No.252129

キミにエールを

侑炬さん

殷郊と対決した夜のお話。


これから起こる運命は必然。
運命に負けないで…

2011-08-01 02:09:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2065   閲覧ユーザー数:2041

 

 

「すまぬ殷郊!!!」

打神鞭を振り下ろす、次の瞬間殷郊の魂魄は封神台へと飛んでいった。

その日の夜…

「師師、起きていらっしゃいますか? ヨウゼンです、入りますよ。」

ヨウゼンが入ってくる

「おお、ヨウゼンか、こんな遅くにどうしたのだ? 何かあったのか? それとも寝られぬのか?」

太公望は寝ようとしていたらしく、自室でベッドに腰を下ろしてお茶を飲んでいる。

「ええ師師あなたの傷が気になって…。 見せてください師師、ちゃんとに手当てはしましたか?」

「ニョホホホ…わしは大丈夫じゃ。」

「と言うのは口実で、利き手が無くなってうまく抵抗できないあなたを貰い受けに来たんですよ。大声を出してもだめですよ、この部屋に近づく者は哮天犬に襲われますから。」

「ぬぁにぃ~!! うわぁぁぁぁ!! 何を考えておるのだ! うわっ何をしておるのだ~!! やめぬか~! やめるのだ楊戩! た…たすけてくれ~」

どかぁぁぁぁぁん!! ヨウゼンが太公望を襲おうとしたしゅんかん楊戩の背中あたりで何かが爆発した。

「よ・う・ぜ・ん・くん、ぼくの望ちゃんに必要以上に触らないでくれるかな? 望ちゃん久しぶり! ぼくが来たからもう大丈夫だよ。?どうしたの望ちゃん。あっ安心して今のは威嚇だけだから。知ってるでしょぼくは争い事が好きじゃないって。」

「威嚇ですか今のが…充分殺意を感じましたが… 僕はただ師師で遊んでいただけですよ。メンバーの中では一番面白い反応してくれますからね。ところで普賢師弟あなたはどうやってこの部屋に? あと、あなたは太公望師師のことをぼ…ぼ…望ちゃんと呼んでいるのですか?」

真っ赤になりながら楊戩がひきつった顔で聞く、

「へ~楊戩は望ちゃんのこと師師って呼んでるんだ~。そんな他人行儀な呼び方をしてるのに望ちゃんで遊ぼうなんて甘いよ。それとこの部屋には哮天犬が入れてくれたんだよ。ご主人が何してるのかちゃんとわかってるんだね。」

太公望に服を着せながら満面の笑顔で答える普賢、服を着せ終えると普賢はお茶を入れ始め不意にヨウゼンの方を向き、不敵な笑みを浮かべると言った、

「ぼく望ちゃんに話があるんだ、君には関係ない話だから自室に戻ってくれないかな? そ・れ・と・も、ぼくと望ちゃんが楽しくおしゃべりしてるところを見たい?」

「ふー… 性格が悪いと言われたことがありませんか? 普賢師弟。まあいいでしょう今日は引き下がりましょう… 今日…はね。いくよ!哮天犬。」

「わん!!」

楊戩が帰った後の短い沈黙のあと太公望が聞く

「…して普賢、話とは何なのだ?」

「実は…」

普賢は何か追い詰めた顔で太公望の問いに答えた、

「実はね…望ちゃんこの間崑崙に帰ってきたのに、ぼくのところ寄ってくれなかったでしょ…その前も、だからぼくもう待つのやめたんだ、望ちゃんの事追っかけて来たんだよ。」

「普賢… ダァ~ホ! な~にを考えておるのだおぬしは! わしはおぬしの顔を見ると戦力をそがれてしまうのだ、ただでさえ少ないやる気がなくなってしまうのだ、それと…これから大きな戦いがあるやも知れぬのにわしはおぬしを危ない目にあわせたくないのだ。」

「望ちゃん… 望ちゃん、ぼく言ったよね、望ちゃんはいつか戦いに身を投じる気がするって、心の奥にぎらぎら光る刃があるって…そのときにはぼくも君の横にいるよって。だから…だから来たんだよ、約束を守るために。」

