No.227757

恋姫異聞録119 -画龍編-

絶影さん

午前中が休みだったので出勤前に投稿

少し遅れを取り戻すのに頑張りました

ちょっと前の伏線。詠の構えの答えです

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2011-07-13 11:35:28 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10130   閲覧ユーザー数:7535

迫る自軍の船に策を崩された黄蓋は焦りに似た表情を浮かべ、乗り移る夏侯淵に鉄鞭を構える

船に乗り移り餓狼爪を構える秋蘭に黄蓋は怪訝な顔をするが、秋蘭の意図が解ったのか笑みを見せる

 

「良いのか、後から負けを武器のせいにされても殺されてからでは勝負のやり直しもできんぞ」

 

「フフッ殺す?誰をだ?」

 

此方を刺すように発せられた殺気は微かに、余裕の有る秋蘭の物腰に黄蓋は少しだけ意外だと眼を開く

やはり話で聞いていた夏侯淵とは違うと

 

黄蓋が耳にしたのは定軍山で罠に掛かり、今一歩で黄忠に討ち取られていたという話と

厳顔に押され、舞王に救われたという話

耳にした話全てが夏侯淵の強さよりも、弱さを表す話ばかりであった

 

だが目の前に立つ人物から発せられる微量の殺気。そして敵を目の前にして冷静に、余裕のある構えを取る人物に

噂や敵からの情報など当てに出来ないものだと思わされてしまう

 

「私は黄蓋殿を殺さぬぞ。昭が約束したからな、死んでもらっては困る」

 

矢筒から弓を三本抜き取るとゆっくり番える秋蘭。向けられる鏃に黄蓋は笑みをこぼす

約束を守るために、自分を殺さず生け捕りにするなど思い上がりだと

殺す気で来ねば死ぬのは貴様の方だと身の内の殺気全てを秋蘭に叩きつける

 

普通の兵ならば気当たりで気絶し将であれば身を震わせるほどの殺気を放つ

宿将として孫呉に仕え続け、多くの修羅場を生き抜いてきた黄蓋の伸し掛るような殺気

だが秋蘭は首を少し傾けるだけ、表情すら変えることなく受け止める

 

「・・・儂は魏の誰より貴様を恐ろしく感じるぞ夏侯淵」

 

黄蓋の言葉に少しだけ微笑むと、話は終わりだとばかりに番えた矢を放つ

ほぼ同時とも言えるその速射に黄蓋は舌打ちをすると鉄鞭を振るい叩き落す

 

腕を振り下ろすまま鉄鞭をクルリと逆手に持ち替え、勢いを殺さず腰の弓に手を伸ばし矢を番え放つ

 

襲い来る矢を目の前に秋蘭はその場から動かず餓狼爪の弦を小指で引っ掛けまるで楽器のように弾き

美しい音色を立てると先端から弭槍が飛び出し、引っ掛けるように矢を巻き取ってしまう

 

巻き取った矢を空中で掴みとると、流れるように番え放つ

 

自分の矢を他愛のない児戯であるかのように対処され、馬鹿なと驚のは一瞬

襲い来る自分の放った矢を鉄鞭でたたき落とす

 

決して軽い一撃では無い、体制を崩していたことが有るだろうが其れでも弓術を自慢として

修羅場を抜けてきた黄蓋はつい顔を悔しさに染めてしまう

 

数多の兵を己の弓術で葬ってきた筈だというのに躱すでも無い、叩き落すでもない、奪われた

握る鉄鞭につい力が入る。悔しさに噛み締めた唇からは血が零れる

 

「だが・・・だが勝のは儂じゃ。まさか若い頃の感情を思い出させられるとはな」

 

もう一騎打ちで悔しさなど感じることは無いだろうと思っていた。そう呟くと地を蹴り秋蘭の右に回り込むように駆ける

矢を構える秋蘭の背面へ背面へと走り、矢を番え放つ黄蓋。襲い来る矢の連射

 

「・・・」

 

しかし秋蘭は変わらず。それどころか黄蓋を眼ですら追わずその場にたち尽くす

何を考えている?と眉間に皺を寄せる黄蓋の瞳に信じられないものが映る

 

襲い来る矢

 

だが秋蘭はその場で軽く膝を曲げ、弓を持ったまま両腕を前で交差させ

給仕をした後の礼を取る侍女の様な仕草をすると脚を開き体を低くフワリと柔らかく一回転

 

美しく、流麗に優しさと柔らかさを感じさせるような足取りで弓を回す秋蘭

 

「・・・舞・・・だと!?」

 

襲い来る矢を舞うように絡め取り、全ての矢を矢筒に収めると一本だけ番え黄蓋の額へと放つ

苦しそうに声を漏らし、矢を弾く黄蓋の口からはいつの間にか息が荒く吐き出されていた

 

