No.228072

5分だけのわがまま(聖霊機ライブレード) 後編

いず魅さん

だいぶ間が開いてしまいましたが、『5分だけのわがまま』後編です♪

タイトルの由来は。。。
80年代ロボットアニメがお好きな方はおわかりですね(^_^;)

2011-07-15 11:56:31 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:720   閲覧ユーザー数:713

     

 

 

        ★5分だけのわがまま 《後編》★

 

 

《前編のあらすじ》

 

 ゼ=オードの攻撃からアイを庇い瀕死の重傷を負ってしまったヤマトは

 

 ガボンの魔改造(笑)により一命を取り留める。

 

 だが、ガボンの悪戯心によってヤマトは人間の女の子として生まれ変わることになったのだっ

 

た。

 

 そんなヤマトの変貌ぶりにトウヤは戸惑いを隠せなかった----------

 

 

 

 

それから一週間---------

 

 

 すっかり回復したヤマトはリーボーフェンのクルーの一員として周囲に溶け込んでいた。

 

しばらくするとトウヤの幼馴染のカスミもアガルティアへ召還され、リーボーフェンは一層賑や

 

かになった。"人間"としての暮らしにも漸く慣れてきたヤマトは艦内の人間模様を楽しんでいた。

 

当初はユミール狙いだったフェインが今度はカスミを追っかけていることとか、アーサーが意外と

 

薀蓄垂れなこととか、クロビスの節操のないこととか・・・。

 

(ホント、人間って面白いわね)

 

 でも、最近一番気になることと言ったら、やっぱりトウヤを取り巻く女の子のことだろうか?

 

 身内(ヤマト)の目から見てもトウヤはカッコイイし、クールなようでいて実は素朴なやさしさを

 

持っている青年だということもヤマトは知っていた。そんなトウヤをリーボーフェンの女の子たち

 

が放っておくはずもなく、ふと見るとトウヤはいつも女の子たちに囲まれていた。

 

 トウヤの方もライブレード操者としての立場上、パートナーを一人選ばなければならず、苦悩し

 

ているようだった。

 

 そんなトウヤに猛アタックをかけているのは最近リーボーフェンに乗り込んだレオーネである。

 

まだまだ素性の知れない少女であるがしょっちゅうトウヤを追いかけていた。当のトウヤはという

 

と特に警戒するでもなく彼女を受け入れていた。但し、積極的なレオーネにたじたじといった様子

 

だが--------。

 

「ねぇ、トウヤ。ボクにリーボーフェンの中を案内してよ」

 

 ある日、レオーネは無邪気に笑ってそう言うとトウヤの腕を取って走り出した。

 

「あ、えっ? ちょっ・・・レオーネ、待てよ」

 

「早くってば」

 

「今日じゃなくてもイイだろ? また今度、な」

 

「ケチーッ」

 

「ケチって・・・あのなぁ」

 

 めいっぱいアッカンベーをしたレオーネにゴメンと手を合わせると、トウヤはヤマトの部屋へ向

 

かった。以前はトウヤもヤマトも一緒の部屋だったのだが、人間の女の子と変わらなくなってしま

 

ったヤマトを男の子と同室にしておくわけにもいかず、ふたりは別々の部屋になったのである。

 

 ヤマトのケガが回復してからこっち敵の襲撃が立て続けにあったため、トウヤは彼女とろくに話

 

もしていなかった。せっかくヤマトがしゃべれるようになったというのに、だ。

 

 だが、敵の襲撃はトウヤにとっては単なる口実にしか過ぎなかった。あまりにも変貌してしまっ

 

たヤマトにどうやって接したらいいのかわからなかったのだ。

 

(この間までネコだったのに・・・いきなり人間の女の子かよ)

 

黒猫の頃の面影を残す艶やかな美しい黒髪に、くりっと大きな瞳。ヤマトは相当カワイイ方だと

 

思う。変に意識してしまう自分に戸惑いながら、トウヤはドアをノックした。

 

「ハイ?」

 

「俺だ、トウヤだ」:

 

「え?」

 

 ドアの向こう、ヤマトはハッと息を呑んだ。

 

(トウヤがアタシに逢いに来てくれた?)

 

「その・・・入って、いいかな?」

 

「うん、開いてる」

 

 ノブがカチャリと回り、そこにトウヤが立っていた。

 

「レオーネが、捜してたよ」

 

「え? ここに来たのか? アイツ」

 

「うん」

 

「・・・・・・」

 

「レオーネ、ほんと、トウヤの事好きなんだね」

 

 クッションを勧められてトウヤは無言で座り込んだ。

 

「あのさ、ヤマト」

 

「ん?」

 

「あの・・・えーと・・・お前さ、いいのか? その、なんてゆーか」

 

「人間になっちゃったコト?」

 

 トウヤは視線を逸らして頷いた。

 

「うん。はじめは驚いたけどね。もう、慣れたわ」

 

 あっけらかんと言い放つヤマトにトウヤは目を丸くした。

 

「な、慣れたって・・・んな問題か?」

 

「だって現実は直視しなきゃ、でしょ? それに」

 

 ヤマトはそこで言葉を切って満面の笑みを浮かべた。

 

「ガボンの御蔭でこうやってトウヤとおしゃべり出来るんだもん」

 

