No.229800

真・恋姫✝無双一姫伝・魏 第六話

さん

再構成版六話目です。

2014/12/23・加筆修正

2011-07-22 16:38:27 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4258   閲覧ユーザー数:3851

 

 

遂に動き出した黄巾党。

街を守りながら闘っている私達の所に戦列に加えてほしいとやって来た凪達義勇軍。

彼女達の力添えもあって、なんとか奴らを退けた。

でも、まだ黄巾党との闘いは始まったばかり。

そんな私達を見つめる眼があったことを私は気付かなかった。

 

 

第六話「新しい妹と、母の面影」

 

 

 

「あーあ、流琉ってば早く来ないかなー」

 

中庭でお茶を飲んでいると季衣がそう呟いた。

 

「友達?」

「うん、安全な土地が広がったからボクの村まで手紙が届けられるようになったんだ。だから、ボクの友達にもお城においでって手紙を出したんだけど全然連絡がないんだ」

「それは心配ね。で、どんな友達なの?」

「典韋といってね、姉ちゃんみたいに作った料理がすごく美味いんだ」

「そうなんだ。私も早く会ってみたいわね」

「うん。流琉も姉ちゃんとならすぐに仲良くなれるよ!」

「うふふ、楽しみね」

 

季衣とそんな話をしていると兵士の一人が報告の為にと走って来た。

 

「失礼します!北郷隊長、許緒様、曹操様がお呼びです。すぐに玉座の間までお越し下さい」

 

「華琳が?分かったわ、季衣、急ぎましょう」

「うん!」

 

 

「おまたせ、何かあったの……というか…」

 

「………」

 

「…何があったの?」

 

玉座の間に来ると黄巾党の討伐に出ていたはずの春蘭が華琳の玉座の前で正座をしていて酷く落ち込んでいた。

 

「いやな、黄巾の追撃をしていたのはいいんだが…その際に姉者が奴らの策にはまり袁術の領地に入り込んでしまったらしい」

「はあ?」

「其処に出て来たのが袁術の客将の孫策でな、うまく話を付け協力して黄巾共を仕留めたのはいいのだが……」

「孫策に借りを作ったという訳ね」

「そう言う事だ」

 

「…はあ……」

 

「…華琳様、申し訳ありませんでした」

 

「まあいいわ、ここでいつまでも責めていてもしょうがないわね。何時かこの借りは返せる時が来るでしょう。その時は貴女が責任を持って返すのよ」

 

「はい!この命に代えて」

 

「それで私達に何の用事なの?」

「先ほど戻って来た斥候が持ってきた情報によると、南東にある陳煉という村を黄巾が狙っているらしいの。一姫は北郷隊を引き連れて黄巾討伐に向かって頂戴」

「華琳様、ボクは?」

「季衣には西南に行ってほしいの。お願いできる?」

「解りました!黄巾党なんかギッタンギッタンにやっつけてやります」

「なら、すぐに出るわね」

「姉ちゃん、気を付けてね」

「貴女もね、季衣」

 

「華琳様、我々は?」

「ウチらかて北郷隊やで」

 

凪達は自分達も一姫に付いて行きたいと言うが、華琳はそれを許さなかった。

 

「貴女達は軍に組み込んだ兵達と一緒に調練の仕上げよ。たしかに形にはなってきてるけどまだまだ自分たちの物にはなってないわ。ここで調練をおろそかにすると最後に命を落とすのは貴方達なんですからね」

 

「はい、分かりました」

「しかたないのー」

「ほな、がんばりまっか」

 

 

「あっ!おねえちゃーん」

 

そして私は支度をする為に部屋に戻ると、絵本を読んでいたさやちゃんが私に気付いて抱き付いて来た。

 

「さやちゃん、私はこれから悪い奴らをやっつけに行かなくちゃならないから一人でお留守番できる?」

「え~、おねえちゃんいっちゃうの?う~~、わかった。さや、いいこだからおるすばんしてる。だからはやくかえってきてね」

「ええ、できるだけ早く帰って来るわね」

 

そう言って私はさやちゃんを抱きしめて頭を撫でてあげた。

 

「えへへ♪おねえちゃんいいにおい」

 

 