頬を伝う汗。目の前に立つ若き将の実力に驚愕し、秋蘭の無言の重圧に余裕すら無くなってしまっていた

 

「はぁっはぁっ、舞王の妻か。確かに並ではない」

 

黄蓋の言葉に冷たい笑みを向ける秋蘭は、迫り来る連合の船団を確認し時間が迫っている。勝負を決めるかと

矢筒から一本だけ矢を抜き取ると真上へ空高く放つ

秋蘭の行動を訝しむが、次の瞬間に理解し馬鹿にするなと顔は少しだけ怒りに染まる

 

「貴様の思い通りになると思うな。戦いを操る様な事が貴様に出来るものか」

 

弓では勝負にならないと、秋蘭が剣を持っていない事を見た黄蓋は一気に間合いを詰めるために走る

だが秋蘭は急に矢筒から矢を素早く取り出し間髪なしに速射し始めた

 

まるで雨のように間断なしに放たれる矢に黄蓋は脚を止め鉄鞭を振り回しなぎ払っていく

次々になくなる矢筒の矢。矢が尽きるか、それとも此方の体力が尽きるのが先かと

 

だが其れならば此方が勝つ。その矢筒に残された矢を撃ち落とし続ける体力ぐらい余裕であると払い続ける黄蓋

 

見える矢筒には矢は後十数本。矢が切れた時が貴様の最後だと笑みを見せると未だ矢が尽きて居ないというのに

放たれる矢が止まる

 

「馬鹿め、気づいた所でもう襲い。この勝負は既に詰んでいる」

 

叫び秋蘭との距離を更に詰めようと走りだそうとするが

 

ドスッ・・・

 

柔らかい物に何かが突き刺さる音。そして脚から広がる鈍い痛みに脚を止める黄蓋は立ち尽くし

自身の脚に眼を向ければ右足の太腿にあらぬ方向から突き刺さる矢

 

何が起きた?張奐か?と混乱する黄蓋に更に秋蘭はゆっくり矢を番えて放つ

だが狙いは黄蓋ではなく、地面に散らばる黄蓋のたたき落とした矢の鏃

 

秋蘭の狙いは地面に落ちる矢の鏃を使った跳弾

 

落ちた鏃に弾かれ、真横から襲い来る矢を黄蓋は転がり避ける

秋蘭の攻撃法に驚く暇なく飛来する矢を避け、武器で弾く

 

「このっ!」

 

肩に、腹に矢が突き刺さり其れでも体を捻り、武器を盾にし遂に秋蘭の矢は後一本

其の身に矢を受け血を流しながらも間合いを詰めた黄蓋は立ち上がり、

鉄鞭を振りかぶり気を込め必殺の一撃を振り被るが

 

「うっ・・・」

 

あと一歩の所で動きの止まる黄蓋。その表情は苦痛に満ちた顔

秋蘭はそんな黄蓋に気にすること無く落ち着いた物腰のまま、矢筒に残った最後の一本の矢を抜き取り

クルクルと指の間で回すと目の前で止まる黄蓋の額に合わせ矢を引き絞る

 

黄蓋が武器を振り上げると同時に予め空高く放っておいた矢が落下。武器を持つ腕を貫き

鉄鞭は地に落ちていたのだ。振りかぶる手には武器もなく、目の前に立つ夏侯淵は最後の矢を額に

 

気づいていたというのに思うとおりに誘導され、実力の差を思い知った黄蓋は

もはや勝負は着いた。殺せ、そう言葉をはこうとするが秋蘭は初めて顔を厳しい物に変え

体からは冷気にも似た冷たい気迫が流れだす

 

殺しはしない、其れが約束

 

そう、秋蘭の美しい瞳は強く物語る。

強き信念を持った瞳に黄蓋の口は塞がれる。しかし此処で破れ孫呉が蹂躙される様を見るくらいならばと

拳を握り締め気を巡らせ攻撃を仕掛けた。反応した秋蘭の矢で己の命を絶つために

 

己を殺すための拳。それに気づいた秋蘭は顔を曇らせると番えた矢を外し

迫る左拳に弓の弦を引っ掛け黄蓋の体を流し、矢を手放して黄蓋の腹へと拳を叩き込む

 

「ゴボッ・・・」

 

くぐもった声を漏らして崩れ落ちる黄蓋を秋蘭は抱きとめ、周りを見まわす

 

「死なせはしない、約束を破りたくは無いからな」

 

そう呟くと重く響く声で「敵将黄蓋、夏侯淵が捕らえた」と叫んだ

 

船内に残る呉の兵は秋蘭の叫びにざわめき狼狽え、絶望の表情を浮かべる

張芝、張昶は「投降しろ、船の上では逃げ場はない」と叫び捕縛を開始し、ある者は捕えられ

ある者は逃げるため、運がよければ迫る連合の船団に回収してもらえると河へ飛び込んでいく

 

