■少女■
「キミのその願いを、叶えてあげる事が出来るよ。
だから、ボクと契約して、魔法少女になってよ」
私は、自分が何者で何になりたいか、なんてまったく判っていなかった。
だから、願い事なんて本当にその時聞かれるまでまったくと言っていいほど無かった。
でも、今なら答える事が出来る。
目の前に横たわっているのは小さな命。
動かなくなった手足に、地面に広がる赤い影。
一瞬だけ私は目を背けた。
そんな自分に嫌気が差して、
震える手で今にも消えそうな命を抱きしめる。
私は目の前の命を救いたい。
無為に失われる命を救いたい。
理不尽に奪われる命を救いたい。
死にたくないのに死ななければいけない人を救いたい。
生きている事が素晴らしいって、
生きている事が幸せなことだって、
そうやって、生きることを目いっぱい楽しんで
笑顔でいて欲しい。
みんな、みんな笑顔でいて欲しい。
願い事は決まっている。
たくさんの人を救いたい。
たくさんの命を救いたい。
だから、私は、目の前の小さな命から救おうって決めたの。
■魔法少女■
魔法少女は魔女になる存在なんだって、他の街から来た魔法少女が言っていた。
その時は信じられなかった。だって魔法少女は希望を持ってなるものだったから。
友達が、死んだの。
ずっとずっと友達で、同じ魔法少女になった友達が死んだの。
私の目の前でソウルジェムを濁らせて、
私の目の前でグリーフシードから魔女を産んで、
魔女として死んだの。
彼女を示すものは、一つしか残っていない。
魔女を産んだグリーフシード。
魔女は憎しみを生み、人々を苦しめる存在だと聞いた。
一緒に街を護ろうって、人を護ろうって、命を護ろうって
そう約束したのに、彼女は魔女になって死んだのだ。
哀しくて悲しくて、涙が溢れた。
でも私はこの街を護らなきゃ。命を護らなきゃ。
護るために魔法少女になったのだから。
死んだら街を護れない。魔女になったら命を護れない。
ワルプルギスの夜が来た。
私は街を護れなかった。私は命を護れなかった。
…ねぇ、街を護れなかった私は、誰に護ってもらえばいいんだろう。
命を救えなかった私は、誰に救ってもらえば良いんだろう。
こんなにボロボロになって、命を懸けて戦って、
私は誰に助けてもらえるのだろう。
ソウルジェムはもう真っ黒で、でも魔女になんかなりたくない。
グリーフシードが一つだけ残っている。
でも、コレで私のソウルジェムを浄化して何になるのだろう。
隣の魔法少女が、もう駄目だと囁く。
同じように魔力がなくなり、ソウルジェムが濁り、魔女になる、と。
ねぇ、私を救ってよ。私を護ってよ。
私だって救われたい。私だって助けて欲しい。
"みんな"を救いたいんだから、その"みんな"の中に私がいたっていいでしょう?
ごめんね。こんなこと頼んだら、きっと貴方は困ると思う。
貴方が救われる道がなくなってしまうかも知れない。
でも、ねぇ?私を助けてくれないかな?
わたしを、助けてくれるでしょ?
ねぇ?
ねぇ?
■魔女■
くだけちった こころのなかで わたしは おもった
わたしは すべてを すくいたいの
このまちが すきなの だいすきなの
このまちに いきているもの すべてを すくいたいの
わたしのこころに あめがふる
わたしだけの たからもの わたしだけに ふる あめ
おおきな おおきな なみだあめ
ごめんね
わたしは あなたを くるしませるって わかってる
かなしませるって わかってる
あなたを すくって あげられない
ふがいない わたしを ゆるして
いつかきっと すくって あげるから
わたしの さいこうの…
後書きです。
魔力の枯渇で濁った場合、逆に精神を蝕む事を前提に組み立てました。
多分「少女」の部分から、既に誰かはお分かりかと思います。そして3週目です。
「ごめんね」と言ったまどかさんが、自分の頼んでる内容がどれだけ酷い事か判っていたと思う。
それでも頼んだのは、ソウルジェムが濁っていたからでもあったし、本心でもあったと思う。
…ほむらちゃんの魂は、救われたのかなぁ。
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魔女の生前と経緯について妄想突発シリーズその2