『SCHOOL DAYS』
桂 有希
ここはどこ、わたしは誰?・・・なんてことを聞いたことはないだろうか。もしかしたら聞いたことがある人もいるだろう。決して居ないとは断言できない、しちゃいけない。それは子供に、「じつはサンタさんはね・・・・・・お〇うさんなんだよ」、と言ってその子の夢を壊すのと同じことで・・・大人の希望をぶっ壊してしまうのである。だから言うな。絶対に!
――始まりの入学式――
心地よい風がまるでオレを後押しでもしてるかのように後ろから吹いていた。オレの視界はピンク色だった。・・・別に変な想像はしていない。そこ。変な顔しないでくれ。まあ、そんなこんなでオレの足は私立聖凪高校へと向かっていった。
「ここが聖凪高か・・・」
そう言って一度立ち止まった。そういえばオレが何故視界がピンク色になったかを説明してなかったが、もう一度言う。断じて変な妄想はしていない! ―――あの時、まだ校舎に入る前だった。オレが通う通学路にはオレがあってほしいと願っていた並木道があった。それは実に見事だった。並木道の中心に歩み寄って辺りを見渡した。するとどうだ!そこら中サクラだらけじゃないか!オレは感動してこう思った。そして言った。
「高校生になったぞー!」
「入学式もすんでないのにか?」
痛恨の一撃だった。
「早く会場に行って入学式を受けてこい。高校生になるのはそれからだ」
しっまた。初日から目立っちまった。完全に目をつけられたな
「はい」
そう言って会場に行き、教師から逃げた。
会場に着くと、いろんな学生がいた。真面目そうな人、やんちゃそうな人、不細工な人、綺麗な人、色が黒い人、白い人、中には留学生までもいた。そう考えていると入学式が始まって指定席に腰を掛けた。言うまでもないが、校長先生の雑談が云々と続いた・・・
「・・・長い・・」そう言った時
「以上で、入学式を終わります。皆さん。良い高校生活を!」
そうして生徒、親子さん方はぞろぞろと腰を起こし、会場を出て行った。
「ん~~~。」
背伸びをした。そんな気分だからだ。
「ねえ?」
後ろから突然声がした。どうやら呼んでいるらしく、ゆっくりと振り返った。・・・ここの生徒か?いや。同級生?
「あなたも一年生ですか?」
どうやら同級生のようだ。
「ああ」と言い、続けざまに
「あんたは?」と聞いた。
「すみません。自己紹介がまだでしたね」と慣れた口調で言い
「はじめまして、フリル・カーレルと言います。では、今度は私の番」と自己紹介された。オレは黙って続きを聞いた。
「クラス表の場所が分からないの。知ってたら案内してくれる?」
クラス表か、確か二階の広間に展示してあるってここの校長が言ってたな。・・・あれ?こいつも聞いているはずなのに、どうして?聞いてみるか。
「質問を質問で返すのは失礼だが。あんた、校長が話してる時に居た?」
「ホント失礼ですねー。居ましたよ!ただ、ちょっと目を閉じてただけで・・・」
失礼なのはおまえだ!、とツッコミたいのは置いといて。
「・・・二階の広間に展示してある」
「じゃあ。つれてってください」
「わかった」
しぶしぶと言う。こういう早い奴は苦手だ。と思いつつも案内してしまうオレであった。
このあと。オレは見事!という訳でもないが案内を終えた。そして
「ありがとう!」と言い、「実は私、方向音痴なんです。助かりました」と言った。人に感謝されたのは久しぶりだ。かなり気持が良かった。
「そういえばまだ名前聞いてませんでしたね。フルネームでお願いします」
突然だった。そして当然だった。彼女は自己紹介をしたのにオレはしていなかった。
「ルナ・フォルミリアリカ・・・ルナでいいよ、そっちの方が呼びやすいだろ?」
「はい。ではルナさん!御礼に私がどのクラスか見てきますね☆」、とウインクしてクラス表の方へ走って行った。突然名前を聞いたのはこのためか。
約5分・・その場の椅子に座って少々虚ろになっていたオレに、やっと声をかけてくれた。何を言ったか聞こえなかったが、オレは彼女かと思い
「やっと帰ってきたか。で、オレは何組だったんだ?」と言った。
「何組かは見に行かんとわからんぞ?」
おや?なんだか声が野太くないか。いや、その前にこの声に聞き覚えがあるぞ。と思い顔を上げてみた。
「!」
そう。顔を上げてみると、そこにはさっきの教師が立っていた。
