No.257709

真・恋姫†夢想 魏√ 桂花EDアフター 

狭乃 狼さん

はいはい。

前回の桂花EDにコメしてくださった人たち?

ご希望通りの続きですよ~w

続きを表示

2011-08-03 21:46:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:21400   閲覧ユーザー数:16303

 ちゅん、ちゅちゅん……。

 

 「ん……もう、朝……?」

 

 小鳥のさえずりを目覚ましに、ゆっくりと瞼を開く私。寝ぼけ眼を指でこすりながら、ゆっくりと上体を起こす。

 

 「ん、んん~~~~っ」

 

 ぐっと大きく腕を伸ばし、軽く伸びをしてから、寝ぼけ眼を軽く指でこする。

 

 「……六時、半……ちょっと、早く目が覚めすぎた、かな?」

 

 ベッドの近くに置いてあった時計にその目をやり、時刻を確認してそう呟く。窓のカーテンは閉め切ったままなので、八畳ほどの広さのその部屋はいまだ少し薄暗い。

 

 「……う~ん……」

 「あ、起こしちゃった?……って、寝返り打っただけか」

 

 同じベッドの中で、私の隣で寝ているその人の、いまだ夢の中に居るその顔をじっと見つめる。整った顔立ちをしたその彼は、私だけではなく、ほとんどの女性がまあまあ二枚目だと思うだろう。事実、キャンパスでは彼に密かに憧れ…いや、はっきり惚れているとしか思えない者が、結構な数居るはずだ。

 

 「……罪作りよね、ほんと。“向こう”でも“こっち”でも。あんたって人は、さ」

 

 つん、と。寝ている彼の鼻先を指で軽くつつき、そんな事を独りごつ私。……この、まるで幼い子供のような、そんなあどけない顔で寝ている青年は、はっきり言って超が付く位のニブチンだ。面と向かってはっきりとした意思表示をされない限り、自分に向けられている好意には一切気がつかないという、筋金入りの鈍感男。

 

 「……でもまあ。そのおかげもあって、私はあんたを独占出来るんだけどね……フフ」

  

 つんつん、と。今度は彼の頬を軽くつついてみる。と、

 

 「……ん~、んん~?……あれ?もう起きてたのか?」

 「ん。ついさっき、ね」

 「……今、なんかした?」

 「したわよ?あんまり可愛い寝顔だったから、思わずほっぺたつんつんと」

 「……二十歳を過ぎた男に対して、可愛いってのは無いだろ?」

 「だってほんとに可愛かったんだもん♪あんたの、ね・が・お」

 「……っとに。すっかり性格変わっちゃったよな、お前さ」

 「あら?女は常に変化し続ける生き物よ?特に、惚れた男のためならば、ね。……知らなかった?」

 「……この三年で、よっく、思い知りました」

 

 あはは、と。そんな会話を交わした後に、互いに笑顔を交わす私たち。そして、彼がカーテンにその手をかけ、しゃっ、と勢い良く左右に開く。

 

 「……今日もいい天気だな。……さて、と」

 

 窓の外、何処までも広がって居そうな青い空を背にした彼と、私はこの言葉を交わす。今日もまた、楽しい一日の始まりを告げる、いつものその挨拶を。

 

 「……おはよう、桂花」

 「……おはよう、一刀」

 

 

 

 

 

 

 

 真・恋姫†夢想 魏√ 桂花ENDアフター。

 

 

 

 【~花開きし金木犀と共に~】

 

 

  

 

 

 

 

 私と彼の出会いの顛末は、およそ、多くの人が信じる類のものではない。けど、それもまあ仕方の無いことだ。なにせ、この私、若文桂花(わかふみけいふぁ)と、彼、北郷一刀が初めて出逢ったのは、今私たちが生活しているこの世界とは、全く別の世界なのだから。

 

 三国志―。

 

 ほとんどの人々が、おそらく一度ぐらいはその耳にしたことがあるであろう、史実の出来事に沿って描(えが)かれた物語。時間軸的に言えば、今からおよそ二千年も過去の世界の出来事。蜀、呉、そして、魏。それら三つの国が、当時の中国大陸の覇権を争って戦った時代。

 

 私たちが出会ったのは、その、三国志の時代なのだ。

 

 まあ、先ほども言ったとおり、そんな与太話を信じるものなんて、正直誰もいやしないのが普通の思考だ。けど、私と一刀は、そんな与太話のような出来事を、今から三年とちょっと前まで、実際に経験していた。さらに言えば、この私は元々、その世界の住人であり、彼はその私が居た世界に忽然と現れた、異世界の人間だった。

 

