桔梗√ 全てを射抜く者達 第9射
視点:桔梗
紫苑が来てもう15日になろうとしていた頃、待ちわびた客がようやく来たらしい。
儂が待っていた友人の姪が今しがたこの城に着いたという報告が城の衛兵から来たからだ。
友人の護衛達がこの町で泊まれる準備をしてほしいから姪が先に来たのだろうと思ったのだが、どうやらそのようでは無いらしい。急ぎの用があるから早く面会してほしいと言ってきた。
儂は手を着けていた竹簡を置き、杏里と共に玉座の間へと向かった。
「ひさしぶりじゃな、蒲公英。急ぎの用とは何だ?」
「五胡と賊との戦いが泥沼化して長期戦になりそうなの。
おば様の陣営は皆脳筋ばっかだから、三つ巴の戦いに困っているから、桔梗様に援軍を頼みたいんだけど…。」
「儂一個人としては援軍を出すことは大いに賛成じゃ。友人の一大事じゃからな。
じゃが、幾ら友人と言えども、私事で軍を動かすわけにはいかん。儂は此処の巴郡の君主じゃからな。
蒼の援軍に行ってやるから、糧食の補助と報酬として西涼の馬を貰うぞ。杏里もそれで構わんな。」
「うん、いいよ。それだったらおば様も納得すると思うし。」
「はい。報酬もそれだったら妥当かと思います。西涼の馬を元にして、馬を増やして、我が陣営の騎馬隊の強化ができれば、行軍の効率が上がるので、速さだけでなく、糧食の減少を抑える効果や戦死者を減らす効果が発生するので、今後の戦に良い結果をもたらすと思われます。」
「では、杏里。援軍に行くのは儂と北郷とお前。留守は焔耶と真桜達に任せる。」
「紫苑さんはどうしましょうか?」
「紫苑にも伝えておいてくれ。行くか行かないかは紫苑の好きにさせるが、来たがるだろう。
蒼の所じゃからな。璃々を此処に預けて行くなら、凪が面倒を見てくれるから大丈夫だと伝えておいてくれ。」
「分かりました。では、早速出陣の準備をします。私は糧食の準備をしますので、桔梗様は軍の準備をお願いします。それから、一刀さん呼んできますね。」
「ああ、頼んだ。北郷なら今日の仕事が終わったと言っていたからおそらく中庭の森でハンモックの上で横になって本を読んで居るじゃろう。暇さえできたらあ奴はあそこにおるからな。」
「ねえねえ、桔梗様。桔梗様の所に天の御使い様が来たって聞いたけれども、どんな人?」
「あぁ、そうだな。百聞は一見に如かずじゃ。杏里。蒲公英を連れていってくれ。」
「わかりました。では、馬岱さん着いて来てください。」
「ありがとう。桔梗様。えぇ―っと…。」
「すみません自己紹介が遅れましたね。私は徐庶です。桔梗様が真名を預けているのですから、それなりのそれなりの人柄なのでしょう。私の真名も預けますね。私の真名は杏里です。宜しくお願いします。馬岱さん」
「こちらこそ宜しくね。杏里さん。真名は蒲公英だから、蒲公英って呼んでね。」
「わかりました。蒲公英さん。」
蒲公英と杏里は玉座の間から出て行った。儂は武官を招集し、出兵の経緯と目的を伝える。
一部の武官にここで他の州への出兵は劉焉に警戒されるので出兵は控えた方が良いと言う反対意見もあったが、別の武官は曰く、劉焉は政に興味は無くて劉焉の息子達は跡取り争いで、我々に関心は無いと言った。
新兵に実戦経験を積ませる意味や新しい将である真桜達にここを任せる事で経験を積ませる意味もあり、西涼の馬を手に入れる事で今後の戦の為になると言うと反対していた武官の殆どは納得した。