「奇遇だな。お前とはよく会う。クラス表はもう見たか?あと10分たったら鐘が鳴る。それまでに自分の教室に着いとけよ。じゃあな!」
そうして熱血教師が・・・いや、生徒思いの教師がオレの前から姿を消した。あの先生が担任だったらすぐに溶け込めるのに
「わかったよ。それとビックニュース!」
そう思っていたらまた後ろから声をかけられた。あの子だ。見なくてもなんとなくわかる。そしてまた振り向いた
「で、オレは何組だったんだ?」ほとんどさっきと同じセリフを言ってみた。我ながら言葉に欠しい
「えっ、何?〝お帰り〟とか、〝やっと帰ってきたか〟とかは言ってくれないの?ちょっと残念かな」
いいだろう別にそんなこと。それに二言目の言葉はついさっき教師に使ったからどのみち使いたくない
「まあいいや。それよりビックニュースだよ!ビックニュース!」
ここまでテンションが上昇してるんだ。すごいに違いない、と心に思い。期待して聞いてみた
「なにがビックニュースなんだ?」
「私〝達〟2組だよ。それに担任の写真があって、とても怖いけどすっごい優しい先生なんだよ。さっきそこで花壇にお水あげてたんだよ」
なんか性格変わってない?緊張が解れて通常語に戻っただけか?・・それとさっきから気になるんだが・・・
「あの、私達って?」
「私とルナさんだよ。なんでそんなに戸惑っているんだい?もしかして一緒じゃ嫌なの?」
「いや、いきなり一緒だなんて驚いて・・傷つけたならゴメン」そう言って頭を少し下げた。せっかく友達になれそうなのにここで失ってたまるか!
という思いを込めて
「別に謝らなくてもいいけどさ・・・そうだ!早く教室行こう?あと5分だよ、急がなきゃ!2組は二階の奥だよ。会場の反対方向の一番奥!」
そう言って彼女はオレの手を握って2組の教室に連れて行った・・・引きずられて・・かな?その途中で彼女が
「あと私のことは名前で呼んでほしいな☆」さんも付けなくていいよ。と言い放ってまたウインクした。そしてオレも
「じゃあ、オレのこともさん付けしなくていいよ」、と言い。そしてオレはスマイルで返した。彼女も・・・違った。フリルもスマイルで答えてくれた。・・・笑うとフリルも可愛いな。それ以外でも十分に可愛いけど
引きずられながらオレは考えていた。さっきフリルが言ったあの言葉。そう・・「私達2組だよ。それに担任の写真があって、とても怖いけどすっごい優しい先生なんだよ。さっきそこで花壇にお水あげてたんだよ」という部分。もっとも重要なのが「それに担任の写真があって、とても怖いけどすっごい優しい先生なんだよ」という所・・・オレはこの教師について知っている?どこで知った?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・忘れた。もういいや。考えるの疲れた。このまま教室に着くまで少しの間、睡眠をとろう!:そうしよう。・・・「お休み」そう言ってオレは寝た。そしてこのあとに起きることがすべての、始まりだとも知らずに・・・
――ここはどこ? ボクはだれ?――
ゴン!「グッッ・・」どこだここ?
「あっ、ゴメン痛かった?」
辺りを見渡した。中庭のようだ。なぜこんなところで噴水に頭をぶつけてんだろう・・いや待て。思い出すんだ。確かオレは教室に行く途中に寝てしまってー。起きた時にはここにいた。・・いや、違うだろ。とにかくオレ達がなぜここにいるのかフリルに聞いてみることにした。
「ねえ、返事して?もしかして怒ってる?だから何も喋ってくれないのかな?謝るからそろそろ許してよ~」
聞ける状況じゃないなこりゃ。・・・しかたない
「ああ。もうそのへんでいい。許す。だから聞かせてほしい」
「あ!やっと返事してくれたー☆で?何?」
「ここはどこだ?」
「敷地内の噴水前」
「なぜここにいる?」
「わからない。ルナを引きずってたらここに着いちゃった☆」
オレが悪いような言い方をするな!まあ、それはさておき
「迷ったのか?」
「うん☆」
「なんでそんなうれしそうなんだ?」
「だっていくら歩いててもルナと私以外誰もいないんだもん☆」
続けざまに言った
「まるでアダムとイブの夢の楽園みたい☆」そしてウインク。そうかわかった。フリルは天然だ・・・そんなことを思っていたら 「おい!君たち、新年生か?ならなぜこんなとこにいる?怪しい奴らめ」
「あっ良かったね、人が来たよ☆」
だからなんでうれしそうなんだよ!怪しまれてるじゃないか!
