No.264319

真・恋姫†無双 ~君思うとき、春の温もりの如し~ 26話

lovegtrさん

益州に向け旅立った一刀たち。
その途中で出会った人物とは?
久しぶりに登場のあの人とは!?

2011-08-08 00:27:37 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5521   閲覧ユーザー数:4517

益州への出発当日。

「一刀殿ー!準備できましたぞー!」

音々音が両腕を挙げ楽しそうに動き回っていた。

どうやら益州へ行くことを遠足か何かと勘違いしているらしい。

「おいおい、そんなにはしゃいでいると、あっちまでもたないぞ」

「誰もはしゃいでなどおりませぬ!

 さて、ハンカチよし!チリ紙よし!恋殿の弁当よーし!」

「……ん、楽しみ…」

口ではああ言っているが顔はにやけている。

よっぽど外に出かけるのが楽しみだったんだろう、子供のようにはしゃいでいる。

……見た目も子どもっぽいと思ったことは黙っておこう。

「では張々!行ってくるであります!おとなしく留守番しておくのですぞ!」

「バウ」

最後に自分の愛犬に挨拶をし、音々音は恋の跨る馬の前のところに飛び乗った。

「じゃあ皆、行ってくる。亞莎、南への遠征は任せたぞ」

「は、はいっ!ご期待に添えるよう頑張ります」

出発を前に遠征のことで緊張している亞莎に声をかけた。

亞莎は顔を赤くしながらも意気込みの姿勢を見せた。

「冥琳は亞莎にいろいろ教えてやってくれ。雪蓮は俺がいない間政務の方を頼む」

「分かった」

「えー。せっかく王の職務から開放されたと思ったのに……」

冥琳の返事とは反対に雪蓮は頬をふくらませた。

「まあ良いわ。かわりにお土産よろしくね♪」

それでも最後は言うことを聞いてくれた。

まあ、対価を要求されたが……

「それでは参りましょう」

趙雲の号令に従い、俺たちは益州へと馬を進めることにした。

劉備玄徳……

その顔を見たことはあるが声を交わしたことは無い。

自身は特別な力があるわけでは無いが、関羽や張飛、諸葛亮といった有能な将を率いこの乱世に躍り出た。

皆が笑顔で暮らせる世の中を作るために。

雪蓮にどんな人物かと聞いてみたが自分の目で確かめろと言った。

さて、どんな人物なのか……

「恋殿ー!あっちに森が見えますぞ!むむ!こっちには森が!」

そんな思案にふけていると音々音の元気な声が耳に入っていた。

やはり旅に気持ちが高まっているのか落ち着かない様子でまわりを見回していた。

 

「いやー、それにしても益州は遠いですなー」

そんな音々音も、

「うーむ、まだですか~?おしりが痛いのです……」

出発して数日が過ぎると、

「うぅぅ……疲れたのです……」

元気がなくなっていた。

「だから言っただろ、あまりはしゃぐなよって」

「うぅぅぅ……」

今では恋の馬の上でぐったりとしている。

「あ、あそこに林が見えます。

 そこで少し休憩しましょう」

うなだれる音々音を心配してか鳳統は、少し先に見える林の方を指さし言った。

林の中は小川が流れており木陰もあり涼しく休むのに適していた。

「おや?どちらに?」

「ん?ああ、ちょっと用を足しに……」

急に涼しくなったからか催したので、厠へと思い林の奥に進もうとすると趙雲に呼び止められた。

「……そうですか。お気を付けて」

美女にそういうことを言うことは少し気まずいものがある。

趙雲も気まずそうな顔をしてそっぽを向いてしまった。

「ふう…………!?」

すっきりし、その場を後にしようと思っているとどこからか視線を感じた。

誰かこっちに来たのだろうかと思ったが、違う。

その視線には明らかに殺意がこもっていた。

俺は腰にある南海覇王に手をかけ、周りを見渡す。

がさっ

茂みの揺れた方向に目を向け、剣を抜き構えると出てきたのは、

「う、うさぎ?」

茶色の毛をしたうさぎが一羽、ぴょんと出てきた。

その時、

「うおぉぉぉ!!」

頭上から木の葉と共に武器を振り下ろす者が降りてきた。

 