焔耶に城主代理を任せた。焔耶は政が苦手なので、信頼できる文官に一任した。そのため、焔耶の権限は主に儂の留守を狙って賊が来た時の自衛権だ。あくまで自衛権と討伐委任権だ。賊を討伐する権利を与えて討伐に行くと真っ正面からぶつかって兵に多大な損害を与えることになりうるからじゃ。
そのため、賊討伐は凪に一任する。凪は此処に置いて行く将の中でも比較的に頭の良い方だからだ。
賊が多い時は儂が帰ってくるまで待てと言っておく。勝機の無い無謀な突撃をした後にこの町が襲撃に合った場合、この町の防御力が落ちることになってしまう。
まあ、最近は天の御遣いの名前を恐れて此処を攻めてくる賊が少なくなってきているので、大丈夫だろう。
杏里も同意見だった。だが、万が一のことを考えて備えておくことにした。
視点:杏里
「蒲公英さんは天の御遣いについて何処まで御存じなのですか?」
「うーんとね。普段は温厚だけど、縄張りを荒らす者を容赦なく天の弓で喰らい殺す狼って噂で聞いた。
着いた名前が射撃狼。……ほかには……。」
「容姿や戦い方については何か知っていますか?」
「うーんとね。普段は光る白い服を着ているってのは行商の人から聞いているから、知っているよ。
でも戦場で見た人は居ないって。だから、管路の占いに出てくる天の弓がどんな物なのか知らない。」
「ありがとうございます。確かにあの人が戦う時はアレですからね。」
「アレって何?」
「アレはアレですよ。きゃわわ♬」
「まあ、いいや。蒲公英は自分で確かめるから。」
「あれが天の御使い様の一刀ですよ。一刀さーん!」
「あれ?杏里どうしたの?そっちの娘は?」
「実は……。」
一刀さんは体を起こして本を置き、ハンモックに座った状態でこちらを見て来ます。
私は一刀さんに今起きている事を説明し、これから出兵なので準備をお願いし、蒲公英さんを一刀さんに紹介しました。少し一刀さんは考えごとをしているのか、右手を顎に当てて険しい顔をしていました。
ですが、考えごとがすぐに終わったのか、出兵の準備をすると言ってハンモックから降ります。
「お兄さんが天の御遣い?」
「ああ、そうだけど。馬岱ちゃん。」
「ふーん、強そうに見えない。」
「ですよね♪。この人から弓を取ったら、ゴミクズの最弱の将ですもんね♩」
「……そうですよ。どうせ俺は狙撃を取ったら最弱ですよ。」
「きゃわわ♫ホント弱過ぎですよね。本気の脳筋焔耶に勝てませんもんね。
それどころか剣を持った焔耶にも勝率1割ですもんね。」
「そんなに弱いの?」
「そうですよ。弱いですよ。それより、杏里こんなところで油を売っていていいのか?」
「そこら辺はぬかりありません。文官に糧食の量と輜重隊の用意を頼んでおきました。
私が後やることは糧食の最後の確認と私自身の出兵の準備と紫苑さんに出兵を伝えるぐらいです。」
「さすがは軍師。」
「当たり前です。仕事は迅速に、発想は柔軟に、策は論理的にです。」
「了解。じゃあ、俺も準備をするよ。」
「さっさとしやがれです。きゃわわ♪」
視点:蒲公英
噂に聞いていた天の御遣い様は噂通りの白い光る服を着ている男の人だった。
年齢は蒲公英より少し上で、脳筋焔耶と同じぐらい。
天の御遣い様の強さはあの手加減した脳筋焔耶との勝率も1割だという。将にしては弱過ぎでしょ。
蒲公英でも本気の焔耶との勝率は4割あるのに。あの占い本当に信じて大丈夫なのかな?
