受信機に光ってる点を当てにし、僕たちはは甘寧たちの船に乗って長江に身を委ねた。
雛里ちゃんのことが心配で船酔いになる気も失せた僕は倉と真理ちゃんを船に用意してくれた部屋に置いておいて外に出ていた。
拠点 思春&牙莎 春の思いに誘われて………
「ここから東南東側に50里(20km)ぐらい離れてる…今でもまだ移動中だ」
しかも、あっちの方が早い。
下手したら信号を受信できる範囲から離れてしまうかもしれない。
「しかし、ほんとにそんなちいせなもので、奴らの向先が解るというのか」
「そこは心配しなくていい。奴らが持っていった僕の鞄を江に放り込んでさえなければな……それより、この船はもう少し早くは進めないのか」
「ああ、そりゃ無理だな…これでも最速で動いているのだ」
「このままだと、そのうち場所が分からないところまで行ってしまうかもしれない」
「奇跡を望むことはできねー。お前のその装置はよく分からんでも、この船は風と人の力が進んでるんだ。しかも今の長江の流れじゃ、ボロい俺たちの船じゃこれが再速度だ」
「奴らの船はもっと新装ということか?」
「何を話している」
その時、凌操と話をしているところ甘寧が現れた。
「
「サボるとは人聞きの悪い話してくれるな、思春。ちょっとした息抜きも大事だぜ」
「まったく……」
甘寧は呆れた声を出しながら今度は僕の方を見た。
「貴様の言う通り船を動かしている。だが、こっちで間違いないだろうな」
「こっちも友たちの命がかかっているんだ。戯言にお前たちを利用しているつもりはない」
「そうであって欲しいものだ」
この甘寧、あまり僕のことをいい気では見ていなさそうだな。
まぁ、大体孫権の命令がなければ、江賊である彼女らが僕を助けることもなかったというものだが……
「この船がボロいって話をしていたさ」
「僕は一言もそんなことは口にしてないからその刀を納めてもらえるか、甘寧」
さすがに船長の前でそんなこと言える口じゃない。
「ふん」
直ぐに剣を収める甘寧であったが、一度凌操の方をギロリと睨んだ。
凌操はいつものことかのように受け流す。
この二人、頭と副頭というよりは……なんというか……正史のことを考えるとかなり仲よさそうに思えるのだが……
「まあ、この船がボロいのは事実だろうが」
「貴様らみたいに毎々船を奪っては変え続ける連中にこの船の良さが分かるか」
「知らんがな」
「……貴様、本気で死にたいか」
「俺はいつも準備できてるぜ」
……そうでもない?
「甘寧、聞きたいことがあるが」
「何だ?」
「その……お前たちは、どんな風に会ったんだ?」
「……何?」
「いや、だからお前ら二人はいつどんな出会いを持って今に至ったかという…<<チリン>>うわっと!」
「おお、あれを避けるか、お前もなかなかやるな」
「ちっ」
こえー!この甘寧、何の準備動作も入れずに一気に頸のあるところまで刀を入れてきやがった。
避けなかったら致命傷だった。
「何をする」
「貴様…よもや変な勘違いをするんじゃないぞ。こいつは私が江賊の中でも骨のある奴だと思ったから拾ったのであって……」
「……よく分からないな…」
つまり、どういうことだ?
