No.278069

対魔征伐係.22「バイトだってします①」

シンヤさん

1P目に本文、2P目にその話に出てきた、関するものの設定紹介、小話など。あれば読者からの質問の答えなんかも。質問をする場合はお気軽に。回答は次回の2P目になります。質問内容は3サイズとか趣味とか好きな食べ物とか、設定に記載されていないもの、或いは紹介自体されていないものなど何でもOKです。但し、有耶無耶にしたり、今はネタバレ的な意味で回答できないよ!となる場合もあることをご了承ください。

2011-08-19 00:17:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:667   閲覧ユーザー数:423

「・・・あぁ、眠い、なぁ・・・」

 

誰に言うでもなく、呟く真司。

その服装はいつもの高校の制服ではなく、アルバイト先のファミリーレストランのものだった。

日課である放課後の修行を終え、今日も今日とてアルバイトに勤しんでいたのだ。

真司や他のアルバイトの頑張りもあり、今現在の店内は落ち着いている。

 

平日のそろそろ閉店という遅い時間。

時計の短針は10時を指し示していた。

このくらいの時間になると平日は客足も引き、まったりムードになるのだ。

慌しく忙しかった夕食時間を戦い抜いた後の休憩タイムと言った時間帯だった。

修行の疲れも相成って真司のだらけ具合は何時にも増して素晴らしいものがあった。

 

「日比谷クン、まだお客様は居るんだから、シャキっとしなさいよ」

「・・・おーぅ・・・」

 

そんな真司に綾音が注意を促す。

 

 

(・・・委員長が居る日は何時にもまして暇なんだよな・・・)

今日は真司と綾音、他にもバイトは二人ほどホールに出ている。

他のバイトたちも真司と同じように適当に掃除などをして暇を持て余しているように見える。

本来ならばこの時間は閉店の準備などを行うべき時間なのだが、何でもやれることはやっておかないと気が済まない綾音。

テキパキと接客をこなしつつも閉店準備まで行ってしまっていた。

その仕事振りはだらけていた真司の分担がいつの間にか終わっているほどだ。

無論、幾ら真司と言えども、自分の仕事はしっかり行うし、面倒だからと言って誰かに頼んだりはしない。

ただ、いつも閉店作業を始める時間となる前に綾音はほぼ作業を一人でこなしてしまっていた。

誰が頼んだわけでもないのに自分から進んで仕事をこなす辺りに委員長としての性格が現れていた。

 

(まぁ、流石に手持ち無沙汰もないわな・・・)

何もしていないわけにもいかず、何かしようと決めた真司の目にお客さんが会計へと席を立ったのが見えた。

席には食器類が残っている。

もそもそと移動し、食器類をお盆に乗せ、厨房まで運ぶ。

そして洗い場へ置こうとした瞬間。

 

 

カンッ・・・

 

 

甲高い金属音が厨房に響いた。

調理を行っていたバイトたちも何事かと目をやるが、同じく食器を片付けに来ていた綾音が真司の下へ歩み寄ってきた。

 

「何、どうかしたの?」

「あー、いや、ぼーっとしててな。シンクに食器落としただけだよ。割れてもいないし、何でもないさ」

 

言いつつお盆に残っていた食器を洗い場へと置き、ホールへ戻ろうとする真司だったが・・・

 

「指、切れているじゃない」

「まぁこんなもん傷のうちには入らないだろ」

 

綾音に腕をぐいっと捕まれ、無理矢理手を開かされる。

先ほど滑り落としたナイフで切ったのか、人差し指から赤い血が少しだけ滲み出ていた。

 

「馬鹿言わないの。食品を扱っているんだからちゃんとしないと駄目よ?」

「・・・まぁ、それは確かにそうだが・・・絆創膏とかどっかにあったっけ・・・?」

 

当然のように真司自身はそんなものは所持していない。

休憩室やロッカールームなど、絆創膏がありそうな場所を思い出してみる。

 

「ちょっとこっち来て」

「お・・・」

 

言うが早いか綾音に腕をつかまれそのままずるずると店の奥にある休憩室まで連れて来られる。

途中、ホールに居たバイトに一言二言話しかけていたようだ。

 

 

「全く・・・例え小さな傷でも食品衛生上でキチンと処理しなさいって言われているでしょ?」

「あー、そう、だったか・・・?」

 

休憩室へ着くなり、椅子へ座らされ、綾音が自分の鞄を持ってくる間も小言を言われ続けていた真司。

 

「そもそも、ぼーっとしているからこんなことになるんだからね?」

「あー、そう、だな・・・」

 

綾音は小言を言いつつも鞄から絆創膏やらガーゼやらが入っている小さな箱を取り出す。

そして手馴れた手つきで真司の切り傷がある指を消毒し、絆創膏を貼っていく。

 

 

 

 

 

 

「委員長はいつもそんなの持ち歩いているのか・・・」

「・・・普通でしょ・・・?」

「そう、なのか・・・?」

 

少なくとも真司はせいぜいハンカチを持ち歩いているくらいだ。

この様子だと裁縫用具なんかも出てきそうだ。

 

「・・・日比谷クンって・・・」

「ん?」

 

絆創膏も綺麗に貼り終わりここまで掛かった時間は僅かだ。

手馴れたものである。

後は戻るだけとなった筈だが、綾音は真司の手を持ったままだった。

 

「あ、ごめん、なんでもない・・・」

「・・・余計気になるだろう・・・」

 

こういった場合、なんでもないと言われたほうが些細なことでも気になるものだ。

 

「・・・えぇと、日比谷クンの手って意外と男の子らしいって言うか・・・なんて言うか・・・」

「・・・そりゃ男だからな・・・」

 

何故だか赤面中の綾音に当然のことを言われ、綾音の考えていることがイマイチ理解できていない真司。

 

「そういうことじゃなくて、その、豆とかあるし・・・」

「あぁー・・・、まぁ・・・男はだいたいそんなもんだって」

 

毎日放課後に、学校の裏山で修行しているから。とは言えない。

 

「・・・意外ってことは・・・委員長は俺にどんなイメージを・・・」

 

男としては当然の疑問だった。

 

「・・・そろそろ、戻らないとね。先行ってるから」「お・・・」

 

言うが早いか、綾音は早足で休憩室を出て行った。

(・・・本当に、アレで口煩くなければなぁ・・・)

深いため息と共に真司も綾音の後を追い、ホールへと戻ることにした。


 
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