No.280146

Purple Heat Chili Pepper

蝙蝠外套さん

C80にて知人にコピー誌として配布した、東方プロジェクト、パチュリー主役の紅魔館SSです。あらすじ:パチュリーがあるものに目覚めました。

2011-08-20 22:38:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:602   閲覧ユーザー数:596

 

 パチュリー・ノーレッジは、珍しく廊下を歩いていた。

 なぜ珍しいかというと、彼女の生活は基本的に紅魔館地下の大図書館の中で完結しているからだ。パチュリーの衣食住、そして仕事の全てが、大図書館内で事足りる。故に、彼女が図書館の外にいるのは、繰り返しになるが中々に珍しいことである。

 かといって、珍しいからといって、この館の主人に呼び出されたなど、何か特別な用事があったわけでもなかった。普段はちょっと移動するのにも空を飛んでいるのに、今日は地面に足をつけて歩いているのも、体調が変だとかいう事情ではない。

勿論、突然健康志向に目覚めて、自己鍛錬のために歩いているなどと言うことは、この引きこもりの魔女に限ってあり得ない。

 理由は単純。どんな生き物にでも見られるであろう、いわゆる気まぐれの類だった。本人が自覚するまでもないほど些細な。

 そんなパチュリーが、長い紅魔館の廊下を、ぶらぶらと歩いていたときのことだ。

「――?」

 妙な感覚に捕らわれ、パチュリーは立ち止まった。違和感の正体を特定するため、全身の五感を総動員する。  

こう書くと大げさに感じられるが、ただでさえ元々の身体能力が脆弱で、日常の何もかもを自分の体以外のもの――魔法だったり、使い魔だったり、メイドだったり――に依存している彼女にとって、まずは五感のどれが反応したかを自覚するところから始めなければならない。

 軽く奥歯を噛みしめながら、継続的に受信されてくる感覚を解析する。とりあえず、反応したのは、嗅覚だ。普段から黴臭さとコーヒーと紅茶の香りばかりを取り込んでいる鼻の粘膜が、珍しい臭気にざわついている感じがした。

 それがわかったところで、ようやくパチュリーは周囲を見渡した。普通の人間などであれば、普段とは違う感覚に捕らわれた瞬間に、反射的に首を巡らせるものだが、彼女の場合、そこに至るまでの時間が驚くほど長い。

 そのため、臭いの発生源を特定する前に、その声が聞こえた。

「かっらーい!」

 衝撃に打ちのめされたような、甲高い女性の悲鳴。その声にパチュリーは聞き覚えがあった。普段とはあまりにもかけ離れた声音だったが、割合必死に感覚を研ぎすませていたせいか、すぐ特定できたのだった。

「咲夜?」

 紅魔館のメイド長、十六夜咲夜の叫び声だった。

 彼女の叫び声が聞こえた方向と、臭いが漂ってくる方向は、奇しくも同じだった。その方向、丁度パチュリーから見て右側には。

「――ここは食堂ね」

 そこは、紅魔館の使用人が食事をするための食堂だった。紅魔館の主人の賓客であるパチュリーが、まず立ち寄ることがないフロアである。なので、ふらふらと入り口に赴いたパチュリーには、その中の様子がどこか新鮮に感じられた。

 そんな新鮮さの中で、丁度目の前に、よく見知った――というレベルではない従者が二人、白いテーブルクロスのかかった長いテーブルに肩を並べて座っていた。

 一人は先ほどの叫び主である咲夜。だが、いつものクールな装いはそこにはなかった。遠目から見ても明らかなくらい涙目で、全身を震わせてテーブルクロスに銀髪を押しつけていた。

 もう一人は、緑の人民服に赤毛の長髪を垂らした少女。名前は紅美鈴、この館の門番である。こちらは、悶える咲夜とは対象的に、満面の笑みを花開かせていた。

 ただ、その笑顔にパチュリーは、また別の違和感を覚えた。美鈴はとてもうれしそうにしているにも関わらず、その顔面には、玉のような汗が活発に吹き出しているのである。

 そんな状態で、美鈴は何かをレンゲでハフハフと口に掻き込んでいた。

「あははー、やっぱり猫舌の咲夜さんは辛いのもだめでしたかー。……あ、パチュリー様」

 美鈴が、レンゲを持つ手を止めて、パチュリーに笑顔を向けてくる。それにつられ、渾身の力を振り絞るように、咲夜もまたパチュリーに顔を向ける。こちらは凄いつらそうである。

「パチュリー様、食堂に何のご用でしょう?」

 咲夜はパチュリーの姿を認めるなり、そう訊ねてきた。理由は前述の通りなので、咲夜が不思議に思うのも当然だろうな、とパチュリーは考えつつ、あえてその返答をスルーした。