敵兵を蹴散らしていた無徒は、周囲の安全を確保してから

気絶する黄蓋を優しく抱きしめる秋蘭に無徒近づき「私が変わりましょう」と倒れる兵の衣服を使い黄蓋を捕縛した

 

「目と鼻の先まで来たな。恐らくは既に策が敗れた情報が向こうへ流れているはず」

 

「はい、其れでも此方へ向かうという事は詠様の攻め手を知っているからでしょうな」

 

船床に刺した雷咆弓を抜き取り、黄蓋の矢筒から矢を抜き取り自分の矢筒へと補充する

夫を心配し、後方に眼を向ければ叢の牙門旗の後方。華琳の乗る船の魏の旗が交互に振られる

 

旗の合図を皮切りに、春蘭率いる精兵達が鋒矢の陣を敷き此方に速度を上げ突撃してくる敵船団に対し

素早く体を滑り込ませるように参列の横陣を敷き矢を構え迎え撃つ

 

「横陣?一点突破をしてくる相手に、これではまずい!」

 

前方の蜀を先頭とした連合軍も此方の布陣に軍師が血迷ったと思ったのだろう

更に速度を上げ、弓を構え矢を一斉に放とうとした時、遠くで詠と共に居た男が叫ぶ

 

「丁字戦法だとっ!!馬鹿なっ!!何故河での戦をしたことが無い奴が思いつくっ!?しかも実行しただとっ!!」

 

男の叫びが聞こえたのか聞こえなかったのかは解らない。だが迫る敵船団に華琳の隣に立つ稟は冷笑を浮かべた

 

「丁字戦法?何それ、知ってるの昭」

 

「知ってるも何も、今から随分と先の時代の有名な戦法だ。一番の肝は速さとこの状況を仕立てる神算

構想自体は簡単な物だが、実行に移すのは容易じゃない。見ていろ、今から始まる恐ろしい攻撃を」

 

叫びに驚き前を見る詠の瞳には、前進で迫る船に対して横を向く自軍の船

↑を向き迫る敵に対し、自軍は左右から交差し←→となるように布陣し、まるで丁の文字を象る

船体を盾のように置き、敵の攻撃を受けやすい体勢でいかにも不利であるようにしか見えない布陣に

詠は何故こんな布陣を、敵の的になるようなものだと怒りに顔を染めるがその表情は驚きと感嘆に直ぐに変わる

 

迫り矢を放つ前に放たれる魏の兵による弓矢。明らかに連合よりも射程が長いその矢に加え

正面では船体後方に居る兵はどうしても前方が見えず感を頼りに矢を放つか、船の前方に居る兵が負傷したときに

入れ変わるのみ。だが横を向くことによって船に乗る兵士全てが敵船をその眼に捕え矢が余すこと無く襲いかかる

 

参列に配置され、秋蘭によって修練された兵士の矢は空を埋め尽くすほどに

文字通り【雨】となって降り注ぐ

 

「フフフッ。此方を甘く見過ぎです。詠殿は此の様な戦い方をしないでしょう」

 

「これは、速さと策を仕立てる選択眼、そして胆力が必要な作戦ね。相手の出方を予想できねば

組み上げるまで随分と敵の攻撃を受けるはず。絶妙な指揮で攻撃されること無く布陣するとは、何処でこの戦い方を?」

 

「此処に来るまで詠殿は数に物を言わせる戦い方をしてきたそうです。ですから胆力は折り紙つき、船も艨衝と早い船を

ならば其れを有効に使わせてもらおうと思いました。己の身を晒す事により得られる戦果はこれほど大きいのです」

 

降り注ぐ矢によって剣山のようになる蜀の船を見て華琳は関心するように稟を見上げた

これほどの知と才を兼ね備えた者が今まで側にいたのかと

其れに気がつかない自分はまだまだなのだと。そしてこれ程の者に王として認められたのだ

期待に応える人物で居なくてはならないと

 

「所で、此方の矢の射程が随分と長いようだけど」

 

「はい、秋蘭様が持つ雷咆弓に習って合成弓を作成し兵に装備させました。同じように弩も小型で飛距離を伸ばした

物を作成し、騎兵に持たせてあります」

 

いつの間にこんな手回しを!と驚くが、よくよく考えて見れば稟は今まで気付かれぬよう策を進めてきたのだ

其れこそ敵に策士と言われるほどに情報を集めて。流琉と季衣が男と攻撃を合わせられることも知っていたようだし

ならば秋蘭の弓も、春蘭の剣も知っていて当然だと

 

「さぁ、まだまだ此れからです。諸葛亮、貴女を伏せたままの龍として滅ぼしてあげましょう」

 

 

 

 

 

 

