No.226263

遊戯王‐デュエル・ワールド‐

芽吹さん

デュエルが全てのトンデモ世界に連れ去られた主人公達―――
彼らは無事元の世界へ帰ることができるのか…

2011-07-04 11:59:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1220   閲覧ユーザー数:1181

 都内某所にある西稜寺邸に、バイクに乗った一組の男女が訪れた。男の名は、鳥羽遊鳥(とば ゆうと)。女の方は、馬森朱璃(まもり しゅり)。出迎えたのは西稜寺の末裔で、都内最強と謳われる西稜寺皇軌(さいりょうじ こうき)だった。

「約束の時間より1時間も早いが?」

「いや~、これから旅に出るって思うと、待ちきれなくてさー。」

 小学校の遠足か、と溜め息混じりに呆れる西稜寺。そう、彼らはこれから更なる強さを求めて武者修行に出るのである。西稜寺が『自分よりも強いデュエリストの居ない場所に意味など無い!』と、旅に出る事をデュエル大会優勝後のインタビューで公言したのである。それに、遊鳥と朱璃が便乗したのである。

ちなみに、遊鳥はその大会に一回戦で敗退。朱璃はデュエリストではなく、長期旅行的なノリで付いて来るだけである。しかし、西稜寺はその二人の同伴を断らなかった。旅は道連れと言う事だろうか、一人旅が寂しかったのか、それら以外の理由か…。

「よし、時間もある事だし…デュエルしようぜ!」

「…それが為に早く来たのか?まあいい、肩慣らしだ。受けて立とう!」

 二人は決闘盤にデッキをセットし、向き合う。そして、声を合わせて―――

「「デュエル!!」」

「二人共、ガンバレー。」

 朱璃の気の抜けた声援をバックに、デュエルが始まった。LPはお互いに8000P。先攻は、西稜寺だ。お互いにデッキから五枚のカードを引き、西稜寺が先攻ドローで一枚ドローする。

「フッ…今回は手札がいいな。まずは“X-ヘッド・キャノン”を召喚し、カードを一枚伏せ、ターンエンドだ。」

 西稜寺のフィールド上に、青と黄色を基調とした砲台を二門備えたマシンモンスターが現れる。遊鳥は嫌そうに目を薄める。

「うへぇ~。いきなり来たよ、皇軌の十八番XYZ合体…。何とかしないとな、俺は“切り込み隊長”を召喚!さらに、“切り込み隊長”の特殊効果で、手札から“世紀の大泥棒”を特殊召喚だ!」

 鎧に身を包んだ二刀流の戦士とハットとマントで素性を隠した盗人を召喚する。しかし、これで終りではない。遊鳥の召喚劇は続く。

「行くぜ!レベル3のモンスター二体を素材に、エクシーズ召喚…行くぜ相棒!“グレンザウルス”召喚!」

 鳥羽フィールド上のモンスターが重なり合い、紅色の恐竜モンスターへと姿を変える!

「コイツの攻撃力は2000!“X‐ヘッド・キャノン”の攻撃力を200上回った!“グレンザウルス”で攻撃だ!」

「甘い!リバースカード、“亜空間物質転送装置”発動!この効果により、“グレンザウルス”の攻撃を無効にする!言っただろう、手札がいいと。」

 西稜寺のフィールド上に宙に浮かぶ不思議な装置が現れ、“X‐ヘッドキャノン”が姿を消し、対象を失った“グレンザウルス”の攻撃は空を切る。

「あらー…残念だ。仕方ない、カードを二枚伏せてターンエンドだ。」

 本気で残念そうに項垂れる。西稜寺のモンスターを破壊できれば、“グレンザウルス”の効果で更なるダメージを期待していたのだが…。西稜寺は余裕の表情でドローを行う。

「覚悟しろ、遊鳥。まずは“Z‐メタル・キャタピラー”を召喚、そして、XとZを合体融合!出でよ、“XZ‐キャタピラー・キャノン”!」

 黄色い装甲の陸型マシンを呼び出し、二機のマシンを合体させる。

「XZの攻撃力は、“グレンザウルズ”より400高い。このまま攻撃してもいいのだが…俺は注意深いからな。リバースカードを警戒して、ここはターンエンドだ。」

「むぅ…。流石は都内最強デュエリスト。」

 西稜寺の判断は正しかった。遊鳥のセットしたカードの内1枚は、罠カード“炸裂装甲”だ。相手モンスターの攻撃宣言で発動する、モンスター破壊カードだ。

「俺のターン、ドロー!…お、コイツはいいカードを引いたぜー。コイツを伏せて、っと。さあ、皇軌のターンだぜ!」

「フッ…何のカードを引いたか知らんが、お前は重大なミスを犯した。“グレンザウルス”が攻撃表示のままだぞ。」

「…あ゛ッ!!」

「さらに運が悪い!俺はこのターン、“Y‐ドラゴン・ヘッド”を引いた!まずは“融合解除”でXZをXとZに戻す!そしてX・Y・Zを三機合体だ!」

 上部を“X‐ヘッド・キャノン”、中部を“Y‐ドラゴン・ヘッド”、下部を“Z‐メタル・キャタピラー”としたモンスター、“XYZ‐ドラゴン・キャノン”が合体召喚される!攻撃力2800を誇る、西稜寺のエースモンスターだ。

「さらに、XYZの特殊効果発動!手札を1枚捨てる事で相手フィールド上のカードを破壊できる!真ん中のリバースカードを破壊しろ!」

 Xの銃口がリバースカードに向けられ、放たれる!しかし―――

「かかった!リバースカード発動、“天罰”ぅ!!」

「何!?」

「手札を1枚捨てる事で、モンスター効果の発動を無効にして破壊するカードだ!」

 雷の裁きが下り、XYZは破壊される。

「これで皇軌のフィールドはガラ空きだぜ!」

「クッ…。ターンエンドだ!」

 カードを伏せる事無く、遊鳥のターンとなる。これはチャンスだと、“グレンザウルス”で攻撃宣言をした時―――

《此処にも居たか、力を持つ者よ!》

「「!?」」

 突然の謎の声に、驚く3人。と、次の瞬間辺りが闇に包まれる!

「遊鳥!」

「朱璃!?」

 とっさに、朱璃が遊鳥に抱きつく。

「そうだ!その判断は正しいぞ、馬森!遊鳥、何が有ってもそいつを離すな!絶対にだ!」

《来て貰おうか、我が野望の為に!フハハハハハァ!!》

「うわああああああああああああああああああああああ!!」

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

「きゃああああああああああああああああああああああ!!」

 突然、強烈な暴風が吹き荒れ、吹き飛ばされる3人。それでも、遊鳥は西稜寺の言い付けを守り、朱璃を離さなかった。

《この先に待っているのは、デュエルが全ての世界だ!フハハハハハ!長生きしたくば、せいぜい強くなる事だな!》

 薄れゆく意識の中、遊鳥は思った。ああ、コイツ絶対ニートだ。と。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択