No.230221

真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第14話 [雪華・オマケ拠点]

葉月さん

拠点第二段になります。

今回の主役は投票で一位を取った雪華と二位のオマケになっております。

オマケの方にはまさかのあの人が!

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2011-07-23 22:49:49 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:9685   閲覧ユーザー数:6533

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第14話 拠点一

 

 

 

 

 

【雪華の一日】

 

《雪華視点》

 

「よいしょっと……ふぅ」

 

私は今、お城の書庫で本の整理をしています。

 

「えっと、これは……あっ。あっちですね」

 

パタパタ

 

「んっしょ!ふぇ~。結構疲れます」

 

何度も言ったりきたりしていると流石に疲れます。

 

「ですが、朱里先生に頼まれたので頑張らなければ!」

 

それは一刻前に遡ります。

 

………………

 

…………

 

……

 

「雪華さん!」

 

「はい!なんでしょうか朱里先生!」

 

朱里先生と雛里先生の執務室で勉強中に朱里先生に話しかけられました。

 

「実はお願いがあるんですけど」

 

「はい!私で出来る事でしたら!」

 

「うん。実は書庫の整理をお願いしたいの」

 

「書庫、ですか?」

 

「はい。雪華さんはまだここに来て日も浅いですし。書庫にどのような本や資料があるかわかりませんよね」

 

「はい」

 

「なので。整理をしてもらいながらどのような本があるかを知っておいて貰った方が良いかと思ったんです」

 

「確かにそうですね。ここでお世話になるのですから少しでも知っておいた方がいいですよね!あっでも……」

 

「?どうかしましたか雪華さん」

 

雛里先生が頭を傾けて話しかけてきました。

 

「書庫って本が多いと思うのですが。一日で終わるのでしょうか」

 

「多分無理ですね。十人くらいの人手がないと一日では終わらないと思います」

 

「ふぇ!?そ、それを私一人でやるのですか!?」

 

「あっ!それは心配しなくても大丈夫です!手の空いている人たちにも手伝って貰える様に頼んでありますから!」

 

「そ、そうですか。よかったです……」

 

私はホッと一安心をしました。

 

「それじゃお願いできますか?」

 

「はい!任せてください!」

 

朱里先生に元気良く頷きました。

 

「ではお願いしますね。今日はご主人様が手伝ってくれるそうなので」

 

「わかりました!……ふえ?ふえええぇぇぇっ!?」

 

………………

 

…………

 

……

 

「ふえぇっ!そ、そうでした!ご主人様が手伝いに来てくださるのでした!ど、どうしよう!」

 

私はご主人様が手伝ってくれることを思い出し慌てだす。

 

「お、落ち着いて雪華。大丈夫。大丈夫だから。深呼吸するの!すー、はー、すー、はー。よし!」

 

ですが、落ち着いてもご主人様が来て下さる事は変わらないのです!

 

ご主人様が手伝ってくれる事はとても嬉しいです。

 

「はっ!何を言っているのですか私は!主であるご主人様にこのような雑務をやっていただくわけには!」

 

そうです!ご主人様の手を煩わせずとも私一人でやって見せます!とわいは言うものの……はぁ

 

書庫を見回し溜め息をつく。

 

そうでした。朱里先生も言っていた通り十人がかりでやり一日で終わる量でした。ですが、ここでめげる訳には行きません!

 

「と、とにかくご主人様が来る前に今日目標にしている分の半分くらいは終わらせておかないと!」

 

私は急いで作業を再開しました。

 

「ふぅ、ふぅ」

 

それから私は先程以上の速さで本の整理をしていきました。

 

「ふぅ、ふぅ。これをここに入れれは……ん~~~~っ!!」

 

背を伸ばし、爪先立ちになり本を本棚の最上段に入れようとしていました。

 

こ、これを入れたらき、休憩にしよう。

 

「は、入って……んーーーーっ!!」

 

もう少しで入る、のに!

 

ほんの少し背が足りずに悪戦苦闘する私。

 

「ここに入れればいいんだね」

 

「ふえ?」

 

急に背後から声を掛けられ私が本棚に入れようとしていた本を掴むといとも容易くその場所に入れてしまいました。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「いいんだよ。それにちょっと遅れちゃったしね」

 

「ふえ?遅れた?……っ!ご、ご主人様!」

 

私は振り返り相手の顔を見ずにお礼をした。

 

そしてその聞き覚えのある声と『ちょっと遅れた』と言う言葉に疑問を持ち顔を上げてみるとそこにはご主人様が立っておられました。

 

「も、申し訳ありません!ご主人様に手伝ってもらうなどと!」

 

「気にしない気にしない」

 

「で、ですが。主であるご主人様にこの様な雑務を……」

 

「どうせ、暇なんだしさ。暇つぶしに手伝わせてくれよ」

 

「で、ですが!」

 

「ほらほら。そんな事してると日が暮れちゃうぞ」

 

「ふ、ふぇぇ~。お、押さないでくださいご主人様ぁ~!」

 

ご主人様は笑顔で次の本棚へと私の背中を押していきました。

 

………………

 

…………

 

……

 

「よし!それじゃ始めようか!」

 

「は、はい」

 

「それじゃ俺は上の棚をやるから雪華は下の棚からお願いね」

 

「わかりました。ご主人様すいません。本当ならご主人様にこの様な事をさせるわけには行かないのですが」

 

「さっきも言っただろ?暇つぶしだって。それに一人より二人の方が早く終わるだろ?」

 

「ふぇ……そ、それはそうですけど」

 

ご主人様の言う事はもっともですが、それでも気が引けてしまいます。

 

「それと雪華が仲間になってくれてから落ち着いて話も出来なかったからさ。丁度いいと思ってね」

 

「お話ですか?」

 

「ああ。やっぱりさ。もっと良く知っておくべきだと思うんだ。仲間になったんだしね」

 

確かにそうですね。私はご主人様を含め、皆さんの事を知らなさ過ぎます。この機会に理解を深めるのもいいかもしれません。

 

「どうかな?」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「ははっ!そんなに身構えなくていいよ。気楽に行こう」

 

「は、はい……」

 

ふえぇ。ちょっと恥ずかしいです。

 

身構えてしまった事をご主人様に指摘されて思わず顔を赤らめてしまいました。

 

「あ、あの!聴きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

「うん。構わないよ」

 

「あの、私が邑に居た時に聞いたのですが。ご主人様はお一人で二万もの黄巾党を一瞬で倒したとか!それも神々しくまさに神ようだったとか!」

 

「は、はは……なんだか尾びれが付いてるな」

 

「ふえ?違うんですか?」

 

「あながち間違っては居ないんだけど。確かに二万の黄巾党と戦はした。でも、実際に俺がやったのは数を半分くらい減らしただけで一人で全滅させたわけじゃないんだよ。それに全然神々しくも無かったと思うよ」

 

「そうなのですか?で、でも!お一人で一万近くの黄巾党を倒したんですよね?すごいです!」

 

「ありがとう。それじゃ今度は俺の番だね」

 

「はい!なんでも聞いてください!」

 

「そうだな~」

 

ご主人様は腕をお組になり何を質問しようかと迷っているようでした。

 

それから一刻が過ぎたくらいでした。ご主人様とお話をしながら本の整理をしている時に事件は起こりました。

 

「ん~!そろそろお昼かな。休憩しようか」

 

「ま、まだ平気です!(くぅ~)」

 

「……お腹はそうは言ってないみたいだね」

 

「ふえ~~~っ!」

 

恥ずかしいです。まさかこんな時にお腹が鳴かなくても!

 

「ほら。雪華も一緒にお昼を食べに行こう。時間はまだあるんだし、食べ終わったらまた本の整理をしようよ」

 

「は、はい」

 

「よし。それじゃ行こうか。俺のお気に入りのお店があるからそこで食べよう」

 

「はい!」

 

私はご主人様の後ろに付いて行きました。

 

「わぷっ!ご、ご主人しゃま?どうかしましたか?」

 

ご主人様が急に立ち止まってしまった為、私はご主人様の背中にぶつかってしまった。

 

「扉が開かない……」

 

「ふぇ!本当ですか!?」

 

「ああ」

 

(ガチャガチャッ!)