「おい、思春、そんな慌てる質問でもねーだろ」
「っ……別に慌ててなどいない」
凌操に言われながらまた刀を収める甘寧の姿は、ほぼ……父親に叱られてるちょっと年をとった娘のそれだった(ただし母は死んだ時に限る)
後、聞いた話では凌操は僕たちよりはちょっと年は離れているらしい。裴元紹ぐらいまでは行かないと思うが、話好きな江賊の兵卒に聞いたところ、前が2ということは分かった。次は本人が登場して例の奴を船から蹴り落としたせいで聞けなかった(尚、落ちた奴は安全に保護されました)
この世界の男と来たら、どいつも髭とかまんまと生やしておいてすごくおじさんみたいに見えるところがある。
「まあ、僕も思春も、各々他の江賊のお頭だったさ。そこで、こいつはあの時でも江賊団狩りをしていたから俺たちの船を見た途端、そのまま交戦に入った。そこで俺が負けて、こいつの手下に入ったというわけだ」
「……負けたのか?」
「そうだが…何だ?」
「いや、なんというか……」
こう言っちゃなんだが…
「今じゃそうでもないと思うが?」
「…何?」
「………くくっ」
凌操は何も言わずに声を殺して笑ったが、甘寧はまた刀が僕の頸まで届いていた。
「貴様、そのような事を言ったというのは、覚悟はできているだろうな」
「事実を言ったまでだ」
「私の力は頭として不足だと言っているのか?」
「まさか、聞いた者を黄泉路へ誘うという鈴の音の甘興覇を、そう簡単に貶めるなどできない」
「なら、何だ?」
「単に、力に置いては今の甘寧を見るに、凌操に勝てそうには思えないということだ」
前港でも二人はほぼ互角な動きを見せてるように見えたが、実際はちょっと違う。
甘寧は最初に僕を攻撃した時とほぼ同じ殺気を凌操にぶつけたが、凌操は彼女の攻撃を軽く受け流した。
甘寧も凌操も本気ではなかったということは明らかだけど、その意味は違っている。
凌操は甘寧の動きを全て見極めていたのだ。
素の力競争では紙一枚差で甘寧に利があるとしても、凌操はその気になれば甘寧ともっと馴れ馴れしい戦いが出来る。
いくら強い相手でも、相手がどう動くかをわかれば対応は難しくない。
冷静に見えるもいつも力ずくでものを進める甘寧に比べて、凌操は見た目豪快そうでもそう簡単に前に出て暴れる素じゃない。
その点から見ると、相手をより良く知っているのは凌操というわけだ。
「しかも、その性格じゃ部下たちとより親しいのも凌操の方であろう」
「……ぐぬぬ…」
「ぷははーっ!!」
「っ!笑うな、牙莎!」
「いや、すまん、つい……ククク」
笑いを抑えていた凌操は、挙句には我慢ができなかったのか、「クハハハー」と笑い出した。
甘寧が刀を握っている手が震えていたが、もう二度も刀を見せている現状で、また部下にそんなことをしては、さすがに頭として示しというものがつかない。
「もういい!」
「あ」
甘寧は笑う凌操を見て握っていた剣も降ろして僕たちを後にした。
「…やりすぎたか」
「いや、皆思春には目がないからな。そんなことを言うほど度胸のある奴が居なかっただけだ」
いつの間にか笑いを止めて船に用意できてる部屋の中に向かう甘寧を見ながら凌操が言った。
「北郷と言ったな、お前が言ったことの一つ、訂正させてもらおう」
「?」
「思春はここの皆に慕われている、もちろん俺にもだ。そこについては誰も異議は言えない」
「……そのようだな」
凌操の目は、さっきまで面白そうに笑っていた人の目とは思えないほど怖くなっていた。
その目は自分の大将を侮辱した者への殺気を感じさせていた。
「訂正しよう。甘寧は良いお頭のようだな。それもいい右腕を持ってこそだと思うが」
「ふん!俺はあいつに拾われた者にすぎねーさ。あいつに会ってなければ、俺は今でも俺たちが追ってる連中と同じことを繰り返す輩だった」
「……彼女の志が気に入ったのか?」
「少なくその日のことしか考えてない頃よりはマシだ。だが…あいつもまだまだ見る目が狭いというのは確かだな」
「ほぉ?」
凌操の言う言葉に僕はちょっと関心した。
確かに凌操の方が強いとは思っていたが、お頭の将来を心配してくれる部下なんて、なかなかないだろう。
「あいつは僕が見てる限り、江東の虎を殺したという罪悪感と、それを償うためだけにここまで来た。だが、この仕事は終わったらそれももうお終いになるだろう」
「長江から離れて孫呉に行くと?」
「決まってるだろ。思春の夢はまさにそれだ。孫呉に自分の力を振り絞る。それだけを見ている奴だ…だが、だからこそ時々他に大事なものが見えない時もある」
「例えば……?」
「全てだ。部下や、自分自身に対しても…孫呉のこと以外には考えることができない奴だ。奴の何もかもが孫呉と繋がっている」
「………」
「俺にはわからねー。孫呉はあいつが全てを尽くしていいほど大した輩なのか?あいつは一度孫呉の主を殺すに関わった奴だ。あの姫を疑うわけじゃないが、裏であいつを殺そうとする輩も多いだろう」
「その時は、凌操が助けるのだろ?」
「何?」
「…………」
「く、くはははー!!」
僕の答えに、凌操はまた大きく笑い出した。
「違いねー!お前かなりいい目を持ってるじゃねーか。腕もかなり立つようだし。俺たちのところに入らないか?」
「断ってもらうさ。僕は旅の途中だったんだ。まだ始まったばかりの……」
「……おい、捕まってるという奴だ。どんな奴なんだ?彼女か?」
「そうだと言ったら?」
「いや、お前ほどの奴の彼女なら、きっと強い奴だろうと思ってな」
「………ふっ、そうだな。お前よりはずっと強い奴だ」
「おお!そいつは楽しみだな」
まぁ、強い娘だよ。
少なくも、僕を愛してくれるって言ってくれるほどの強さは持ってる。
・・・
・・
・
拠点 蓮華 孫呉の姫
コンコン
「誰?