「蒲公英よ。噂の天の御遣い様はどうじゃった?」
「あ、桔梗様。どう見ても見た目が少し良いだけの少し強いだけの男の人って感じだったよ。」
「ああ、やはりそう思うか。儂何か初対面の時は変な被りモノをしていたから、人間かどうかすら疑ったぞ。
被りモノを脱いでも兵にしては強いが、将としては弱いなと思ったモノじゃ。」
「本当にあの人が天の御遣い様なの?」
「天の弓を見れば、北郷が天の御遣いだと信じてもらえるのじゃが、今回はそれどころじゃなさそうじゃな。
賊と五胡の三つ巴じゃからな。人手がいくらあっても足りぬ。当然お主も戦場に行って貰うことになるぞ。」
「そうだよね。蒲公英も将として指揮しなくちゃいけないし。」
「お、噂をなんとやらじゃ。お、北郷。お前も馬に乗れるようになったか。」
「焔耶のおかげですよ。非番の日は日が暮れるまで毎日見てもらっていましたから。
おかげ様で乗れるようになりました。今ではここの騎馬隊並みの馬術は習得したつもりです。」
「北郷はそれなりに運動神経が良いからな。今見ていても、大丈夫そうだ。
杏里から話は聞いたと思うが、これから西涼へ行く。相手はお前が言っていた黄巾党と五胡と言う異民族じゃ。
五胡は馬術に長けている連中じゃ。馬に乗っての移動が出来ねば、戦いの最中に背後を囚われてしまうぞ。
落馬なんてすれば、一気に飲まれるから、気を抜くなよ。」
「サー、イエッサー!」
天の御遣いというお兄さんは右手を手刀の形にして右目の上の額に当てて、返事をする。
今思ったんだけど、さっきと比べて天の御使いの服装が変わっている。今は白い服では無く全体的に茶色。
詳しいことを言うのは面倒だから言わないけど、今着ている服装は何か地味だった。
でも、やっぱり見たことも無い形状の服だった。
それに大きな茶色い包みを持っている。大きさは蒲公英ぐらい。肩紐があって右肩に通している。
「ねぇ、御遣い様。それが天の弓なの?」
「ああ、そう言われているな。」
「ふーん。見せてもらっても良い?蒲公英興味あるんだけど。」
「見せてやりたいんだけど、今は面倒だから出すなら、西涼に着いてからにしてもらって良いかな?」
「いいよ。そんなに大きいと馬に乗りながら出すのは手間がかかりそうだからね。」
「ありがとう。」
「では、行くぞ!北郷。杏里。蒲公英。紫苑。」
桔梗様の治めている巴郡を出発して数日で西涼に辿り着いた。
ここ西涼は蒲公英達と少し違った文化の異民族が暮らしている。
異民族は遊牧民が多くて、友好的な異民族は西涼内で遊牧することが許されていて、蒲公英達の生活とは切っても切り離せない関係にある。遊牧民からしても蒲公英達が居なくては困る関係にある。
現におば様が治める町に遊牧民が来て穀物やお酒と羊毛や馬とで物々交換をよくする。
遊牧民から貰った羊毛はとても温かくて、寒い冬にこれは欠かせない。馬もとても速くて丈夫。
だから、蒲公英達は友好的な遊牧民は大好き。
だけど、異民族の皆が友好的とは言えない。西涼は乾燥していて、時々砂嵐が襲うことがあるけど、西涼よりもっと西は砂嵐がもっと強いって聞いた事がある。だから、そのような厳しい環境から逃れようとして、居住できる所を求めて、軍を率いて西涼を攻めてくる民族も居る。
それが『五胡』と蒲公英達の中では言われている。問答無用で攻めてきて略奪してくる野蛮な異民族。
言葉が通じないんだから、脳筋のおば様やお義姉様、焔耶より始末が悪くて困っている。
しかも、強くて多くてしつこいから余計にたちが悪いんだよ。
だから、蒲公英達は好戦的な五胡は大嫌い。
西涼の城に着いた。城壁にはたくさんの兵士が立って、五胡と賊が来ないかどうかを監視しているみたい。
桔梗様の軍だと分かると衛兵は門を開ける。蒲公英と桔梗様の軍は、町の中に入り、城へと向かった。
事態は大きく変化した様子は無いみたい。此処を出た時と比べて町の様子はパッと見、変わっていないもん。
相変わらず、特例で町から外へ出ることはできない様になっている。
そうなっているのは間諜が侵入してこない様にするためと、もし間諜が町の中に潜伏していた場合のことを考えて、間諜がこの町から出られない様にして五胡や賊への情報漏洩を防ぐためにしているって。
変わった所があるとすれば、非常時の事を考えて開けておいた空き地に羊や馬が群れをなしている。
たぶんだけど、町から出ることを禁止されたから、遊牧民がこの空き地に留まっているみたい。
空き地の真ん中に建っているあの天幕は多分遊牧民が住んでいる。
桔梗様の軍を鍛錬場に連れていき、鍛錬場での野営をお願いする。
ここの鍛錬場は馬術の鍛錬もできるように場所を広く取っているから数千人が一時的に泊まるには十分な広さがある。輜重隊の荷車から天幕の柱や布を降ろすと天幕を張りだした。
おば様に帰って来たと報告に行かないといけないから桔梗様と別れて城に戻ろうとしたけど、桔梗様も一緒に来ると言ったので、副官に天幕の設営を任せて、御遣い様と杏里を連れて城へと向かう。
城に着くと、おば様が玉座で待っていると城の衛兵から聞いたので、執務室では無く直接玉座の間に向かった。
何時この町が攻められても戦えるようにしているのか、鎧を着たままの武官が城内を歩いているけど、今から鎧着ていると戦いの時しんどくない?って聞いてみたら、根性で何とかなるって……。
「ただいま。おば様!」
「おう、帰ったか。蒲公英。お勤めご苦労。戦いに備えて鍛錬でもしておけ!」
「いやいや!そこは『長旅疲れただろう。戦に備えてゆっくり休んでおけ』じゃないの?」
「戦は待ってくれんぞ!だから、戦がいつ起こっても良いように体を温める為に鍛錬しておけだ!」
「それって戦の時にばてて疲れない?」
「根性で何とかなるわ!蒲公英!お前は根性が足りないぞ!
