No.281514

カレリン君とグットマン先生 1

マ子さん

〔注意事項〕
・空折学園パラレルです
・イワンのキャラをかなり好き勝手に捏造しています
・オリキャラ登場します
・ツイッターでもそもそ呟いていたものを繋げただけなので話にまとまりがありません

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2011-08-22 02:39:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:642   閲覧ユーザー数:642

僕は日本の文化が好きで、日本に関わる本を読んでは色々と想像を巡らせていた。

それが高じて僕の部屋のフローリングにはゴザというものを敷いてタタミ代わりにしているし、寝具もフトンへ変えた。

壁にはカケジクを飾り、丸い木製のローテーブル――チャブダイという日本伝統の机である――にザブトンも添える。

遊びに来たエドワードに新しく増えた日本グッツを説明するのはとても楽しかった。いつか一緒に日本にいこうね、なんて話しもしていた。

 

それがこんな形で実現するとは…2人でっていうのは叶わなかったけど…今僕は日本の地を踏んでいる。

父親の日本勤務がきまり、家族はいつも一緒だという母の考えのもと、そろってこちらに移り住んだのだ。

生まれ故郷を離れるのは不安だったし、何よりジュニアハイスクールから一緒だった親友のエドワードと離れるのはとても寂しかった。

しかし日本は僕の憧れの地だ、毎日楽しいに違いない。それに一生日本暮らしというわけではなく、三年たてば帰れるのだから大丈夫…そう思っていた。

だが初めて訪れる日本に喜び興奮していたのも――ニンジャもサムライもいなかったのは残念だったが――最初の三ヶ月くらいで落ち着いた。

 

 

僕はこの四月から日本の高校に通っていた。

国際高等学校と銘打っており、僕以外にも日本に住む外国人や留学生などが沢山いた――とはいっても日本人が半分以上なのだが――僕はここの、外国人と帰国子女と英語を得意とする生徒を集めた国際科クラスに属している。

日本に来る前からも興味の基、独学で日本語を勉強していたので簡単な会話くらいはできていたのだが普通科クラスに行くよりは安心できた。

新しい環境に戸惑いは多かったが、せっかくなのだからいい思い出を作りたいと…期待に胸を膨らませていた。

親友はエドワード一人だとしても、こちらでも仲よく学校生活を送れる友達が欲しかったのだ。

だが現実はそう甘くなかった。自分が気弱で口下手で社交的ではない性格だということをほとほと痛感することになるのだ。

 

昔から引っ込み思案な子で、とは母親が僕を他人に紹介する時によく使う言葉だ。

思い返すといつもエドワードが隣にいて、活発な彼と一緒にいると自然と他の友達も出来ていた。

そんなだったから、一人になると友達ってどうやって作るんだっけ?という状態である。この年でだ。

それに加えて、僕は散々な自身の容姿に関してもきちんと自覚しているのだ。――エドワードは僕の顔を見てはもったいないと言っていたけれど未だにその意味が分からずにいる――猫背気味な姿勢に顔を隠すほどに長い前髪、そして分厚い眼鏡をかけているなんて…まるでオタクじゃないか…まぁれっきとした日本オタクだけど。

きっとみんなからとっつきにくいと思われているだろう。

そんな僕に対しても話しかけてくれたクラスメイトたちはいた。だけれど、嬉しいのにどう返したらいいのか戸惑って目もあわせずしどろもどろな対応をしてしまう。

話せたとしても、結局当たり障りのない会話しかできないのでたいして盛り上がりもせず終わる。

面白いことが言えるわけもない僕とそんなやり取りを数回続ければ、みんなつまらないやつだと認識するだろう。そうしたら相手は他に気の会う人間を見つけるまでで、次第に話しかける人間は少なくなっていった。

そんな状況に、学生の本分は勉強だと意気込みもくもくと学業に取り組むも、結果はあまり芳しくなくテスト順位は中の上といった具合である。

すると、もうこうなったら卒業するまでただ静かに日々目立たぬよう、人とあまり関わらぬよう過ごせばいい、という考えに変わっていった。

 

 

日本の生活に慣れることに必死ではあったが、高校生活は相変わらずで、朝起きて学校に向かい授業を受け、終れば即帰るという単純なサイクルを淡々と続けていると、あっという間に二年に進級していた。