「……咲夜、美鈴、何を食べているの?」

 先ほどからパチュリーの鼻腔を積極的に刺激してくる臭い、その発生源は、今美鈴の目の前にあるものだった。

 一目見た時の印象を、陳腐だが分かりやすく的確に表現するならば、それは火山地帯にあふれかえるマグマだった。皿の上に、煮えたぎる地獄の底のようなものが再現されていた。

「あ、これですか? パチュリー様は麻婆豆腐をご存じありませんでしたか」

「麻婆豆腐……」

 固有名詞が登場し、反射的にパチュリーの頭の中のインデックスが検索結果をはじき出してくる。どうやらパチュリーにとって既知の単語だった。五感は鈍いが、心当たりのある情報に関しては、パチュリーの反応は速い。

「大陸発祥の食べ物で、豆腐や挽き肉を、唐辛子や豆を塩蔵して作った調味料で煮込んだ料理ね」

「流石はパチュリー様、その通りです」

「……たしか、以前にも私がお作りしたことがありましたね。あのときはこれほど辛くはなかったですが」

「ああ、だから私、覚えていたのね」

 いつ頃かは忘れたが、咲夜が創作中華料理に嵌っていた頃、パーティのメニューに麻婆豆腐が並んでいた事があった。パチュリー自身も食した記憶がある。味の方は、パチュリーの舌には少々濃口だったが、悪くなかったような気がする。

 だが、味が濃いという印象だけしかなかったため、今咲夜が悲鳴を上げるような辛さがあったかは、覚えていない。咲夜のようなリアクションをするような食べ物であれば、パチュリーでも深く記憶していそうであるが。

「これ、私が見たのよりも、ずっと色がどぎついきがするわね」

「それは仕方がないかと。咲夜さんが作ったことあるのは、日本人向けにアレンジしたレシピだったので、全然辛くないです。けど、これは本場四川風ですから」

「……つまり、より原型に近いということね」

 麻婆豆腐は大陸の四川という地域が発祥と言われている。四川と名のつく料理は、大抵かなりの辛さを誇る。

「尋常な辛さじゃないですよこれ……美鈴、いくら妖怪とはいえ、よくこんなもの食べられるわね」

「いやー、久しぶりに本場のが作れるからって、ちょっと辛さ調整をはしゃいじゃいましたね。私の舌でも、中々強敵です」

「久しぶり? ここに来てから、ずっと作れなかったってこと?」

「そーですね。これを作るのに必要な数種類の醤や、花山椒なんかは、そうそう入ってこないですから。でも最近は、山の神様がスパイスなんかを作っているそうなので、それをお裾分けしてもらえて、色々作りやすくなったんですよ」

 その話はパチュリーも聞いていた。山の神様というのは、数年前に幻想郷に引っ越してきた守矢神社の面々の事だが、その神様連中は、最近になって核融合炉の蒸気を利用したハウス栽培という事業に着手し、幻想郷では栽培できない、希少な異国の植物を作り出しているという。紅魔館も、咲夜を窓口にして、守矢神社から色々と希少なスパイスを取引してもらっている。

「おいしいですよー。咲夜さんも、もう一口」

「いらないわよ!」

 たっぷりと赤い溶岩をすくい上げたレンゲをつきだしてくる美鈴に、咲夜は全力で抵抗した。

 とまれ、美鈴がやたらと汗をかいているのにも合点がいった。作った本人が強敵というくらいだから、この麻婆豆腐は恐ろしい辛さなのだろう。

「あ、パチュリー様もどうですか?」

「え」

 咲夜が断固拒否の構えを崩さないので、美鈴のレンゲの矛先は、今度はパチュリーに向かった。思いもしなかった展開に、パチュリーは目を白黒させる。

「やめなさいって美鈴。そんなもの、パチュリー様が耐えられるわけないでしょう?」

「……ちょっと貰うわ」

「え!?」

「おお、それではどうぞどうぞ」

 咲夜が驚くのを横目に、パチュリーは意外なほどあっさり美鈴の差し出すレンゲを受け取った。

「たまには好奇心に忠実になるのも、悪くない」

 図書館の外を、珍しく自分の足で歩いてみたように。

 パチュリーは、気まぐれに傾くままに、レンゲの先の三分の一ほどを口に含んだ。

 その時、瞬間、一瞬。

 味覚という導火線に火がつき、パチュリーという魂を爆発させた。

(~~~~~~~~~~!)

