約束の時間に三匹の獣が集結した。
一刀「準備はいいか?」
理性を持った狼は二匹に問う。
烈矢「あたりめーだろ、コノヤロー!」
荒ぶる虎は自身の闘争心を抑えられないかのように答え、
兵衛「だり~~~~」
赤毛の獅子は心底けだるそうに答える。
一刀達は全校生徒が帰宅したのを確認すると校門前で作戦会議を行った。
一刀「いいか?今回はあくまで警護が目的だ。くれぐれも犯人を殺したりするなよ」
兵衛「はいよ~」
烈矢「わーてるっつうの!何度も同じこと言うな、耳にタコだぜ!」
一刀の言葉に兵衛は適当に、烈矢は吐き捨てるように答える。
二人の反応に呆れ気味にため息をついた一刀はそのまま話しを続けた。
一刀「はぁ…………話を続けるぞ。今回の警護対象である鏡は俺達の学校である聖フランチェスカ学園の歴史資料館に保管されている。本来なら警備員が常に入り口に二人は配置されているが、今回は理事長に頼んで警備員の方達には遠慮してもらったよ」
烈矢「あん?何でだよ、いたって別に問題ねーだろ?」
烈矢の問いに一刀は真剣な面持ちで答える。
一刀「いや、問題ならあるよ。今回は犯人が相当な手練という可能性を考慮しないといけないから、下手に人がいるとかえって邪魔になる。それに警備員が犯人である可能性も捨てきれないしね」
烈矢「考えすぎじゃねーのか?邪魔になるっていうのは同感だが、犯人が俺達三人より強いなんてことはまずねーだろ」
烈矢の言葉は確かに間違ってはいなかった。仮に犯人が警備員だったとしたらわざわざ犯行声明を出す必要はないのだ。
普段から警備をしていればどこに何が保管されているかも熟知しているだろうし、自身が警備をする担当になったときに資料館に忍び込めば、目的の鏡はあっさり手に入るだろう……
そして、もう一つの理由である犯人の強さについては一刀自身が考えすぎだと自負していた。
『国家特別戦力』という日本でも---否、世界でもトップクラスに入る実力を持った猛者七人のうち、三人までが揃っているのだ。普通に考えれば、まず間違いなく、そして問題なく、犯人を捕まえる事は可能のはずだ。
だが、
一刀「それでも油断をしないことに越したことはない……」
それでも一刀は不安を拭えなかった。
一刀「それでも油断をしないことに越したことはない……」
一刀の言葉に兵衛は若干の違和感を感じていた。
兵衛(おかしいな……。いつもの一刀は確かに思慮深いヤツだけど、ここまで用心したことなんて今までなかったのに……)
一刀の様子がおかしいことに気付いた兵衛は、そっと一刀の肩に手を置いて
兵衛「落ち着け」
と一言いった。
兵衛の言葉が予想外だったのか、一刀は目を丸くし、数秒黙り込んだ後に重々しく口を開いた。
一刀「俺は落ち着いている。落ち着いているが、嫌な予感がするんだ……。上手く言えないが、このまま警護につくのは良くない気がしてならない」
一刀の言葉に兵衛も不安を覚えたが、これから警護の任務につく自分達がその不安の原因を探すだけの余裕を持っていないことに兵衛は苦虫を噛み潰す思いだった。
兵衛「一刀、今は考えるのは後にしよう。どちらにしても犯人は捕まえないとまずい。烈矢のバカが言うことも一理はあるんだから、とにかくまずは行動しよう」
烈矢「おいこら……だーれがバカだって?コノヤロー」
兵衛「うるせーぞ単細胞~。脊椎反射で生きてるようなヤツが俺と一刀の話に口を挟むな」
烈矢「てめーにだけには言われたくねーんだよ、この昼行灯が!ナマケモノの子孫の癖に人語をしゃべってんじゃねーよ!張っ倒すぞコノヤロー!」
兵衛「上等だよこの馬鹿力が!この場で肉の塊にしてやんよ!」