降り注ぐ矢の雨の中、先頭の船は全滅。操舵手さえ降り注ぐ矢に射抜かれ迷走する船

河で、しかも船ということもあり止められず突撃の速度を緩められぬまま矢が降る中に船が次々と飲み込まれ

紅に染まる船体と河

 

奇襲に対する対応ならばここからいくらでも反撃の手が取れた。だがされたことは全く違う戦い方

 

「はわわっ!そ、そんなっ!?だ、だけど周りにも遊軍を配置してっ」

 

蜂矢の陣の左右に遊軍として配置した艨衝数隻に、横陣の横から攻撃を仕掛け矢の勢いを止めよと指揮するが

既に遅く、配置された遊軍は稟の指揮によって先行する灯りを消した倍の数の艨衝に打ち滅ぼされていた

灯りを消し、消化され火の消えたことを今度は利用し船を近づけていたのだ

 

「遅い遅い。最初の火計の失敗で一手、連環の計の肝である鎖を切られ一手、重ねた呉の奇襲の失敗で一手、合計三手

これだけ遅れて未だ取り返せるなどと、認識の甘さに哀れだとさえ感じてしまいますよ」

 

酷く哀れで可哀相だと言わんばかりに蔑みの言葉を口にする稟

起こった状況を受け入れる事ができず、舞王だけを見つめていた諸葛亮は顔を白くさせ膝を地に着く

 

「・・・ひっ・・・・・・ひっ・・・・・・」

 

次々に殺される味方の兵の姿に己の指揮した責任が重く伸し掛る

舞王に埋め込まれた心の亀裂が更に裂け、大きく広がり耐えていたはずの心が決壊する

底なしの沼に引きずられるように、目の前で死んで行く仲間を助けることも出来ず

しかも其れを死の道を行くように命じたのは自分なのだと

 

無残な光景に両目はグシャグシャに涙で濡れて、声も発せず怯えるように泣いていた

 

心なかで叫ぶ

 

そんな、そんな、こんなことがあって言い訳がない。自分が手に入れた情報に間違いはないはず

逆に奇襲をされれば呉だけで攻めた時のように雲の軍師は狼狽えるか、単純な手しか出せなかったはずだ

正攻法で奇襲を潰すための布陣をするはず、なのに、なのにっ!

 

だが目の前で起きているのはとても敵の軍師が思いつくことではない

 

首を振り、前方の舞王を見れば隣に立つ軍師が何も指揮せず此方を見る姿

ハメられたのだと気づいたときには呆然と涙をながすだけだった

 

隣で立つ鳳統は崩れ落ちる友の姿に一度だけ顔を伏せるが、唇を噛み締め心を強く強く固める

自分がここで支えねば、自分が此処で軍を立てなおさねばと

 

「朱里っ!しっかりしろっ!!」

 

「愛紗さん、このまま前進の速度を落としつつ左右に展開し鶴翼の陣へ作り替えます。指示後、鈴々ちゃんと

愛紗さんはこの船に残ってください」

 

流れ矢を弾き、崩れ落ちる諸葛亮に駆け寄り体を支える関羽は声を張り、指揮を立て直そうとする鳳統に頷く

まだ終わりではないと

 

「まだこの場での策は残っています。周瑜さんが残している策。其れが成功すれば数は不利でもまだ立て直せる」

 

即座に頭の中で最悪の想定を上回る今の事態に対応するべく戦術を模索する

やるべきはこの状態で如何に敵に近づき、策を成功させるか

最悪の場合脱出出来る状態を作り出せるか

 

鶴翼に変えたのは軍を左右に開き、的を分散させる為。そして周瑜の策に繋げるためだ

 

「敵の軍師が変わっている。指示をしているのは恐らく荀彧さんのはず。荀彧さんなら戦い方は」

 

そこまで考え鳳統の中で何かが引っかかった。荀彧はこんな戦い方をする人物では無い、では誰が?

もしや郭嘉?そう言えばあの時、黄蓋の娘として答えたが郭嘉は何を知りたかったのか?

何故自分がどのように見えているか調べたのか・・・

 

「軍師は、郭嘉さん。だとしたら戦術の情報は何も無い。それどころかこんな鬼謀を操るなんて」

 

指示を飛ばす関羽。矢を払う張飛

だが広がる鶴の翼に稟は嘲笑の笑みを返した

 

「クククククッ、アハハハハハハハハッ!何もかも遅いっ!私が何故華琳様に仕えたかったか教えてあげましょう

私も好きなのですよ。烈火の如く、燃え盛る劫火の如く敵を蹂躙し攻め滅ぼすのがね」

 

矢を避け左右に動く敵船に対し稟は次の指示を送る。次の指示とは敵に着けられた鎖を逆に利用すること

脱着可能にした鎖で再度船同士を繋げ左右に開いた敵船に横陣を敷いていた艨衝が凄まじい速さで突撃を開始した

 

