No.274802

対魔征伐係.19「一段落」

シンヤさん

1P目に本文、2P目にその話に出てきた、関するものの設定紹介、小話など。あれば読者からの質問の答えなんかも。質問をする場合はお気軽に。回答は次回の2P目になります。質問内容は3サイズとか趣味とか好きな食べ物とか、設定に記載されていないもの、或いは紹介自体されていないものなど何でもOKです。但し、有耶無耶にしたり、今はネタバレ的な意味で回答できないよ!となる場合もあることをご了承ください。

2011-08-16 00:52:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:540   閲覧ユーザー数:301

「あー・・・眠い・・・」

「今日は何時にも増して眠そうだな?」

 

休み明けの月曜日。

何とか遅刻せずに登校してきた真司だが、朝のHRを前に居眠り寸前だった。

常々月曜日は特別眠そうではあるが、今日は更に拍車が掛かっていた。

主な原因は昨日までの雪菜の一件でせっかくの休みが丸潰れになってしまったことだ。

学校が休みだったと言うのに、休憩するどころか余計に疲れていた。

 

「あぁー・・・土日と色々あってな・・・疲れが溜まっただけだったんだよ・・・」

「そりゃ、ご愁傷様だなぁ」

 

机に突っ伏している真司に凌空は笑いながら話を続ける。

 

 

ガラッ

 

 

「日直ー」

 

教室の扉が勢いよく開き、郁先生が入ってくる。

日直の掛け声により、朝の挨拶を済ませ、HRが始まった。

 

「今週、今日から転入生が来ることになったので、紹介します」

 

郁の予想だにしていなかった発言にクラス中がざわつく。

真司や凌空も例外では無かった。

 

「転入生・・・?凌空、お前知ってたか・・・?」

「いや、俺も初耳だな・・・急に決まったことなのかな・・・?」

 

全くの告知無しでいきなり転入生が来るなどは異例のことだ。

やがて郁の制止により、ざわついていたクラスは静けさを取り戻し、自ずと皆の視線は教室の扉へと注がれる。

 

「それじゃあ、入ってきなさい」

 

 

がらっ

 

 

教室の扉が開き、真司の見知った顔が入って来た。

 

「えー、今日から一緒に勉強することになった・・・田中雪菜さんよ」

(・・・マジか・・・)

雪菜が鎮守高校の制服に身を包み、教壇の前に立っている。

(しかも、田中って・・・師匠・・・)

雪菜に苗字は本来存在しない。

恐らくは郁の命名なのだろうと思われるが、余りにも適当すぎる苗字だ。

 

「何だ?真司の知り合い?」

「・・・いや、まぁ・・・」

 

落胆している真司に凌空が不思議そうに話しかける。

他のクラスメイトも皆それぞれ雪菜について話し合っているようだ。

 

「えぇと・・・出来れば雪菜って呼んで欲しいでーす!これからよろしくね♪」

(・・・そりゃそうだな・・・)

 

中々どうして、ちゃんとした(?)挨拶を済ませる雪菜。

クラス中からは雪菜の名を呼ぶ声が一斉に沸きあがる。

自己紹介でいきなり名前で呼んでくれなんて聞いたことがない。

女子たちも呼んではいたが、男子の野太い声が非常に耳に入ってくる。

 

「ちょっと幼い感じだけど、可愛い子だな」

「まぁ・・・そう、かねぇ・・・」

 

郁を見たときとは別人のように冷静に分析する凌空。

凌空の年上好きが今だけはありがたいと思う真司だった。

 

「えー・・・それでは、席は日比谷の隣にでも」

「ちょ・・・」「はーい♪」

 

郁は悩むことなく既に決めていた席を指定する。

真司と雪菜の対応を見てクラス中が真司に突っ込みを入れる。

 

「日比谷は唯一このクラスで雪菜の知り合いなんだし、ちゃんと面倒見るのよ?それではHRを終わりにします」

「ちょ、待ったぁッ!!」

 