 すべての思考が光速を超えてインフレーションする。

 自分という存在が、今から一ランク上の領域に次元シフトしていく。

 幻視は一瞬だった。

 しかし、その幻視が嘘ではなかった証拠のように、余韻がある。激しくも甘い感触。

 パチュリーは、目覚めた。

 

 

「ハフ、ハフ、モグモグ……ゴクリ」

 その一飲みを最後に、パチュリーは空っぽの皿にスプーンを置いた。

「ぱ、パチュリー様が……」

「カレーライス並盛りを……」

「完食ですって……?」

 咲夜、美鈴、そして小悪魔が、そろって唖然とした様子で、パチュリーを見ていた。

 そのパチュリーは、汗まみれになりながらも、平然とした顔つきで、こう言い放った。

「美味しかったわ」

 その言葉に、パチュリー以外の三人は、よりいっそう唖然となる。

 パチュリー・ノーレッジは、元来小食である。小柄な体格に加え、虚弱体質もあり、体が食べ物を受け付けないのだ。茶碗一杯の御飯を食べきる事すらままならない事も多い。

 そもそもパチュリーは、普段から食事を取らないことも珍しくはない。紅茶かコーヒーを一杯くらいしか口にしない時もあるし、本を読むのに熱中しすぎた場合など、完全に飲まず食わずになる。種族魔法使いであるため、自身で魔力を生成し、生命維持ができるので、食事を取らなくても問題はないのだが、見ている方は不安になってくるほどの小食……ないし、絶食加減である。

 そんな彼女が、一般に高いカロリーで濃厚な味わいであるカレーライスを、人並みの分量をぺろりと平らげたという事実は、彼女を知る者達にとっては信じがたいことである。

 そして、何よりも。

「これが標準の二十倍の辛さか……三十倍にしてもいけそうだけど、辛さと旨味を同時に楽しむには、これくらいがしきい値かしらね」

「いえ、二十倍の時点で死にそうです」

「私でも苦しいですね……」

「パチュリー様、お口の中大丈夫でしょうか」

 そう、パチュリーが人並みの量の食事をしたことも驚きだが……なによりも凄まじいのは、彼女の平らげたカレーライスは、紅魔館で作る標準的な中辛カレーライスの、優に二十倍の辛さになるよう作られていた。常人なら舐めただけで身悶えする辛さである。

 この異常なカレーのルーを作らせたのは、パチュリーである。

 きっかけは、今から遡ることぴったり四十八時間前。

美鈴は仕事の休憩中に、激辛の四川風麻婆豆腐を自作して、咲夜と共に舌鼓を打っていた。

 そこにたまたまパチュリーが現れ、美鈴に薦められるがままに、咲夜も悲鳴を上げるほど辛い麻婆豆腐を口にした。

 その途端に、パチュリーは豹変した。美鈴からレンゲをひったくったかと思うと、熱々の麻婆豆腐を猛烈な勢いで掻き込みだした。人が変わったような仕草に、そばにいた咲夜と美鈴は勿論制止しようとした。

が、尋常ならざる覇気を放ちながら煮えたぎる溶岩を食べる――というか飲み下していくパチュリーを止めることは、二人にはできなかった。

 ものの数分で、皿にラー油の残滓のみを残して、パチュリーはこう言い放った。

 

「これが――これこそが、賢者の石の託宣よ!」

 

 その意味を理解できる者は、紅魔館にはいなかった。

 とまれ、その後パチュリーは、呆気にとられる咲夜と美鈴を省みる事なく、ダッシュで図書館まで戻ったかと思うと、その後約四十時間、資料探しに没入する。

 そしてつい数時間前、とりあえず放って置いた方がいいだろうと言うことで、いつも通り仕事をしていた咲夜の元に、パチュリーは再度現れた。

 彼女は、咲夜に命令を下した。

「私の指示に従って、辛い食事を作りなさい。とびっきり辛いものを」

 ――回想が長くなったが、そうして現在に至る。たまたま今日の献立はカレーライスと決めていた咲夜は、その食材を流用し、パチュリー専用の、パチュリーの要求を満たすようなカレールーを作り、それをパチュリーに提供したわけだが――。

「私、あれ味見してないんだけど、鍋に近づくだけで目が痛かったのなんの。今も全身がぞわぞわしてる――」

 冷や汗を垂らしながら、咲夜は懐述する。パチュリーの指示通りに作ったカレーライスのルーは、少量ながら若干量残っているわけだが、レッドカレーもかくやといわんばかりに赤黒い。その赤み成分は、トマトや人参などではなく、全て唐辛子である。

「異様な臭いがして、何かなと厨房に行ってみたら、咲夜さんがラー油作ってるのかと思いましたよ」

「パチュリー様、一昨日の昼過ぎから、ずっと辛い料理の本をお探しになられてまして、どういう風の吹き回しなのかなと思ってましたが、こういうことだったんですね――」

 小悪魔の証言に、咲夜と美鈴は、少し合点を得る。

 要は、四十八時間前に麻婆豆腐を食べたことで、パチュリーは辛さに目覚めたのだ。

「しかし、パチュリー様が辛党だとは、それなりの付き合いですけれど、初めて知りました」

「私も自分の事ながら初めて知ったわ」

 ナプキンで汗を拭いとり、口元も綺麗にしたパチュリーは、軽く鼻を鳴らした。

「知っての通り、私は病弱な上に偏食で小食。だから、今まで自分から刺激の強いものを口にしないようにしてきたわ。元々濃い味付けも好きではないから、余計に食べ物はマイルドなものばかりになった」