広がる敵船に次々に船が突撃し、船首に付けた太い槍が突き刺さり鎖で固定される鶴の羽

真正面から見る華琳の眼前に広がるVの字に作れらた船の橋

 

「昭殿が私を王を知る者と称して下さった事に感謝いたしますよ。逆に敵の王を調べれば、自ずと敵軍師の指揮が見える

なぜなら王の意に反し過ぎる策は練らない。特に蜀はそうでしょう?兵を減らさず、最悪は退却可能な布陣はその現れ」

 

怪しく光る稟の瞳はまるで華琳の様な美しく恐ろしい笑みを作り出す

 

「陸から更に船を繋ぎ敵本陣、赤壁まで船で橋を繋げよ」

 

自軍の陸から船を繋げ、Vの字の中心には鳳統達の居る蜀の船

自軍の本陣から敵軍の船まで二つの道が出来上がり、後方の陸で待機していた霞と一馬が率いる虎豹騎は声を上げた

 

「よっしゃぁっ!ココからがウチらの出番やっ!稟が船で敵本陣の赤壁まで繋げるはずや、遅れんと着いてこいっ!」

 

兵を鼓舞する霞は跨る大宛馬の腹を脚で蹴り、兵を率いて凄まじい速さで繋がれた船の橋を疾走していく

 

これこそが詠の考えた策。寸分たがわぬほどの動きを可能にした操舵手が船を繋げ、船上を騎馬で駆け抜ける

だがその策は稟によって更に昇華された。鳳統が言ったように鎖で船を繋げ陸のようにし

さらに船の精密な動きを利用して橋を作り出す。見れば敵本陣にまで伸びる二つの橋

 

「あはは・・・稟って何者なの?」

 

「それは俺の歴史か?それとも今後ろにいる稟か?」

 

口の端をひくつかせ、汗を一筋たらして男を見上げる詠に男は答えに困っていた

 

本当に一体どこまで見えているんだ?既にこの戦場は稟の掌の上じゃないか

このまま鶴翼の後ろにまで船が並び、Yの字にきっと橋がかかる

長江の長い河に、船と敵の鎖で創り上げた橋が

 

辺りを見回せば火はほとんど鎮火され、凪達も桂花の指示に従い船の橋を進軍する霞達が進みやすいように

船の上に転がる焼け落ちた柱などを退けていく

 

一番に心配する秋蘭の方に眼を向ければ、黄蓋との決着が着いたのだろう

此方を見て手を振る秋蘭の姿を確認できた

 

「良かった。黄蓋殿に勝ったようだ、見たところ無事のようだし」

 

「うん。で、僕達はここからどうするの?」

 

「此処で待機らしい、俺は前線に出るなってさ。殺されれば華琳を取られたに近いくらい士気が落ちるらしい」

 

「まあねぇ。そんな事になったら前線崩れるでしょう。アンタは誰も居なきゃ弱いんだから此処に居なさい」

 

はっきり言うな、と情けない自分に笑う男に詠は「僕も此処に居てあげるわ。稟の邪魔になるし」と言っていた

それは自虐的な言葉でも、己を卑下する言葉でもなく。単純に、今順調に進んでいる策の邪魔をしたくないとの意味

稟の実力を認め、己との差を認めた証であり、潔く心地良い詠の言葉に男は微笑んでいた

 

「だから、緊張感が無いのよ。ここのところ戦場だって言うのに余裕ありすぎ、何なの?」

 

「悪い悪い。俺は詠だって稟に負けてないって思っただけだ。雲の軍師は詠だ、稟じゃない」

 

「勿論。負けた訳ないじゃない、今は追いぬかれたけど直ぐに追いぬく。統一した後も軍師として働くことは

多いだろうしね」

 

当然!とばかりに腰に手をあて小さな胸を張る詠に男は優しい笑みを浮かべる

 

「昭様っ!!」

 

側に立つ兵士に突然突き飛ばされる男と詠

詠とは逆方向に船床に転がり、立ち上がれば巨大な三本の爪の様な片刃の剣に体を二つに切り裂かれ

崩れ落ちる兵士が二人

 

音もなく目の前に立つのは其の身を河の水で濡らした二人の女

 

一人は長身で翡翠の髪に眼鏡を掛け、柔らかい表情で九節棍「紫燕」を構える殺気を微塵も感じさせぬ女性、陸遜

もう一人は柴桑でみた少女、その特徴のある長い袖から覗く三本の剣は不釣合いなほどの大きさで

男を決意と殺気が混ざった瞳で睨みつけた

 

「貴方が明命をあんな目に、許しませんっ!」

 

「落ち着いて、今の奇襲は失敗しちゃいましたけど、貴女の武勇ならば

必ず正面からでも討ち取ることが出来るはずですよ」

 