「ヤマト・・・」

 

「ニャアーン」

 

 いきなりヤマトがトウヤに凭れかかってくる。

 

「なんてネ。ヘヘッ、久しぶりに甘えちゃおvv」

 

「バ、バカ! よせって」

 

 笑って抱きしめてくれるとばかり思っていたヤマトの体を、トウヤは乱暴に押し戻した。

 

「キャ」

 

 勢い余って床に転がったヤマトにトウヤは我に返った。

 

「い・・・たた」

 

「わ、悪い、ヤマト。ケガ・・・しなかったか?」

 

 慌てて駆け寄るトウヤにヤマトは苦笑して手を振った。

 

 

「大丈夫。あは、ちょっと調子に乗り過ぎちゃったかな、アタシ」

 

「悪かった。いきなりだったから・・・その、ビックリして」

 

(そう、だよね。もう、ネコじゃないのに。バッカみたい、アタシ)

 

 何だか"人間"になったら、急にトウヤとの距離が遠くなったような気がしてヤマトは哀しくなっ

た。

 

(どうしてだろう。ネコだった時の方がトウヤと自然体で仲良くいられたのに・・・)

 

 屈託なくトウヤにじゃれつけるレオーネが羨ましかった。

 

 押し黙って俯いてしまったヤマトと、掛ける言葉が見つかないトウヤ--------。気まずい空気が

 

流れた。

 

「お・・・俺、そろそろ戻るよ」

 

 ついにトウヤは居たたまれなくなって立ち上がった。

 

「じゃ・・・な、ヤマト。また・・・」

 

 何故だか零れ落ちそうになる涙を必死に堪えながら、ヤマトはついに一言もしゃべらなかった。

 

 ほどなくして静かにドアの閉まる音が聞こえた。

 

 

 

まだ胸の動悸が治まらなかった。ヤマトの部屋を出たトウヤは、通路の壁に寄りかかり、深いた

 

め息をついた。まだ彼女の柔らかな体の感触とぬくもりが残っている。首筋にサラリと触れた艶や

 

かな髪の心地よさも・・・・・・。

 

(まいったな・・・)

 

 トウヤは額に手を当てた。

 

 あの時------ヤマトがトウヤに凭れかかってきた時、思わず抱きしめてしまうところだった。

 

何といったらいいのかわからない。ただ、愛しさが込み上げて来た、そんな感じだった。

 

(アイツ・・・あんなに可愛かったんだな)

 

 

 

 その日以来、何とはなしにトウヤはヤマトを避けるようになった。どんな顔をして会えばいいの

 

かわからなかったのだ。たぶん、あの日自分はヤマトを傷つけてしまっただろう。昔みたいに、ネ

 

コだった時みたいに純粋に甘えたかったに違いないのに・・・。

 

(ヤマト・・・俺、どうしたらいいかわかんねぇよ)

 

 もやもやした思いを断ち切ろうとトウヤはリーボーフェンの展望室へと上ってみた。ハッチを開

 

けて外気に身を任せる。少し冷たい風が頬に心地よい。

 

「トウヤ?」

 

 ふいに背後から名を呼ばれて、トウヤはビクリとして振り返った。

 

 見ると、ヤマトが望室のハッチの所に立っていた。

 

「あの・・・トウヤ・・・」

 

 ヤマトは下を向いて口ごもった。

 

「そっち行って・・・いい?」

 

「ああ」

 

 ぎこちなく答えるトウヤ。

 

 ヤマトは意を決したように顔を上げると一歩一歩トウヤに近づいた。あと二メートルといったと

 

ころでピタリと立ち止まる。

 

「アタシ、ね。どっから見ても人間、だよね?」

 

「ああ」

 

「そうだよね。もう、ネコに戻ることなんて・・・・・・ないんだよね?」

 

「・・・・・・」

 

「だとしたら、だとしたら」

 

 ヤマトはふいと視線を逸らした。

 

「人間としてトウヤと向きあわなきゃ、だよね?」

 

 ヤマトはそう言い様きっと正面を向くと、トウヤをまっすぐに見つめた。

 

(アタシもレオーネのようにトウヤに触れたい)

 

 最後の二メートルをヤマトは駆け出した。まっすぐにトウヤの胸に飛び込む。

 

「ヤ、ヤマト・・・」

 

 ギュウッとしがみついてくる少女の体温に戸惑いながらも、トウヤはおずおずと腕を伸ばす。

 

「わがまま言っていい?」

 

 ヤマトはしがみつく腕に力を篭めた。

 

「五分・・・だけ、このままでいてよ、トウヤ」

 

「ああ」

 

 照れたようにそれだけ言うと、トウヤはヤマトの背に腕を回してぐいっと引き寄せた。

 

「あ!」

 

 トウヤの腕にすっぽりと包み込まれ、ヤマトはそっと目を閉じた。

 

(あったかい・・・)

 

 随分と久しぶりにトウヤのぬくもりを感じた気がする。でも、それは昔感じたぬくもりとは、ま

 

た違うぬくもり・・・。

 

 そう、たとえそれが五分だけのぬくもりだとしても・・・・・・。

 

 今だけは確かにトウヤはヤマトだけのトウヤなのだから。

 

 

  

          

 

                                    

 

 

 

 

 

 

 

 

                                        終

 

 


 
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