烈矢「そりゃこっちの台詞だ!頭蓋骨叩き壊してやんぜ!」
兵衛・烈矢「「やんのかこらーーーー!!!」」
二人は今にも喧嘩を始める勢いにまで発展していた。
すると、
一刀「…………ぷっ」
兵衛・烈矢「「……え?」」
一刀「あはははははははははははっ!!」
一刀がいきなり笑い出したのだ。
兵衛「ちょっ!!一刀!?何いきなり笑ってんの!?」
烈矢「まったくだぜ!!今のどこに笑う要素があったんだよ!?」
一通り笑い終わった一刀は大きく深呼吸すると、二人の質問に答えた。
一刀「いやぁ~、二人はどんなときでも相変わらずだなあと思ってさ」
兵衛「一刀~~~、こんな馬鹿力の単細胞と一緒にしないでくれよ~」
烈矢「そうだぜ、一刀!!こんな赤毛のナマケモノと一緒にされんのは気分が悪いぜ」
兵衛「ああ?」
烈矢「あん?」
兵衛・烈矢「「やんのかこらーーーーー!!!」」
二人がまたも喧嘩を始めようとしていたので、一刀はいい加減止めることにした。
一刀「二人ともいい加減にしなよ。そろそろ犯行声明にあった時間だよ。」
一刀がそう告げた瞬間-----
パリィンッ!!
資料館の方角からガラスの割れる音が響き渡った。
一刀達は急いで資料館の方に向かった。
資料館にたどり着くと、資料館二階の窓ガラスが割られており、そこから犯人が侵入した形跡が残っていた。
烈矢「ちぃっ!やられたか」
烈矢は忌々しげに舌打ちをする。
一刀「とにかく、犯人を捜すんだ。犯人がまだ中にいるかもしれないから俺は資料館の中を調べる!二人は裏口に回って犯人が逃げていないか調べてくれ!」
兵衛「あいよ~」
烈矢「わかった」
一刀は二人に指示を出すと資料館の中に駆けていき、同時に兵衛と烈矢も裏口へと回った。
一刀は資料館の中をくまなく探した。
調べてみると奥の方に厳重そうな扉があり、その扉は人一人分が入れそうなほど開いていた。
一刀は犯人を探すために扉の中に入っていった。
扉の中に入ると警護対象である鏡が入れられていたと思われるガラスケースが無残に砕かれていた。
一刀は割れたガラスケースの破片を指で触ると部屋の隅に向かい破片を投げつけた。
破片は薄暗い部屋の隅に向かい一直線に飛んでいくと部屋の隅にたどり着く前に何者かによって叩き落された。
一刀「そこに隠れているやつ、姿を見せろ」
一刀はなんでもないように言葉を紡ぐ。
一刀の言葉に反応して暗闇に隠れていた人物はその姿を現した。
???「よく俺が隠れていると分かったな……」
男は一刀に問いかける。
一刀「そんなことは当たり前だよ。俺が部屋に入った瞬間からそんな大きな殺気を振りまいてたら阿呆でも気付くよ」
淡々と答える一刀に対し、男は忌々しげに舌打ちをする。
???「ちっ!!言ってくれるじゃないか北郷一刀!」
一刀「なぜ俺の名前を知っている?」
一刀の問いに男は鼻で笑い、右足を一歩引き、構えをとった。
???「そんなこと貴様に教える義理はない。貴様はここで……死ぬのだからな!」
男は告げると同時に一刀に向かって襲い掛かってきた。
兵衛と烈矢は裏口に回った。
そこには裏口から何者かが逃げた形跡が残っていた。
裏口は何者かに壊されており、それは人の力で壊したとは思えないほど粉々に破壊しつくされていた。
兵衛と烈矢は粉々にされた裏口の破片を手に取ると、二人同時に林に向かい投げつけた。
投げつけた破片は林に入る寸前に、急激に勢いをなくし蒸発した。
兵衛「そこに隠れてる人さ~、出てきたほうが身のためだよ?」
烈矢「三秒以内に出てきな。そしたら半殺しで勘弁しやんよ」
二人は林に向かい挑発的な言葉を投げかけた。
すると、林から一つの影がゆらりと動いた。