 

「ほ、本当です。どうしましょうご主人様!」

 

「誰かが気づいて開けてくれるまで待つしかないかな」

 

「そ、そうですね」

 

「仕方ないから。扉が開くまで書庫の整理をしていようか」

 

「はい」

 

そして書庫の整理を始めた私たちでしたが、私はひとつ気になる事を思い出していました。

 

書庫に整理に来る前に星さんからある噂を聞いていました。

 

『うむ。それはな……書庫に男女二人で居ると風も無く急に扉が閉じられて開かなくなってしまうそうなのだ』

 

ま、まさかそんな事無いですよね。で、でももし本当なら……

 

い、一生このまま?

 

「~~~~っ!!」

 

(ぎゅっ)

 

「し、雪華?」

 

「ふえ!ご、ごめんなさい。なんでもありません」

 

一瞬怖くなり本の整理をしていたご主人様に抱きついてしまいました。

 

ふぇ~。は、恥ずかしいです。

 

そ、それよりも、もしこれが星さんが言っていた噂だとしたら、この扉を開くようにするには……

 

『それは……相手の方に正直な気持ちを話すことだ。そうすると扉は開くそうだ』

 

確かそう言っていましたよね?

 

私はご主人様を見上げてじっと見つめていました。

 

ご主人様に本当の気持ちを告げる。

 

私にとってご主人様ってなんなのでしょうか?

 

勿論。命の恩人であり、私のご主人様です。でも、それ以外に余り考えた事はありませんでした。いえ、ここに勤めるようになってまだ日が浅いのでそこまで考えられていないだけなのかもしれません。

 

なら、この機会に考えてみるのがいいかもしれません。

 

「ん~。雪華。この本は何処にしまえばいいのかな?」

 

「ふえ!?あっ!それはですね。確か……奥から二番目の上から三段目に同じ物が並んでいると思います!」

 

私は整理した本を書に記した物を見て何処に同じものがあるかをお教えしました。

 

「サンキュー」

 

「さ、さんきゅぅ?それも天の世界の言葉なのですか?」

 

「そうだよ。ありがとうって意味なんだ。普段から使ってるから無意識に使っちゃうな~」

 

ご主人様は苦笑いを浮かべながら頭をポリポリと掻いておられました。

 

「い、いえ!私としてはとても勉強になります!」

 

「そ、そう?ならいいけど……」

 

そう言うとご主人様は本を仕舞いに奥の本棚へと歩いて行ってしまいました。

 

「わ、私も本の整理をしないと!」

 

思い出したように積み上げられていた本を手に取り整理を再開しました。

 

「えっとこれは……あっ。あそこですね」

 

それにしても……何でこんなに本がバラバラなのでしょうか?普通なら関連した書籍は同じところにあるはずなのですが。

 

この書庫の殆どがバラバラに保管されていて管理が余りにもずさんでした。

 

「あ、あのご主人様」

 

「ん?どうかしたか?」

 

本を戻し終えたご主人様にお伺いしてみる事にした。

 

「なぜ。こんなに本がバラバラに保管されているのでしょうか?」

 

「あ~。多分、俺達が来る前にいた人たちが整理してなかったんじゃないかな。引継ぎの内容も適当だったしね。きっとそれだけちゃんと政務をして無かったってことだと思うよ」

 

「なるほど。そうでしたか」

 

「ああ。ここに就任してから最初のうちは凄い大変だったよ。朱里も雛里もその内書庫を整理したいって言ってたしね。なんせ欲しい資料が全然見つからないんだからね」

 

「あは、あはははは」

 

苦笑いを浮かべるしかありませんでした。でも、そんなに酷かったというのにご主人様や桃香様、朱里先生たちは弱音を吐くことなくここまでやってこられたのですね。

 

私はその事に感動しました。

 

「はぁ~。それにしてもお腹空いたな。雪華もお腹空いてるだろ?」

 

「そうですね。ですが、出られない以上どうする事もできませんから」

 

「だよな~……あ。そうだ!確か……」

 

「?」

 

ご主人様は何かを思い出したのか急にご自身の服をあさり始めました。

 

「……っ!あったあった!はい、これ」

 

「?干し肉ですか?」

 

「ああ。口寂しい時によく齧ってたんだよ。少しでもお腹に入れとけばなんとかなるだろ?」

 

「それはそうですが……これ、どうしたんですか?」

 

確か食料は朱里先生と愛紗さんが管理していたと思ったのですが……そう言えば。帳簿と合わないって言っていたような。

 

「えっと……ま、まあいいじゃないか!ほら、食べよう!」

 

「だめです!これはちゃんと戻さない(くぅ~)と……」

 

何でこんな時になるんですか。私のお腹の莫迦~っ!!

 

「……」

 

「……ふぇ」

 

「っ!お、落ち着いて雪華!な、泣かなくてもいいじゃないか!か、可愛らしいお腹の音だったよ」

 

「~~~っ!ふええぇぇっ!忘れてくださ~~い!」

 

ご主人様の言葉に一気に顔を赤くして思わず叫んでしまいました。

 

「ふぇ~~~。もうお嫁にいけません~」

 

「だ、大丈夫だから落ち着いて!そんな事ないから!」

 

「そんな事あります~。とても恥ずかしかったんですよ!」

 

「聞いてたのは俺だけだし!」

 

「ご主人様だから恥ずかしいんです~。ふぇ~~んっ!!」

 

「大丈夫だから、落ち着いて」

 

「ふぇ」

 

ご主人様に抱きしめられて優しく頭も撫でられました。

 

不思議とご主人様に抱いてもらうと落ち着いてきて胸の奥から温かくなってきました。

 

「大丈夫だよ。雪華は可愛いんだからちゃんとお嫁さんになれるから」

 

「ふぇ。ほ、本当ですか?」

 

「ああ。俺が保障するよ。絶対にお嫁さんになれるよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「落ち着いた?」

 

「は、はい。すみませんでした」

 

「別にいいんだよ」

 

ご主人様は抱きしめていた腕を解いて私に向って微笑んでくれました。

 

ちょっと残念でしたが仕方ないですよね。

 

それから暫く黙々と書庫の整理をしていましたがあれから四刻くらいでしょうか。窓から入ってくる影で大分日が傾いきていることがわかりました。

 

「う~ん。これは悠長な事言ってられなくなってきたかな?」

 

「ふえぇ。ど、どうしましょうご主人様」

 

あれから誰一人として私たちが書庫に居ることに気が付かず、ずっと閉じ込められた状態になってしまっていました。

 

や、やっぱりあの噂は本当なのでしょうか?だとしたらやっぱり、私がご主人様に私の気持ちをお伝えしなければいけないということでしょうか。

 

私はご主人様を見る。

 

「う~ん。まいったな」

 

ご主人様は頭を掻きながら困った顔していました。

 

そんなご主人様を私は後ろから眺めながら私はご主人様の事をどう思っているのかを考えていました。

 

ご主人様はとてもお強く。一度愛紗さんとの手合わせを見せていただきましたがその強さに驚きました。

 

そしてとてもお優しく、私のような得体の知れぬ者を仕えさせてくださいました。

 

それにはとても感謝しても仕切れないくらいです。ですから少しでもご主人様に恩をお返しできたらと日々頑張っているのですから。

 

そしてなによりご主人様はお父様と同じ雰囲気があります。姿・声は似ては居ませんがお父様は私が泣いている時や困っている時、いつも傍に居てくれました。そして先程のご主人様の様に抱きしめて私が落ち着くまで頭を撫でていてくれました。

 

そうだ!その事をご主人様に伝えれば扉が開くかも!