翠!蒲公英に根性というモノを教えてやれ!」
「分かったよ。母様。ほら蒲公英行くぞ!」
「えぇ!ちょっと待って今帰ってきた所!」
やっぱり、『類は友を呼ぶ』なのか『脳筋は脳筋を呼ぶ』なのか『子は親の鏡なのか』。
脳筋の君主の臣下と娘はやっぱり脳筋みたい。そして蒲公英も脳筋に染められていくんだ。
うへぇー、ホント勘弁してほしいよ。
視点:桔梗
蒲公英に着いて何とか西涼に辿り着いた。あいかわらず、此処は乾燥していて埃っぽい。
住むには少しばかり不便じゃが、儂が治める巴郡には無い物が多い故、この地は気に入っておる。
友人の蒼が居るし、この暑い時期に異民族から物々交換で手に入る馬乳酒がある。
毎年この時期に集まるのは自治領で作られた酒を飲み比べするという儂らの行事じゃ。
もちろん、外交という名目で毎度経費から旅費を落としていた。このことにちいて文句を言う奴は居ない。
外交もちゃんとやっておるから問題なし!おかげで質の良い羊毛が手に入る。
文句を言う奴は明日から羊毛布団を使うな!冬に凍え死ねばいい!
その行事も蒼の領地で戦が起こったせいで延期になり、長引く戦に儂らが援軍を送ることになった。
「ひさしぶりじゃな。蒼。」
「蒼、元気そうね。」
「オッス!ひさし………………………ぶ…りだな。桔梗。紫苑。
そっちは桔梗の臣下?二人は初めましてだな。俺は馬騰。桔梗と紫苑の飲み仲間で親友だ。
西涼へようこそ!もてなしてやりたいところだが、今は戦中だから酒宴は終わるまで待ってくれ。」
「初めまして、私は北郷一刀と申します。お目にかかれて光栄です。馬騰様。」
「初めまして、徐庶と申します。桔梗様の所で軍師をやらさせて頂いております。」
「そ、そうか。徐庶と北郷一刀か…。」
蒼は手を上げて笑ってらを迎えてくれた。
一瞬だけ蒼は言葉を詰まらせ、ものすごい勢いで瞬きをしたり、目を擦ったり、自分の頬をつねったり、叩いたりして最後には深呼吸をするが、何事も無かったように言葉を続けた。
儂は友人の不思議な挙動に違和感を覚えた。
「今すぐに軍議をしたいところだが、今放っている斥候が帰ってくるまで待ってくれ。
五胡が居る場所と特定できたら、それから軍議を行う。おそらく今日中だろうな。
今はゆっくりしていってくれ。だが、酒は今はお預けだ。いつ五胡や賊が襲ってくるか分からんからな。
あの鍛錬場で天幕を張っているのだろう?長旅に悪天候、天幕張りで疲れているだろうから桔梗の兵の食事はこちらで準備する。っていうか、もう準備させている。
準備が出来たら、こちらから鍛錬場に運ぶことになっている。」
「すまんな。蒼。儂の兵も此処までの長旅は始めてじゃからな。」
「いいさ。気にするな。そればかりか、謝罪するのはこっちだ。俺の戦に巻きこんでしまってスマン!」
「お前の所が荒らされては、馬乳酒が飲めんからな!」
「そうか。はっはっはっはっはっは!
