No.267972

真・恋姫無双二次創作 ~盲目の御遣い~廿肆話『岐路』

投稿61作品目になりました。
ものっそい遅くなってしまった……
TINAMIリニューアルという事で、書き方も色々試してみた結果がこちらですが、いかがでせう?
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では、どうぞ。

続きを表示

2011-08-10 04:45:11 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:14036   閲覧ユーザー数:11008

虎牢関の戦いもまた、連合軍の勝利で幕を閉じた。

ただし『結果的に』と言わざるを得ず、快勝とは程遠い結果となったが。

特に大きな被害を受けたのは両袁家。

『前門の虎、後門の狼』それぞれを真正面から受け止める形となり、袁紹軍に至っては連合軍中最大であった兵力の実に半数近くを、僅か一日にして、僅か一人を相手に失う羽目となった。

正に、一騎当千。

その力、破竹の如し。

他の諸侯にとっては傍迷惑に他ならなかっただろうが、呂布軍を受け流せたのはその膨大な肉の壁があればこその芸当。

そして、その好機を見逃す曹操ではない。

位置関係からして、本来であれば呂布軍との衝突の可能性が濃厚であったのは、袁紹軍と共に前曲にいた曹操軍であった。

しかし、呂布軍は袁紹軍へと一直線、受け流した先もまた劉備、孫策軍。

最大の懸念であった『飛将軍』との正面衝突を免れ、目の前にはがら空きの虎牢関。

戦局を崩さず、しかし残存兵力の掃討は可能な程度の部隊を即座に編成、関へと仕掛けた。

結果は―――――言うまでもないだろう。

苦渋にも賈駆は撤退を強いられ、連合軍総大将たる袁紹の首をとる事も叶わず、正に骨折り損となってしまったのである。

 

しかし、それは全くの徒労に終わったとも言えなかった。

 

遺憾なく発揮された呂布と張遼の実力。

連合軍全体を震撼させた賈駆の奇策。

二の足を踏ませるには十分すぎる程に、示威としての役割を果たしていた。

『深追いは禁物。一度体制を立て直し明朝、洛陽へと出立』

あれほど手柄を得るのに血気盛んであった袁紹に、直々にそう言わせる程に。

 

そして、これはその夜の事。

 

虎牢関を制圧し、付近に作られた連合軍駐屯地での一幕。

 

 

カチ

 

     コチ

 

カチ

 

     コチ

 

その音に何度、救われただろう。

その音に何度、励まされただろう。

その音に何度、勇気づけられただろう。

その音に何度、背中を押されただろう。

 

カチ

     

     コチ

 

カチ

 

     コチ

 

そこは丸くて狭い庭。

のっぽとちびの鬼ごっこ。

追って追われて、追われて追って。

どっちが鬼かも判らない。

 

カチ

 

     コチ

 

カチ

 

     コチ

 

それはあの人が刻む音。

僕の命を刻む音。

不安になると確かめる。

僕のもう一つの心臓。

 

カチ

 

     コチ

 

カチ

 

     コチ

 

二本の針が進む。

淀みなく。

絶え間なく。

限りなく。

 

 

 

でも、本当は永遠じゃない。

 

 

 

でも、本当は完全じゃない。

 

 

 

でも、本当は万能じゃない。

 

 

 

でも、本当は正常じゃない。

 

 

 

だから、あの人は言ったんだ―――――

 

 

 

 

「ん、んぅ……」

 

緩やかに浮上する意識。

持ち上げようとする両腕は何処か重く、脳からの信号をやんわりと拒否しているようで、

 

「―――っ!!」

 

それが麻痺だと気付くと同時、蘇る。

断つ為の刃。

絶つ為の刃。

斬る為の刃。

切る為の刃。

後、もう少しで、ほんの僅かで、あの切先は、

 

「あ、あぁっ!!」

 

圧倒的だった。

威圧、殺気、実力、経験、その悉く。

そして、彼女はそれがさも『当然』であるかのように、

 

「っ、っ!!」

 