 姓を荀、名を彧、字を文若。それが、私の元の世界での本名。今名乗っているこの姓名は、こちら側に来た後から、一刀のお爺様につけて頂いたものだ。字の文若を逆さにして若文という姓にし、そして、真名である桂花をその名にして。

 

 ……え?真名って何だって?……これを読んでる人に今更な説明だとは思うけど、しょうがないわね。一応、注釈という形で補完だけはしておいてあげとくわね。

 

 真名。

 

 それは、私が元居た世界において、その人間の本質を現す真の名。家族と、そして本人が許した親しい人間以外、決して軽々しく口にしてはいけない、とても神聖なものである。

 

 ……だから、最初は私もかなりの抵抗があった。その真名を、一刀やその家族の人たち以外に、自由に呼ばせるようにすることが。けど、お爺様のとある一言で、私はそれを吹っ切ることが出来た。その一言って言うのが、こんな言葉だった。

 

 『郷に入っては郷に従え。この世界では誰も真名のことなど知らんのだ。この世界の住人になるのであれば、そのあたりのしがらみもなくさねば、な』

 

 ……なんだか上手く丸め込まれた様な気もしないでもないけど、『なに、慣れてしまえば存外気にならぬものじゃよ』というお爺様の言葉に、私も決心をした。……まあ、始めのうちは、ね?それこそ誰かに真名を…じゃなくて、名を呼ばれるたびに怒気が沸いていたものだけど、人の順応力ってすごいわね~。結局、半年もしないうちに、そのことにもすっかり慣れてしまった私だった。

 

 

 

 で、話を元に戻すけど。

 

 ともかく、私と彼が出会ったのは、その三国志の世界と少しばかり違った、外史という、一種のパラレルワールドの中の一つだった。

 

 外史。

 

 その概念を私がはじめて知ったのは、この世界にやってくるほんの少し前のことだった。

 

 当時、まだあの世界に居た頃、私は三国の内の一国である『魏』の一員として、魏王、曹孟徳様の軍師として、その辣腕を存分に奮っていた。そして、魏の警備隊長であり天の御遣いでもあった一刀と共に、魏による三国平定、そしてその後の三国同盟の達成を成し遂げることが出来た。

 

 けれど。

 

 その三国同盟が締結された、その日の夜。それは、突然に訪れた。

 

 本来の歴史の流れであれば、魏に寄る三国平定は、決して為される筈のものではなかった。しかし、現実には魏による三国平定、そして、魏・呉・蜀の三国が並び立っての、大陸の分割統治という、史実とは違った形での戦乱終結の時を迎えた。

 

 そしてそれは、歴史を大きく変えることになった、その最大の要因は。

 

 天の御遣い、北郷一刀の、その天の知識、だった。

 

 死ぬべき運命だった人間。負けるはずだった戦。そして、ありえるはずの無かった形での、平穏。

 

 すべては、北郷一刀という人間が、大局の流れに逆らったが故の、結末。

 

 そして、世界はその代償を、彼自身に求めた。

 

 世界からの消滅という、その代償を。

 

 そして私は、彼があの世界から、今にも消え去らんとしている、その現場に出くわした。

 

 正直言って、あの世界に居た頃の私は、彼のことが、大っっ嫌いで仕方が無かった。物心ついて以来の男嫌いというのももちろんあるが、敬愛する華琳様―あ、あの世界の曹操孟徳様のことね―を、そして、魏に属する他の者達全てを手篭めにしていた、魏の種馬と呼ばれていた当時の彼が。

 

 それゆえに、最初の出会いから悪口なんていうのも可愛いぐらいの、悪口雑言を彼に浴びせ続けた。時には落とし穴とかを掘って、そこに彼を落としたりもしたっけ。……まあ、八割がたは失敗していたけど。

 

 ま、まあ、それはともかく。そんな調子で、常に彼を罵倒し続け、卑下し続けていた私だったんだけど。

 

 ……その、彼が消滅して行こうとしている、まさにその時。無数の小さな光の粒になって、だんだんとその姿が薄らいでいく彼に、必死にその腕を伸ばして、何とか留めようと、必死になってもがいている自分が、そこに、居た。   

 

 その時になって、私は始めて気がついた。大嫌いだと思っていたその彼を、本当は心底から愛していたことに。罵声も蹴りも鉄拳も罠も。全ては、幼い子供が好きな子の気を引くために、わざと意地悪をしているのと同じことだったと。私はそれを、無自覚に、そして無意識に、知らず知らずやっていたのだと。

 

 なんて愚か。なんて哀れ。なんて……滑稽。

 