「いえ、別に怪しいものではありません」
「うるさい!こいお前ら。校長室に突き出してやる」
人の意見無視ですかコノヤロー
「校長室だって!もしかして私達新入生で最初かな☆」
言うと思ったからセリフを用意していたオレ
「だろうな」
だが、いくら早く返答してもフリルは表情一つ変えなかった。そう。笑顔のまま・・・
そして俺達は新入生最初の校長室行きをくらい。校長先生にこっぴどく叱られたのであった・・なんてのは嘘で、本当の校長先生には会っていない。オレの想像だ・・・だから、これから叱られに行くのだ。正直行きたくはない。当たり前だ!オレは寝てただけだ。なに、心配することはないさ。校長に正直に話すとしよう。そうすればオレは・・いや俺達は晴れて無罪を認められるだろう。オレはそう考えながら校長の前に突き出された。
「校長!怪しい奴らを捕まえました。新入生です。他の新入生はとっくに各自の教室で担当の教師に説明を受けているのにコイツらだけなぜか噴水前にいました。校長、どうします?」
なぜかはこっちが聞きたいわ!
「そうですね。まずはその子たちの言い分を聞こうではありませんか。なにか言いたそうですしね」
「・・・・・」
予想外だった。まさか向こうから話す機会を与えてくれるなんてな
「お言葉に甘えさしていただきます」
「ええ。どうぞ」
「まず、僕達がなぜあんなところにいたかを説明します」
校長は続けて、と言い
「あそこにいたのははっきり言って迷子です。ですがその前に話すことがあります」と言い。オレは包み隠さず全て話した
「そうですか。わかりました。ですが少し遅かったですね」
「えっ?」とオレは言った。まずい。このままじゃ非常にまずい!
「なにが遅いのですか?」一応聞いてみた
「もっと早く来てくれたら・・・」
「あの、それで僕達の罰は・・」せめて軽いのにしてください
「ええ、そのことでしたら害はないです」
「本当ですか!」マジで?
「ええ、本当です。それに迷子はしかたがありませんので、居眠りをしたあなただけということになりますから」
「えっ!でもさっき害はないって、イコール無実なんじゃないの?」
「いいえ、違います。害はありませんが有罪です。よって居眠りをして彼女を遅刻にさせた罪をあなたに与えます」
「オレのせいかよ!」
「ルナ君。ゴメンね」
今頃口を開くな!
「!!!」
突然校長が、俺達を連れてきた教師も沈黙した。
「あのどうしました?」聞いてみる。すると
「失礼ですが、あなた方のお名前は・・」と校長は真剣に聞いてきた。オレの言葉は無視して
「私はフリル、フリル・カーレル」とオレの代わりにフリルが答えた。さすがの天然もこの空気は耐えられないか。校長がフリルの名前を聞いた直後、校長は口を開いた。穏やかな表情で
「あなたは“カーレル家”の・・・そうですか。それで?そちらのあなたの名前は?」
オレが答えようとした瞬間
「ルナ・フォルミリアリカ」フリルが先に答えた。その時
「!!!・・・偶然かしら。まさかね」続け様に
「ルナ君・・あなたお姉さんは?」
なんでそんなことを・・・と思ったが答えることにした。そう決まっていたかのように
「・・・レム・フォルミリアリカ」
「やっぱりね。この子なら・・この罰を与えても、自力で解除してしまうかもね」と言った。そして
「フリルさん、ルナ君・・には言っても無駄ですけど一応言っておきますね」ほんとうは2年からなんですけど、あなた達は特別。と付き加える。オレとフリルは何を言ってるのか分からなかった。校長がそれともうひとつと言って、「この学校は“魔法”が使用できます。だから、生徒への罰は厳しいのです。ですから気をつけて」
気をつけて?・・・害は無いと言っていたが、気のせいか。
「フリルさん。今すぐ後ろに向いてください。ルナ君はこちらに」
オレは校長の目の前に立った
「校長?」
すると校長は手のひらをオレの顔に当てた。その瞬間、校長の手のひらには魔術のような紋章が刻まれていた。顔に当てられてから妙な気分だった。そう感じた瞬間、目の前が光った!光った気がした。その後、目の前が白から黒に・・視界のすべてが真っ暗になった。同時に体の自由が利かなくなり、意識が遠くに感じ、そして悲鳴すらあげられないままこの世から自分という存在が消え・・た・ような気がした。・・・・・「ドサッ」
「フリルさん。もういいですよ。こっちに来て運ぶのを手伝ってください」
今の音なんだろう?そう思いつつ私は振り向いた
「何を運ぶのですか校長先生・・・ルナ?えっ・・なんで!どうして?・・・うそだ・・・・・嘘だァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ」 私はそう言って横たわっているルナに歩み寄った
「そんな・・ぐすっ・・まだ知り合ったばかりなのに、ルナ君が・・ルナ君・・・ルナくぅぅぅんっ!!!」・・・あれ?
あれ?なんでだろ。ルナ君の体温かい!
