No.246467

【マヨヒガ】2.主と式と式と

メルキスさん

※Pixivから転載です☆

連載2回目です。
今回は前回のキャプションに書いていますが、【東方Project】サイドを書いています。
さてマヨヒガでの出来事はどうなるか、自分もわかっていませんが頑張って書いていきたいと思います。

2011-07-30 02:07:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:450   閲覧ユーザー数:444

 10畳程度の和室の一室。

 特に家具もなく、一面に敷かれた畳、そして襖と障子に囲われた部屋。

 部屋の真ん中には古びた蛍光灯の照明がつるされており、煌々と部屋を照らしていた。

 その明かりのした、法衣を身にまとった女性が正座をしながら、裁縫作業をしていた。

 九尾を持つ妖怪にして八雲紫の式【使い魔みたいなモノ】、八雲藍【やくもらん】であった。

 無言で作業をしつつ、時折、凝った肩をポンポンと叩く。

 

 そうしていると、渡り廊下のほうからドタバタという音が聞こえてくる。

 突然障子が開かれ、外の渡り廊下から、あわてて少女が入ってきた。

 「大変です!藍さま、人間が入ってきました」

 息を切らせて入ってきたのは、藍の式であり、猫又である橙【ちぇん】であった。

 

 藍は裁縫作業から手を休めて、橙のほうを見る。

 「うん?確かに入ってきたみたいだな。それがどうした?」

 人間が入ってきたのに、落ち着いている藍を見て、橙はどうして落ち着いていられるかわからないみたいだ。

 「どうして、そんなにゆっくりしていられるんですか?」

 「そうか、橙はここにきて初めてだったね。こちらの世界の人間が入ってくるのは…。そんなにあわてなくても問題はないよ。たぶん、道に迷った旅人だろう。それに昔から道に迷った旅人を、このマヨヒガが招き入れて助けるということはよくあったんだ」

 

 橙は藍の言葉を聞いて安心したのか、ホッと一息ついたようである。

 そして何か思いついたのか、再び藍に聞いた。

 「わたしがこの八雲の家に来て結構経っていると思ったんですが、この家に来るモノが幻想郷の住人以外なんていませんでしたよね。今頃なんで入ってきたんでしょう?」

 橙の質問に少し、考えたようだが藍は答えた。

 「確かに、最近の人間は訪れなくなったみたいだ。中には現実に捕らわれて、見えていないものもいるのだろう。ふつうなら忘れ去られたものは幻想入りするから、幻想郷の住人以外は訪れなくなるのだけどね。そこは紫さまの境界の力で、いかなるところにも存在できるからね。だからこそ今回、外から来る人間は希有な存在なのさ」

 「なるほど。確かに外の世界にお使いに行くとき、外の人間はまるで自分のことを見ていないことがありますね」

 

 橙は藍の言葉にうなずきながら、顔を和ませて続けた。

 「お久しぶりの外の人間、見てみたいですね。どんな人間がきたのかな?」

 「興味があるのか?外の人間だから大丈夫だと思うが見に行くなら気をつけてお行き。ただ、このマヨヒガを見つけた人間だから、人間の里の人間とは違うからね」

 「わかりました。ちょっと見に行ってきますね」

 自らが開けた障子をゆっくり閉じながら、笑顔を返す橙。

 

 部屋には再び、藍一人が残った。橙には安心させる為に話したが、藍自身、気になることが少しあった。

 こちらの世界でまだマヨヒガに入れるほど、昔いた人間に近い人間が今でもいること。

 そして橙は気づいていなかったようだが、入ってきた存在は二人であること。

 橙に比べれば、藍はこのマヨヒガを作った主の直属の式であるから、このマヨヒガの状態も橙より正確に把握できる。

 しかし、二人いるならば、二人がそれぞれ別の方向へ動き出すのに、感じられるのはいつも同じ場所である。

 

 ーまあ、侵入者が赤子連れの親子であれば同じ位置を示すだろう。しかし、ほかに二人が一緒にいるなら…。

 藍は自分が思ったことに対して不安を覚えた。

 そして先ほどまでの裁縫作業をしていたモノや、その道具を部屋の片隅に整理して置き、スクッと立ち上がった。

 そのまま、橙が入ってきた障子ではなく、反対の襖を静かに開ける。

 そこも大きな部屋であったが、藍がいた部屋よりも調度が整っていた。

 

 その部屋に入ると、襖を静かに締める。

 中は所々に置かれた行灯などの間接照明が、淡く光を放っている。

 そして部屋の奥へと歩みを進めるとそこには布団が敷かれており、その布団に座り込んでいるモノに藍は話しかけた。

 

 「起きておいででしたか、我が主よ」

 「さすがに起きているわ。久しぶりの来客があったみたいね」

 藍の言葉に応えた妙齢の女性は藍の主であり、境界を司る妖怪、八雲紫であった。

 「あなたの考えていることはわかっているつもりよ。なんたって、わたしの式だから」

 「で、あればどうなんでしょう?今回の侵入者については…」

 

 主は、考えるそぶりを見せるが、それはめんどくさそうな顔を藍に見せて答えた。

 「そうね。まずは、あなたの式が戻ってくるのを待ちましょう。話はそれからね。あ、橙を行かせたことに後悔している?」

 「いえ、橙とて、将来は八雲の名を継ぐかもしれないモノです。外の世界の人間、いや、幻想郷の住民相手でも自分の身を守ることはできるでしょう。それになにかあれば、私と紫さまとつながっているように、私と橙ともつながっていますから、大丈夫ですよ」

 「強がって…まああなたが後悔しないのであればいいわ」

 

 藍の言葉に合わせるように、うなずく紫。

 そして、おもいっきり背伸びをして、立ち上がる。

 「まあ、どちらにしても、準備が必要ね。もし、相手が楽しませてくれる人なら会いたいし、ふつうの人間なら、そのまま休んで帰るでしょう。だから、藍、あなたも準備を手伝いなさい」

 「御意」

 

 主の言葉にかしずく藍。

 そして、まずは寝間着姿の主の着替えから手伝う。

 これから会うかもしれない、人間の為を迎えるために…。

 


 
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