No.231686 【まどか☆マギカ】LuvToMe(DiscoMix)【ほむあん】2011-07-25 21:57:18 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:595 閲覧ユーザー数:585 |
iPod Touchの電源を入れ、
ブルートゥース接続のイヤフォンをオンにする。
適当に曲を再生すると、
どこかで聞いたことのある音楽が流れ始めた。
Neon signs were shining bright
And in the street lights, you tried to move by
いいだろう。今日のBGMはこれだ。
私は廃ビルの屋上のへりに立ち、
深呼吸をして、
飛び降りる。
風景が流れ、地面が迫り、
激突の寸前、魔力を解放して速度と衝撃を緩衝、
魔獣たちのど真ん中に降りたことを確認しながら、
背負った89式を構えセーフティを解除する。カチリ。
I saw your shadow was fading away
Well, I lost you all of a sudden
ステップライト、ステップライト、
サイトを流しながらドットが乗った瞬間に
バースト、タタタン、タタタン
白い魔獣の頭部が吹っ飛んで、霧のように消えていく
放送が終わったテレビみたいな夜空の下を、
ブラクラを食らったPCの画面みたいにチラシまみれの路地裏を、
走りながら、走りながら、
グレネードのピンを抜いて、ハンドルがすっ飛んで、
ワン・ツー・アンダースロー、ゴミ箱の裏にダイブ
コンマ0.8秒後に、下腹に響く爆音
フラグメントが飛散し、
ガガガッっと音を立ててあたりのコンクリが抉れて、
耳の奥がキーン。
立ち上がって、走る、走る。まだ、走る。
Good-bye my love, I love you too so
Before you went away, I didn't know
コーナーを折れる瞬間、
頭上に89式を向けて、セレクタはフルオート
5.56mmの鉄片が音の壁をぶち破って、
頭上から落ちてきた魔獣を蜂の巣にする。
イジェクタを叩いて軽くシェイク、
プラスティックのマガジンが地面にコロンと転がって、
そのときにはもう次のマガジンを叩き込んでる。
左手でバレルを支えて、
右手でコッキング。
手でコッキングって、なんだか卑猥だ。
Memories awake, only in my dream
When I think I lost them, they all come back to me
阿呆なことを考えながら、左膝をついて、
ニーリングで40ヤード先の標的をヘッドショット、
2体の頭を塵にしたけれど、
3体目が図々しく遮蔽を取る。
魔獣のくせに!
少しエイムを上げて、
89式のバイポッドを外して無理やりマウントしたM203のトリガを引く。シュポン。
40ヤード先で爆発、
ワンテンポ遅れて衝撃波、それから音と爆風が駆け上がってくる。
走れ、走れ。
You said that you love me
Looked at me softly
You kissed me and held me all night so tight
爆発で舞い上がった粉塵と紙屑の下を走る。
さっきのでM203は打ち止め、
89式もこれがラストマガジン。
魔獣の気配を手繰る。その数、たくさん。
89式をスリングベルトで肩がけして、ショットガンを抜く。
瞬間的な火力じゃあこっちのほうが上なんだけど、
日本ではライフルよりも散弾銃のほうが手に入りやすい。
変な国。
寂れ果てた公園に駆け込む。
壊れた仮設トイレの扉が風に吹かれてギィギィと鳴いてる。
既に先客。魔獣様、4名のお待ち。
M500を腰だめにして、
トリガーを引きっぱなしにしてポンピング
限界までチョークを絞った12ゲージのバレルから、
パチンコ弾の群れが撃ち出されていく。
3発撃って2体を穴あきチーズにしたところで、
残った2体の鉤爪が右上と左側面から、
前転してかわしつつ、
ゼロ距離で胴体のど真ん中に1発、
転がった先に降ってきた鉤爪をM500を水平にかざして受け止めて、
その鉤爪を支点にくるりと銃を回して
ポンプを引いて、
焼けたショットシェルが弾きだされて、
トリガーを引いて、
ポンプを戻す。ズドン。
ポンプを引いて、シェルが飛んで、戻す。ズドン。
I know what you're feeling
I know what you're dreaming
All that you feel and everything in your mind
ショットガンに弾込めしながら、
なおも走る、走る。
魔獣の数は、まだまだ「たくさん」。
たぶん、持っている弾の数より多い。