 大抵、スパイスが利いていたり、辛い食べ物は、塩分も高いことが多い。パチュリーのような食事の選択をしていれば、そういったものに縁がないのもむべなるかな、といったところだろう。

「でも――私は浅はかだった。勝手に自分の限界を定め、刺激物を野蛮な輩のものだと見下してきた先入観が、今日までの私の生をどれだけ無味乾燥にしていたのか――今なら、この舌の痛みのようにわかるわ」

 驚くほどの意識改革である。辛いもの一つでそこまで大げさな……、と三人は思うが、パチュリーにとっては本当に劇的なものだったのだろう。

「と、いうわけで、次も頼むわね」

『はい?』

 三人が三人とも疑問符を返してきたことに、パチュリーは呆れたように首を振った。

「はい? じゃないわよ。辛さへの探求はまだ始まったばかり。貴方達には、これからもどんどんと作って貰わないと」

「しょ、正気ですか……」

 仕える相手の正気を疑うのはメイドとしてはあるまじき言動であるが、しかしそれは、咲夜の心底からの言葉だった。

「私はいつだって冷静沈着怜悧聡明よ。以後しばらく、小悪魔には世界各国の辛いものリサーチ、美鈴には材料の調達、そして咲夜には調理を分担してもらうわ」

「あの、私門番なんですが……」

「最近外回りを増やしたんでしょう? そいつらを立たせておけばいいわ。レミィには私が話を付けておく」

 パチュリーがレミィ――館の主であるレミリアに話を付けるということは、実質的にパチュリーが好き勝手にやるということの宣言である。おそらくレミリアはパチュリーにあっさり言いくるめられて、パチュリーが咲夜や美鈴をこき使うのを許可するだろう。

 なので、咲夜も、美鈴も、小悪魔も、こりゃもう止められないな、と半ば諦めた心地で、従うことにした。

 そして三人はなんとなく、これから起こる惨禍について、口には出せないジンワリとしたイヤな予感を無意識に抱いていた。

 

 

「お待たせしました」

「いただくわ」

 パチュリーの目の前には、数種類の料理が鎮座していた。

 それらの料理に使われている材料は、普段幻想郷ではあまり口にされないような珍しい品物が多く、ちょっとした食べ物の万国博覧会の様相を呈していた。見ているだけで面白い食卓である。

 見ているだけ、ならば。

「ふむう! これは――辛さを先頭にして、突き抜けるような酸味、絡みつく甘み、あらぶる塩気が、足並みをそろえて口の中で踊るようだわ! 美味なのは当然だけれど、同時に実に面白い、面白いわ!」

「和えられた野菜やチーズは一見辛さを抑える役割のようだけど、そうではない。なまじ食べやすさが箸を止めることを許さず、舌を耐えまなく痛めつけようと誘ってくる。なんて恐ろしい子!」

「これはわかりやすい辛さね。みじん切りになった唐辛子とタマネギが歯ごたえと共に刺激を訴えかけてくる上に、赤さの中にカプサイシンがたっぷりととけ込んでいて、肉の旨味を覚醒させてくる。実に乱暴ね――でもそれがいい!」

 天狗の料理漫画にでもかぶれたかのような品評めいた感想を、一品一口ごとにそらんじながら、パチュリーは止まることなく食べ進んでいく。一皿一皿の量は、大したことではないが、なにぶん品数がフルコース並に多いので、総量は結構なものになる。

 しかし、今のパチュリーは、それすらも全て完食してしまいそうな勢いだった。

 そこへ。

「あらパチュリー、それが咲夜に特注させたっていう料理ね」

「なんかすっごーく、変なにおいする――」

「お嬢様方」

「レミィ、そしてフラン」

 この館の主、レミリアが優雅に、そしてそれに連れだって、くるくるとした動きのフランドールが現れた。

「つれないねぇ、こんな珍しいものばかりを取りそろえたのに、私たち抜きで楽しむなんて」

「ずーるーいー」

「あら、じゃあ試してみる? たくさんあるから好きなもの食べていいわよ」

「そうこなくっちゃ」

 鷹揚に誘うパチュリーに、レミリアは気をよくしたように、犬歯を見せて笑った。

 しかし、咲夜は危惧を募らせ、思わず声を上げる。

「パ、パチュリー様、よろしいのですか?」

「いいわよ。言われてみれば、こんなおいしい料理の数々を私だけで独占するのも、もったいないわよ」

「いえ、そういう意味ではなくて――」

「ではこの、私にふさわしい紅のスープをいただくわ。綺麗に赤く染まったエビが贅沢ね」

 そういってレミリアは、スプーンを念動力で引き寄せて、それを使ってスープ皿から赤いエビを拾い上げた。そして、左手でエビの頭を摘み、スプーンに残ったスープと同時に、口の中に放り込んだ。