 それに気づいた私は、もう、軍師・荀文若では無く。ただの、桂花という名の少女、だった。

 

 

 

 そして私は旅に出た。あれほど敬愛していた華琳さまの下を辞し、ただあてどなく大陸中を一人彷徨った。蜀や呉、南蛮、果ては東の海の小国へと。

 

 別段、目的があるわけでもなかった。ただ、動いていたいだけだった。どこか一つところに留まれば、その都度、勝手に彼のことを考えてしまう自分がいたから。そして、およそ一年も彷徨っただろうか。ある日、たまたま寄ったその町で、私はそいつに遭遇した。

 

 ……ピンクのビキニパンツを履いた、スキンヘッドにお下げの、この世の物とは思えない化け物に。

 

 『どぅあああれが、あまりのおぞましさに閻魔も卒倒する、物体エックスですってええぇぇぇ!?』

 

 ……えっと。

 

 今の幻聴はさておいて。ともかく私はその化け物…自称、絶世の美人踊り子『貂蝉』から、外史の概念を教えてもらい、そして、私が最も知りたかった、そして、もっとも手にしたかった、その手段を教わった。

 

 一刀の居る、一刀の帰っている、正史の世界へ、渡るための方法を。

 

 そう。

 

 例え二度と、この世界に帰って来れないとしても。

 

 例え二度と、華琳様を始めとした、魏の皆に会えなくなっても。

 

 私は、一刀の傍に、行きたかった。

 

 そうして、それから一番近い新月の日。私は一人、泰山の頂上へと辿り着き、そこにあった神殿に収めてあった、一つの銅鏡をその手にし、月に、願った。

 

 一刀の下に。

 

 愛するあの人の下に。

 

 私は、行きたい、と。

 

 

 

 かくして、願いは叶った。

 

 私は、一刀の世界に、一刀の住む所に、一刀の隣に、外史を超えて降り立った。

 

 『また、会えたね』

 

 突然の事に戸惑いながらも、彼はそう言って微笑んでくれた。

 

 『……会いに来てやったわよ、馬鹿』

 

 その微笑に、私はそう答えた。彼のその、温かなぬくもりに抱かれて。

 

 

 それが、今から三年前のこと。

 

 至福の再会の時の後は、もう、目の回るような日々が、私を待ち受けていた。

 

 それまでその世界に存在しなかった人間が、突然降って出たのだから、当然、私には戸籍なんてものがあるはずも無く。言葉は不思議と分かっても、文字は読めない、常識も分からない。家電製品一つ満足に使えない人間が、現代の世の中で生きて行ける訳が無い。

 

 もちろん、一刀に全部甘えれば、それはそれでも良かったんだけど。けど、無知なままで足を引っ張るだけの存在になんて、一刀の足かせになんて私はなりたくなかった。

 

 で、結局どうなったのかというと。

 

 彼の下に降り立ったその翌日、私は彼に連れられて、その祖父母が住む彼の実家へと向かうことになった。……生まれて初めて乗った新幹線。それを見た時の私の反応は……も、思い出したくないくらい、滑稽なものだった。だって、こんなことを口走っちゃったんだから。

 

 「……こ、こんな怪物の腹に入って、く、食われたりしないわよね?!」

 

 ……ほんと、我ながらいまだに恥ずかしい……。前もって教えてもらってはいた筈なのに、荀文若ともあろう者が、なんていう……!!

 

 も、もうこの話はこれぐらいでいいでしょ!?……ごほんっ!!で、まあ、なんだかんだで、初めて乗る乗り物や景色に嬉々としつつ、一刀に逐一、あれやこれやと質問攻めをしながら、列車はあっという間に、九州は博多に到着。そこからさらに列車を乗り換え、彼の実家に到着したのは、もう間も無く日が暮れようかという時間だった。

 

 「こおおおの、馬鹿孫がああああっっっ!!」

 「ほげあっっ!?」

 

 ……えっと。一体何が起こったのかと申しますと。一刀が玄関の扉を開けて、実家の中に入ろうとした瞬間、中から出てきた初老の男性に、思いっきりアッパーカットを喰らわされて、五メートルぐらい吹っ飛びました。以上。

 

 「……って!いきなり何すんだよこのくそじじい!」

 「ふん!勝手に家を出て勝手に東京の学校に一人で通い始めて、勝手に行方不明になって勝手に突然帰って来てその理由も全然話さず、おまけに今度は突然嫁など連れてきた馬鹿孫に、愛の鉄拳をかましただけじゃ」