でもそんなの関係ない。
雨がぱらつき始めて、
服が体に貼りつく。
湿ったタイツが重い。
パシャパシャと小さな水たまりを踏みながら、
走る。ひたすら、走る。
マンホールから飛び出してきた魔獣にスラッグを叩き込み、
廃屋の影から湧き出してきた魔獣をグレネードで小屋ごと吹っ飛ばして、
走る。ただただ、走る。
どこまで行けるかなんて、分からない。
いつまで戦えるかなんて、分からない。
でも今は、走る。
弾の切れたM500を捨て、
最後の一発を撃ち尽くした89式を捨て、
隠しておいたチャイニーズAKの重さを心地良く感じながら、
ひたすら、走る。
走って、
撃って、
マガジンを換え、
次の初弾をチェンバーに叩き込みながら、
撃って、撃って、走って、撃つ。
The memories are so clear
So many good years
Sweet ones I hold dear
Can't hold back the tears
銃身加熱でジャムったノリンコを捨て、
最後の砦、DEの弾も尽きた。
でも、魔獣はまだまだ残っている。
かつては不夜城だったビルの谷間を走る、
6車線道路の向こう、
今までよりもずっと大きな魔獣が集まってきている。
その数、20体。
降りしきる雨のなか、
呼吸を整え、
魔力を集中させる。
左手に、ピンクに光る弓が具現化する。
いかなる魔をも打ち払う、神の武器。
I need you by my side
These feelings I can't hide
So don't walk away, boy
Baby won't you bring back
脅威を認めたのか、魔獣たちは物凄い速度で迫ってくる。
半分は、ここまでくる前に灰となるだろう。
でも残り半分は、きっと私を引き裂き、
血と骨と臓物の断片にする。
残念。
そうは、ならない。
Love me...
「杏子!」
私は叫ぶ。
「叫ばなくても分かってらぁ!」
テレパシーが脳内に響く。
「伏せろ、暁美ほむら!」
雨に濡れたアスファルトの上に、伏せる。べしゃり。
内臓を揺さぶる轟音が空気をつんざき、
秒間10発のペースで12.7mmの姿をした破壊の権化が頭上を通りすぎていく。
撒き散らされたカートリッジとリンクが、チャリチャリと音をたてる。
ブローニングM2、通称50Cal。
杏子が運転する軽トラの荷台に設置した前世紀の遺物は、
前の大戦から世界中で使われ続けているその信頼性と威力を遺憾なく発揮し、
あっという間に魔獣の群れを無へと帰した。
敵の気配が消え、
杏子の射撃が終わったので、
私はのろのろと立ち上がる。
疲れた。
軽トラを運転して、杏子がやってきた。
助手席の扉を開け、乗り込む。
「お疲れ」
「……疲れたわ」
「グリーフシードの回収はやっといてやるよ。ちょっと休みな」
「着替えたい」
「帰ったらな」
「ええ、帰ったら」
スバルのエンジン音に身を任せながら、
深く、溜息をつく。
iPodからは、まだ音楽が流れている。
テレパシーで私につないだ杏子が、くすりと笑った。
「なかなかいい趣味してんじゃねぇか。お前、そんな曲、聞くんだ」
「適当にダウンロードしただけよ。誰の曲?」
「忘れた。ポッキー食いながら踊ってたら出禁くらったのしか覚えちゃいねぇよ」
杏子はそう言って笑うと、歌い始めた。
You can
Dancing and grooving all night long
Let's get everybody dance now
聞いたことが、
ある、ような。
ない、ような。
もし聞いたことがあるとしても、
それは、たぶん、
遠い日の思い出。
Can you feel
I just wanna meet you
The beat's on a roll
DJ moves me
杏子の歌を聞きながら、ゆっくりと、睡魔に負けていく自分を感じる。
そうして、いつものように、思う。
どこまで行けるんだろう?
いつまで戦えるんだろう?
でもまだ、終わりは、こない。
イヤフォンを外し、杏子に手渡した。
杏子は嬉しそうにそれを受け取る。
背中で、50Calの銃身が雨で冷やされてシュウシュウと音を立てている。
その好ましい音を聞きながら、私は目を閉じた。
(了)
参考:
Luv To Me (Disco Mix) http://www.youtube.com/watch?v=fpc-VvCGwoU
20,November http://www.youtube.com/watch?v=6HJDSGQVN8I
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魔獣出現後のほむほむ×杏子なSSです。ほむほむ視点。作中の用語が分かる読者は訓練されたミリオタです。