 バリバリバリ、とエビの頭が噛み砕かれる軽快な音が鳴り響く。

 すると。

「?」

 咀嚼を止め、レミリアはふと首を傾げた。

 その時である。レミリアの素肌が、全身くまなく、先ほどのエビの頭のように染まっていったかと思うと――。

「ぐぎゃあああああああああああ!」

 咆吼が上がった。絶叫と共に、レミリアの喉の奥底から、唇を焼きめくりながら、灼熱の業火が噴きあがった。

『ひぃぃぃ!?』

 レミリアの凄まじい豹変に、美鈴と小悪魔が腰を抜かした。咲夜の姿はない……と思ったら、いつのまにか牛乳の注がれたコップを手に、レミリアに向かっていた。

「いわんこっちゃない! 

お嬢様! 早くこの牛乳で……」

 しかし、咲夜の叫びもむなしく、レミリアは火だるまになってバッドレディスクランブルしていた。これでは、時を止めたとしても、咲夜は迂闊に近づけない。

 レミリアの暴走は止まることを知らず、そして抑えようもなく加速し、ついには、シャンデリアに飛び乗り。

「私の胃袋が不夜城レッドォォォォォォォ!!」

 などと意味不明な声と共に、口から地面に向けて深紅の炎の十字架を吹き出すに至った。

 が。

「レミィ! うるさい!」

 パチュリーがおもむろに、レミリアを指さすと、次の瞬間、レミリアの口から出ている炎が逆流し、レミリアの体の中に押し込まれていった。

 そして。

 爆発。

『お、お嬢様ー!!』

 赤黒く焦げた蝙蝠をまき散らしながら、レミリアは爆裂した。

 咲夜、美鈴、小悪魔は愕然としながら絶叫する。

「今の私は、アグニさえ凌駕する存在よ……」

 いずこかへ飛び去っていく(多分自室へだろうか)レミリアの分散した蝙蝠を遠目に、パチュリーはこれまた意味不明な――というか意味があるのかすら怪しい言葉と共に、息を吐いた。

「残念だわレミィ、貴方にはまだ早すぎたのね」

「惨い花火だねぇ」

 一方フランドールはここにいる者達の中で(ある意味)一番冷静に、呆れ顔で首を振った。

「ねぇ、咲夜。お姉様はなにを食べたの?」

「あ、あの――トムヤムクンという、世界三大スープの一つです」

 フランドールに問いかけられ、咲夜は戦慄きながらも律儀に答えた。

「魚介類を主役にした辛みや酸味の強いスープなのですが……」

「確か今回、分量の五十倍の唐辛子を咲夜さんの力で濃縮熟成させたペーストを使ったんでしたよね……」

 美鈴が補足をすると、咲夜は冷や汗が滴り落ちるのにあわせてうなづく。

「……味見していたら、私もお嬢様のようになっていたのでしょうね」

 そのような劇物で作った料理を、味見できるわけがなかった。

「ふーん、すごいんだ。でもそれにしたってお姉様も情けないわよねぇ。あんな血相変えて逃げ出すなんて」

「ふふ、じゃあフランも試食してみる?」

 フランドールの台詞に、パチュリーが目を光らせた。他の三人は、その眼光にイヤな予感を募らせたが、それを向けられた当のフランドールは、挑発的な笑みを浮かべた。

「へへん。お子さまな味覚のお嬢様とは違うんだから。こんなのぺろっといっちゃうよ」

(フラグだ)

(フラグが立った)

(死亡フラグが)

 止めようか、と三人は思うが、同時にもう運命の因果律が世界の収束を決定づけたのを認めるしかなかった。

 諦めるのが早すぎる気もするが、現実問題、三人がかりでもフランドールを物理的に止めるのは困難だという、残酷な方程式が存在している。成り行きとその後を見守るしか、三人に道はなかった。

「じゃ、このチーズがかかったやつにしよっと。いい香りするし」

(あ、それは)

 と、三人のうちの誰かが説明しようとしたが、もう遅かった。フランドールはフォークを使って、チーズがたっぷりとかかったなにやら赤い物体を口へと運ぶ。

 一秒。

 二秒。

 三秒。

 スーッ……。

 という音がしたのかと思うほど。

 フランドールの姿は、幻のように消え去った。

『お、お嬢様ー!!』

 悲劇、そしてフランはいなくなった。

 という冗談はともかく、やはりフランドールも、姉が直面した悪魔に勝つことはできなかった。

「……小悪魔、あの料理、なんて名前だっけ」

 目をぱちくりさせるパチュリーに、小悪魔は絞り出すように答えた。

「エダマツィという、ブータン料理の定番で、唐辛子をチーズで煮込んだ料理ですが……フランドール様、よりによってジョロキアを口にしてしまいました」

「しかも今回作ったの、ハバネロと悪夢の競演を実現してましたから、チーズそのものもレッドゾーンに達してたんでしょうねー……」

 美鈴がまた補足を入れるが、もはや意味のなさないことだった。

 

