真・恋姫†無双~赤龍伝~第80話「苦肉の策」
―――赤壁・呉蜀陣営―――
赤斗「おはよう。孔明ちゃん」
諸葛亮「おはようございます。どうしたんですか? 目の下にくまが出来ていますよ」
赤斗「ああ、これ。夜遅くまで孫策が寝かせてくれなかったんだよ」
諸葛亮「はわわ!」
諸葛亮の顔が赤く染まる。
赤斗「ご、誤解しないでよ! ずっと質問攻めにあってただけだよ」
赤斗は夜遅くまで、雪蓮から冥琳との事を質問され続けた事を思い出す。
諸葛亮「へっ、そうなんですか?」
赤斗「そうなんです! それより緊急招集って何かあったのかな?」
諸葛亮「とにかく行ってみましょう」
赤斗と諸葛亮は軍議が開かれる天幕へと急いだ。
天幕の中には、呉軍と蜀軍の主だった面々が揃っていた。
冥琳「まずは皆に報告だ。不足していた矢が十万本集まり、そして蔡冒と張允が曹操に殺された。これで曹操の水軍の力を、大きく削ぐ事ができた」
明命「それじゃ、いよいよですね」
冥琳「いや。それでも曹操の勢力は我らの数倍。決定的な策が必要なのだが……今の私たちにはそれがない」
諸葛亮「そうですね……」
劉備「…………」
孫策「…………」
祭「何を迷っておる! 乾坤一擲の気概と共に曹操の軍を粉砕してやれば良いではないか!」
赤斗「祭さん。でも、それでは勝てませんよ。やはり策が必要ですよ」
祭「黙れ!……良いか? 戦というものは頭でやるもんではない。心と身体でやるもんよ」
赤斗「…………」
祭「それにな。戦は我ら武官の仕事じゃ。頭でっかちの文官どもが、ゴチョゴチャと御託を並べて進むもんでもないわい」
冥琳「……それはどういう意味だ?」
蓮華「冥琳、怒るな。……祭とて本気で言っているワケでは無い」
祭「いいや、本気さね。……曹操との大戦を前に、策が何だ、作戦がどうだ、ピーチクパーチク言葉遊びをしておるひよっこ共に、いい加減腹がたっとる」
赤斗「祭さん?」
祭「貴様ら、戦を盤上の遊戯か何かと間違えとりゃせんか? 戦とはなぁ! 己の力を最大限に発揮して、敵を殺戮することじゃ!」
赤斗(これって、もしかして……)
祭「主の命令一つで敵と差し違えて死ぬ! そういう気迫を胸に秘めてぶつかり合うのが戦じゃろうに! 策だ何だと、小手先の事ばかりに気を取られおって……。孫呉はいつから惰弱な文官風情に仕切られるようになったんじゃ!?」
冥琳「控えろ黄蓋! たかが武官風情が、両軍の軍師に対してそのような罵声を浴びせるなど無礼千万! ……軍規に照らし合わせ、黄蓋を死刑とする」
雪蓮「冥琳!?」
蓮華「何を言っているのっ!? そんな事、許すわけないでしょう!」
祭「はっ! 儂を処刑するなど、出来もせん事を言って見せて、主君に取り入るか。浅はかなことよの、周公謹!」
冥琳「黙れ黄蓋! 私は呉の大都督であるぞ!」
祭「だからなんじゃ! 戦う事も出来ん臆病者が大都督などと、肩腹が痛すぎて笑ってしまうわい!」
冥琳「そこに直れ! 成敗してやる!」
雪蓮「め、冥琳、ちょっと落ち着きなさい!」
蓮華「祭もあまり挑発するな!」
祭「はんっ! 挑発などはしとらん。儂は事実を言っとるまでだ!」
冥琳「何だと! もう許さんぞ!」
赤斗「待て冥琳! 今、祭さんを殺せばこちらの戦力が大きく落ちるぞ。蔡冒たちを始末できたのに、それでは意味がなくなるよ」
蓮華「そうだ! 祭を死罪にするなど、私が許さん!」
冥琳「では蓮華様に罰して頂きましょう。……どのような罰を与えますか?」
祭「はっ! 儂に罰を与えるのが怖くて、主君を盾にするとは、卑怯この上ないのぉ、公謹!」
冥琳「何だとぉ!」
雪蓮「待ちなさい! 冥琳ここは蓮華に任せて下がりなさい!」
冥琳「……は」
雪蓮「蓮華」
蓮華「はい。……状況はどうあれ、呉の大都督に対して暴言を吐いた祭の罪は罰する。……良いな、祭」
祭「ふんっ……」
蓮華「黄蓋を鞭打ちの形に処す! 引っ立てぃ!」
明命「は、はいっ!」
祭は明命に連れられ、軍議から連れ出されていった。
関羽「……周瑜。はっきりと言わせてもらおう。今の貴様らと同盟を組む事に、我らは危惧を抱いている」
張飛「戦いの前なのに、ああいうのは無いのだ」
趙雲「ああ。……兵の士気を削ぐ事甚だしいぞ」
冥琳「……孔明。貴様も同じ意見か?」
諸葛亮「言葉を返さなくても、周瑜さんは分かってくれていると思います……」
冥琳「そうか。……関羽よ。これは呉内部の事。同盟を組んだとはいえ、内部の人事について口を出さないで欲しいな」
関羽「何っ!?」
赤斗「関羽さん。今は僕たちを信じて下さい」
赤斗が頭を下げる。そして、諸葛亮を見た。
諸葛亮「…………ぁ」