最後に桔梗。お前と話がある。残ってくれないか?」
「構わぬが、どうかしたか?」
「話は二人っきりになったらしてやる。」
「杏里、北郷。紫苑。先に天幕に戻っていてくれ。話が終わったら、儂もそっちへ行く。
飯が来ていたら、さきに食っておれ。飯が出来ておるのに疲れている兵を待たせるのも酷じゃろう。」
「分かりました。」
「サー・イエッサー」
「では、先に行ってるわよ。桔梗。」
蒼との挨拶も終わり、玉座の間から蒼の臣下も杏里と北郷、紫苑も出て行った。
蒼は玉座の間に儂と二人っきりになったのを確認するとこちらにすごい剣幕で走ってきて、後ろの玉座の間の扉に背を向けて、肩を組んでくる。儂に小さな声で話しかけてきた。
「桔梗。お前…。」
「何だ?」
「とうとう結婚したのか?」
「………はぁ!?おいおい、儂はまだ結婚はしておらぬ。」
「隠さなくてもいい。俺とお前の仲ではないか。」
「だから、本当に結婚はしていないって言っておる!」
「………本当に?」
「本当じゃ!」
「ああ、なんだ。違うのかよ。あの北郷一刀という男はお前の夫かと思ったぞ。」
「北郷とはそんな関係ではない!」
「でも、さっき『まだ』って言ったよな?ってことは、何時かは娶るのか?」
「それは言葉の綾だ!用事はそれだけか?」
「ああ、それだけだ。」
「そうか。儂は自分の天幕に行く。ではまた後でな。」
「気になる北郷のそばに居たいという訳だな。」
「………。」
「無視するなよ。桔梗。俺が悪かったから、謝るから。
なあ!だから、ごめんって言ってるだろう?許してくれよ。悪ふざけが過ぎたって謝ってるじゃんか!
だから、無視して出て行こうとするなよ!ききょうたん。」
「ききょうたんとは何じゃ!気持ち悪い!腹が減ったからもう戻るぞ!いいかげん離れい!」
儂は蒼を引きはがし玉座の間から出て、扉を閉める。
扉の向こうでは『ききょうた~ん』という声が聞こえてくる。儂はそれを無視して、天幕の張っている鍛錬場へと向かった。天幕は張り終わり食事も来たのか、兵達は飯を食っておる。
儂は自分の天幕の場所を兵に聞く。天幕の場所はすぐに分かった。
さらに、儂の分の飯は北郷が確保しているらしく、儂の天幕に行けばもう食える状態らしい。
儂は天幕へと向かった。
「おぅ帰ったぞ。」
「おかえりなさいませ。桔梗様。」
「北郷か。ん?杏里はどうした?」
「西涼の町を見学しに行くと言って馬岱ちゃんを助けに行きましたよ。」
「……そうか。」
「桔梗様?どうかなさいました?」
「なんでもない!少し一人にしてくれ。」
「……サーイエッサー。」
北郷は何か戸惑いながらも天幕の外に出ていった。
くそ!蒼があんなことを言うから北郷の事が気になって仕方がないではないか!
前から気にはなっていたが、他人に夫婦だとか言われるとなお気になるではないか!
久しぶりに、一人で飯を食った。美味かったが、味気なかった。
何と言うか、飯を食うことが一人でしている作業のように感じられた。
視点:一刀
何で?俺出て行かされたんだろう?
心なしか桔梗さんはイライラしていた。何か俺悪いことしたのかな?
俺の最近の事を振り返っても、なんかやらかした事は無い筈なんだけどな?
それに、桔梗さんの態度は馬騰さんと会って明らかにおかしくなった。二人で何を話していたのだろう?