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

私は思い切って話してみることにした。

 

「あ、あの私。ご主人様に伝えたい事があります!」

 

「こんな時に?」

 

「こんな時だからです!」

 

「……わかったよ」

 

ご主人様に私の真剣さが伝わったのか微笑みながら頷いてくれました。

 

「あ、あの!私!あの時、ご主人様に助けていただいて本当にありがたく思っています!それにそれに!ここで働かさせてくれている事にも!」

 

自分の中にあるありったけの気持ちをご主人様にぶつける。

 

「わ、私はまだ何も出来ませんけど、でもきっとご主人様のお役に立てるようになります!」

 

「うん。期待してるよ」

 

「~~っ!は、はい!」

 

私は満面の笑みで頷いた。

 

ご主人様は私に期待していてくださっている。それだけでとても舞い上がる気持ちになりました。っといけない!まだ言う事がありました!

 

「あと!私、ご主人様の雰囲気がお父様にとても似てて失礼かも知れないんですけれどすごく安心できて、だからご主人様の傍に居るのが……」

 

(ガチャッ)

 

その時だった。私はご主人様に話すのに夢中で開く音が聞こえていませんでした。

 

「ご主人様、こちらにいらっしゃいます「だ、大好きなんです!」か……」

 

ふぅ。言い終えました!これで扉が開けば噂は本当だったって事ですよね!

 

そう思い私は扉に眼を向けてみました。

 

「あ、あれ?愛紗さん?あっ!扉が開いてますよご主人様!……ご主人様?」

 

なぜだか良くわかりませんがご主人様と愛紗さんはお互い固まって動こうとはしていませんでした。

 

「ご、ご主人様~。何処にもいらっしゃらないで心配して探してみれば、この様な場所でな・に・をしていらしたのでしょうか?」

 

「ふえっ!」

 

愛紗さんはとてもいい笑顔ででも全然笑っている雰囲気は無くてとても怖いです。

 

「ち、違うんだ愛紗!これには訳が!」

 

「何が違うのかじっくりとお話を聞かせてもらいたいですね」

 

「あ、あの愛紗さん違うんです!」

 

「雪華は黙っていてもらおう!」

 

「ふぇっ!は、はい……」

 

「では、ご主人様参りましょうか」

 

ご主人様は襟を掴まれてズルズルと愛紗さんに引き摺られて書庫から姿を消してしまいました。

 

私はと言うと、愛紗さんの睨みつられ動く事ができず書庫で呆然とご主人様が連れて行かれた入り口を見ていました。

 

「あれ?雪華さん?どうしたんですか床に座り込んじゃって」

 

「ふえ?あ、朱里先生」

 

どれくらい私は床に座っていたかは判りませんが朱里先生が私に声をかけてくださり我に返りました。

 

「それで、今日の書庫の整理はどれくらい進みましたか?」

 

「三割ほど終わりました」

 

「そうですか。それでは引き続き明日もお願いしますね」

 

「はい!あの、ご主人様は?」

 

「?ああ、なんだか愛紗さんに引き摺られていましたが何かあったんですか?確か今日はご主人様が手伝ってくれたんですよね?」

 

「はい。実は……」

 

私は朱里先生に事の顛末を説明した。説明し終えると朱里先生は苦笑いを浮かべて私に云って来ました。

 

「雪華さん。多分、それ星さんにからかわれたんですよ」

 

「ふえええぇぇぇっ!?そ、そうなんですか!?」

 

思わず大きな声を上げてしまった。

 

「おや。なんだか城内が騒がしいと思ったらなにやら面白い事が起きているようですな」

 

「星さん!」

 

「ん?おお、雪華に朱里ではないか。どうかしたか?」

 

「どうしたじゃありませんよ星さん!私に嘘とつくなんて!」

 

「嘘?はて、私は雪華に嘘を伝えた覚えた……」

 

「書庫の噂の事です!」

 

「おおっ!それか!いやはや本当に信じるとは思わなかったのでな。はっはっは」

 

笑い事じゃないですよぉ。あぁ~!愛紗さんに本当のことを言いに行かないと!

 

私は急いでご主人様と愛紗さんを探しに駆け出そうとしました。

 

「おっと。待つのだ雪華よ。何処に行くつもりだ?」

 

「ご主人様を探しにです!愛紗さんに本当の事を言わないと!」

 

「それでは面白、ごほん!雪華よ冷静になれ。今ここでお前が言っても火に油を注ぐだけだぞ」

 

「で、ですが!」

 

「まあ落ち着け。多分今頃愛紗に睨まれている最中だろう。そんな中行ってもお主では何も出来まいて」

 

「そ、それはそうですけど……」

 

「そこでだ。これを見ろ」

 

「?なんですかこれは?」

 

「これは南の島国から手に入れた貴重な果物でな芭蕉実と言うのだ」

 

「ば、芭蕉実ですか」

 

星さんは抱えていた袋から見たことも無い果物を取り出して説明してくれました。

 

「よいか。今から主を慰める為の秘技を授けよう」

 

「秘技ですか!」

 

「うむ。これで主は元気になること間違いないぞ」

 

「そ、それはどうやればいいんですか!」

 

「まずはだな――」

 

「ふむふむ」

 

私は星さんにご主人様を励ます為の技を教えてもらいました。

 

「は、はわわ……せ、星さん……」

 

その横で朱里先生はなぜか顔を両手で隠してでも指の隙間から覗くようにしてみていました。

 

………………

 

…………

 

……

 

(コンコン)

 

『は、はい。開いてるよぉ』

 

ご主人様の部屋に訪れると部屋の中からご主人様の疲れきった声が聞こえてきました。

 

「失礼します。ご主人様」

 

「あれ?雪華。どうしたの?」

 

「はい!ご主人様を元気付けに来ました!」

 

「元気付けに?」

 

「はい!見ててくださいね!」

 

私は星さんから貰った芭蕉実を取り出した。

 

「へぇ。この世界にもバナナってあるんだね」

 

「ばなな?芭蕉実ではないのでしょうか?」

 

「ああ。俺の世界じゃそう言うんだよ。それでそれをどうするんだい?」

 

「はい!まずは、皮を剥いて……それからこうです。はむ」

 

「?」

 

確か星さんは……

 

「じゅる……んはっ……ぺろぺろ」

 

「っ!?!?し、雪華!?」

 

それから……こうだったかな?

 

「ん……ちゅぷ……お、おきいれふ……ちゅぱ、ちゅる……」

 

うぅ、顎が疲れます。でも、ご主人様を元気にするために頑張ります!

 

「はぅ!」

 

あ、なんだかご主人様が元気になってきたみたいです!よぉし!

 

私はさらに星さんに教えてもらった方法を試してみました。

 

「ぺろぺろ……はむ……ん~、じゅるじゅる……ちゅぷっ、ぺる……」

 

そして最後に……

 

「ふぁ、ふぁいごに……こうふぇふ!……はむっ!もぐもぐ」

 

これでご主人様も元気に……ふぇ?