「しくしくしくしくしくしくしくしく……」

「フランドールお嬢様、おいたわしや……」

 その後、流石に心配になったパチュリーとそのほか三名は、二手に分かれて姉妹の様子を見に行った。レミリアには、咲夜と小悪魔。フランドールには、美鈴とパチュリーといった具合である。

 フランドールは、地下室に閉じこもり、絶え間なくすすり泣いていた。その痛々しさに、美鈴は実力行使に出なかった自分を今更ながら悔いた。

「二人とも、まだまだねぇゴクゴク」

 一方でパチュリーは、特段悪びれる様子もなく、平然とした顔で何かを飲んでいた。

「……何を飲んでるんですか、パチュリー様」

「ケプ」

 のどの奥から炭酸を漏らしながら、パチュリーはそれを掲げた。

 それは、一見すると、赤紫色のラベルが張られ、黒ずんだ液体が入った、複雑な流線型の瓶だった。だがよく見ると、ガラスではなく、柔らかそうな質感をしていた。

 ペットボトルという、幻想郷では製造不可能な、外の世界の飲み物用の容器だ。

「古道具屋の店主が最近仕入れた飲み物が、気色の悪いスキマから転がり込んできたのよ。選ばれし者の知的飲料というふれこみだったけど、なかなかイケるわ」

「そんな得体の知れないもの、飲んでも大丈夫なんですか……」

「砒素とか水銀とかに比べれば、どうってことはないわ」

 もしかして、この人は重度の味覚音痴なんじゃないのか、と美鈴はがくりとうなだれるしかなかった。

 

 その後、咲夜と小悪魔からレミリアの様態を聞かされたが、しばらく再生に時間がかかりそうだ、とのことだった。

 それはすなわち。

 パチュリーが紅魔館当主代行となり、その行いを誰も止められなくなることを意味していた。

 

 

 パチュリーによる連日の劇辛攻勢は、凄惨を極めた。

 毎食毎食、異常を通り越した量の唐辛子が鍋に投入されることになり、咲夜は全身隙間ない防備での調理を余儀なくされた。

 美鈴は食材調達に奔走する時間が増え、シエスタする暇がなかった。それのみならず、時としてパチュリーが咲夜に作らせたおぞましい辛さの料理を味見させられ、生死の境を彷徨うことにもなった。

 小悪魔は、本来の図書館業務を全て後回しにして、ひたすら料理本をひっくり返しては、レシピを書き留める作業を、朝から晩まで続けていた。おかげで、未整理の本がどんどんと余剰スペースを埋め尽くしていった。

 そんな時に、霧雨魔理沙が、いつものようにこっそり図書館へ潜り込んだ。

しかし、前述のような状態の図書館の危険度は尋常なものではなく、結果魔理沙は運悪く本の雪崩に飲み込まれ、パチュリーに見つかってしまう。その後、パチュリーの食事に付き合わされ、全身の穴という穴から赤いマスタースパークを噴出させて、幻想郷の新しい星座になった魔理沙に、三人は同情を禁じ得なかった。

 

 

 そんなこんなで、紅魔館が唐辛子の赤みに染まりはじめて、一週間。

「……膨れたわね」

「……畏れながら、同意します」

 地下図書館に併設されているパチュリーの私室。

 入浴後、鏡の前で小悪魔に髪の毛を梳かれている状態で、パチュリーはネグリジェの裾を、胸元までたくし上げていた。

 鏡に映るパチュリーの体、その腹部が、全身の華奢な肉付きとはあまりに不釣り合いなまでに、ぽっこりと膨らんでいた。事情を知らない者がみれば、妊娠したと疑われても仕方がないくらいである。ただでさえ、普段の服装が、マタニティのようなゆったりとした服であり、その服の上でもなおわかるくらいに腹部は膨らんでいたので、余計に誤解を招きそうだった。

 この一週間程度で、パチュリーの食事量は激増していた。今まで、一日一食取ることすら珍しかった者が、毎日三食欠かさず食べるようになれば、一週間でも大きな変化が現れて当然だろう。

 ただ、今のパチュリーの腹部の膨張は、脂肪によるものではなく、今日の夕食に由来する。単純に食事回数が増えただけでなく、一回の食事量も今までとはガラリと変わっていた。それをパチュリーは、辛さによる食欲増進の効果があるのか、かつての小食が嘘のように、健啖に食事を平らげていった。