あぁ!気になる!知りたいけど桔梗様がアレだと何もできない自分が歯がゆい。
とりあえず、散歩でもして嫌な事は忘れよう。
「ん?あれは?」
鍛錬場で女の子が十字槍を振りまわしていた。この女の子、さっき馬岱ちゃんを引きずっていた娘だ。
さきほどの会話から察するにおそらくこの娘は馬騰さんの親戚の娘だろうな。
馬騰さんのことを母様ってよんでたし。とりあえず、声を掛けてみるか、味方なんだしな。
女の娘は鍛錬が終わったのか汗を拭っている。
「こんにちは、えぇーっと……。」
「ん?あたしは馬超。アンタは?さっき桔梗様と一緒に居たけど。」
「あぁ、馬超さんだったんですか。俺は北郷一刀。北郷か一刀でも呼んでくれ。
桔梗さんの所で一応武官やってます。」
「へぇ、桔梗様の所で武官を。………悪いけどアンタ強そうには見えないよ。」
「はぁー。だろうね。」
面と向かって言われるとやはり凹むものだ。
この世界に来てから散々言われてきたし。まあ、仕方がないよな。だって相手は三国志の英雄なんだもんな。
BurrettM82A1が無かったら、単なるゴミクズ人間だし、ははははは……。
「悪かったよ。言い過ぎたから膝を抱えて座り込むなよ。
でも、アンタ鍛えた方が良いよ。本当に弱そうだし。」
「肝に銘じておきますよ。で、馬超さんこそこんなところで何しているの?」
「ああ、アンタの所の徐庶って子がアタシん所の蒲公英を連れて町見学に行ったから、やることが無くなって暇を持て余していたから、鍛錬していたんだ。」
「馬超さんの得物はその十字槍か。」
「北郷の得物は?」
「ん?俺の得物はBurrettM82A1通称、天の弓。」
「もしかして、アンタが天の御遣い!?」
「一応そう言われているな。」
「じゃあ、ちょっと腕試しと行こうか?北郷。」
「へ?」
馬超さんはニヤリと笑うと重心を落とし、息を深く吐き十字槍を構えた。
馬超さん本気だ。訓練の時に剣を持って相手してくれる焔耶とは違いすぎる。勘弁して貰いたいんだけど。
この世界って武官とエンカウントとすると戦うっていう法則でもあるのか?
「俺、今天の弓持っていないし、勘弁して貰えないかな?」
「何だ。北郷も武官なら常に武器は携帯していろよ。戦はいつ起こるか分からないんだからな。」
そう言って、馬超さんは十字槍をしまう。ってそれ何処に閉まったの?
と、そこへ、城の方から兵が走ってきた。鎧の種類からして桔梗さんの兵では無く、馬騰様の兵のようだ。
馬超様って呼んでいるし。
「馬超様。今から軍議が行われます。今すぐ玉座の間にお越しください。」
「分かった。町探索に行っている蒲公英と桔梗様の陣営の徐庶という軍師を連れて行くから母様に伝えておいてくれ。」
「御意!」
「じゃぁ、北郷。軍議でな!」
メェー( ゚∀゚)o彡°黒山羊です。
最近暑い日が続いていますね。ビールが飲みたくても薬を飲んでいるせいで飲めていないので、アルコールパワーが完全に切れています。暑い。疲れた。
なんか、夏バテに効くモノが欲しくなりますね。
鰹のたたきとか、ウナギのかば焼きが良いですね。で、キンキンに冷えたビールは冷酒ですな。
かば焼きで思い出したのですが、来週我がゼミでナマズをかば焼きにして食べようという話になっています。
実に楽しみです。噂ではナマズは肉厚であっさりしたウナギだそうです。
現在ナマズは泥抜きの為に衣装ケースにほりこまれて、我が研究室で飼われています。
次の時に味を伝えようと思います。
では、恋姫の話に移りましょう。今回の話はどうだったでしょうか?
桔梗さんの友人が登場しました。その名も馬騰。真名は蒼と書いて(そう)と読みます。
属性は読んでいて分かった方も居ると思いますが、ボーイッシュ系で脳筋ですが、イジリキャラです。
蒲公英と一緒に翠をからかったりするのが趣味という設定です。
だから、桔梗さんが一刀を連れてきた時に桔梗さんを弄った訳ですね。
それから、『第2回同人恋姫祭り』の告知を行いました。
今回は前回の反省点を生かして、宣伝力を上げて、制作期間を延長してみました。
楽しみで仕方がないです。
では、最後になりますが、いつもので閉めましょう。
それでは御唱和下さい。
へぅ( ゚∀゚)o彡°
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薬を飲んでいるので酒が飲めなくて干からびそうな黒山羊です。
最近手が震えるのは気のせいか?
あぁ、酒が飲みたいな。
ビールにワイン、日本酒に、ジン、ウォッカにスピリタス!
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