少々間延びした声で呂蒙の肩を掴み、優しく声を駆ける女性に詠は誰だ?一体どうやって来た?と警戒するが

濡れた体を見て理解する。途中まで斥候用の小舟で接近、そこから気付かれぬよう暗闇の河を泳ぎ

この船に登ってきたのだと

 

華琳の所を狙わずに来たのは、恐らく側に季衣と流琉が居ると言うことを分かっていて

手薄で弱く、討ち取れば一気に士気を落とすことの出来る昭を狙いに来たのだと把握し

男と分断されたことに舌打ちをすると、男を守るように兵に指示を出す

 

前に立つ舞王に身構える呂蒙は聞いていた情報を思い出す。舞王は仲間を殺された時、怒りと共にまるで獣のような

それでいて欠けて錆びついたボロボロの刃を連想させる凄まじい殺気を放つと

 

「・・・」

 

だがしかし、目の前で立ち上がる男は倒れ息絶える仲間に一度視線を送るだけで

ゆっくりと腰から宝剣二振りを抜き取り、絞るように息を吐き出すと腰を落とし十字に構える

 

呂蒙の肌に感じるのは眼で此方を見据える凄まじい集中力。男は仲間の傷つく姿に極限集中のスイッチを入れた

 

「そんなものっ」

 

同時に呂蒙は頭の中に広く広く空間を作り出し、あらゆる策、あらゆる攻撃法

そして今全く関係の無い政の知識までも並べ思い浮かべ始める

 

急に感情、動き、機微が砂嵐に遮られたかのように分からなくなり男は眉を少しだけ動かすが

表情を変えること無く迎え撃つ体制を整えた

 

「昭っ!」

 

「いかせませんよぉ。亞莎ちゃんならこの程度の囲いは容易に崩せますし、貴女は武が無い。

舞王さんは討たせてもらいます」

 

にこやかな顔を少しだけ厳しいものに変えると武器を構える陸遜

後ろには男に襲いかかる呂蒙の姿

 

手持ちの兵は半分以上男の元へと行かせ、呂蒙を囲ませた。だけど足らない

何故なら陸遜の肩越しに彼女の武勇が見えたからだ

襲い来る敵兵をモノともせずに袖に隠された暗器でなぎ倒していく姿

 

「柴桑で舞王さんの前に出なくて正解でしたねぇ~。見なければ思考も読めないし

敵に私の情報が漏れることもなく容易に船に取り憑けた。冥琳様の仰った通り、私の動きは把握していない様子」

 

「煩いわね」

 

囲いを突破する為の時間稼ぎなのか、それとも詠を止めるためダラダラと話しているのか

そんな陸遜に詠は静かに怒りのこ篭る低い声で呟く

 

そして懐から蒼い指抜きの皮手袋を取り出す。拳頭の部分に鉄のリベットが埋め込まれ、甲には叢と刺繍された

セスタスと呼ばれる手袋を両手にはめると、脚で船床を荒馬のように掻いて踏みしめる

 

「全員兵は昭の元へ、コイツは僕がやる」

 

周りに残った少ない兵に指示すると陸遜に鋭い視線を向けて、大きく両手を開き胸元で拳と拳を叩きつけた

 

ガチィィィンッ!!

 

響き渡る金属音を開始の鐘に、兵と詠は走り出す

 

 

 

 

「・・・・・・むぅ」

 

気絶から覚醒した黄蓋は、眼に入る船床に自分が倒れていることに気が付き、体を起こそうと手を着こうとするが

両腕が後ろで固く縛られており、動かすことも出来なかった

 

「起きたか」

 

「張奐か、この様子じゃと捕えられ御主が儂の見張りということか」

 

不意に声を掛けられ、体を引きずり顔を向ければ胡座で座り、叢の牙門旗が掲げられた船を目線を向ける無徒

モゾモゾと体をゆすり、体を起こして胡座をかいて座れば船室の屋根の上だということが解る

周りには誰も居らず無徒だけが側で座っていた

 

「夏侯淵はどうした。貴様一人か?」

 

黄蓋の問に無徒は無言で指を刺す。見れば秋蘭は近くの船に飛び移り、叢の牙門旗に向い急ぐように走っていた

合点のいった黄蓋は周瑜の策が発動したかと笑みをこぼす。あの位置ならば、夏侯淵は間に合わず

後方の曹操も船に到達する前に舞王を討てる。よくこの機を逃さなかったと

 

「奇襲は二度、まさか破った矢先にまた来るとは思うまい。見れば船に将は居らず、軍師と舞王だけのようじゃ」

 

策の成功に喜ぶ黄蓋。だが無徒は鼻で笑う。一体何を見ているのだ?と

 

「何が可笑しい」

 

「貴様の眼は節穴か?それとも宿将、重鎮という地位に甘んじて眼が曇ったか」

 

無徒の言葉に一度顔をしかめるが、改めて叢の牙門旗を掲げる船に眼を向ければ兵を全て呂蒙に向かわせ

陸遜に向かって走る詠の姿

 