 しかし、元々が小柄だったために、パチュリーの胃袋そのものは小さい。そこに今までに無い量の食べ物が詰め込まれたので、腹部が外側に張り出してしまうのは仕方が無いことだった。

 なんにせよ、傍目から見ると、歪な健康状態が心配される状態と言える。

パチュリーの腹部が見ていられなくなって、意を決し、小悪魔は切り出す。

「パチュリー様……近頃は、少々食べ過ぎではないでしょうか」

 この期に及んで、ではあるが、小悪魔はようやくその言葉を口に出すことが出来た。

「大丈夫よ。ここ一週間、体の調子はずっと上り調子。このお腹だって、食事をしてから数時間で収まるもの

「そうは言いますが、運動しないで食べる量だけ増やしたら、いつかお体に障りますよ」

「そうねぇ、明日は久々に外に出てみようかしら。魔理沙に取られた本の回収をしに行ったらいい運動になるでしょう。今のあいつはきっと寝込んでるだろうから、簡単に取り戻せるわ」

「いえ、ですから……」

 どうにものれんに腕押し、糠に釘の感触に、小悪魔は巧く言葉を繋げられなかった。

「さって、まだ眠くないし、少し夜食を取りながら本を読もうかしらね」

「まだ、お食べになるんですか」

「ちょっとだけよ、ちょっとだけ」

 そう言って、パチュリーは部屋の中央のテーブルに置かれていた、赤いリング状のスナック(香霖堂で取り寄せた、暴君の名を冠する激辛のお菓子)をひとつまみ、魔法の力で拾い上げ、口の中へと運んだ。

 その時だった。

 口の中に飛んできたスナックに付着しているパウダーが、パチュリーの食道ではなく、気管の方に、ごく僅かだが、こぼれ落ちた。

 スナックを口に納めた瞬間にそのことを感じたパチュリーは、反射的にスナックを自分の手に吐きだしたのだが……。

「……!」

 突如、パチュリーは呼吸が出来なくなった。突然のことにパニックになりかける。が、実際はその余裕すらなかった。

「ゲホッ! ゲホッゲホッ! ゲッホゲッホ!」

「パ、パチュリー様!?」

 突然咳き込みだしたパチュリーに、小悪魔はすぐさま喘息の発作を疑い、懐から常備している喘息の吸入薬を取り出す。その間にパチュリーは激しい咳の余り、椅子から転げ落ち、地面に転がってしまった。

「すぐお薬を!」

 頽れたパチュリーを胸に抱いて、小悪魔は薬を吸わせた。

 しかし、薬の効果はなかなか現れず、その間もパチュリーは脂汗を滲ませた顔面蒼白で、呼吸もままならなかった。

「お、お医者様を! お医者様を呼んで下さい~!!」

 もはや自分の手に余ることだと判断した小悪魔は、パチュリーを抱きかかえ、部屋を飛び出した。

 

 

「……呆れてものも言えないけど、言うわ」

 八意永琳は、顔の四分の一を覆うかのような巨大な青筋をこめかみに浮かべながら、一息、大きく息を吸ってから、紅魔館の一同に。

「いくら指示されたとはいえ! 気管支炎の患者に刺激物を与え続けるなんて! 知識がなくたって、ちょっと考えればわかるでしょう!!」

 紅魔館全体を揺らしかねないほどの怒号だった。

「しかも、血圧や血液成分の各種値も、簡易検査だけで生活習慣病が疑われるレベルにまで悪化しているし……この一週間で、どれだけカロリー、脂質、塩分を摂取させたっていうの!?」

 深夜を過ぎたパチュリーの部屋。永琳の目の前には、何故か正座させられた咲夜、美鈴、小悪魔。そしてその背後には、ベッドに横たわり、簡易呼吸器を繋がれて、ヒューヒューと息を繋いでいるパチュリーがいた。永琳の治療で発作は何とか治まっているが、意識はない。

 永琳は、紅魔館の面々の緊急要請に応じて、突如として起こったパチュリーの発作を治療するために紅魔館にやってきたのだが、パチュリーの症状を見、そしてここ一週間の彼女の生活について住人から聞き出したところで、その柳眉を逆立てた。

「彼女は、ただでさえ要介護認定されてもおかしくない虚弱体質なんだから、従者の貴方達がきっちりとコントロールしなきゃだめでしょう!」

『……申し訳ありません』

 ここ一週間パチュリーに散々こき使われていた挙げ句、わざわざ正座させられた上で説教をされているという現実に、三人は実に理不尽さを感じずには居られなかった。が、永琳の言うことは僅かにも間違っていないし、自分達に責があるのも確かなので、反論する気にもなれなかった。

