ある女の夢を見た。
地獄を越えた闇の中で、そこだけが白く、水面に映つた満月のような形で浮かびあがる。
その女は、裸の足で軽々と虚空を蹴り、美しい舞を孤島の上で舞つている。
そして突然、しんと動きを止めた。
顔にもつれる金色の髪の隙間から真つ直ぐに此方を見つめ、笑う。笑つている。
何の表情もなく、ただ悠然に、それが胡散臭くも思えるほどに、白々と覗ける顔が、笑う。
地獄に風が、吹いたのだと思つた。それが目に沁みるので、矜羯羅は僅かに身じろいだ。
どこか遠くの方から、何かが近付いてくるようだ。
風に紛れて息遣いが聞こえる。
―――――嗚、人間か。
風が、吹き止んだ。
目の前に、巫女がきた。
矜羯羅は悠然に、白々しく笑つてやつた。
巫女もまた、不快そうに笑い返してきた。
問うた。
余ほどの豪胆か、ただの迷い子か?
解いた。
楽園の素敵な巫女だ、と
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