「一刀だ。入ってもいいか?」
「一刀?ええ、いいわよ」
甘寧が孫権のために用意した部屋に僕は入った。
受信機は凌操に見ているように頼んでおいた。
「…周泰は居ないのか?」
「明命はあなたのところの娘と一緖に居るわよ」
「倉たちとか……」
「『たち』?」
「………二人居た?」
「へ?私、一人しか見てないけど…」
あ、そうですか。それはとても……正常です。大丈夫です。
「何?どうしてそんな不憫な人を見ているような目をするのよ。ホントに見えなかったのよ?」
「ああ、そうだな。普通は真理ちゃんのことは見えないさ」
「……その子って、もしかして幽霊だったりとか……」
「正真正銘生きている人間だ。………自身はないが」
「そこをはっきりして頂戴」
まぁ、周泰は一度真理ちゃんのことを気づいた後はちゃんと見えてるみたいだから、多分大丈夫だろう。
「ところで、私に何か用があるの?」
「…実は、孫策についてもうちょっと詳しく教えて欲しいのだが…」
「……そうね、私もあなたとお姉さまの話はもう少し詳しく聞きたいわ…取り敢えず、座って頂戴」
孫権とはまず協力することになったが、それが孫策への好意につながるはずもなく、せめて孫権からもう少し孫策について話を聞かせてもらうべくここに来たわけだ。
「確か、あなたが姉さまにあったのって、姉さまの部隊が民間の人たちを襲った時って言ったわね。だけど、私としては『いくら』お姉さまだとしてもそんなことをするとは思えないわ。何か裏があるのでしょう?」
「……彼らは元々黄巾党の残党だった」
「!」
「長安辺りで黄巾党の魁首であった張角の本隊所属の将だった裴元紹という男が居た。裴元紹はあそこの奴らの隊長として、倉の父親のような存在だった」
「どうして、長安からここ荊州まで?」
「…長安で董卓軍の呂布に張角本隊が壊滅され、裴元紹は残ったわずかな部下たちと共に逃げた。そして、張角たちが行方不明になったところ、裴元紹は無為感を感じて、盗賊をやめて自分たちのことを知らないここ荊州まで来て、畑を耕しながら生きてきた。そんな時問題が起こった」
「何があったの?」
「裴元紹の命に逆らって近くの街を襲った一部の輩がいた。僕と街人たちによって奴らは捕縛され、後で連中のことに気づいた裴元紹は部下たちを連れて討伐に来た時は既に状況は終わっていた。そして、不良な部下たちを連れて行く時に僕も彼に付いていった。そこで、彼らが盗賊なんてとっくの昔からやめて、普通の民のような生活を夢見ているということがわかった。だから僕は彼らのことを助けたいと思って、彼らが襲った街の長老たちと話して、裴元紹たちが街で自分たちが養った作物を商売できるように商談を開けた」
「……だけど、ほんとはそれが嘘だったというわけね」
「………」
孫権の言う通り、結果的には街の人たちが裏切り、そこに居た孫策の軍に裴元紹たちのところを盗賊の群れだと言いチクった。
山は燃え上がり、倉の除いた裴元紹との部下たちは一人たりとも生き残れなかった。
「だけど、街としては当然な判断ではないかしら。一度襲われたこともあるというのに、それから私たちは盗賊ではないと言ったところで、信じられるものでもないでしょ?」
「彼らの身分については倉と、荊州の水鏡先生によって保証されていた」
「!水鏡先生なら……あの、荊州を一時麻痺させたという…」