「何を言うかと思えば、あのような武の無い軍師に穏が負けるわけがなかろう」

 

「武が無い。それは一体誰が何時語った事か、時は流れ人とは変わるものよ」

 

戦で狼狽える事も、悔しさを感じることも久しくなってしまった老兵のようにと語る無徒

一体何が言いたいと睨む黄蓋に無徒は再び指を差す

 

「特に守る者が居るならばな」

 

 

 

 

 

 

地面を蹴り、拳を固く握り、両手の甲を相手に見せるようにして口元に着ける詠は体を低く低く落として前へ走る

 

迫る詠に陸遜は冷静に、口元が柔らかい笑みのまま九節棍をしならせ鞭のように振り回す

横薙ぎの棍は陸遜の横を通りぬけ、男の元へ向かおうとする兵を薙ぎ払い、詠に襲いかかる

 

「知ってますよ~。貴女は特に武があると言うわけではない、知だけの軍師だって。徒手空拳にしても

構えがなっていない。この情報は正解のようですねぇ」

 

取った。そう確信する陸遜の眼に予想外のものが映る

 

襲いかかる九節棍に詠は鋭い右拳を放ち軌道を変えるパリング。炸裂音のようなパンッ!という音が響き

空中でたゆみ、詠の頭上を越える棍

 

詠は驚く陸遜に構うこと無く走り、更に体を低く間合いを詰めていく

 

「くっ!」

 

九節棍を鞭のようにしならせ、詠の動きを一手で見切り足元に隙があると睨んだ陸遜は地を這うように

足払いの一撃を放つ

 

だが詠の歩みは止まらず、右足を踏み込み打ちおろしの左拳

船床に叩きつけられる陸遜の武器。気がつけば詠は陸遜の目の前まで踏み込み、拳を構えていた

 

眼前の詠に九節棍を今から引き戻す事はできないと判断した陸遜は

手に持つ九節棍に着けられた穂先を詠の顔に突き刺すように放つ

 

「ほぇっ!?」

 

間抜けな声をだし体を流される陸遜

顔に迫る九節棍の穂先を頬に掠らせスリッピング・アウェー。つまりは顔だけを流れに逆らわず反らして避ける

高等テクニックで避け、更に右足を踏み込み体の流れた陸遜の左脇腹に深々と詠の拳が突き刺さる

 

まるで嘔吐するように体をくの字に折って肺の中の空気を吐き出す陸遜

顎の下がった一瞬を詠は見逃さず、返す左拳でスマッシュの軌道、斜め下から一直線に顎を撃ちぬいた

 

「ガッ・・・ハッ・・・」

 

口から血を流し、体を拳で伸ばされ反り返る陸遜に詠は更に拳を叩き込む

棒立ちでがら空きの腹に打ち込まれるソーラープレキサス・ブロー

 

詠の強打に体を後方へと転がし倒れる陸遜

鳩尾、つまりは横隔膜を強打によって叩かれた陸遜は呼吸も出来ず痛みと苦しさに転げまわる

 

目の前でのたうつ陸遜。だが詠の脚は止まらない、後方に転がった敵に向い前へ前へと間合いを詰めていく

 

 

 

「武器の相性が悪かったな。あれほど長い多節棍は距離を詰められると拳撃には速さで及ばない」

 

「あの軍師は武があったのか!?」

 

「あった、のではない。創り上げたのだ。元々詠様は武が無い、たまたま拳が強かっただけ。

まるで気を纏ったかのようにな」

 

体をよじり、目の前の光景に驚愕する黄蓋。更に無徒の言葉に眼を見開く

あれほどの威力を持っていて気を纏って居ないという事実

陸遜は気を纏、硬気功で体を守るようにして居るはず。なのにも関わらず吹き飛ばされ追い込まれていのだ

 

「それにあの武は何じゃ。拳だけで戦う等と聞いたことがない」

 

「言ったであろう、創り上げたと。元は羅馬のぱんくらちおんと言ったかな?殴る蹴る極るを同時に行う挌技であった

のだが。詠様が投げと極めを削ぎ落とし、拳で戦う元の形に戻した。元は拳だけの挌技だったそうだ」

 

「元の形じゃと?」

 

「うむ。自分にそんな時間はない、それに唯一使えるのが拳のみと羅馬から伝えられた挌技の出来ぬ部分を削り落とし

た結果、最初のぷくそす(Puxos)とかいう形に戻ったようだ。詳しくは鳳殿が調べたようじゃが」

 

豪快に笑う無徒に黄蓋は呆気にとられる。伝えられた挌技を作り替え、無用な贅肉を削り落とし

創りだしたというのだ。恐らく元々の型などほとんど知らないだろう、だからこそ独創的に自分だけの

戦い方を創りだしたと理解する

 

