No.245575

【テスト投稿】ヤイカガシ視点で見た鬼子さんのお話の続き

歌麻呂さん

作品フォルダ漁ってたら見つけた。   内容とかなんにも見てないけど、テスト投稿だからどうなってもどうでもいいや。  とりあえず、オチがないのとヤイカガシのキャラが崩壊してるってことは言える。  ヤイカガシの口調、ゲスゲス言わないんでゲス。 でもこれの方が肌に合うからこのまま本番も行く。多分大きな問題じゃなくなる。

2011-07-29 22:26:43 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:438   閲覧ユーザー数:436

 寝そべると、くしゃりと鮮やかな葉っぱの絨毯が音を奏でた。

 紅葉山に広がっていた朝霧の露だろうか、葉っぱはひんやりと冷たく、火照った全身の熱をそっと吸いとってくれる。

 空は青い。雲一つなく青い。夏のように群青色をしているわけでも、冬のように白んでしまっているわけでもない。青を眺めて、僕は身体を宙に浮かすような気分に浸る。

 とさり、と葉の潰れる音がする。

 僕の隣で鬼子(おにこ)さんが横になって空を眺めていた。ん、と身体を伸ばしている姿がなんともいえない艶めかしさを薫らせる。

「はぁ、軽い運動のあとの伸びって、格別ですねえ」

 気持ちよさそうにため息を漏らしているけれども、僕は違った。確かに気持ちはいいけども、とてもじゃないけど格別だなんて言える気分じゃない。

「二日間走り続けてあとの軽い運動、ね……」

 運動不足の僕にとっては……いや、例えマラソンのランナーだとしてもさすがに四十時間耐久ランはキツイのではなかろうか?

 もう息も絶え絶えで、吸っても吸っても酸素が結びついてくれない。

「ふひぁ~」

 鬼子さんに擦りつくように小日本(こひのもと)が寝転がった。こちらは休む暇なく睡魔と戦っている。

 おかしい。わけが分からない。

 人外の存在にわけも何もないのだろうけど、とっくに合理化されてしまっている僕のような下級の神にとっては、人外な人体構造に困惑するばかりだった。

「はぁ……はぁ……」

 と、僕と同じように息切れして肺をひゅーひゅーと鳴らす存在がいた。

「か、観念したか、姉ちゃんよぉ……」

 ヒワイドリ君だった。

 そう、こいつのせいで……こいつらのせいで、僕らは延々と走り続けられたのだ。

 逃げに逃げ続けた結果、ヒワイドリ一族を少しずつ脱落させることが出来たものの、ヒワイドリ君だけは僕らの逃避行に――鬼子さんのお尻にしっかりとくっついてきたのであった。

「……逃げようと思えばあと二日は逃げられますけどね」

「マジかよ……」

 マジかよ、はこっちのセリフだ。これ以上走ったら天ツ神の住まう世界へ引っ越せざるをえなくなる。

「でも、あなたはヤイカガシさんとも仲が良さそうですし、もし宜しければご一緒に旅をしませんか?」

 その一声に、ヒワイドリ君に圧し掛かる疲労の荷は全て吹き飛んでしまったようだ。

「鬼子ルート来たぜええ!!」

 何を言っているんだ、この卑猥な鳥は。

「宜しくね! 鳥さん!」

 小日本がひょこりと起き上がり、結んだ髪を揺らした。

「おうよ! っしゃあ、早速だが乳の話を――」

 白鳥は、即座にその小さな胸を見つめる。

「――十年後、しようじゃないか」

「じゅーねんご?」

「ああいや、なんでもねえ、なんでもねえんだ」

「むぅ、きかせてくれないといじわるするよ!」

 ぱっと桜を散らして立ち上がった小さな女の子は、てこてことヒワイドリ君を追いかけはじめた。

 幼い子に優しいのか、胸が小さな子にはそのような雑言は慎むのだろう。きっと、小日本とヒワイドリ君はいいコンビを組むことになるんだろうなと、一人心の中で呟いたのだった。

 

 

 

 