「ああ、真理ちゃんと倉、そして囚われているあの娘の三人は皆、水鏡先生の私塾の娘たちだ。特に囚われている娘と倉は、直接あの戦場に関わっている。自分たちの後輩になる娘たちを危険な目に合わせたことに憤怒した水鏡先生の門下生たちが、その根源を作った荊州の劉表に対し異議と唱え、仕事を放棄したのが荊州の政治麻痺事件の始まりだ」
「…だけど、それでも街の長老なら自分たちの村を安全にする義務があるわ」
孫権の言う通り、小さな危険でも、いや、相手が盗賊だと言うのならそれは決して小さな危機ではない。その点から見ると、裴元紹たちを排除しようとしたのはただの自己防御に見える。
だけど、
「長老たちは裴元紹たちが耕した畑に目があった」
「……え?」
「裴元紹たちの汗を吸った畑はとても肥沃な土地で、長老たちはその畑を自分たちのものにしたくて彼らを殺そうと画策したんだ」
「…………ぁ」
孫権は呆気ない顔で声にならぬ唸り声を出しながら目を瞑った。
「どっちが盗賊なのかもわからないわ」
「でも結果、裴元紹たちが居た山は燃えて誰も立ち入りできない場所になった」
実際には僕が蘇る時の余波で山の植林が鬱蒼になりすぎて中に入れなくなったのだが……さすがにお前の姉に一度死にましたとは言えない。
「それで、あなたたちは彼らを殺した私たちに恨みを持っているというの?」
「そうなるな……」
「……だけど、その話だとお姉さまだって利用されただけでしょ?」
「お前はお前の姉がほんとに最後まで真実を知らずに全部殺しただだろうと思ってるのか?」
「……」
「山賊の群れだと言って攻めてみたら、奇襲だったとはいえまともな迎撃もしないところか、捕らえた連中はろくな武器も持っておらず。何かおかしいと思った時には既にほぼ殲滅が終わっていた。そんなところで、僕は孫策に、彼らが山賊ではないと言った。その時あいつがなんと言ったかわかるか?」
「………」
「『なんとでも言いなさい。私は人たちを苦しめる『獣』どもを殺していただけよ』と……」
あいつは賊をいう群れを人として見ていなかった。
だから殺すことに迷いがなかった。人を人として見ようとしなかった。
この乱世にて、つづく官吏の悪政と不作の中で民には賊になった者とこれから賊になる二組でしかないのだ。
なのに、彼らを救うこともできなかった分際で、何の資格を持って孫策は彼らを人間ではないと定め、殺した。それが正しいことだと。それが正義だと。
「百合さんのことを知っているか?」
「百合って、諸葛子瑜のあの百合さんのことなの?」
「ああ、今は水鏡先生の塾に戻っている」
「!!」
「聞く話では、魯粛も孫策軍から離れて徐州に戻ったそうだ」
「………あの二人は冥琳…周瑜が連れて来た人たちで、彼女と一緖に孫家の新たな時代を作る人たちだと、母様は言っていたわ」
「だが、そんな二人が孫家から離れた。それがただ孫呉が崩れたせいではない。お前たちの母、孫堅には従えても、孫策には仕えられないと言っているのだ」
「……姉さま」
孫権は静かに拳を握りしめた。
「それでも…」
だけど、
「それでも、今の孫呉にとって姉さまは必要な人よ。あんなお姉さまでなければ、孫家を基礎から建て直すことなんてできないわ」
だからと言って姉に対し嫌悪を持つほど、血の濃さは甘いものでもない
「孫策の勇敢さを尊敬する故に、例え他の重臣たちから嫌われようが、孫家を導くのは孫策だと」
「少なくも、今の孫家に母様を代わる人はお姉さましかいない。私はまだ戦一つもしたことない未熟な身。姉さまと孫呉の夢を叶うために頑張ることは出来る。だけど、自分でそれをやれと言ったら、できる自身はない…」
「………」
