンタインに、男でも……ってこれ本命ってことでいいの?!

「世話になってる人俺多いからな……ホントはもっと渡す人いるんだけど身近な人にだけだけどな今回は」

……………ぬか喜び、か…と少々落ち込む。

「しっかし、今年はゼロかー」

とガックリといった感じになった彼を見て……

「去年からの一年間なにしたのよ……」

一年間での大逆転に呆れ果てる私。

「いや……思い当たる節は一切ないんだけど……」

「まあ、いいわ…可哀相なアンタにはこの美琴さんのチョコをあげましょう」

………また素直になれずについ口に出したのがその言葉だった。

「マジでっ! いやー去年のもそうだったけど御坂のチョコが一番上手かったんだよな」

「え、ほ…ほんとに?」

「ああ、格が違うって言うのかマジで美味かった記憶があるんだって」

「……アンタの記憶はちょっと当てにならないのよね、記憶喪失になったりしてるし」

「………いや、そのことではホントに否定できないんだけど、マジで美味かったのはホントだって」

「まあ、信じてあげるわよ…その代わり、明日の放課後買い物に付き合ってよ」

くすっと笑ってそう言う私に彼は

「はぁ…まあ、ホント美味いからいいけどさ」

と苦笑いを浮かべて了承してくれた。

 

 

「それが私とお父さんが一緒の高校に通ってた時のバレンタインの話」

「へー、母さんが父さんにデレデレになる前ってそんなんだったんだ」

父親譲りの黒髪に、母親譲りの綺麗に整った顔立ちの14歳くらいの少女が母親の隣に座ってそう言った。

「で、デレデレでもないでしょ! 普通よふ・つ・う、でも…素直になれなかった自分が今でも不甲斐ないわ……」

娘の言い分に力一杯否定をするが後半は昔の自身を思うのか溜息をつく。

「で? 付き合い始めたのはいつからなの母さん」

色恋沙汰に興味を持ち始めるお年頃である娘はお構いなしに母親に問いかける。

「そうね、次の日の買い物の時からかな? ね、お父さん?」

「あ、ああ」

今まで会話に加わらないでいたが対面で新聞を読んでいた俺はそう答える。

「へー、どっちが告白したの?」

「それは……私からよ、お父さんってば鈍感すぎるから」

「そうだよねー、父さん乙女心わからなそうだもん」

妻と共に娘に半眼で見つめられ、俺は苦笑いを浮かべて反論する。

「って、おいおい……そこまで言われるほどじゃないぞ、俺は」

「「えぇ~」」

声を揃えて否定される。

…………父さんは心が挫けそうです。

自分の娘に自身の恋愛話をする彼女はとても楽しそうで、それを聞く娘も楽しそうに聞いていた。

 

「あ、そうだ美麻ちゃん、あれは用意できてるかな?」

「うん、母さんもちろん準備オッケーだよ」

話がひと段落すると今度は事前に打ち合わせをしたかのような会話になる。

勿論、俺が知る由もないから俺は新聞を読み進める。

「「はい、バレンタインのチョコレート♪」」

そんなことを言って新聞が取り上げられ、代わりに可愛いラッピングのされた包みを二つ渡される。

「お、ありがとなー」

そう一言言って新聞を取り戻そうと手を伸ばした俺は……

 

「「ほら、やっぱり乙女心を理解してない!!」」

の怒鳴り声と共に二人に頭を叩かれるのだった。

 

三人は知らず知らずのうちに笑顔になる。

これがいつもの上条家の日常だった。

 

 
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