No.277211

蜘蛛の巣にかかった蝶

みかんさん

今回はなんかすごく病んでますね^^; これも部誌として提出したものです(「こんな病んでるの部誌に出していいの?」というツッコミは聞こえません←) “僕”が“君”の彼氏に何と言ったか(「     」の部分ですね)はご想像にお任せします^^;結構えげつないこと言ったんじゃないかなーとは思ってますが。 あと「僕は何もしていないよ?」のところ、とぼけているだけで裏でまたなんかやってますよ、絶対;;

2011-08-18 03:36:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:895   閲覧ユーザー数:888

君と初めて会ったあの時、桜の花びらが静かに舞っていた。その中で佇む君は、とても幻想的に見えた。

艶のある漆黒の髪の毛も、黒目がちの大きな瞳も、桜色に染まった小さな唇も、どれもとても綺麗で、僕は思わず見惚れてしまったのを覚えている。

―――――でも、君の隣にはいつもあいつがいたね。

あいつは君を守ろうとしているかのように、君の傍を片時も離れなかった。

しばらくは君を見ているだけでも幸せだと思っていた。でも、君が僕と話している時に、あいつが邪魔をするように君を呼び、君がすぐ嬉しそうにあいつに駆け寄った瞬間。

僕の中で何かが、弾けたような気がした。

 

 

君は僕じゃない奴の名前を呼んで、愛らしい笑顔を浮かべる。

君は僕じゃない奴に触れられて、恥じらったように頬を赤らめる。

君は僕じゃない奴を瞳に映し、

君は僕じゃない奴の声を聴く。

全部、全部、僕じゃない。

 

 

君はまるで胡蝶のようだ。ひらひらと僕の周りを舞い、捕まえようとするとするりと逃げていく。君を守る騎士を気取ったあいつの元へ。

だから僕は罠を張った。巧妙な、巧妙な罠を。蜘蛛が獲物を待ち構えて、決して逃げられないような細かい巣を張るように。

 

君は『大好きな彼氏』にこっぴどくふられたね。僕が身の程知らずのあいつに「      」と言ったからかな?あの時のあいつの顔は思わず吹きだしてしまいそうになるほど、間抜けで滑稽だった。ざまあみろと思ったね。

それから君は『大事な友達』にも裏切られたね。僕が裏であらゆることを吹き込んだからかもしれないね。

さらに君は『気心の知れない仲間』全員から無視されるようになったね。僕は何もしていないよ?

君は今まで信じていた人たちから全員に見放されてしまったね。でも僕だけは変わらず君の傍にい続けた。

君が嗚咽を零していたら、理由を聞かずハンカチを差し出して泣きやむまで寄り添った。

君の元気がないようだったら、ことさら明るく振舞い、笑わせようとした。

君は次第に僕に心を開くようになった。前の彼氏にも見せたことのない、蕩けるような笑顔を見せるようにもなった。

―――――もうすぐ、もうすぐだ。

僕は内心でほくそ笑みながら、それをひた隠して常に穏やかに君に笑いかけて見せた。

 

 

 

 

「………好き……です」

 

 

雪が静かに降り、空気が凍てついたように厳しいものになっていたあの日。君は白い肌を真っ赤に染めて、震える声で僕にそう告げたね。

僕は本当に嬉しくて、君の小さく弱々しい体をきつく抱き締めてしまった。君は驚いていたけど、幸せそうな笑みを溢して僕の背中に手を回してくれた。

 

 

全てが、上手くいった瞬間だった。

 

 

それから僕たちは付き合い始めた。

「どうして僕を選んでくれたの?」と訊くと、「誰からも見放されてしまって苦しかった時、あなただけがずっと私の傍にいてくれたから」と頬を染めながらそう答えてくれた。

手を繋いで伝わってくる君の体温が、とても心地よかった。

 

 

 

 

 

それから数か月間、僕は望みが叶ったという幸せを噛みしめると同時に、狂いそうになるほどの嫉妬心に駆られた。

君がクラスの男子と話している時も、担任の男性教師に質問している時も、僕以外の男と話したりしているのが許せなくて、湧き上がる嫉妬心を抑えることができなかった。

 

 

その瞳に映るのは、僕だけでいい。

僕だけを愛し、僕だけを見、僕の声だけを聞き、僕だけに触れられ、僕だけに笑いかけ、僕だけに愛されればいいのだ。

ほかの奴らに君の無邪気な笑顔を見られるなんて、耐えられない。

 

 

――――――そうして、気が付いた。君を僕だけのモノにしたいなら、だれの目にも触れないところに閉じ込めてしまえばいいのだと。

 

 

 

 

 

 

 

君が「やめて」と目に涙を溜めて叫ぶ。『君は僕だけのモノ』だとわかるようにと、君の細い手足にとても似合う手錠をかけてあげているのに、何故そんなに怯えているの?

「助けて」と泣き叫ぶ君。助けて?君を救ってくれる人なんて誰ひとりいない。皆君から離れていってしまった。

 

 

どうしてそんなに震えているの?これからずっと、二人だけでいられるのに。

どうしてそんなに暴れているの?まるで僕から逃げようとしているみたいに。

どうして怯えた目で僕を見るの?悪い子にはお仕置きをしてあげようか?

 

 

僕しか見えなくなるように、君の耳元で愛を囁こうか。

 

 

 

「愛してるよ。永遠に君を放さない」

 

 


 
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