永久の闇に果てなど見えなかった
余りに暗く、無音で冷たい世界の狭間
私はただ其処に在るだけの存在なのだ
此処で彷徨い始めて、どれくらいの時間が経過したのだろう?
何秒、何分、何時間
或いは何日、何ヶ月、何年、何十年?
思考した所で、そんな概念などは無意味に等しい
どうせ認識出来もしないのだから・・・
無限にも思われた有限の刻
だが不意に視界が光で覆われた
――眩しい
最初に目に飛び込んできたのは見慣れぬ天井
次いで独特の薬品の臭いを其処に認めた
――此処、は・・・
慌しく動き回る、医師達
寝かされているベッドの周囲で泣き崩れる人々
身内だという彼らを、私は確かに知っている
けれど思い出せない
事故によって失われた記憶は、もう戻らないと医師から説明を受けた
――あぁ、騒々しい
数日経てば、煩わしさも倍増する
検査の為に連れ歩かれ、現れる見舞い客を追い払い
もっと静かな所がいい
此処では全く落ち着けない
もっと暗い所がいい
此処は少し明る過ぎるから
私は再び、眠る事にした
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それは己が深き心の体現