劉備「……分かりました。今は静観しておきますね」
赤斗「ありがとうございます。……じゃあ、孔明ちゃん。あとはよろしくね」
諸葛亮「はいっ! ちゃんと説明しておきますから、安心しておいてくださいね」
赤斗「じゃあ、とりあえず解散かな?」
孫策「そうね。劉備。それで良いわよね?」
劉備「はい。私たちは構いません。……じゃあ私たちは天幕に戻りますね」
そんな言葉と共に、ペコっと頭を下げた劉備は、仲間たちと共に自分の天幕へと戻っていった。
蓮華「冥琳っ! この大切な時に、先程の振る舞いはどういう事だ! お前らしくもない!」
冥琳「……今はまだ、ご説明すべきではないかと」
蓮華「なにっ!」
冥琳「……私はこれから、為すべき事を為さなければなりません。お先に天幕に下がらせて頂きます」
蓮華「な……」
冥琳「では……」
冥琳も一足先に天幕へと戻っていった。
蓮華「……はぁ」
雪蓮「大丈夫よ。冥琳や祭を信じなさい」
蓮華「姉様は何か知っているんですか!?」
雪蓮「ううん、全然」
蓮華「なっ……」
赤斗「あの二人は絶対に呉を裏切らないという事さ」
蓮華「……何か知ってるの?」
赤斗「………まぁね」
どこに間諜の耳があるか分からないので簡単に答える。
赤斗(天の世界でも有名な苦肉の策だなんて、今は言えないな)
蓮華「信じて良いんだな?」
赤斗「うん」
蓮華「……分かった。なら信じる……」
赤斗「……ありがとう。…………ん?」
雪蓮「赤斗?」
蓮華「どうかしたの?」
赤斗「いや、何でもないよ。……気のせいだった」
呉の兵士の姿に扮した曹操の間諜が二人、赤斗たちの話に聞き耳を立てていた。
間諜「ひとまず戻ろうぜ」
一人が小声で隣の男に話しかける。
しかし、もう男は無言のまま答えない。
間諜「ちっ、俺は行くぞ」
そう言うと、間諜は一人で行ってしまった。
赤斗「……君は曹操とこに報告に戻らないの?」
赤斗が姿を現す。
しかし、男は驚いた様子はない。
赤斗「この気配を消している感じ………洛陽でも覚えがあるな。袁紹に玉璽について密告したのも君だろ?」
?「ならば、どうする?」
赤斗「この声! お前……」
この声に赤斗は聞き覚えがあった。
忘れもしない声だった。
赤斗「……玄武」
声の主の名前を口に出す。
玄武「ひさしぶりだな。風見赤斗」
赤斗「今は曹操軍の間諜をしているのか?」
玄武「まさか……」
赤斗「お前は……いや、司馬懿は何を企んでいる?」
玄武「言うと思うか」
赤斗「否定はしないか。……やっぱり、司馬懿の部下だったんだ。……教えてくれて、ありがとう」
玄武「貴様っ!」
赤斗と玄武の間に緊張が走る。
赤斗「場所を変えようか」
玄武「良いだろう。好きな死に場所を選べ」
赤斗は玄武と一緒に、陣営の外へと出ていった。
つづく
~あとがき~
呂です。読んでくださって、ありがとうございます。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
身長168㌢。体重58㌔。年齢17歳。黒髪黒眼。(右目は輝く金色)
放課後に道場で古武術の達人である先生に稽古をつけてもらうのが日課だったが、ある日道場で黒尽くめの男に襲撃される。
その際、赤い光に包まれて恋姫の世界に飛ばされる。
死にかけていた所を、火蓮によって保護され“江東の赤龍”という異名を付けられる。
古武術 無双無限流を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
無双無限流には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”“狂神”などがある。
奥義の同時発動は可能だが、奥義単体の発動以上に身体に負担がかかる。
現在、奥義“狂神”を発動させて、龍脈の気が流れ込んだ影響で右目は金色に変化している。
好きなもの:肉まん
苦手なもの:海(泳げないから)
能力値:統率3・武力4・知力4・政治2・魅力4
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
孫尚香(小蓮)には非常に甘い。周りの人間が呆れるほどに甘い。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
好きなもの:娘たち(特に小蓮♪)と酒
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:風切羽(かざきりばね)……火蓮から受け取った護身用の短刀。諸葛瑾(藍里)の実力が低いので、あまり役に立っていない。
