振る舞う笑顔はいつも通り。嫌味もからかいも何一つ変わらない。変わっていないと信じたい。頬の筋肉はひきつってぎこちないものになってないか、声が上ずって変に聞こえたりしてないか。そんなことを考える余裕すらなく、何一つ変化しないように日々を過ごしている。
無様だわ、とても。だけど、あんたが居ないだけでこんなにもあたしは変わってしまう。思い知ればいい、自覚すればいい。あいつも、あたしも。
「痛々しいな」
声が刺さる。ずぶり。
ことばの端だけでもあいつを思い出してしまう。
「アイツならそう言うかな」
「…かもね」
くしゃりと笑って見せる。目の前に立つ、生きているコイツは苦しげな表情。眉間に皺が寄り、拳も硬く、そうして痛みを堪えていた。
無くしたものは一緒。あいつはいない。
「笑えてる?あたし」
「…ああ、苦しそうに、な」
「そっか」
無理なのかな、駄目なのかな。
渇れた涙はいくら悲しくたって出てこない。じんわりと胸の真ん中の穴が広がる。じわっ。
埋めるものがなくて広がる一方。黒くて、向こうの見えない穴はいつかあたしを消す。その時はそう遠くないのかな。
ふと影が揺らぐ。
「凭れ合いながら、背負いながら。そう考えたけど、あいつと俺は違うんだよな」
考えない訳ないじゃない。忘れる為じゃなく過去に変える為に違う歩みを始めてもいいんじゃないか、なんて。真っ先に考えたわよ。
目の前に突き出された大きな、成長した手の平が顔を隠してしまう。拒絶、落とす。
「だから、変わらずに。俺もお前も」
下げられた腕の先にあったのはあの頃の笑顔と変わらない現状。はらりと涙が落ちる。落ちたのは一粒だけだった。
ぽっかりあいたのはあなたのいばしょ
fin.
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何でか書きたかったグリブル←レ。ちょう暗いです、死んでます。サイトの再録。