いつものおっとりとした顔つきではなく真剣な顔で言う普賢を次の瞬間太公望は抱きしめていた。

「ダァーホ! なぜおぬしはそんな約束を覚えておるのだ? 自分の命を落とすかも知れぬのに。」

泣きそうな声で言う太公望に普賢は、

「やだな~。なに泣きそうな声だしてるの望ちゃん、ぼくは十二仙なんだよいつかは戦いに出なくちゃいけないんだ、ただその戦いの守るべきものがみんなは崑崙だけどぼくは望ちゃんなんだよ。ぼくはね、決めてるんだ。ぼくが死ぬのは望ちゃんのためにって、それに、ぼく望ちゃんとだったら心中だってできちゃうよ。」

「ならぬ! 死んではならぬ! 心中はならん! …いや…わしより先におぬしは死んではならぬ! おぬしは死んではならぬのだ。」

「ぼ…望ちゃんそんなむちゃくちゃな…僕ら仙人だって生きとし生ける者、いつかは死んじゃうんだよ? 形あるものが壊れるようにね。」

笑顔で、明るい声で言う普賢に太公望はあふれてくる涙を止めることができずにいた。そのとき『ジリリリリリ! ジリリリリリ!』 太公望の電話が鳴った。

「ぐすっ…すっすまぬ普賢…電話に出てくれぬか? こんな声では恥ずかしくて出られぬ。おぬしが泣かしたのだからのぉ、おぬしが出るのだ。」

「クスクス… ひどいなぁ、いいよ望ちゃんぼくが出てあげる。もしもし、どちら様でしょう?」

「あっあれ? 太公望殿じゃない? って言うか誰だ?」

電話の先で悩んでいる武成王・黄飛虎の声が聞こえた。

「その声は武成王だね、これは望ちゃんの電話だよ、別けあってぼくが出たんだ。あっぼくは望ちゃんの友達ね、で何か望ちゃんに急用かな? ぼくに伝えたれることだったら伝えとこうか?」

「あ…いや…ただ太公望殿ここん所張り切りすぎていてな、あの…なんだ武王でさえも心配してるからあんま無理しないほうがいいって伝えといてほしいんだ。よく寝てよく休めってな、天化たちも心配してるからよ。」