百合さんは孫権のことを高く評価していた。
もし、もう少し孫堅が長生きして、普通に孫権が孫呉の仕事に入ることになっていたら、きっと百合さんも孫家を見捨てることはしなかっただろう。
今孫家を復興させようとしている孫策の力は自分自身から来ているものはあまり少ない。
勇敢さ、経験から来る英雄としての能力はある。だけど、人材は孫家に仕えるものばかり、自分のために働く者はせいぜい周瑜ぐらいだろう。証拠として最初から孫家の者でなかった百合さんや魯粛は孫堅のない孫家を見捨てることに迷いがなかった。
孫策の存在が、孫家特有の閉鎖性をもっと強くしているのかもしれない。
孫家以外の者たちが邪魔になるのであれば、孫家はそれを葬ることを戸惑わない。
そう言いながら『私たちの願望のためには仕方ないことだ』と、『乱世を甘るみるな』などと言い出すだろう。
孫家はあのまま滅びてしまった方が良かったのかもしれない。
………いや、だけど、
「一刀?」
「……お前がもし孫策の立場だったら、どうしていた?」
「え?」
「あの日、あの場で自分が殺した山賊たちが、実は街人たちの強欲さに嵌められただけの被害者だったとしたら……」
それでも昔の罪のある彼らを裁くことを正義という名の盾として使うか?
それとも、集団の名を貶めながらも自分が正しいと思う道を選ぶか。
「……私は姉さまみたいに強くはない」
しばらく悩んだ孫権はそう答えた。
「自分が間違っていると分かってることを、私たちの名誉を守るために突っ切ることなんて、頭だけ隠してなくなったようにしてるのと同じよ」
「………」
「ただ、死んだ人を生かすことなどできないし、嵌めた街人たちを懲らしめることも不可能。仮にあの場で戦いを止めたとしても、私たちの過ちを埋めることはできないでしょうね」
「…その心がけでも十分だ」
孫策の場合、正史だと孫呉の基礎を建ててもう直病で死ぬ。
その後、孫権は長い間孫呉を守り続ける王になるだろう。
この外史ではどうなるか分からない。
ただ、もし正史のようになるとしたら、孫権の方はまだ期待していいのかもしれない。
「あ、そう、そう、孫権。一ついい忘れたことがあったのだが…」
「え?な、何?」
「僕は大陸出身じゃなくて真名はないが、僕が住んでいた国では普段相手のことを姓で呼ぶことが慣例だ」
「……へ?」
「名前は親しい人間、この世界の真名に当たったりする」
「……へ?……えぇ!?」
「何か素で呼ばれていたので黙っていたけど」
「どうして先に言ってくれないのよ!」
・・・
・・
・
その後蓮華さんに無事真名を預かって頂きました。(かなり卑怯なものの嘘は言っていません)
拠点 明命 だって猫が好きなんですもん
「シクシク…」
「あまり取れないですね……」
「……しぶとい」
がらっ
「倉、真理ちゃん」
「あ、北郷さん」
「………一刀」
「……何してるんだ?」
部屋に入ったら、倉と真理ちゃんが間に周泰を置いて何かをやっていた。
「墨を消してあげようと思ったんですけど、ダメです。全然消せません」
「孫権から受けた罰だろ?勝手に消していいのか?」
「それはまたその時です。孫権さんもついカッとなってしただけですし、きっと許してくれると思います」
まぁ、その点では同意なのだけどな……
「お湯でなんとか浮かせて消しとろうとしていますけど、特殊な墨のようで消し取れません」
「ちょっと待って、お湯って、どこからそんなものを……?」
「水を倉ちゃんが沸かせてくれました」
「……え?」
倉さん?