死んだ。

死んでいった。

自分を守って。

自分を庇って。

自身を強く抱きしめる。

震えを抑える為。

心を鎮める為。

今にも逆流しそうな喉を必死に抑え、声にすらならない悲鳴をくぐもらせて。

そして、伸ばすのは左ポケット。

蓋も開かず、ただ握りしめた。

鎖がじゃらりと鳴る

伝わるのは、微細な振動。

擽るのは、微小な駆動音。

それだけで、あの人達が今も傍にいてくれているように思えて。

どれほど経ったのだろう。

時間の経過を知る為の機械なのに、時間の経過が分からない。

ただ、肌を撫ぜる空気は何処か冷たく、陽光の暖かさは感じられなかった。

そして、

 

 

 

「―――白夜様、お目覚めになられたんですね!?」

 

 

 

「……へ?」

 

突如、耳朶に届いたのは、明命の声だった。

気付けば、周囲から何処か薬湯や生薬を彷彿とさせる匂いが漂っていた。

そこから導き出される結論は、

 

「お怪我はありませんか!?何処か、痛む所はありますか!?」

 

「あ、いえ、その……少し、右腕が痺れるくらいで」

 

(そうか。あの後、気を失って運ばれたんですね……)

 

明命は右腕を念入りに触診しており、目立った怪我や問題が見つからない事に胸を撫で下ろして、

 

「どうやら、大丈夫そうですね。よかったです……」

 

「…………」

 

「……白夜様?」

 

「…………」

 

優れない面持ちのまま黙り込む白夜。

そんな彼の様子に、明命は顔色を窺おうとして、

 

 

 

「白夜さあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」

 

 

 

「ぐふっ!!」

 

突如襲い来る強烈な、しかし何処か柔らかさを感じさせる衝撃。

そして、

 

「良かったぁ、良かったですよぉ~!!」

 

「穏、さん?」

 

「ふぇええええええええええええん!!」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

まるで幼子のように、顔を胸に押し当て泣きじゃくる彼女に、唖然とする他なかった。

そして、

 

「『大丈夫?』はこっちの台詞よ、白夜」

 

そんな呆れ気味な声を皮切りに、次々に増えていく気配。

雪蓮達だった。

 

「あの呂布とやりあって倒れたって聞かされて、こっちは気が気じゃなかったのよ?」

 

「あ、その……」

 

「まぁ、災難だったわね。それとも、あの呂布に襲われて生き延びれたんだから、幸運と言うべきなのかしら?」

 

「……済みませんでした。御心配を、お掛けしたようで」

 

落胆。

悔恨。

無力。

様々な負の蓄積、一層の反省を試みようとして、

 

 

 

 

 

―――――謝る事は、それだけ?

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

その低く、どこか底冷えさえ感じさせる声に、思考を中断せざるを得なかった。

 

「白夜。私はね、貴方に少し腹が立ってもいるのよ。どうしてか、解る?」

 

心当たりがなかった。

『少し』と言ってはいるが、口調からしてとてもそうとは思えない。

それほど重大な過失を犯してしまっていたのだろうか。

該当する言動が思い当らず、必死に検索をかけようとして、

 

「はぁ……どうやら、本気で解ってないみたいね。それが貴方らしさでもあるんだけど……」

 

半ば安堵、半ば呆れといった所だろうか。

嘆息の後、雪蓮は再び口を開いて、

 

 

 

―――――白夜。貴方、自分から呂布に居場所を教えるような真似をしたそうね。

 

それは、心臓を鷲掴みにされたような、そんな気にさえさせ、自分の口を噤ませた。

 

 

 

「理由を、訊いてもいいかしら?」

 

「それは、その……」

 

動悸が高まる。

汗が滲む。

喉の奥は渇いて窄まり、胸の奥には重苦しい霧が屯する。

 

「まぁ、貴方の性格からして、大方の予想はついてるんだけどね……耐え切れなかったんでしょう?」

 

「…………」

 

「沈黙は肯定ととるわよ。……白夜。貴方は今の自分がいる立場をちゃんと解っていると思っていたのだけれど?」

 

「それは……」

 

「……ふぅ。(重症ね。どうしたものかしら)」

 

彼が、決して理解していない訳ではない事は解っている。

そして、決して納得している訳でもない事も。

彼の長所であり、そして短所。

懸念はしていた。

彼が―――否、『理想』を求める以上、誰もがいつかはぶつかる壁。

あまつさえ遥か彼方の、敵兵の命にさえ過敏な反応を示す彼が目の前の、そそれも自分を守る為に兵達がその身を、命を盾にする、そんな『現実』に耐え切れると、言い切る事は出来なかった。

そして、

 

(こういう時、普通はどうするものなのかしら……?)