 

「はぅ!そ、それ、は……(バタッ!)」

 

「ふぇ!?ご、ごひゅじんひゃま!?」

 

「し、雪華……」

 

「は、はい!なんでしょうか!」

 

「男にとって……それはダメ……(ガクッ)」

 

「ふえええぇぇぇっ!?ご、ご主人様!しっかりしてくださいご主人様~~~っ!!」

 

その後、私の声に駆けつけた桃香様、愛紗さんそれに星さんは私が事情を説明すると桃香様に愛紗さんは顔を赤くして、星さんはニヤニヤと笑っていました。

 

その時、星さんの顔を見てまたからかわれたのだと判り、星さんに文句を言おうとしたらそれよりも早く愛紗さんが星さんの腕を掴み歩いて行ってしまいました。

 

桃香様曰く。

 

『愛紗ちゃんは怒らせると怖いんだよ』

 

っと、言っていました。

 

そして、私のした事を桃香様に聞こうとしたら顔を赤くして『ご主人様に聞いてね』なんて言われてしまいました。

 

一体。私がしたことはなんだったのでしょうか?それは今でも判らないままです。

 

《END...》

 

【オマケ:その1(優未の厄日)】

 

《優未視点》

 

「ん~。この一杯の為に生きてるって感じよね~」

 

杯を傾けて喉の奥へと酒を流し込む雪蓮。

 

「そんなにお酒っていいものかな~?」

 

「なによ。優未も好きなくせに」

 

「嫌いじゃないけど。雪蓮見たいに無いと生きていけないって訳じゃないし」

 

「なによ。それじゃ私が無いと生きていけないみたいじゃない」

 

「違うの?」

 

「まあ、否定はしないわね♪ん、ん……ぷはぁ」

 

幸せそうな顔をしてお酒を呑む雪蓮。私はその顔が好きだ。

 

いくら呉の王と言っても雪蓮は一人の人間だ。我儘も言いたい時もあれば弱音だって吐きたい時くらいある。

 

まあ、年がら年中我儘を言ってるとは思うんだけどね。

 

政務を抜け出して街に繰り出すし、冥琳の眼を盗んでお酒を呑むし……あれ?結構やりたい放題やってない?

 

「な~によその眼は。まだ何か言いたいわけ?」

 

「雪蓮って結構やりたい放題やってるよね」

 

「そんな事無いわよ?冥琳に政務をやらされるし、袁術のご機嫌取りもしないといけないしね。もう王なんてやってられないわよ」

 

「あ、あははは……」

 

雪蓮は本当に嫌そうに袁術の事を呼び捨てにしていた。普段は『袁術ちゃん』とか言ってるのに、まあ無理も無いか。袁術には色々奪われちゃってるわけだし。

 

「ねえねえ。天の御遣い君の事どう思う?」

 

「どうって、何がよ」

 

「私たちが呉を取り戻す手助けをしたいってやつ」

 

「どうなのかしらね。今の状況じゃなんともいえないわね」

 

「ふ~ん。雪蓮でも判らない事ってあるんだね」

 

「当たり前でしょ?私を何だと思ってるのよ」

 

「だって、大体いつも『私の勘』で色々やってたんだし。今回も同じ感じで言うのかなって思ってさ」

 

「その勘が働かないのよ。珍しい事もあるものね」

 

「ふ~ん……ん、ん……ふぅ。でも、私が思うに御遣い君、きっと嘘言ってないと思うよ」

 

「ん……何でそう思うわけ?」

 

杯のお酒を一気に飲み干し私を見ながら言ってくる。

 

「だってさ~。こんな時代にあんな事書くと思う?『手助けが出来るかわからないけど力を貸したい』なんて。普通『手助けしてやる』とか『力を貸してやろうか』とかじゃない?」

 

「まあ、確かにそうよね。袁術なら……」

 

『うはははっ!童がお前達に力を貸してやろうというのじゃありがたく思うが良いぞ』

 

『ああん。その人を見下した態度に痺れるぅ♪あこがれるぅ~♪』

 

『うはははっ!もっと褒めるがよいぞ七乃!』

 

「だと思うのよ絶対に」

 

「だよね~。それにさ、態々捕まえた明命ちゃんを逃がしてるんだよ?私は信用してもいいと思うな」

 

「あなたの場合、それだけじゃないでしょ?」

 

「えへへ。まあね~♪」

 

そうなんだよね。私、この御遣い君にすごく興味がある。

 

「ねえねえ雪蓮」

 

「ダメよ。そんなことしたら私が冥琳に怒られるんだから」

 

「ぶーぶー!まだ何も言ってないのに断る理由まで言わなくてもいいのに!」

 

「わかるわよ。あなたの考えてる事なんてね。何年の付き合いだと思ってるのよ」

 

「む~。言わせてくれてもいいのに……んっ!」

 

私は頬を膨らませて杯のお酒を一気に飲み干した。

 

「私だって興味があるんだからおあいこでしょ?大丈夫よ。その内会えるんだから」

 

「本当に会えるのかな?」

 

「きっと会えるわよ。私の勘がそう言ってるんだもの間違いないわ」

 

「御遣い君のことじゃ勘が働かないのに戦となると働くんだね」

 

「煩いわね。そんな事言ってると優未だけ留守番させるわよ?」

 

「わ~っ!ごめん!嘘!流石雪蓮!雪蓮の勘は大陸一だね!」

 

「まったく。調子がいいんだから」

 

「えへへ♪」

 

舌をちろっと出して苦笑いをする。

 

「ん~。それにしてもこのお酒美味しいね。なんてお酒?」

 

「さぁ?」

 

「さぁ?って雪蓮が買ってきたんじゃないの?」

 

「違うわよ。酒蔵にあったいかにも高そうな徳利があったからそれを持ってきたのよ」

 

「え……それってまずいんじゃないの?」

 

「なんで?」

 

「だって。高そうな徳利って事は誰かに献上するお酒とかじゃないの?」

 

「まあいいじゃない。もう呑んじゃってるんだし。それに優未だって呑んだんだから同罪なんだからね?」

 

「えええっ!?私は知らないで呑んでたのに!?」

 

「当たり前でしょ?最初に聞かなかった優未が悪いのよ♪」

 

雪蓮は笑いながら杯を傾けてお酒を呑んでいた。

 

はぁ。これで冥琳に見つかった日にはとんでもない事になりそうだよ。

 

「……ここに居たのか雪蓮」

 

その時私は固く自分に誓った。『今度からお酒の名前を聞こう、と』

 

「はぁ~い。冥琳。何か様?」

 

「はぁ。仕事をサボり酒盛りか、いい加減、に……」

 

あわわわっ!冥琳の顔色が見る見るうちに険しくなって行ってるよ!

 

「……雪蓮。その酒はどうした?」

 

「ん~これ~?これはね。酒蔵にあったやつよ♪」

 

(ぴくっ)

 

うわっ!冥琳の血管が浮き出てピクピク動いてるよ!

 

「雪蓮。まさかわかっていて呑んでいるわけではないでしょうね?」

 

「やっぱり、献上品なの?」

 

「……」

 

私の問いに無言で頷く冥琳。うぅ、あの眼鏡の奥の目が怖い……

 

「あ、あのさ。わ、私は知らなかったんだからね!むしろ私も被害者!」

 

「……むしろ政務をしないでこんな所で呑んでいる時点で同罪ですよ優未」

 

「うぐっ!」

 

「そうそう。同罪同罪♪だから呑みましょ優未♪」

 

ふぇ~ん!雪蓮のばかぁ~~!

 

「そんなわけがあるか!」

 

「ひゃん!いった~い!何するのよ冥琳!」

 

雪蓮は冥琳に頭を殴られて涙目になりながら頭を抑えて冥琳を睨みつけていた。

 

「まったく。今日と言う今日は呆れたぞ雪蓮。少しお灸をすえないとダメなようだな……」

 

「あは、あはは……じょ、冗談じゃないそんなに怒らなくても……」

 

「私は怒ってなどいないぞ。ええ、怒る気にならないわ。呆れているのよ」

 

いやいやいや!どう見ても怒ってるでしょ!その手に持ってる白虎九尾はなに!?

 

「……何か言いたそうな眼だな太史子義よ」

 

「な、なんでもありません!」

 

眼を細めて切れ長の眼が更に細くなり私を睨みつけるように見詰められて思わず直立不動になった。

 

「さあ、行きましょうか孫伯符。執務室があなたを待っていますよ」

 

「いや~!ちょっと助けてよ優未!親友でしょ!」

 

無理!無理無理無理!今の冥琳を止めるなんて私には出来ないよ!

 

「ほう。私を止める、と?」

 

「っ!い、行ってらっしゃいませ!」

 

「ちょ!優未!裏切る気!?薄情者~」

 

ごめん。私まだ死にたくないから!