「分かった、伝えとくね。ほかには何か?」

「いやそれだけだ。よろしく頼む。」

ガチャン…

「だってさ望ちゃん。」

「あやつの声は大きいのぉ、こっちにまで聞こえてきたわ。」

苦笑いで答える太公望

「さて、そんな電話をもらってしまってはしょうがない。寝るとするか、普賢おぬしはどうするのだ? 部屋を用意させようか?」

「んー…今日は望ちゃんの部屋に泊まっても良い? いっしょに寝ようよ。」

「普賢おぬし…まさか」

疑いのまなざしを送ってくる太公望に

「ひどいな~。大丈夫だよそんな顔しなくても、ぼくは楊戩とは違うよ。それにぼくが仙人になる前は修行が終わった後、よくいっしょに寝てたじゃない。」

「分かっておる、冗談だ。」

「ふ~ん…望ちゃん。」

「何だ普賢。」

「ぼくが脱ぐの手伝ってあげようか?」

まじめな顔で問う普賢に、

「な…な…なっなにを言っておるのだ普賢!?」

真っ赤になって答える太公望。

「えっ? なにが? だって望ちゃん腕が、しかも利き手がなくなっちゃたじゃない。脱ぐの大変でしょ? ついでに包帯も新しくしてあげる。どうしたの真っ赤になって。」

「なっ…なんでもないわ! 手伝うならさっさと手伝わんか!」

「クスクスクス…」

「笑うでな~い!」

そんなこんなで次の日

「師師来ませんね。どうしたんでしょう。まさか…ちょっちょっと見てきます。」

「何がまさかさ? でも、おれっちも様子見に行くサ」

様子を見に行く楊戩と天化、

「スース、起きて…あっ!」

「どうしたんだい天化君? 師師!? ふっ普賢師弟!? なっなんであなた方が同じベッドで…」

今の今まで寝ていた太公望は浴衣(?) がはだけた状態でのっそり起き上がる、

「ん~? …おっおお…楊戩に天化ではないか、どうしたのだ?」

「いっいや~もうそろそろ進軍する時間になるからさ、だから呼びに来たんだけどさ、お楽しみの途中ならおいて行くさ。」

「何を言っておるのだ天化? わしは寝ていただけだぞ?」

「んん~? あれ~? 望ちゃん、ど~したの?」

布団の中から同じく眠気眼で布団から出てくる普賢、それを見て天化は、

「やっぱりさ…。おれっち先行くさ…。」

呆れ顔で出て行く天化。楊戩は、真っ赤になって

「ふ~げ~んして~い! あなたと言う人は~! 太公望師師に何をしたんですか! まっまさか…」

「まさか…なに?」

わざと太公望に抱きつく普賢、楊戩は真っ青になってしまう。太公望は寝ぼけているのか動じない。

「うーむ、どうやら寝過ごしてしまったようだのぉ。楊戩、わしは着替えてから行くので先に進軍させといてくれぬか? ん? どうしたのだ二人共? 見つめあって。」

「師叔…どこから見たら見つめ合ってるんですか!」

「う~? …ここから。」

「ス~ス…。まあいいです、さっさと着替えてきてください。それではお先に。しつれいします。」

「あっそうだ、夕べの事だけど、だめだよ楊戩、アブナイ事考えちゃ。望ちゃんはそういうの好きじゃないんだから。昨夜みたいな事して信頼を失ったらやでしょ? ただでさえ望ちゃんは信頼するのを恐れてるんだから。この僕でさえうかつな事は言えないだよ。」

楊戩は言葉の意味がわからなかったが、いつもの顔に戻ると太公望のテントをあとにした。

「望ちゃん、楊戩には気付けた方がいいよ、またいつ襲って来るかわかんないから。きっとまだ望ちゃんの事あきらめてないから。」

「ははは、それは勘弁してほしいのぉ。さぁて、着替えるとするかのぉ。ん? なぁ~にか、嫌~な視線を感じるうのぉ…」

太公望が振り向いた先にあるのはドア、その向こう側で申公豹と黒点虎が覗いていた…。

「のぁ~!! おぬし達はそこで何をしておるのだ!」

「やはり…あなたにはこういう気があったのですね、さて黒点虎、賭けは私の勝ちですね。約束忘れてはいませんね。」

「あーあ、負けちゃった。分かってるよ申公豹、忘れてないよ。でも、ぼくは太公望と楊戩だと思ったのにな。申公豹は読みがいいね。」

「何を賭けておるのだおぬしらは! 一体何をしに来たのだ!」

「さぁ、妲己への土産話を仕入れたことですし、もうここには用はありません、いったん朝歌に戻りましょうかねぇ、黒点虎。」

「分かったよ、申公豹。」

「人の話を聞けっちゅーの!」

太公望のことはお構い無しでさっさと行ってしまう、申公豹と黒点虎。

「彼、一体何しに来たんだろうね望ちゃん。」

「わしが知るか! ん? スープーではないかどうした?」

「ご~しゅ~じ~ん早くするッスよ~! いくら楊戩さん達がいても周の軍師である御主人がいないと兵士達が不安がるッス!」

「分かっておる。そうせかすでない、今着替えておろうが。ん? どうした普賢、突然黙りこくって体調でも悪いのか?」

「うんん、望ちゃん、今日は様子を見て来てまたここに戻ってくるんでしょ? ぼく今日はもう帰るよ。」

「何だ、昨夜言っていたのとは違うではないか。」

「それはわかってる、でも今日はなんだか、ぼくは行っちゃいけない気がするんだ。そう、ぼくが手を出してはいけない気が…それに、木たくが待っているしね。やっぱ今日はもう帰るよ。」

「そうか? まあよい、支度も出来たことだし、行くとするか。」

「良いんッスか御主人? おいていっちゃっても、十二仙の普賢さんなら戦力になると思うッスけど…」

心配そうな顔で聞く四不象、太公望は、少しの間何か考えていたが、すぐに吹っ切れたらしく明るい声で、

「よいのだ、こやつは戦いが嫌いだからのぉ。」

「それは望ちゃんもいっしょでしょ?」

「そうだ。わしも戦いは好まぬ、しかしやらねばならん気がするのだ普賢。さて、遅れを取ってしまった、行くぞスープー!」

「ラジャーッス!!」

戦地へと向かう友を見送り普賢はつぶやく、

「そうだね、この戦いは望ちゃんがやらなきゃならないんだ。運命の重さに潰されちゃだめだよ…。がんばれ、太公望!」

 

そのとき普賢には分かって…いや感じていたのだ、太公望の行く先に大きな敵が待っていることを、その敵との戦いで、彼が一回りも二回りも成長することを…。だからこそ成長する前の太公望を見ておきたかったのかもしれない。少しずつ、でも速いスピードで自分十二仙に近づいてくる太公望の事を。

 


 
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