 「……始めの二つに関しては、本当に悪かったって思ってる。次の三つに関しても、確かに悪いと思ってるよ。けど、最期の件に関しては、電話口でそっちも思いっきり喜んでただろが!ていうか、まだ桂花とは結婚したってわけじゃあないって、そういっただろ!?」

 「……はて?そうじゃったか?年をとると物覚えが悪くなってのう~?」

 「……単にボケただけなんじゃ?」

 「やっかましい!わしゃ生涯現役じゃぞ!?無論、夜のほうもな?」

 「あのね……」

 

 ……うん。完全に置いてけぼりですね、わたし。

 

 「ん?おお、すまんすまん。嬢ちゃんのことをすっかり忘れとった。遠いところを良く来たのう。わしがこの馬鹿孫、北郷一刀の祖父、北郷一虞(かずすけ)じゃ」

 「あ、えと、その。は、始めまして!私は姓を荀、名を彧、字を文若です」

 「……なんじゃと?」

 「ああ、一応言っとくけど、彼女、嘘は一言も言ってないから。……正真正銘、今のが彼女の本名だよ」

 「……なんとまあ。……これまた、北郷の家の運命なのかのう……」

 「は?」

 「……なんでもないわい。ほれ、まずはとっとと中に入れ。お嬢ちゃんも疲れたじゃろ?まずはゆっくり、旅の疲れを癒すがええ」

 「あ、はい!ありがとうございます!」

 「……俺の扱い、何気に酷くないか?」

 「気のせいじゃ」

 

 

 

 三つ指突いてお出迎え。それが古式ゆかしい客の出迎え方だそうである。……なんのことかって?今私の目の前で、私に向かってそれをなされている方がいらっしゃるんです。

 

 「ようこそ、薩摩北郷家へ。私は北郷家当主、北郷一虞が妻、燐華(りんふぁ)。よろしくお願いしますわね」

 「あ、はい、こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 とっても綺麗な人だった。お爺様のつれあいなのだから、結構なお年を召されているはずなのに、その容貌はまるで三十代半ばぐらいにしか見えなかった。……実際には一体お幾つなんだろう?

 

 「お嬢さん?」

 「は、はい?!」

 「女性の年齢は、あまり深く追求しちゃ駄目よ?」

 「!?」

 

 な、なんでこっちの考えてることが分かったの、この人!?

 

 「燐華よ。あまり嬢ちゃんをからかうものではない」

 「ふふふ、ごめんなさい、すけちゃん。なんだかこの娘、とってもいじくり概がありそうだったから、つい」

 「まったくおぬしと来たら、いまだにその趣味が残っておるのか……」

 

 ……なにかしら、今の感じ。なんだかまるで、華琳様に言われたみたいな感じがしたんだけど……まさか、ね。気のせい、気のせいよ、きっと。

 

 「……桂花?どうかしたのか?」

 「え?!う、ううん、別に何でも……」

 「……一刀。今、その娘をなんと呼んだ?」

 「え?……あ、えと、その……話せば長くなるんだけど……その、信じてもらえるかどうか……」

 「……もしや、“真名”……か?」

 『ッ!?』

 

 ……なに?今、この人、なんて言った……の?

 

 「……じいちゃん、なんで、それを」

 「……因果は巡るものなのかのう……。なあ、燐華……いや、項籍よ?」

 「……かも、しれないわね、すけちゃん……いいえ、虞姫」

 『んなっ……!?』

 

 項籍。そして、虞姫。

 

 二人は確かに、互いのことをそう呼んだ。

 

 ……一体何が起こったのか分からない。そんな表情のまま固まった私たちを、古の英雄とその愛妾の名を呼び合った二人は、ただじっと、まっすぐに見つめ続けていた……。

 

 

 

 ご期待に応えましたよ?w

 

 

 桂花ENDの続きがみたいとおっしゃった方々、こんな感じに続いたのですが如何でしょうか?

 

 正直、ここからどれほど物語が続くか、作者にも全然分かりません(オイw

 

 

 でもって、一刀の祖父母、あんな設定にしてみました。

 

 最初は始皇帝、ってのも考えたんですが、確か他にそれをやられている方がいたと思ったので、あえてこちらにしてみましたw

 

 あ、ちなみに、一刀の両親はすでに他界しているという設定にしています。そこはもう揺らぎの無い事実となっています。

 

 さて、次話の投稿は完全に未定です。

 

 北朝伝もツン√も、そして第二回同人恋姫祭りも、ありますからね。

 

 まあ、気長に待っていれば、忘れた頃にはぽいっとするかも知れませんw

 

 

 じゃ、そう言ったところで、今回はお開き。

 

 それではまた、次の外史でお会いしましょう。

 

 再見~!

 

   


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
111
20

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択