 

雪蓮は冥琳に引き摺られて執務室へと消えていった。

 

「……天気がいいな~」

 

私はさっきまでの事を忘れたかのように空を見上げて呟いた。

 

「あれ?優未様?こんな所でなにをしているのですか?」

 

「ん?ああ。明命ちゃんか」

 

ボーっと椅子に座りながら空に流れる雲を眺めていると明命ちゃんが話しかけてきた。

 

「先程。雪蓮様が冥琳様に引き摺られていましたが、何かあったのでしょうか」

 

「ちょっとね~。ねえ、明命ちゃん」

 

「はい。何でしょうか?」

 

「世の中には知らない方が幸せってあるよね」

 

「?そうですね。確かにそうかもしれません。それがどうかしましたか?」

 

明命ちゃんは一瞬不思議そうに首を傾けたけど、同意してくれた。

 

「……これなんだと思う?」

 

「?徳利ですか?」

 

「うん。これね……献上の品だったんだって」

 

「え?……えええぇぇぇっ!?ゆ、優未様。呑んでしまわれたのですか!?」

 

「あは、あはは……雪蓮と一緒にね」

 

「だ、だから冥琳様に……」

 

「うん……」

 

「……えと。頑張ってください!」

 

なんとか励まそうとしてくれる明命ちゃん。

 

「うん。がんばるよ。とりあえず、自主的に仕事をしてこようと思うんだ」

 

私は苦笑いを浮かべながら立ち上がり明命ちゃんに近づいた。

 

「?どうかしましたか?」

 

「……明命ちゃ~~~ん!」

 

「はうあ!ゆ、優未様!?」

 

「あ~ん。明命ちゃん!私を慰めて~」

 

私は優未ちゃんに抱きついて頬をスリスリした。

 

「あぅあぅ!苦しいです優未ひゃま!」

 

「うぅ~。明命ちゃんのほっぺはスベスベでモチモチしてて気持ちがいいね~癒されるよ~」

 

「あぅあぅ」

 

「こっちはどうなのかな?」

 

(むにっ)

 

「はうあ!ゆ、優未様!?ど、何処を触っているのですか!」

 

「ん~?胸だけど……へへ♪やわっこいね~。揉みごたえがあるね~」

 

「む、胸なら、んっ!の、穏様の胸を揉めばいいじゃありませんか!んんっ!」

 

「え~。でか過ぎるのは好きじゃないんだよね~。なんかさ『私が大きくしてあげる!』見たいな実感が沸かないし」

 

「そ、それは私の胸が、あんっ!ち、小さいって事ですか!?」

 

明命ちゃんは私に不機嫌そうに言ってきた。

 

「気にしてるの?」

 

「そんなこと言われたら気になりま、ひゃん!」

 

「あはは♪明命ちゃん敏感~♪ほれほれ~♪」

 

「ひゃ……んんっ!や、止めてくだ、さい!あぅ」

 

明命ちゃんは声が出ないように我慢していたけどそれはまた可愛いんだよね。

 

「ここなんてどうかな?そ~れ♪」

 

「っ!そ、そこはダメです!や、ひゃあああぁぁぁっ!……あぅ」

 

胸の突起を摘み上げると明命ちゃんは一際大きな声を上げて足の力が抜けちゃったのか私に寄りかかってきた。

 

「にひひ。気持ちよかったのかな明命ちゃん?」

 

「あぅあぅ。酷いれす優未ひゃま……」

 

明命ちゃんは呂律が回っておらず可愛かったのがもっと可愛くなった。

 

「~~~っ!明命ちゃん。お持ち帰りだよ!」

 

「はうあ!ゆ、優未ひゃま!?」

 

「おっと、優未は私と政務でじっくりと話をしようじゃないか」

 

明命ちゃんを抱き上げて自室へと連れ込もうとした。だけど、私の肩を掴み話しかけてくる声に血の気が去って行った。

 

「め、冥琳?なんでここにいる、の?」

 

「雪蓮との話は付いた。次はお前だ優未よ。あれから時間が経つのにまだここに居たとわな。政務をしていれば今回は大目に見ようと思ったが……」

 

そこで冥琳は私から明命へと目線をずらしてまた私を睨みつけてきた。

 

「これから明命の報告を受けるはずだったのに来ないと思えば……お前が弄んでいたとわな」

 

「痛い痛い!か、肩!握りすぎ!」

 

冥琳は私の肩に置かれていた手に力を入れてきた。

 

「明命を降ろすのだ優未」

 

「は、はい……これでよろしいでしょうか?」

 

「明命よ」

 

「ふぇ?っ!め、冥琳様!」

 

立ち上がろうとした明命ちゃんを手でそのままで言いとさとす冥琳。

 

「そのままでいい。お前は一刻後に私の執務室に来い良いな」

 

「わかりました」

 

「うむ。それまで自室で休んでいるといい」

 

「わかりました。それでは失礼します」

 

ペコリとお辞儀をして歩き出した明命ちゃん。ああ、私の癒し動物が~!

 

「さて。」

 

「ひっ!そ、その手に持っているのはなんでしょうか?」

 

冥琳の笑っていない笑顔に戦慄を感じつつもその手に持っている白虎九尾に目を向ける。

 

「ふふ。聞きたいか?」

 

「……(ぶんぶんっ!)」

 

無言で全力で否定する私。

 

「そう遠慮するな。そうだな。まずは私の執務室にでも来てもらおうか太史子義よ」

 

「えっと……私に拒否権は……」

 

「あると思うか?」

 

「ですよね」

 

「……(ニコリ)」

 

「あは、あはは……」

 

冥琳は無言で微笑み私も引き攣った笑いを浮かべた。

 

その後、私は冥琳に一刻の間、こっ酷く説教を受けた。

 

そして更に。今日中に私の部屋にある書類を全部終わらせて持ってこいとオマケつきだ。

 

「うぅ……なんで私がこんな目に……」

 

「聞いているのですか優未!」

 

「ひ~~んっ!!」

 

《END...》

 

【オマケ:その2(一姫の初めて)】

 

《一姫視点》

 

「るんるんる~ん♪」

 

意気揚々と軽快にスキップをして歩く。

 

「お爺ちゃんからの許可も得たし、もう誰も一姫の道を塞ぐことなんて出来ないんだから!待っててくださいねお兄様!」

 

一姫はボストンバックを背負い直してお兄様が住むマンションへと向った。

 

「こんにちは!」

 

「あらあら。確か一刀さんの妹さんでしたね。確か名前は一姫ちゃんね」

 

「はい!」

 

マンションに着くと入り口前を掃除していた女性の管理人さんの永久さんに声を掛けられた。

 

「話は聞いていますわ。でも……」

 

「?」

 

そこで永久さんは少し困った顔をしていました。

 

「実はね。一刀さんの周りの部屋はもう空いてないのよ」

 

「……えええっ!?」

 

実はここに入居するに当たって事前に連絡を入れてお兄様の隣の部屋にして貰えるように頼んでいた。それが空いて無いってどういうこと!?

 

 

「これがその部屋割りですわ」

 

永久さんはそう言うと一枚の紙を手渡してくれた。

 

 

           庭

1F

――――┬――――┬――――┬――――┬――――┬

    │    │    │    │    │

空き部屋│ 雪蓮 │ 一刀 │ 優未 │空き部屋│

    │    │    │    │    │

――――┴――――┴――――┴――――┴――――┴

           廊下

――――┬――――┬――――┬――――┬――――┬

    │    │    │    │    │

空き部屋│ 琳  │ 愛紗 │ 桃香 │空き部屋│

    │    │    │    │    │

――――┴――――┴――――┴――――┴――――┴

 

 

「……な、なにこれ~~~っ!!」

 

一姫はその紙を見て愕然とした。

 

「な、なんでこんな状況になってるの!?」

 

これじゃお兄様の隣の部屋になれないじゃない!