「ルナ君の体・・温かい・・・死んでないの?!」
「ええ、生きてますよ」
私は少し頭を整理し、今の状況を飲み込んでからもう一度聞いた
「ルナ君は生きてる?」
「はい。〝外傷は〟ありません」
「えっ」〝外傷〟はない?外じゃなかったら、内側?気を失うほどの?
「あなたが今何を考えているかはわかります。ですが、今はルナ君を保健室に運ばなければなりません。わかりますね?」
「・・・」私は無言で頷いた
「では、ジェクト先生。フリルさんと一緒にルナ君を保健室へ」と言い、私達をここに連れてきた教師。ストレ・ジェクト先生が
「わかりました」と一言だけ放ち、私と一緒にルナ君を保健室まで運んだ。
そしてジェクト先生が保健室の先生。ネフリー・ノーレシードことノーレシード先生に事情を話している隙に、私は校長室に行った。ドアを少し開けた時
「待ってましたよ。来るだろうと思っていました」
私はそのままドアを開いた。校長が
「こちらに・・」と言って私をソファに招いた。それと同時に
「お茶でもどう?」と聞かれたが私は断った。とてもそんな気分ではない
「お話があります」私はそう言って校長を見た。しかし校長は
「ルナ君がなぜ倒れたか、ですね?」
「はい」私は短く答え、校長が話すのを静かに待った
「なぜ彼が倒れたかを知るためには知らなければならないことが2つあります。それをまずは聞いてください」
「わかりました。できるだけ短くお願いします」
「わかりました。では・・」校長は私を特別な部屋に招待すると言って、先ほどの噴水前に案内された
「ここに何かあるのですか?」
「ええ」
「とても大切なものが・・」
そう言って校長は噴水に手を伸ばした。・・・ザァァァァァ・・・ 「開きましたよ」
噴水の水がなくなって中にはフープのような輪があり、校長が
「遅れずに付いてきてください」そういって校長は輪の中に入り、そして消えた。私は戸惑った。目の前の人間が突然消えたのだから。 〝遅れずに付いてきてください〟
「・・・行こう」
輪の上に立つと同時に体が光だし、視界が変わった。
「ここは?」どこかの遺跡にような部屋の作りをしている。・・そうだ!
「校長!」
「ここですよ」後ろから声が聞こえた。私はすぐに振り返って校長を探した。この部屋の中心あたりが少し窪んでいる。そこに校長はいた。私は走って窪みに入った。入った途端自分の肌に直接何かを感じた
「それは魔力です」魔力?そんなものおとぎ話じゃ・・
「まあ、いきなり言われても分かりませんよね」
「そういえばルナ君が倒れる前にあなたは確か〝魔法〟と仰いましたよね?まずはそれを説明してもらいましょうか」
校長は軽く咳払いをし
「そうですね。まずは現代になぜ、しかもこの学校の敷地内だけ魔法が使えるのかを理解してもらいましょう。それはこの学校が〝魔法磁場〟と呼ばれる空間の中にあるからです。ここまでは分かりますか?」
「魔法が使える空間がこの学校だということはわかりました。ですが、ひとつだけ引っ掛かります」
「そうでしょうね。もうひとつは、なぜルナ君を傷つけたか。それはここが魔法学校だからです。魔法が使える学校だからこそ、規則を厳しくしなくてはならない。だから、たとえどんな些細なことでも厳しく罰しなくてはならない。だから私は彼を、ルナ君を罰したのです」
くっ・・こんな。こんな理由でルナ君を!
「ちなみにルナ君にはどんな罰を?」
「それは」いやだ。ききたくない、けど。
「記憶喪失です」そんな!
「うっ」嘘だと言ってよ
「では、保健室に行きましょうか」
校長先生の言葉に私は同意した。
噴水から出て、保健室に向かい・・・着いた。
私はノーレシード先生に
「ルナ君はどこにいるのですか?」と聞いた。案内されて
「ルナ君。授業に遅れちゃうよ。最初の授業だよ」
ルナ君は目覚めていない。
校長先生は記憶喪失にしたと言っていた。ゆるさない。
あの校長は絶対に許さない。ゆるさない、絶対に許さない!
罰を与えられるのは私の方だ!私が道に迷ったからいけないんだ!
ルナ君は悪くない。悪いのは私だ!私が罰せられるべきなんだ!
「ルナ君・」
「・・・ルナ君が起きるまで私ずっとここにいるね」
「ここにいるからね」
カラーーーーン・カラーーーーーーン・カラーーーーーン 「・・・」
一人の少年が目を覚ました。
「ここは・・どこ・・僕は・・・誰だ?」
カラーーーーン――――――――
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この作品はフィクションです
実際の登場人物・事件などは一切関係ありません。