「昭様は拳闘、ぼくしんぐとか言っておったな」

 

「拳闘・・・」

 

のたうち、涙を滲ませながら体を起こし迫る詠を迎え撃とうとするが鳩尾を叩かれた体は直ぐに元には戻らない

だが距離を詰める詠に陸遜はあることに気がつく。足払いを拳で払った。ならば足技が無く倒れる相手に

出せる攻撃が無いのではと

 

体を地面低く下げ、倒れたままの自分に攻撃法は無いはず。ならば九節棍でと考える陸遜の考えは

次の詠の行動に崩される

 

間合いを詰めた詠は、転がる陸遜の体に思い切り脚を振り上げて踏みつける

驚く陸遜は体を寝かせ、転がり避けるが詠は構わず走り追い詰めていく

少しでも体を起こせば掬い上げるアッパー軌道の拳が襲い、攻撃は全てパリングで弾かれるか

体を反らすスウェーで避けられ、近づけば強烈な全体重を乗せた踏みつけ

 

「な、拳だけでは無かったのか?足技ではないか」

 

「拳だけで戦うと誰が言った?元はそうだが言ったはずだ創り上げたと。それにただ踏みつける行為を技と呼ぶのか?」

 

踏みつける事が技などと、可笑しな事をいうと笑う無徒

 

「フフッ、壊しに入ったぞ」

 

そして壊しに入ったとの言葉に陸遜へ眼を向ければ間合いを詰めた詠から放たれる拳撃

 

船床に転がる陸遜はこのままでは不味いと迫る詠に慌て体を起こし、立ち上がるが既に遅く

眼前の詠から強い一撃が来ると拳を防ぐため両腕を上げ、顔を防御するが腹に突き刺さる詠の拳

 

「うぐぅっ」

 

体を折りながらも次に顎に来るはずと九節棍を持ち上げ、顎に構えれば

詠は軽くバックステップ。そして左のジャブを鋭く二発、陸遜の鼻に叩き込む

 

距離を測るように放たれた左をまともに受け、顔が弾けたかのように仰け反らせ鼻からは血が流れ出す

 

今度こそ強烈な拳が顔に来ると歯を食いしばり両腕を横に顔を覆うが

来るのは踏み込んだ詠の左のボディブロー、流れるように痛みで防御の下がる陸遜の額に掠めるような右フック

 

頬でも鼻でも腹でもなく、眉の辺りを掠めるように放たれた右拳は陸遜の皮膚を切り裂き

プツプツと紅い紅い玉が浮き出ると、大量の血が眼に流れ落ち視界は左だけ紅く染まる

 

「壊しじゃとっ!?一体何をする気だ」

 

「腹と鼻を壊し補給線を断ち今度は視覚を奪って敵の斥候を潰した。忘れたか?詠様は軍師だ、昭様と同じよ

武に戦術を混ぜ込んで戦う。敵の体は敵の軍、敵の布陣」

 

無徒の言葉を証明するかのように詠は血で染まる視界。情報の無くなった左の陣。左左へと回りこみ、鋭い拳を放つ

左目が使い物にならなくなった陸遜は満足に動かない体を丸め、防御に徹するが

詠は器用に上下へと拳を打ち分け、腕が上がれば腹へ、腕が下がれば顔へと打ち込んでいく

 

耐えられず、闇雲に紅く染まる視界へ九節棍を振るうが近距離の九節棍は拳の速さに敵わず反撃を受けてしまう

ならばと体を再度丸め、逆に体を回転させ右の視界に収めた瞬間、武器を捨て左拳を繰り出せば

詠は左足に体重を乗せ、右肩を左足の真上に来るように肩を入れ、肩を入れるときに同時に腰も回転させ

避けると同時に繰り出す右のクロスカウンター

 

伸びきる陸遜の腕とフック軌道の詠の拳がきれいな十字を描き、吹き飛ぶ陸遜の顔

ガクガクと膝を震わせ、強烈な一撃に意識が飛びながらたたらを踏み下がる姿

 

ギュッと床板を踏みしめ脚を止めれば、眼前には顔を赤黒く腫らし、殴られ露出した腹は

青紫に腫れ上がり声は荒く途切れ途切れ、鼻からも顔からも血を垂れ流し弱気な顔を見せる陸遜

 

「馬鹿にしないで、武が無い?無いなら身につければ良い、自分に合う物が無いなら作り上げれば良い

アンタ達みたいに笑いながら屍踏んでいく連中と、自分勝手な想いで戦する人間に負けられないのよっ!

僕の後ろには月が居る、馬鹿みたいに心と体引きずりながら戦ってる奴が目の前に居る

そいつに貰った大切な居場所を壊す奴を僕は許さないっ!」

 

拳を固く、固く固く握りしめる詠は叫び走りだす

己の唯一無二の居場所と友を守るために

 

 


 
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