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
一時は、自分たちとは違う考え方や知識を持つ赤斗に恐怖心を持っていた。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、諸葛亮(朱里)には僅かに及ばない。
苦手なもの:酒(飲めるが、酔うと周りの人間にからむようになる)
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
オリジナルキャラクター④『太史慈』
姓 :太史
名 :慈
字 :子義
真名:嶺上(りんしゃん)
武器:雷電(らいでん)……二本の小型の戟。
非常に勇猛かつ、約束に律儀な武将。銀髪レゲエの女性。
孫策(雪蓮)と一騎打ちして引き分けたことがある。
それ以来、孫策の喧嘩友達になっており、よく喧嘩をしている。
孫尚香(小蓮)や諸葛瑾(藍里)と仲が良く、孫尚香(小蓮)の護衛役をしている事が多い。
子供好きで、よく街の子供たちと遊んでいる。
弓の名手でもあり、その腕は百発百中。
好きなもの:子供
能力値:統率4・武力4・知力3・政治2・魅力3
オリジナルキャラクター⑤『司馬懿』
姓 :司馬
名 :懿
字 :仲達
真名:不明
武器:不明
黒尽くめの衣装を身に纏った、曹操軍の軍師。
曹操軍に属しているが、曹操からの信頼はないといっても良い。
色々と裏で暗躍しており、虎牢関では張遼を捕え、術により自分の傀儡にしている。
今は、魏から姿を消している。
能力値:統率5・武力?・知力5・政治5・魅力?
オリジナルキャラクター⑥『玄武(げんぶ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:魏軍正式採用剣……魏軍に配備されている剣。
司馬懿の部下。
普段は何の変哲もない魏軍の鎧を身に纏い、普通の兵士にしか見えない。
しかし、眼の奥からは異質な気を醸し出している。
鎧の下には黒の衣を纏っており、素顔は司馬懿に似ている。
虎牢関では、鴉と一緒に張遼を捕えた。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力2
オリジナルキャラクター⑦『鴉(からす)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:爆閃(ばくせん)……司馬懿から受け取った回転式拳銃。
司馬懿の部下。
性格は軽く、いつも人を馬鹿にしているような態度をとる。
司馬懿と同じ黒い衣装だが、こちらの方がもっと動きやすい軽装な格好をしている。
寿春城では、孫堅(火蓮)を暗殺しようとした。
能力値:統率2・武力4・知力2・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑧『氷雨(ひさめ)』
姓 :不明
名 :不明
字 :不明
真名:不明
武器:氷影(ひえい)……氷のように透き通った刃を持つ槍。
司馬懿の部下。
青い忍者服を着た長い白髪の女。
背中には“氷影”を携えている。戦闘時には全身からは氷のように冷たい殺気が滲み出す。
洛陽で董卓(月)と賈駆(詠)を暗殺しようとした所を、赤斗と甘寧(思春)に妨害される。
官渡の戦いでは、呂布の部下を連れ去り、それを止めようとした陳宮を殺害する。
能力値:統率2・武力4・知力3・政治1・魅力3
オリジナルキャラクター⑨『宮本虎徹』
姓 :宮本(みやもと)
名 :虎徹(こてつ)
字 :なし
真名:なし
武器:虎徹……江戸時代の刀工が作った刀。
赤斗の古武術の師匠。
年齢は50歳。実年齢よりも、肉体年齢は若い。
赤斗と一緒に、恋姫の世界に飛ばされたと思われる。
最初は河北に居て、それからは用心棒をしながら、色々と辺りを転々としている。
赤斗の修行をやり直した後、天の世界に戻ったようだが、詳細は不明。
赤斗曰く、『無双無限流の妙技を見せてやるっ!』が口癖で、その実力は呂布(恋)以上。
能力値:統率?・武力6・知力5・政治?・魅力?
※能力値は「5」が最高だが、呂布の武力と劉備の魅力は「6」で規格外。
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赤壁編です。
この作品は、基本的に呉√にそっては行きますが、他√に
脱線することもあります。また、主人公も含めてオリジナルキャラクターが出てきます。
未熟なため文章におかしな部分が多々あるとは思いますが、長~~い目で見てくださると助かります。