 

自分がこういう風に育った事を、ほんの少し悔しく思う。

価値観、倫理観の相違。

 

それはきっと、本当に紙一重なのだろう。

でも、その一枚はとても分厚くて、決定的なのだろう。

こんな時にかける言葉すら見つからない、とるべき行動も解らない自分にさえも腹が立って、悔しくて、

 

 

 

―――――だからこそ、なんだろう。

 

 

 

「……白夜、様?」

 

背後から聞こえた、小さな呟き。

振り返った先にいたのは、手拭いと水桶を携えた藍里だった。

白夜が倒れてからずっと、付きっきりで彼の傍にいたという。

今もおそらく、水を取り替えに行っていたのだろう。

呆然と立ち尽くす彼女。

明命のように心配して駆け寄るのか、穏のように安心して泣きつくのか、どちらにせよ、彼の身を気遣う様を見せてくれるのだろうと、そう思っていた。

 

 

 

が、しかし、彼女がとった行動は、まるで正反対のものだった。

 

 

 

僅かな逡巡の後、唇を真一文字に閉じて、

 

 

 

広めの歩幅で一気に距離を詰めたかと思った、次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

ぱぁん、と耳朶を叩いたのは、渇いた『平手打ち』の音。

 

 

 

 

 

 

『誰が』『誰を』と問いたくなるほどに、その光景に驚愕を覚えざるを得なかった。

 

 

 

そう、他の誰でもなく、紛れもなく、

 

 

 

藍里の右手が、白夜を頬を叩いたのである。

 

 

 

「…………え?」

 

白夜が、そんな間の抜けた声を漏らしてしまうのも、無理はないだろう。

思考は止まり、言葉は途切れ、じんじんと痛む頬を呆然と抑える。

そんな彼に対して、ひどく震えた声で、彼女は問う。

 

 

 

 

―――どうして、あんな真似をしたんですか?

 

 

どう、してって……。

 

 

―――兵士さん達から、全部聞きました。……貴方の存在はもう、貴方一人だけのものじゃないんですよ?

 

 

…………。

 

 

―――何の為に、皆さんが貴方の傍にいたのか、解らないんですか!?皆、『貴方を守る為』ですよ!?その貴方が、自分から危険へと飛び込んでしまっては、守れるものも守れない!!

 

 

っ!!

 

 

―――重いですか!?辛いですか!?それが、今、貴方がいる場所なんです!!『守られる側』なんです!!誰かが身を呈して守られるのが『当然』の場所なんです!!貴方は、それが解らない人ではないはずです!!

 

 

……でも、

 

 

―――『でも』、なんですか?

 

 

 

 

 

 

でも、私なんかの為にっ。

 

 

 

 

 

 

―――っっっっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱぁんっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、え…………?」

 

「今、なんて言いましたか?」

 

「…………」

 

「私『なんか』って、言いましたか?」

 

「あいり、さん……?」

 

「どうして、そんな事、言うんですか?」

 

「泣い、て……?」

 

「どうして、そんな悲しい事、言うんですか?」

 

「…………」

 

「私達にとって、貴方はもう、『なんか』じゃないんですよ?」

 

どれだけ零れていようが、構いやしない。

どれだけ溢れていようが、構いやしない。

あまりに優しすぎるこの人に、

あまりに悲しすぎるこの人に、

私はそっと、両の腕を伸ばして、

 

 

 

「お願いですから―――――」

 

 

 

 

 

 

もっと、自分を大切にして下さい。

 

 

 

もっと、私達を頼って下さい。

 

 

 

遠慮なんて、しないで下さい。

 

 

 

 

私達は、『仲間』なんですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

 

天幕の中は異様な、そして沈痛な静寂で包まれていた。

彼の傍らで甲斐甲斐しく体調を窺っていた明命も、顔をくしゃくしゃにして泣きついていた穏さえもが口を噤み、その二人の姿をじっと見つめていた。

耳朶を震わすのは、ただ一つ。

時間の流れが止まったかのように硬直する白夜の体を強く抱きしめ、その肩に顔を押し付けて涙を零す藍里の泣き声。

もう、黙ってはいられなかった。

 