「……こう」
チィィーーー
「……( ゚д゚)ポカーン」
水が入っていた盥を倉が掴むと咄嗟に盥の水が沸きあがって泡立っていた。
「………どうしたの?」
「い、いや…」
「大丈夫です、北郷さん。私も最初は驚いてました」
その割には平常心を保っているように見受けられるが……。
「……一年間練習したから、コレぐらい出来る」
「そ、そうなんだ。えらいな、倉は……」
「……えっへん」
何か胸張ってるし……
「ところで、周泰」
「シクシク……はい」
「実は蓮華と話して来たのだが…ああ、真名をあずかってもらったけど大丈夫か?」
「てわわ?北郷さんいつの間に……」
「……」
「な、何だ、倉、その目は?」
「……後で雛里ちゃんに言いつける」
何、その言い方!?
「うん、…というわけで、蓮華と話して来たんだが、さすがに墨はやりすぎた感がするから消してもいいんだってさ」
「………ほんとですか?」
「ああ」
「でも、どうやって消せばいいんですか?」
「これを使ったら良いってさ?」
僕は蓮華からもらってきた瓶を取り出しながら言った。
ちょっと匂いで確認してみたところ、アセトンみたいなものらしい。
「これを布に付けて擦ったら直ぐに取れるってさ」
「あ、はい」
真理ちゃんに瓶を渡したら、真理ちゃんはお湯で濡れていた布を絞ってからあの瓶の内容物を付けて、周泰の額と両腕に擦った。
すると、あっという間に墨は消し去った。
「てわわ、できました」
「……良かったね」
「あぅあぅ……」
だけど、落書きがとれたところ、周泰はあまり喜んでは居ない様子だった。
「どうした、周泰」
「……蓮華さまの言う通りなのかもしれません」
「?」
「私って、護衛武者なのに、直ぐに蓮華さまのこと見失っちゃいますし、猫を見かけたら任務なんて忘れて直ぐに追いかけますし、今日だって御猫様を見つけて街中を回っていたら、蓮華さまがあんな目にあっていて……」
なるほどな……
でも、まぁ、本当にそれは護衛武将としては酷い様だ。
あの悪来典韋が呂布軍に追われている曹操をほったらかしにして猫とじゃれあっている図を考えてみたら、……いや、おかしいだろ、それ。
そうでなくても、周泰と言ったら孫権を助けるために背中に酷い傷を負うなど、正史で周泰と言ったら自分の身のことを考えず孫権を救った英雄の一人だ。
「それが、たかが猫に釣られて主をほったらかしにする様じゃな……」
「うっ!<<ビクッ>>」
つい口にだして言ってだしてしまったその言葉に、周泰の目は更に子猫が泣いているような瞳になってきた。
「……北郷さん」
「……一刀」
「…いや、正直すまん。口が先走った」
「いえ、一刀様の言う通りです」
と、今度は周泰がご自分から自身を責め始めた。
「私、昔から御猫様のことが大好きで御猫様を見ると他のことは考えられなくなってしまうのです」
「猫にさまをつける時点で重症だということは分かった」
「だけど!仕方ないんです!だって、御猫様がかわいいのがいけないんです!あのもふもふした毛を触ることが出来るのなら、もう他のことはどうでもいい、って思ってしまうのです」
危ないことをいうな、この護衛武将は。
「だけど、今回蓮華さまに本気で怒られて、このままでは行けないということがわかりました」
「で、猫を切るの?」
「それは無理です!」
もうそこからダメだろ。
「なので、どうか皆さんのご知恵を借りたいと思います」
「てわわ?!」
「諸葛均さん!御猫様と蓮華さま、両方を両立させるにはどうすればいいのでしょうか!」
「てわわ、えぇっと、ええっとですね……」
もうだめだ、この護衛武者、早くなんとかしないと
※この周泰はまだ幼いので、皆さん勘弁してあげましょう。
・・・
・・
・
30分ぐらい後
「もういっそ、蓮華さまが御猫様になればいいと思います!」
「周泰さん落ち着いてください!人は猫にはなれません!」
「……出来るよ」
「「え?!」」
「……蛇から人にもなれるから、きっと大丈夫」
「何の話なのか良く分からないがやめといた方がいいぞ、倉」
「倉さん、その話kwskお願いします!」
「……だから」
「真面目に聞くな、おい!」
※この周泰はまだ幼いので、皆さん勘弁してあげましょう。
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真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。
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