「うあ!?」

地面を転がるようその場から飛び離れると、上からの襲撃者によって俺がさっきまでいた場所は大きく陥没していた。

「何者だ!?」

黒い頭巾をした敵は再び自身の武器をこちらに向ける。

しかしその得物には見覚えがあった。

大きな斧。

「お前は……華雄…?」

名を呼ばれた華雄は自身の顔を隠していた頭巾を払い、その殺気立った目を向けた。

「我が主董卓の仇、覚悟!」

そう言い華雄はその大斧を俺目掛けて振るう。

「ぐっ」

その攻撃はすさまじく、以前も力強いものであったが、さらに力が増していた。

何とか南海覇王でその攻撃を受け止めると、

「やはりあの男の言った通りだった。この林にいれば孫権がやって来ると!

 私は連合に参加した者たちが憎い!なぜあの心優しい董卓様が殺されなくてはいけないのだ!

 その中でも特にお前が憎い!お前さえ邪魔をしなければ…」

「董卓を救えたというのか!」

華雄の斧を払い距離をとると華雄は再び構えた。

「確かにあの連合はお前たちにとって災難だった。

 でも、だからと言ってお前は連合に参加した者すべてに復讐すると言うのか!

 連合を止められなかったのはお前の所為(・・・・・)ではない!」

「う、うわあぁぁぁぁ!!」

華雄は大きく振りかぶる。

その攻撃に俺は、

「…なぜ剣を構えない!」

顔の前に斧をピタッと止め華雄が叫ぶ。

「私と戦う価値もないと言うことか!」

「違う!そうじゃない。こんなこと無意味だと言うことだ。

 華雄、君は自分のことを責めすぎている。

 でも、そんなことしても意味が無い」

「そんなもの分かっている。…分かっていた。

 しかし!この憤りをどうすれば良いのだ!」

華雄も武器をだらりと下ろし、問いかけてきた。

「一刀様!」

すると剣戟の音を聞きつけたのか思春と恋、趙雲が駆けつけてきた。

「貴様は…華雄!」

武器を持つ華雄を見ると思春は鈴音を構えた。

「思春、いい。もう終わった」

攻撃の姿勢をとる思春を止める。

すると思春たちの方を振り向いていた華雄が、

「お、お前は…呂布……」

「華雄……久しぶり……」

元同僚である恋に気が付いた華雄は驚きの表情を浮かべていた。

「お前、生きていたのか」

「ん……今ねねたちと一刀のところにいる…」

「孫権のところに?」

俺の方をちらりと見た華雄は恋の方に詰め寄り、

「なぜだ!こいつらは董卓様を…月様たちを殺したんだぞ!」

「………ん……でも、みんな良い人………」

怒ったような泣いているような、そんな顔をする華雄に恋は困った顔をしながらも答えた。

「それに、違う……恨んでも月たちは戻ってこない……それに月はそんなこと望んでない……」

「月様が……」

恋の言葉に華雄は、その場にがっくりと項垂れた。

「……華雄、俺たちと益州に行かないか?」

「一刀様!?」

「……どういうことだ孫権?」

華雄は訝しむ目付きでこちらを見た。

「そのままの意味さ。それに俺の近くにいれば何時でも殺せるだろ。良いかな、趙雲?」

「私は別に構いませんが…」

経緯を見守っていた趙雲に声を掛け、同行の許しをもらった。

「…分かった。孫権、お前のことを見極めさせてもらう」

こうして華雄も加わり益州に向かうこととなった。

 

そして数日後、益州に到着した俺たちは劉備と会見を行うこととなる。

ということで久々登場華雄さんでした。

矛盾を感じながらも一刀への復讐に燃えていた人です。

戦争なので誰が悪いとは言えないけど、怒りをどこかに向けなくては気が済まなかった華雄。

まあ、一番悪いのは月たちを隠れ蓑にしていた張譲なんですけどね。

麗羽は本当は張譲が悪政を行っていたとは知らなかったので責めてあげないでください。

 

次回は桃香たちと対面!ではノシ


 
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