それから数日立ち、陳煉へと向かい進軍していると、偵察に向かわせていた兵士が慌てふためいて報告に来た。

 

「報告!北郷様、黄巾党はすでに陳煉への攻撃を始めています」

「なんですって!少し遅かったようね。なら急ぎましょう。全員、全速力で進軍!愚かな黄巾共を駆逐するわよ」

 

『応!』

 

「二番隊は街の西側、三番隊は東側、四番隊は南側、一番隊は私と一緒に北側へ進軍!」

「「「「御意!」」」」

 

 

黄巾党もしばらくは抵抗を続けていたが、劣勢が色濃くなると逃げ出して行く。

逃がすものかと追撃をしようしたが、奴等が逃げ出した先から凄まじい轟音が聞こえて来た。

 

ドゴオオオーーーーーン!

 

「何?今の音は」

 

何事かと駆け付けてみると小柄な少女が巨大な円形の武器を振り回しながら黄巾党の賊達を吹き飛ばしていた。

 

「ぐわあーーーっ」

「さっさと街から出て行きなさい!さもないと本気でやっつけちゃうよ!」

「く、くそう!」

 

「何なのあの娘、あんなに小さいのにあの強さ…まるで季衣みたい。それにあの武器……ヨーヨー?」

 

「いくら強かろうが相手は一人なんだ、全員でかかれば……」

「かかれば、何?」

「何だ?おま…ぐはあっ!」

 

バキイッ

 

女の子に襲い掛かろうとしていた賊は槍の一閃で吹き飛ぶ。

 

「えっ?あ、あの貴女は?」

「大丈夫、私達は味方よ。陳留からこの街を守りに来たの。それよりこいつ等に説得は無駄よ、堕ちる所まで堕ちた相手にかけてやる情けはないわ」

「は、はいっ」

「隊長!街の住民の安全は確保しました」

「そう、なら最後の仕上げにこいつ等の大掃除よ」

 

『応!』

 

「ひいいいーーーっ」

 

 

黄巾党を殲滅した後、私はあの女の子と一緒に街の人達の為に炊き出しをしていた。

 

「随分と手際がいいわね」

「ええ、何しろ幼馴染の子が大食らいなもので沢山の料理をするのは慣れているんです。そう言う貴女もかなりの腕ですね」

「まあね、今うちの軍に居る子もかなりの大食らいだからね。許緒という子なんだけど……」

「許緒!?も、もしかして鉄球をもった小柄な子ですか?」

「え、ええ。貴女もしかして許緒…、季衣を知っているの?」

「はい、私は季衣に呼ばれて来たんですけど何処にもいなくて。だからこの街の食堂で仕事をさせてもらいながら探していたんです」

「じゃあ、貴女が典韋という子なの?」

「はい、貴女は季衣とどういうご関係なんですか?」

「私は陳留の刺士、曹孟徳に仕えている北郷よ。季衣も私と一緒に仕えているわ。貴女の事を陳留に呼んだって言ってたけど」

「えっ?で、でもこの手紙には陳煉に居るって書いてあるのに……はあっ、たぶん書き間違えたんでしょう、昔からこんな単純な間違いをする子でしたから」

「あはは…季衣らしいわね、なら私達と一緒に行きましょう。貴女ほどの武があるなら華琳…曹操様も認めてくれるわよ」

「はいっ、お願いします北郷様。私の名は典韋、真名は流琉といいます」

「ええ、季衣も待っているわよ。それと私の真名は一姫よ、これからよろしくね」

 

 

こうして陳煉での黄巾党討伐を終えた私達は流琉を連れて陳留へと帰還した。

 

 

華琳への報告と流琉を紹介するために玉座の間へと入るとそこには同じく華琳への報告をしていた季衣がいた。

 

「あっ、姉ちゃんお帰りなさい……あーーっ!流琉、今まで何処にいたんだよーー!」

「何処にいたも何も…貴女、手紙に陳留を陳煉って間違えて書いてたでしょう!おかげで私はずーーーっと陳煉で貴女を探していたのよ!」

「お城で働いているって書いてたじゃんか、だからお城がある陳留に来ればよかったじゃないか」

「何勝手なこと言ってるのよ!もうお料理作ってあげない!」

「何おーー!そんな事は許さないぞーー!」

 

 

ギャーギャー!