 

「騒がしいじゃない。一体何の……あら」

 

「あ、すみませ……げっ」

 

私が入り口で騒いでたからなのかマンションの中から文句を言って出てきた人に一姫は謝ったんだけど。その文句を言ってきた人物が……

 

「ふふっ。私に会いに来てくれたのかしら?いいわよ。今夜は一杯可愛がってあげるわ♪」

 

「結構です!」

 

そう。一姫にとって最大の天敵、華澄琳だった。

 

うぅ~。よりによってなんで琳が出てくるのよぉ~!

 

「あら残念。それで?何しに来たのかしら?また一刀に会いに来たの?」

 

「一姫さんはこちらに引っ越してきたのですよ」

 

「そうなの?それはそれは……じゅるり」

 

「……よだれが垂れてますよ」

 

「おっと……歓迎してあげるわ。それで?部屋は決まっているの?」

 

「それが一姫ちゃんの希望の部屋が取れなくてどうしようかと悩んでいたところだったんです」

 

「私の隣に来なさい」

 

「全力で却下します!」

 

琳の隣の部屋になったら身が持たないよ!それだったらまだ桃香さんとか優未の方がマシだし!

 

「あら残念。それで?部屋はどうするのかしら?」

 

「な、なら一姫はおっ」

 

「『一刀と同じ部屋』なんて言わないわよね。仮にもあなたは女。一刀は男なのだから」

 

「う……」

 

一姫が言おうとした事を先に言われ、しかも、一緒に住むなんてありえないと言われて何も言い返せなくなった。

 

「ふふっ」

 

「くっ!と、とにかくまずはお兄様に会って来ます!」

 

「それは止めておいた方が良いと思うわよ」

 

「なぜですか……」

 

「今。お説教中だからよ」

 

「説教?誰がですか?」

 

「一刀に決まってるじゃない」

 

「ええぇぇっ!?なんでお兄様が説教されているんですか!?」

 

「そんなの決まっているじゃない。雪蓮が夜の間に一刀の部屋に忍び込んで朝起こしに来た愛紗に一緒に寝てるところを見られて勘違いした愛紗が怒り出したのよ」

 

「凄い的確な説明どうもありがとうございます」

 

「いえいえ。それで永久」

 

「はい?なんでしょうか」

 

「彼女の部屋は私のとっ」

 

「だから却下です!」

 

油断なら無い人です。琳は……

 

「ちっ」

 

「舌打ちしましたね!今、舌打ちを!」

 

「気のせいよ……永久。部屋が決まったら合鍵を渡しなさい」

 

「それもダメです!」

 

ホント。油断なりません……はぁ。

 

とにかく私はまずお兄様の部屋に行く事にした。

 

「まずは愛紗さんの説教を止めさせないと……」

 

一姫は意を決してお兄様の部屋のインターホンを押した。

 

(ピンポーン)

 

「……」

 

『今取り込み中だ。何のようだ』

 

お兄様の部屋なのにインターホンには愛紗さんが出来ていた。

 

うわ。愛紗さん凄い機嫌が悪い。行き成り取り込み中だは無いんじゃない?

 

「あの一姫です。お兄様に会いに来ました」

 

『一姫殿?これは失礼した。少々お待ちください』

 

愛紗さんは一姫だと分かると少し待つように言われた。

 

(がちゃ)

 

「どうぞお入りください一姫殿」

 

扉が開いて出てきたのはなぜかエプロン姿の愛紗さんだった。

 

「お、お邪魔します」

 

「こちらです」

 

中に入り居間へと案内されるとそこには正座をして座っているお兄様と雪蓮がいた。

 

「ん?一姫じゃないか。どうしてここに?」

 

「ハロ~。一姫。元気にしてた?」

 

「……お兄様。以前お電話で伝えたと思うんですけど」

 

「え?ああ。そう言えば引っ越してくるって言ってたよね。今日だったのか」

 

「はぁ。もう、お兄様ったら……ところでなんで愛紗さんはエプロンをつけているの?」

 

「ん?ああ。今日は私が朝食を作る番だからな。だからこうして部屋に来て見れば……」

 

そこで愛紗さんは正座をしているお兄様と雪蓮を睨みつけた。

 

「とりあえず。お兄様にはちょっと用があるのでお説教はそこの一人にお願いします。いいですか愛紗さん」

 

「ああ、それなら仕方ないな」

 

「ちょっと!私を無視しておいてさらに一人で愛紗のお説教だなんて酷すぎるわよ!ぶーぶー!」

 

「私には関係ありませんから。とりあえずお兄様は一姫と来て下さい」

 

一姫は文句を言っている雪蓮を無視してお兄様を廊下へと連れ出した。

 

「助かったよ一姫」

 

「まったく。ちゃんと鍵をかけておかないからそういうことになるんですよ」

 

「面目ない」

 

頭を下げて謝ってくるお兄様。

 

もう……本当にそう思ってるのかなお兄様は……

 

「はぁ、もういいですよ。いつもの事ですからね。それよりお爺ちゃんから聞いていますか?」

 

「ああ。一姫の面倒をしっかり見ろって言われたよ。それで、部屋は何処になったんだ?」

 

「まだ決まってないの。本当ならお兄様の「あーーーっ!」な、なに?」

 

お兄様と話していると一際大きな声が聞こえてきた。

 

「一姫ちゃんだ~!こんにちは~」

 

「こ、こんにちは」

 

振り返ると満面の笑みで小走りに近づいてくる桃香さんがいました。

 

「桃香。走ると「ふぎゅっ!」転ぶ……遅かったか」

 

な、なんでこんな平坦な場所でこけられるの?

 

「イタタ……えへへ♪」

 

「大丈夫か桃香?」

 

「うん。平気だよ!私、丈夫だから!」

 

「立てるか?」

 

「ありがと。一刀さん♪」

 

うぅ。一姫から見ても桃香さんって可愛いよね。なんだか守ってあげたくなるって言うか……はっ!いけないいけない!一姫はお兄様一筋!これは誰にも譲れないんだから!

 

「えへへ♪久しぶりだね一姫ちゃん!」

 

「は、はい……それより大丈夫ですか?鼻が赤いですけど」

 

「へっ!?ほ、ホント!?」

 

「はい」

 

「一刀さん本当に?」

 

「そ、そんな事無いぞ?ちょっと赤くなってるだけで……」

 

お兄様。それ、赤くなってるって言ってるようなものですよ。

 

「そっか。一刀さんがそう言うなら大丈夫だよね」

 

ええ!?そ、それでいいの!?一姫なら恥ずかしくて顔を隠してもおかしくないのに!

 

一姫は桃香さんの余りにものん気な性格に驚いた。

 

「あっ。そう言えば一姫ちゃんはなんでここに居るの?一刀さんに会いに来たの?」

 

「違うんだよ桃香。一姫は」

 

「一姫。お兄様の居るこのマンションに住むことにしたんです」

 

「へーっ!そうなんだぁ!これからよろしくね一姫ちゃん!」

 

「は、はぁ」

 

桃香さんは凄く嬉しそうに一姫の手を取りブンブンと握手をしてきました。

 

「それでそれで?お部屋はどこなの?」

 

「それがまだ決まってないんです」

 

「そっか~。なら私の隣の部屋においでよ!まだ誰も居ないし!」

 

「ちょっとまったーーーっ!!」

 

「「「え?」」」

 

桃香さんが提案してきた時だった。廊下の奥から大きな声が聞こえてきた。

 

「桃香の隣の部屋に住むのなら私の隣に来なさい。朝から晩まで可愛がってあげるわ」

 

「だ、だから結構です!」

 

マンションの前で振り切ったと思った琳だった。

 

「いいじゃない。なんなら一刀と一晩共にする時は一緒に居てもいいわよ」

 

「ひ、一晩、お兄様と!?」

 

 

『お兄様……』

 

『俺の一姫可愛いよ。もっと可愛いところを見せてくれ』

 

『いや、お兄様。恥ずかしい』

 

『恥ずかしがる事は無いだろ?小さい頃は一緒にお風呂に入ったじゃないか』

 

『もう。そんな子供の頃の話をしないでくださいお兄様』

 

『ははっ。ごめんよ一姫。お詫びに今夜は一杯一姫を可愛がってあげるからね』

 

『お兄様ぁ~♪』

 

『一姫……』

 

………………

 

…………

 

……

 

そして一姫は、一姫は……

 

「……えへ、えへへ♪」

 

「一姫?」

 

「はっ!な、なんですかお兄様!」

 

危ない危ない。危うくトリップしちゃうところでした。

 

「ちっ……もう少しだったのに」

 

琳は琳で舌打ちしてるし。うぅ~!私の弱点はお見通しって事!?