「鬼子さん、その、ヒワイドリ君と一緒に旅をしちゃっていいんですか?」

 どうも無意識に敬語を使ってしまう。あんなに鬼を疎んでいたはずなのに。

 とにかく、僕の友人は小日本に対しては害のない存在でいられるだろうけど、鬼子さんに対してはその卑しい気持ちを爆発させるだろう。

「大丈夫ですよ」

 返事はあっけないものだった。

「もし身の危険を感じたら、萌え散らせてあげればいいのですし」

 と、空の薙刀で僕を一突きし、あどけなさの残る笑顔を見せた。

 ……萌え散らせちゃかえって逆効果だってことは先の戦いで証明済みのような気がするけど、その指摘をする気はなかった。

「それに、ヒワイドリさんから単に逃げただけではないんですよ。寄りたいところがあったから、そのついでに逃げてきたって言ったほうが正しいのかもしれません」

「寄りたいところって言うのが、ここなんです――ここなのか?」

 しばらくの間はいつも通りを意識して話そう。別に敬語を使っちゃいけないってことはない。だからこれはきっと僕のねちっこい、ハリボテの自尊を保つためなのだろう。

「うん。もう少し歩いたところだけど」

 小日本がヒワイドリ君を捕らえた。暴れる鳥の首を掴み、ぶんぶんと振り回す。小さな子どもは何事にも本気で取り組む。その意味を何となく理解した。

「あ、思ったんだけど――」

 ふと、疑問に思っていたことを口にする。

「小日本の恋の素を使えば、一瞬でここに着けたんじゃ」

 瞬間移動の能力。あれさえあればどんなところにでも、文字通りひとっ飛びで行ける。ヒワイドリ群も撒くことが出来て、一石二鳥ではないか。

 鬼子さんが少し難しそうな顔をした。神器の解説ほど難解なものはないとある神は語る。単純な神器でさえも、人間が全てを語るならば生涯をその神器に捧げなければならないほどなのだから。

「ヤイカガシ君、あのね、恋の素はどこでも瞬間移動出来るってわけじゃないんですよ。あれはこにぽんと縁を結んだ――つまり、友達になったものの所へ向かうものなんです。

 確かに目的の場所にこにぽんが縁を結んだ方がいます。でも、あの、着地するときにその方の家を壊しかねませんから……」

 ああ、と合点する。あんなものが屋根にでもぶつかったら、きっとその家は粉砕炎上してしまうだろう。この山が黒い炭の山になってしまう可能性も考慮しないといけない。

「ヤイカガシさんは、ヒワイドリさんと一緒に旅するのは嫌ですか?」

「そうじゃないけど……」

 むしろ嬉しい。知り合いがいると言うのはとても落ち着く。でも、絶対鬼子さんに迷惑をかけてしまう。それだけは避けたいところだった。

 小日本が振り回していたヒワイドリ君が宙を舞う。どうやら手を滑らせたようだった。

 そんな微笑ましい光景を見ていると、どうも自分の考えが馬鹿馬鹿しく感じられるようになってきた。

「私は、どんな縁でも大切にしていきたいと、そう思っているんです」

 どこかで聞いたことのある言葉だった。僕はただぼんやりとその話を頭の中でお手玉のようにくるくると回していた。

 さらり、という音と共に、隣の少女は長い黒髪を揺らして起き上がる。

「さあ、行きましょう。もう少し歩かないと」

「あ、ねねさま待って!」

「おいおい、どこ行くんだよ!」

 三つの声と、三つの足音が通り過ぎる。桜の女の子と白い鳥の戯れ事が終わると、木々の葉が擦れる音とヤマドリの鳴き声が世界を支配した。

 ……ああ、小日本が言ってたことを思い出した。せっかく会えたのに別れるのなんて嫌だ、か。この二人は縁をとても大切にしているんだ。

 神器を使う鬼と、神器を使う人間の子……いや、そもそも少女は人間なのであろうか?

「おいヤイカガシ! ふけこんでねえでとっとと来いや!」

 鳥の友人の叱咤で我に返る。そうだ、そんなことはどうでもいい。

 今は、みんなと一緒にいられる、それだけでいいじゃないか。

 獣の遠吠えが聞こえた。物騒なアヤカシに食べられる前に、早く合流してしまおう。


 
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