 

 

「……何事なの一姫?」

 

再会した途端にケンカを始めた流琉と季衣を呆然と見ながら華琳が聞いて来る。

 

「陳煉で黄巾討伐を手伝ってくれた娘で典韋という名前よ。季衣の幼馴染でほんとは此処に呼んだはずなんだけどどうやら手紙に街の名前を書き間違えてたらしくて……。でもその武力は確かよ、華琳に紹介しようと思って連れて来たの」

「そう、一姫がそう言うのなら間違いは無いわね。其処の貴女、典韋と言うそうね」

「えっ、は、はいっ!私は典韋と言います」

「一姫に聞いたけどかなりの武があるそうね、その武力私の為に使う気はあるかしら?」

「はい!曹操様の事は噂でよく聞いてます。民の事を親身になって考えて下さると。曹操様の為なら一生懸命に仕えさせていただきます。私の真名は流琉と申します、よろしくお願いします」

「分かったわ、季衣同様に貴女の事も頼りにさせてもらうわ。では私の真名も預けます、これからは華琳とお呼びなさい。さあ、皆も真名を預けなさい」

「私の真名は春蘭だ、これからよろしく頼む」

「私の真名は秋蘭という、頼りにさせてもらうぞ」

「私の真名は桂花よ、お姉様が認めたのなら私も認めるわ」

「私の真名は凪だ、共に華琳様と一姫様の力となろう」

「ウチは真桜や、よろしゅうにな」

「私は沙和なのー、よろしくなのー」

「ボクは季衣だよー、よろ…「ポカッ」痛っ!」

「貴女はいいでしょ」

「ううー、痛いよ姉ちゃん…」

 

『ははははははははははは』

 

「あ、あのー、一姫様、わ、私も貴女の事を姉様とお呼びしても宜しいでしょうか?」

「ええ、いいわよ。私も妹が増えて嬉しいわ」

「じゃ、じゃあ、姉様…」

「あーー!流琉ってば真っ赤になってる」

「こらーー、季衣ーー!」

 

そんな和やかな光景を見ながら笑い合っていると一人の兵士が駆け込んで来た。

 

「失礼します、曹操様!」

「何事か」

「はっ、今城の前に文官志願という者が来ていまして……」

「愚か者!そのような怪しい奴さっさと追い返してしまえ!」

「そ、それが、朝廷よりの紹介状を持ってまして……」

「なら会わない訳にはいかないわね。分かりました、此処に通しなさい」

「御意!」

「華琳様、どう思われます?」

「面白いじゃない、たとえ間諜だったとしても私の覇道は止められないわよ、逆に取り込むのもいいかもね」

 

そうしていると、兵士に連れられて一人の女性がやって来た。

 

「!!……」

 

「曹操様、いきなりやって来たにも関わらずのお目通り、ありがとうございます」

「いいのよ、さて文官志願との事だけどどれだけの実力があるのかゆっくり見せてもらうわよ。力不足と見たらすぐに出て行ってもらう事になるけどいいかしら?」

「はっ、曹操様の期待を裏切らぬように全力をもって答えてみせます」

「…………」

「姉ちゃん、どうしたの?」

「姉様?」

「一姫?」

 

 

私はその女性を見て言葉を失った……

 

何故ならば……その顔は…一度だって忘れた事の無い……。

 

お母さん……の顔だった。

 

 

続く

 

《次回予告》

新たなる仲間も加わり私達は遂に黄巾党との決戦に挑む。

そんな時ある義勇軍と共闘することになった。

そう、彼女たちこそ……

「皆で力を合わせて黄巾党なんてやっつけちゃいましょう」

「我が正義の刃の前に敵はいない」

「鈴々に任せるのだーー!」

「はわわ…」

「あわわ…」

そしてあの女性(ひと)は……

「私の智、見せてごらんにいれます」

 次回・第七話「滅びゆく者ともう一人の王」

貴女の進む道は……

「次回も…「はい。季衣の大好きなお饅頭」わーい!」

「次回も見て下さいね♪うふふふふ」

 


 
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