「……私も、ちょっと気になってはいたのよね。白夜。貴方、私達を頼らなさすぎ」

 

「…………」

 

無言のまま、こちらを向く白夜。

皆もまた、私へと視線を向ける。

 

「何でも一人で抱え込んで、何でも一人でやろうとして、その癖、貴方は『自分には遠慮するな』と言う。……これって、本当に『仲間』に対する態度かしら?」

 

「そ、れは……」

 

 

 

「あのね、白夜。勘違いしているようなら言っておくけど……『出来る事』と、『やっていい事』は違うのよ?」

 

 

 

「っ!!」

 

「確かに今回、貴方は生きて帰ってくる事が出来た。呂布の相手をする事で、呂布に殺される兵士が減った事も事実。……でもね、それは結果論に過ぎない。一歩間違えば、貴方は本当に死んでいた。解るでしょう?」

 

「…………」

 

無言のまま、しかし如実に見て取れる心中の混乱。

弱冠、体が震えているようだった。

そんな彼に、私は投げかけて、

 

 

 

 

 

 

「だったら訊くけど、白夜……貴方、あの時、『笑って』死ねた?」

 

 

 

 

 

 

その効果は、覿面だった。

 

 

 

 

 

 

 

『人はいつか、必ず死ぬ。寿命じゃったり、病気じゃったり、怪我じゃったり、早いか遅いかも、人それぞれじゃ。選ぶ事は出来ん』

 

蘇る言葉。

 

『じゃからな、白夜。儂はこう思うんじゃよ。せめて最期の時に「産まれてきて良かった」と心から思えるように生きたい、とな。』

 

蘇る笑顔。

そして、

 

「怖かった、です」

 

「……でしょうね」

 

それは、思わず漏れた、言うまでもない本心。

投げ出された無防備な身体に迫る凶刃。

自殺志願者さえも、その命の断たれる直前には『生きたい』と思うという。

ならば『死にたい』とすら願っていない者が死を恐怖し、拒絶するのは当然の道理。

 

「あんな思いを、皆さんもしているんだと、思ったのと一緒に……それが『自分もだ』と思った瞬間に、物凄く怖くなって……」

 

伸ばす左手はジーンズのポケットへ。

取り出したのは、金属独特の滑らかな、何処か冷たさを帯びた手触り。

 

「それは、確かお父様の、」

 

「……はい。昔から、怖い事があった時は、いつもこれを握りしめて布団に潜り込んでました」

 

いつの間にか涙も渇いた穏の問いに答え、懐中時計の蓋を開く。

未だに顔も知らない、しかし未だに自分の時間を刻み続ける、今は亡き養父の贈り物。

 

「覚えている限り、思い出の中で、人は生き続けるんでしょう。……貴方が死んでしまったら、一体誰が覚えていくのかしら?」

 

「……そう、ですね」

 

握りしめて、改めて思う。

 

―――――ナンデモデキナキャダメナンダ。

 

(もう、そんな心配はいらないんだ)

 

―――――ナンデモデキナキャイジメラレルンダ。

 

(もう、そんな心配はいらないんだ)

 

人より劣るが故の、人一倍の努力。

『出来なくて当然』そんな視線に怯える思いは、もう。

 

「改めて訊くわよ、白夜」

 

「……はい」

 

深く、息を吸いこんで。

慣れていないから、上手く出来るか解らないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は、私達を信じられないのかしら?」

 

 

 

 

 

 

「信じられます。御心配をおかけして、申し訳ありませんでした」

 

 

 

 

 

 

深々と下げた頭に、自然と流れ出た言葉に、やっと皆が笑ってくれたような、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………。

 

 

―――…………。

 

 

……戻ろうか、朱里ちゃん。

 

 

―――……そう、ですね、桃香様。

 

 

うん。北条さんも元気みたいだし……。

 

 

―――はい…………。

 

 

…………。

 

 

―――…………。

 

 

 

「ふぅ…………」

 

再び拘束されてから、どれほどの時間が経ったのだろう。

両の手足には欠片の自由もなく、ただひたすら柱に寄り掛かるのみ。

だが、昨日までの自分とは、明らかに違った。

 

「不思議なものだな。心持一つで、同じ場所がここまで変わって見えるとは」

 

呟いて思い返すのは、やはりあの男。

 

「北条、白夜、か……」

 

思わず、身体が動いてしまった。

視認したと同時、捕虜である事も忘れ、倒れる体躯の間から剣を拾い上げ、無我のままに戦場を走り抜けて。

 

―――何故だろう?