「まぁ、反省はしているようだから……以後、気をつけるように」

「話は全て聞かせて貰ったわ!」

『お、お嬢様!』

 そこに突如、レミリアが出現した。一週間ほど前にパチュリーが食していた料理にお見舞いされて以降、生死の境を彷徨っていたのだが、ようやく復活したようだった。

「本日より、我が紅魔館は、唐辛子の仕入れ量を制限する! もう辛い食べ物なんぞごめんよ! 時代はスイートなの! 甘口カレーなのよ!」

「……唐辛子は保存料なんかにも使えるから、使わないというのも不便でしょうけど、確かに手に入れる量を制限した方がいいでしょうね」

 レミリアの宣誓に、永琳は神妙に頷いた。咲夜、美鈴、小悪魔も、抗議の声を上げる事は無かった。

「というわけで、咲夜! いい加減お腹空いたから、早速ハンバーグを作りなさい! フランの分もよ!」

「は、はい、ただいま!」

 レミリアに急かされ、咲夜は正座の足の痺れをものともせず、レミリアに付き添って部屋から出て行った。

「はは、これはしばらく、四川料理は食べられそうにないですね……」

 美鈴は苦笑いでそのようなことを零すが、あまり残念そうでは無かった。彼女もこの一週間の狂騒で、しばらく辛い物は勘弁して欲しい気分だった。

 その美鈴に対して。小悪魔は、無言の同意を返す程度しか、気の利いた対応ができなかった。

「小悪魔さん、パチュリーさんの意識が戻ったら、最低一ヶ月は辛い物厳禁だと、貴方から言い聞かせてね。ま、医者としては、金輪際一定スコヴィル以上の食べ物は口にしないよう指導したいところだけどね」

「わ、わかりました……」

 小悪魔は、申し訳なさそうに、正座したままで永琳に頭を下げた。

 

 

 明け方になる前に、永琳は紅魔館を去って行った。美鈴はそのまま就寝し、咲夜もレミリアとフランドールの食事が終わったところで、休息に入った。

 そして、小悪魔は、パチュリーに付き添っていた。

 パチュリーは、永琳が去ってすぐに、意識を回復させた。

 そして、小悪魔から永琳の言付けを聞くと。

「……そう」

 と、軽く頷くだけだった。

「パチュリー様、その、あまり気を落とさないで下さいね?」

「大丈夫よ。元々無理が利く体じゃないってのは判ってたんだから、自業自得よ」

 その言葉に、小悪魔はホッと胸を撫で下ろした。パチュリーとて馬鹿ではない。あたら二の轍を踏むような真似をすることはないだろう。

 だが、それとは別に、小悪魔には言いたいことがあった。

「実は私、パチュリー様が食べ物に興味を持ったの、良いことだなぁ、と思ってたんです」

「……どういうこと?」

「難しいことじゃありませんよ。どんな生き物でも、食は生きていく上での基本です。パチュリー様は魔法使いですから、何も食べなくても生きていけると言えばそうですが……やっぱり、おいしいものを食べた方が、楽しいですよ、ね?」

「むきゅ……」

「この一週間、色々と無茶苦茶でしたが、それでもパチュリー様、本当に生き生きとされていましたから。辛い物は流石にお医者様から止められたにしろ、世の中には他にもおいしいものは沢山有りますから、きっとまた満足できますよ」

「……そうね」

 小悪魔が自分を励ましてくれていると察したパチュリーは、微笑みを返した。

「さ、ひとまず今日は、ゆっくりお休みになって下さい」

「そうするわ。でも、まだ眠くないから、本の一冊でも読んでからにする」

 パチュリーは枕元に重ねてあった本を一冊取った。タイトルは確認しない。本であれば何でも読むのが彼女である。

「ほどほどにして下さいね。では、私はお休みになるまでここに居ますので」

 そう言って、小悪魔もまた手近な本を一冊取った。

「別に休んでくれてもいいのだけれど……ん?」

 パチュリーは、早速本を開き、中身に視線を落とした。パチュリーはざっとページを捲り、序文とインデックスで本の概要を把握する。

 と、その中で、目に留まる情報があった。パチュリーは、勢いを付けて序盤の方を速読していく。

 そして、二〇ページほどを読み進んだところで、何故かおもむろにその本を閉じてしまった。

「パチュリー様?」

 本を閉じた音に反応して、小悪魔が首を傾げた。

「小悪魔……」

 パチュリーは、静かに語る。

「私の体調が整ったら、この本に書いてあるものを用意して頂戴」

 パチュリーは、小悪魔にも見えるよう、本を掲げて見せた。

 その背表紙には、こう書かれていた。

 

『世界の発酵食品』

 

 

 約二週間後、紅魔館に立ちこめていた唐辛子の臭いが、硫化水素や酪酸の臭いで駆逐されることになるのだが、その物語が語られることはないだろう。

 

 おしまい

 

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択