 

「と、とにかく!琳の隣は却下です!まだ雪蓮の隣の方が!」

 

「あら。私の隣でいいの?」

 

「え?」

 

「はろ~ん。一姫」

 

振り返るとそこには雪蓮が笑顔で立っていました。

 

「も~う!そんなに私がいいなら早く言ってくれればいいのに~」

 

「ちょ!は、離れてください!誰があなたなんかの隣に住むものですか!」

 

「だってさっき言ってたじゃない。私の方がいいって」

 

「ま・だです。まだ!本当ならお兄様の隣が良かったのに!なんでこんな事になってるんですか!?」

 

一姫はお兄様を見上げながら睨んだ。

 

「え、えっと……なんでかな?」

 

お兄様は後ずさりしながら苦笑いを浮かべていた。

 

(がちゃ)

 

「も~う。うるさいなぁ~。折角気持ちよく眠ってたのに……あれ?あ~。一刀君だ~♪何々?起こしにきてくれたの?」

 

丁度、優未の部屋の前だったせいか廊下で騒いでいると部屋から優未が出てきた。

 

「あなた。まだ寝ていたの?呆れたものね。もうお昼よ」

 

琳の言うようにまだ寝ていた事に一姫も呆れてしまった。

 

「え~。だって折角の休日なんだよ?ゆっくりと寝たいと思わないの?」

 

「思わないわね」

 

「私も琳殿と同意見です。休日こそ気を引き締めねば」

 

「えっと……私もお昼までは流石に寝られないかな~なんて」

 

「ぶーぶー!雪蓮は私と同じ気持ちだよね!」

 

「ん~。悪いけど私もお昼までは流石にね」

 

「え~!雪蓮まで~」

 

「それに早く起きれば一刀の可愛い寝顔も拝めるもの♪」

 

雪蓮の一言で周りの空気が止まったように感じた。

 

「し、雪蓮さん!また一刀さんのお部屋に忍び込んだんですか!?」

 

「ちょっと雪蓮どういうこと!一刀君については順番だって決めたでしょ!」

 

「え、えっと……あはは」

 

「はぁ。自業自得ね」

 

「雪蓮殿には自重と言う言葉を覚えてもらいたいですね」

 

「もー!だ・か・ら!お兄様は一姫のお兄様なの!だから誰もお兄様の部屋に入っちゃダメーッ!」

 

「何言ってるのよ。いくら一刀の妹だからってあなたにそんな権利は無いはずよ」

 

「確かにそうね。我儘も大概にしなさい一姫」

 

「えっと。落ち着いて一姫ちゃん。喧嘩は良くないと思うな」

 

「流石に妹君でも今回ばかりは承諾し得ませんね」

 

「まあ、一姫の言いたい事もわかるけど。やっぱり好きな一刀君の事だからね。それは私も認められないかな」

 

雪蓮から始まり琳、桃香さん、愛紗さんと来て最後に優未までもが一姫に言った事に対して否定してきた。

 

「まあまあ。みんな落ち着こうよ。ここは穏便に……」

 

「「「全部、あなたのせいでしょ一刀(様)(さん)(君)!!」」」

 

「え~~~っ!?」

 

場を宥めようとしていたお兄様に皆で一斉に声を張り上げた。

 

「あらあら。一体何の騒ぎですか?」

 

「あ。管理人さん!」

 

「あらあら。一刀さん。わたくしのことは永久と呼んでくださいといつも言っているでしょ?それで何が原因なのですか?」

 

「実は、カクカクジカジカ……」

 

「あらあらそれは困りましたね」

 

管理人の永久さんは頬に手を添えて悩み始めました。

 

うわ~。何気ない仕草だけど。綺麗だな~。

 

「あらあら。褒めても何も出ませんよ一姫ちゃん」

 

「え!?わ、私声に出てましたか!」

 

「いいえ。そう思っただけですわ」

 

うぅ。一姫、顔に出やすいのかな?

 

「それはさて置き。こうなった以上はわたくしが部屋を決めてしまっても構いませんか?このままでは埒があきそうにありませんので」

 

「それもそうね。一姫もそれでいいわよね。流石にそれも嫌とは言わないでよ」

 

「そんなこと雪蓮に言われなくてもわかってます。永久さんよろしくお願いします」

 

「あらあら。よろしくされてしまいましたね。それでは一姫ちゃんのお部屋は……」

 

「それでは一姫ちゃんのお部屋は優未さんのお隣の部屋にしましょう」

 

「まあ、それが妥当よね」

 

「まあ、仕方ないわね。贅沢を言えば私の隣だともっと良かったのだけれどね」

 

それだけは絶対にお断り!きっといつの間にか作られた合鍵で部屋に進入されちゃうもん!

 

「えへへ。よかったね一姫ちゃん!私、一姫ちゃんのお部屋に遊びに行ってもいいかな?」

 

「それは構いませんけど。まだ何もありませんよ?」

 

「あっ、そっか。それじゃ私のお部屋に遊びに来て!お菓子とか一杯用意しておくから!」

 

「は、はぁ」

 

「同じ屋根の下で暮らすのだ仲良くしようではないか」

 

「こちらこそよろしくお願いします。愛紗さん」

 

「うむ。まあ、最初は大変だと思うが周りが助けてくれるだろう。もちろん私もな」

 

なんだか愛紗さんって男の人にしたらきっともてるんだろうなと思った。

 

だって凄く男らしいし。

 

「まあ、気楽に行こうよ。みんな言い人たちばかりだし。……琳を除いてはね」

 

「聞こえているわよ優未。またお仕置きが必要かしら?」

 

「っ!あは、あははは~。一刀君助けて~♪」

 

「ちょ!お、俺を巻き込まないでくれ!」

 

「か~ず~と~~?」

 

「だからなんで俺なんだよ!」

 

「あなたが優未を甘やかすからでしょ!このバカズト!」

 

「ぐはっ!」

 

「お、お兄様!?」

 

お兄様は琳に頬を思いっきりひっぱたかれてよろめきながら一姫に……ええ!?ちょ!お兄様、ぶつかる!

 

「んっ!」

 

「んんっ!?!?」

 

「「「「なっ!」」」」

 

「あらあら♪」

 

え?今一姫、お兄様と……え?え?

 

気が動転していて考えが上手く纏まらない。でも、わかっていることがある。それは……

 

お兄様に一姫のファーストキスを奪って貰えたって事!

 

「えへ。えへへ♪お兄様~♪もう一姫はお兄様の物ですよ~♪」

 

「お、おい一姫」

 

「一刀。ちょっと話があるのだけれど。こっちに来てくれないかしら?」

 

「い、いや!待ってくれ!元はと言えば琳が!」

 

「一刀様。さぁ、こちらへ」

 

「愛紗まで!と、桃香!桃香ならわかってくれるよな!あれは事故で!」

 

「うん。わかってるよ。でもね?それとこれとは話が別なんだよ一刀さん♪」

 

「あははっ!まあ仕方ないよね。私も一刀君に少しだけ言いたい事があるから我慢してね♪」

 

「まあ諦めなさい一刀。私は見守っていて上げるからお酒を呑みながらね♪」

 

「掻き回す気満々だろ!うぅ……誰か俺を助けてくれる人は……」

 

「一刀さん」

 

「と、永久さん!永久さんだけは俺の味方だよね」

 

「一姫ちゃんはこちらで預かっておきますのでゆっくりと皆さんとでお話して来てくださいな」

 

「さぁ。行くわよ一刀!」

 

「い、いやだ~!あれは事故なんだ!俺は無実なんだ~っ!」

 

(バタンッ!)