雪菜がせっせっと机を移動させている隙に真司は郁の下へ走り寄る。

クラス中の人間は皆雪菜の周りに集まっている。

今ならば小声で話せば周りに会話は聞こえないだろう。

 

「何でこんなことになっているんだ・・・」

「馬鹿ねぇ・・・私と真司が居ない時にあの子を一人で自由にさせておく気?」

 

教室の隅で郁と真司は密談を繰り広げる。

 

「そりゃそうだが・・・何も学校に・・・」

「ちゃんと一通りの礼儀は教えたし、物覚えも良いわ。人前では人間として振舞うように言いつけてあるし」

「だけど、こんな大勢の・・・」

「目の届く場所に居て、更に現代のことを勉強させられる・・・一石二鳥じゃない。それに雪菜は真司が思っているよりもずっとしっかしているわよ?」

 

郁のもっともな意見に言い伏せられてしまう真司。

 

「・・・はぁ・・・分かったよ・・・ちゃんと家で常識とか教えておいてくれよ・・・」

「これでも教師なのよ?任せなさいな」

 

郁はそういうと次の授業があるのか、足早に教室を出て行った。

真司も授業の準備をしなくてはいけないので、席へ戻ることにした。

他のクラスメイトも同様に雪菜の周りから捌けていき、各々の席で次の授業の準備をしている。

 

 

「真司の小学校からの腐れ縁で凌空って言うんだ。よろしく」

「凌空ね?よろしく~」

 

戻るとしっかりと真司の席の隣へ机を移動し終えた雪菜が凌空と自己紹介をしていた。

 

「雪菜は何にも渡されてないのか?」

「うん、真司に聞けばいいって郁・・・先生が」

 

明らかに取ってつけたような先生だったが事情を知らないものからすればそこまで怪しくはない、筈だ。

 

「まぁ・・・筆記用具はあるし、教科書は見せる。ノートは・・・使ってないのがあったかなぁ・・・」

 

机の中をごそごそと物色するが、どれも使用済みや汚いノートばかりだ。

 

「真司」

「お・・・?」

 

真司の机の上に新品のノートが置かれる。

 

「悪いな凌空」

「後でジュース一本だな」

「安いもんだぜ」

 

流石は見かけによらず勉強が出来る凌空。

予備のノートもしっかりと完備していたようだ。

 

「ありがとーう♪」

「どういたしまして」

 

雪菜もしっかりお礼を言う。

どう見ても妖怪には見えなかった。

 

「しんじぃー、それが教科書ー?」

「あぁ・・・って・・・雪菜よ・・・」

 

ノートを手に入れた雪菜は真司が広げていた教科書に興味津々だ。

隣の席でも十分に見えるのだが、椅子を移動させ、ぴたりとくっ付ける。

椅子だけでは足りず、雪菜自身もぴたりと寄り添ってくる。

どう見ても、ただの知り合いには見えなかった。

 

 

 

 

 

 

「なにー?」

「近い、近すぎだ・・・暑っ苦しい・・・」

 

このままでは周りから何を言われるか分かったものではない。

早々とこの状況を打破したかった。

だが・・・

 

「もーぅ、照れなくてもいいのにぃ♪」

「仲のいいことで♪」

「・・・助けてくれ・・・」

 

雪菜は嬉しそうに更に身体を密着させてくる。

凌空はそんな様子を楽しそうに傍観している。

クラス中から様々な思惑が感じ取れる視線が真司に向けて突きつけられている。

この調子では一時限目終了後の休み時間にクラス中から問い詰められることは明白だった。

 

(・・・はぁ・・・まぁ、これでとりあえずは・・・一段落か・・・まさかバイトまではしないだろうしな・・・)

一昨日から続いていた雪菜関連のイベントも流石にこれ以上は起きないだろうと踏んだ。

こうして真司は頼もしくも迷惑な妖怪、雪菜との今後の付き合いに腹を括るのだった。

 


 
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