 

何が自分をそうさせたのか。

何が自分にそうさせたのか。

 

「……駄目だな。やはり考え事は、私には向かん」

 

今夜だけで何度目の思考放棄だろうか。

匙を投げ、両足も投げ出して、柱に体重を完全に預ける。

(まぁ、状況的にこの体勢以外、不可能に等しいのだが)

やがて、

 

―――――カツン

 

「……む?」

 

鼓膜に届くのは、地を叩く独特の音。

 

―――――カツン

 

再び。

つまり、幻聴ではない。

 

「やっと来たか……」

 

いい加減、飽きてきた所だ。

知らず知らずに零れる嘆息。

そして、天幕の入り口が揺らめいたと同時、

 

 

 

「……お前、その顔はどうした?」

 

現れたのは予想通りの、しかし予想に違う状態の人物であった。

 

 

 

「あはは……ちょっと、こっぴどく怒られてしまいまして」

 

現れた男、北条は顔の随所を赤く腫らし、纏う衣服も何処か乱れていた。

まぁ無理もない。

あの後、彼は勢揃いしていた孫呉の将達はおろか、虎牢関にて彼の守護に配属されていた兵士達にまでも囲まれ、もみくちゃにされていたのである。

そして、

 

「……お前、泣いたのか?」

 

「……はい」

 

何よりも、何処よりも目立つ、両目の周囲の紅潮。

恐らく、閉ざされた瞼の下は真赤に充血している事だろう。

しかし、

 

(……『あの時』とは、まるで違う)

 

『あの時』。

兵士達を引き連れ、兵士達の死に涙した、あの夜のこいつは、まるで自らの全てを奪われたかのように、他人の死を嘆いていた。

しかし、今はどうだろう。

 

(穏やかに、微笑んですらいるじゃないか)

 

「……兵士の皆さんが、言ってくれたんです」

 

「……ん?」

 

そんな事を考えていると、思い返すように、噛み締めるように、ゆっくりと北条は言った。

 

 

 

「『貴方が我々に思っているのと同じくらい、我々も貴方を守りたいと思っていると、どうして考えられないのですか?』って」

 

 

 

「……そうか」

 

その笑顔はまるで、年端もいかぬ少年のようにすら見えて、

 

(……なんだ、まるで同じではないか)

 

その笑顔にはっきりと、覚悟が決まった。

 

「北条」

 

「はい、何ですか?」

 

 

 

 

 

――――――本題に入る。耳を貸せ。

 

 

 

 

 

(続)

 

後書きです、ハイ。

 

……誰だよ、『最速で1週間で更新できるかも』とかほざいてた奴。

 

結局また1ヶ月以上かかってんじゃん!!しかももうすぐ『第2回同人祭り』じゃん!!

 

ネタは出来てるけど、書き切れるかどうか……そもそも、期末の提出用レポートも書かなきゃだし。

 

しかもこんな時に限ってバイト先の店長(同じ部署の唯一の上司であり、夜勤は俺と店長のみ)夏休みに入りやがって……お陰でまた昼行燈状態ジャマイカ!!

 

セール期間ど真ん中に、全部新人にほっぽりだすって、店長がやっていい事か!?

 

 

 

……とまぁ、愚痴はここら辺までにして。

 

 

 

いよいよ、やっと『反董卓連合編』の完結編に入ります。

 

白夜の策の全貌、そしてその成否や如何に?

 

そして、遂に!!

 

「姓は華、名は雄。字はない。そして、私の真名は―――――」

 

もっと執筆スピードが欲しいと願いながら、今回はこの辺で。

 

でわでわノシ

 

 

 

 

 

…………あ、次回の更新(第2回同人祭りの次)は多分『蒼穹』です。


 
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