国際科は3クラスしかないが、その中でもクラス替えは行われる。ここで僕はちょっと勇気を出してみた。

一年生の時は髪もボサボサでダサい眼鏡男子だった僕が、コンタクトデビューを果たし、髪の毛も雑誌をお手本にワックスで整えてみたりなんかして。

まるで新入生のように、新たな気持ちでドキドキと逸る胸を押さえつつ登校したのだ。

が、しかし。見た目をかえたからといって中身までは変わるはずもなく…。

相変わらず慣れない人と目を合わせるのは苦手であったし、笑顔もぎこちなかった。

コンタクトにしてみたはいいが、何より目付きが悪い。新しいクラスメイトとの出会いも、結局は一年前の繰り返しである。

僕が見た目を元に戻すと、むなしくも二年生デビューは静かに幕を閉じた。

(どうして頑張っちゃったかなぁ…何をやってもダメなのに…。まぁこれでよくわかったじゃないか、おとなしく地味に生きていこう。そうだ、忍者のようにひっそりと生きていけばいいんだ。僕に似合いの生き方だ。)

…なんていくらへこんでも現実は変わらない。それは分かっている、それならせめて楽しいと思える時間を大切にしようと思った。

 

学校生活の中で一人になりやすい時間は自習をするか、趣味に没頭した。

日本文化の中でも忍者については特に熱心で、グッツを集めたり本を集めたりしている。それに関する専門書などを一人黙々と読んでは――嬉しさを必死に隠し取り澄ました顔をしようとして大抵失敗しにやけてしまう――自分の世界に入っていた。

他に学校で好きな時間と言えば得意な教科の授業とお弁当の時間だった。

僕の母は料理が得意だ。冷凍食品が入っていたことは今までで一度だってない。

日本の弁当文化にあわせて、毎朝一番早く起きて慣れないながらもせっせと作ってくれているのも知っている。

日本人生徒の弁当よりも、より弁当らしい出来ではないだろうか。本当は友達の前で何気なく見せびらかして食べてみたい。

が、いわずもがな当然お昼はいつも一人だった。

定位置は校舎裏の人気がない場所だ。芝の広がったそこは風の通り道なのか晴れの日はとても心地がよくお気に入りのポイントだった。寒すぎたり暑すぎたり、あるいは雨の日のときなどは空き教室を探してそこの窓際の席に座るのが定番である。

便所飯なるものもあると聞いたことがあるがそれはさすがに遠慮したい。みじめ過ぎるし、せっかくのご飯も不味くなりそうだ。

 

一人の弁当も二年になれば慣れたものだったが、今日はいつもと違った。昨日、空の弁当箱を差し出した僕に、母は突然弁当の感想を聞いてきたのだ。

僕はなぜだかとっさに、友達からも美味しそうだと誉められたと言ってしまった。

クラスでの自分の状況に後ろめたさもあったのだろうか「友達が」なんて言葉が口をついたのだ。

それに内心焦ってはいたが、僕の心と裏腹に母は大層喜んでくれた。

 

本当のことを言って心配させたくないと思う。別にいじめられているわけじゃないけれど…

学校が嫌いなわけでもない。勉強は好きな方だし、ただ友達って言える人がいないのが寂しいってだけで…

はぁ…溜息をつきながら弁当箱を開ける。今日も美味しそうだなと思いながらも考える。

もしかしたら母は、本当は何か気が付いていたのかもしれない…。

 

僕は一人っ子だし、とても大事に育てられているという自覚はある。反抗期だってなかったとは言わないが緩やかに過ぎた。

美味しければ美味しいほど…愛情のこもった弁当をたった一人で食べていると、なんだか情けないというか申し訳なくて涙がでてくる。

ぽろぽろと涙がこぼれて弁当に吸い込まれていった。…僕はここで一体何をしているんだろう…

大丈夫、なんてことないと思っていたのだが知らぬ間に心にモヤモヤが溜まっていたようだ。

日本に来てから今までのことが一気に思い出され僕は我慢することなく、溢れるままにしばらくグズグズと泣いていた。

 

もうそろそろ涙も止まるかと思われたその時。

「美味しそうなお弁当だね。」

頭上から柔らかく声がかけられる。

とっさに見上げた視線の先には空のように青い色の眼をした男性が眩しそうな笑顔を向けて立っていた。

 


 
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