 

「はっ!あ、あれ?お兄様たちは何処に?」

 

「ふふふっ。一姫ちゃん。わたくしのお部屋で美味しい中国茶は如何ですか?」

 

「え?あ、はい。頂きます」

 

「こちらです。ついでにお部屋も決めてしまいましょうね」

 

こうして一姫は永久さんに付いて行き、お茶をご馳走してもらいました。

 

そして、部屋も無事に決まり一人暮らしの第一歩を踏み出しました。

 

そして、その夜。一姫は等身大お兄様抱き枕を抱きしめて昼間の事を思い返していました。

 

「えへへ。お兄様との初キス……いや~~ん♪」

 

あの後、お兄様や他の人たちと会う事はありませんでした。時折、変な呻き声が聞こえてくる事を除いては。

 

「次こそは、お兄様に私の初めてを奪ってもらうんだから!」

 

一姫は新たな決意と共に眠りに就きました。

 

………………

 

…………

 

……

 

――その頃

 

「も、もう許してくれ!」

 

「まだよ。まだ言いたい事が山ほどあるのだから!」

 

「そうです!一刀様には少し自覚をしてもらわなければ!」

 

「うんうん。一刀さんはもう少し女心をわかってもらわないとね!」

 

「三人とも気合入ってるな~。よ~し!私も負けないぞ!」

 

「あはははっ!もっとやれ~♪んっ…んっ…んっ…ぷはっ!お酒が美味しいわ♪」

 

「だ、誰か助けてくれ~~~~~っ!!」

 

《END...》

葉月「ども~!拠点第二話、雪華とオマケ。如何だったでしょうか!」

 

愛紗「なるほどな、前回の星の話がこう繋がって来るとは思わなかったぞ。見直したぞ」

 

葉月「ふっふっふ。まあ偶然偶然なんですけどね!」

 

愛紗「……前言撤回だ。お前はもう少し話の組み立て方をだな……」

 

葉月「おっと!説教臭くなりそうなのでここでゲストを召喚します!いでよ、雪華!」

 

雪華「ふぇ!?こ、ここどこですか!?さっきまで書庫の整理をしていたはずなのに!」

 

葉月「それはお疲れ様です。ここは奥付です」

 

愛紗「すまんな雪華。態々来てもらって」

 

雪華「あ、愛紗さん!」

 

葉月「はいってことで!愛紗の票を抜いて一位になった雪華で~す!」

 

愛紗「……お前、わざと言っているだろ」

 

葉月「さて、雪華。今回のお話はどうでしたか?」

 

雪華「えっと……た、大変でした!」

 

葉月「そうですか。星とのやり取りは如何でしたか?」

 

雪華「そ、そのよくからかわれて……」

 

葉月「迷惑してますか?」

 

雪華「い、いえ!とても良くして頂いています!」

 

葉月「はっはっは。本当の事を言ってもいいんですよ?ここには星は居ませんから」

 

雪華「ほ、本当によくしてもらっています!たまにからかわれる程度で」

 

葉月「なるほど。雪華は良い子ですね~。そう思いませんか愛紗?」

 

愛紗「……何が言いたい?」

 

葉月「偃月刀で私の首筋に当てている愛紗に雪華の純粋さを少しでも分かっていただきたいと」

 

愛紗「ほう……私は純粋では無い、と?」

 

葉月「えっちいことについては凄い純粋ですよね。直ぐに赤くなるし」

 

愛紗「なっ!なな、何を言うのだ貴様は!」

 

葉月「それじゃ、愛紗さんとご主人様が抱きしめ合って」

 

愛紗「わー!わー!わーーーっ!何を言い出すのだ貴様は!」

 

葉月「ほら。直ぐに赤くなる。純粋ですね~。ただ再会して抱き合っただけなのに」

 

愛紗「なっ!」

 

雪華「お、落ち着いてください愛紗さん!」

 

愛紗「だ、大丈夫だ雪華。私は大丈夫だ……ふ、ふふふ」

 

雪華「ふぇ~。全然大丈夫なように見えません」

 

葉月「ホント、愛紗には困ったものですね」

 

愛紗「(ブチッ!)お前のせいだろうが~~~っ!!」

 

葉月「愛紗がキレたーーーーーーっ!!逃げろ~~~~♪」

 

愛紗「お前だけは!お前だけは~~~~~っ!!」

 

雪華「ふえっ!?あ、あの!ちょ!ひ、一人にしないでくださ~~~いっ!!」

 

……

 

…………

 

………………

 

一姫「ちょっと!誰も居ないじゃない!次回の話はどうなってるのよ!」

 

琳「ふふっ♪次回のお話は私と一姫が一線を越える話よ♪」

 

一姫「あ、ありえない!ありえないから!私の始めてはお兄様にっ……ちょ!ち、近づかないで!これ以上近づかないで!」

 

琳「良いではないか良いではないか」

 

一姫「む、無理ーーーーーーっ!!」

 

琳「ちっ!待ちなさい一姫!あなたには女同士のすばらしさを教えてあげるわ!」

 

一姫「そんなすばらしさ要らないのーーーーーっ!!」

 

……

 

…………

 

………………

 

雪蓮「誰も居ないわね」

 

優未「だねー。取り合えず次回の予告して終わりにしちゃえば?」

 

雪蓮「それもそうね。えっと、次回はいよいよ一刀たちが反董卓連合軍に参加しようって所らしいわよ」

 

優未「へ~。ある意味で最初の山場だね」

 

雪蓮「そうね。それにしても愛紗も不憫よね」

 

優未「え?なんで?」

 

雪蓮「だって、どうせ董卓を助けるんでしょ?」

 

優未「多分そうなるよね」

 

雪蓮「ってことはよ?董卓軍で一番の投票数があるのって董卓と呂布だと思わない?」

 

優未「あっ、そっか」

 

雪蓮「もしかして次の投票で愛紗も等々落選!なんて事もありえるってことよ」

 

優未「うわ~。もうそうなっちゃったら葉月はきっと生きていられないね」

 

雪蓮「でしょうね。これを回避するにはどうすればいいと思う?」

 

優未「う~ん……オマケをなくすとか?」

 

雪蓮「それもありね」

 

優未「それもって事はまだあるの?」

 

雪蓮「簡単な話よ。枠を増やせばいいだけでしょ?ゲーム内でも蜀√だけ五人選べたんですもの」

 

優未「あ、そっか!そのてがあったね!

 

雪蓮「でもまあ。枠を増やすって事はそれだけ葉月に負担が掛かるって事なんだけどね」

 

優未「まあ仕方ないよね。愛紗に殺されないようにするにはそうするしか」

 

雪蓮「まあ、その時まで楽しみに待っていましょ♪なんせもう少しすれば私達もちゃんと話に出てくるんですもの♪」

 

優未「だね!早く一刀君に会いたいな~。あっ!でもこのお話だと初対面なんだよね。ちぇ~。ちょっと残念だな」

 

雪蓮「一刀に逢えるんだから贅沢言わないの」

 

優未「は~い。それじゃみんな」

 

雪蓮「また、会いましょうね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「待て~~~~~~~っ!!」

 

葉月「誰が待つものですか~~っ!!……ああ。このやり取りも一体何回目かな?」

 

雪華「ふえええぇぇぇっ!!ま、待ってくださいお二人とも~~~~~っ!!ひ、一人にしないでくださぃ~~~~っ!!」

 

葉月「うん。ここは新鮮だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琳「待ちなさい一姫!痛くしないから!ちゃんとびやっ、ごほん!とにかく待ちなさい!」

 

一姫「いやです!それにびやってなんですかびやって!あと、手に持ってる瓶はなんなんですか!」


 
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