???「これは、これは……まさかばれていたとは思いませんでしたよ」
林から姿を現した男は余裕を見せるかのように軽口を叩いた。
烈矢「……てめー何モンだ?」
烈矢はドスの利いた低い声で男を威嚇した。
しかし、男は烈矢の威嚇など意にも介さずへらへらと笑っていた。
???「はははっ、そんな怒らないで少しは落ち着いてくださいよ。」
兵衛「落ち着いてはいるよ。目の前に鏡を盗んだ犯人がいて、その犯人が……『普通の人間じゃない』ってことくらいわ…………ね?」
ニヤリと兵衛は男に向かってほくそ笑んだ。
???「中々喰えないお人だ……」
男は先ほどまでの軽口が嘘のように真剣な面持ちで兵衛達を見つめていた。
???「申し遅れました。私は于吉と申します」
男は名乗ると頭を下げた。
烈矢「へっ!犯人様がわざわざ自己紹介かよ。世も末だな」
于吉「いえいえ、別に観念したわけではないですよ。……ただ」
男は黙ると体から幾つもの護符を取り出し、地面に貼りだした。
すると護符の貼られた地面から人間大の土人形達が姿を現した。
兵衛と烈矢は男の発する妖しげな殺意に瞬時に距離を取った。
男は先ほどの言葉を続ける。
于吉「あなたたちは……ここで死ぬのですから」
男は一刀の懐に飛び込むと一刀の頭部目掛けて凄まじい上段蹴りを放った。
一刀は男の蹴りをスウェーバックで避け、その勢いを利用し距離を取った。
???「ふんっ、やるな北郷一刀!!」
一刀「そりゃどうも」
一刀は軽口を叩くと腰に差していた二本の刀のうち一本を抜いた。
???「……何の真似だ?」
男は訝しげに問う。
刀を肩に担ぐように持つ一刀はその質問に対し、さも当然のように答える。
一刀「いや別に……結構鋭い蹴りだったからさ。一本くらいで丁度いいかなって思ってさ」
一刀の言葉に男はプライドを傷つけられ、プルプルと震えていた。
???「舐めやがって!!」
男は一瞬のうちに一刀に接近し、先ほど一刀に放った蹴りより遥かに速い中段蹴りを見舞う。
しかし、その蹴りが一刀の体を貫いたと思った瞬間、一刀はその蹴りを刀の柄で下に逸らすと同時に返す刀で男の脇腹を峰の部分で強打した。
???「ぐはぁっっ」
男は刀を脇腹に喰らった衝撃で部屋の隅まで吹っ飛んでいった。
一刀はゆっくりと男に近づくと2メートルくらいの距離で立ち止まった。
一刀「こんなものかい?どうやら思ったほどでもなかったね、嫌な予感がしてたからもっとデキるのかと思ったよ」
一刀は男に向かって侮蔑の視線を送った。
男はふらつきながらも立ち上がると、一刀を睨み付けた。
???「くそっ!!この世界での北郷一刀がここまで強いとはまるで化物じゃねーか!!やはりこいつを実力で排除するのは難しそうだな……」
一刀「この世界?何を言ってるんだ……お前は?」
???「まあいい、どちらにしても予定は変わらん!この鏡を使って貴様もろとも外史を消し去れば問題はない!!」
一刀「予定だと?……それに外史とはいったい??」
???「貴様が知る必要はない!!さあ、この鏡を取り戻したければ俺について来い!」
男はそう言葉を吐き捨てると二階窓から外へと逃げていき、すぐさま一刀はその後を追った。
土人形は十体から二十……三十と数を増していった。
兵衛と烈矢はその土人形共の攻撃を避け続け、少しずつ人形の数を削っていた。
兵衛「数が多くてめんどいな~」
兵衛は呟きながら迫り来る土人形の体を貫き手で貫き、背後にいる人形にしなるムチのような後ろ回し蹴りで粉砕した。
烈矢「こいつら一体一体はたいしたことねーけど、生きてねーから突っ込んでくるのに躊躇いがねえぜ!」
烈矢は舌打ちをしながらも、一斉に襲い掛かってくる人形達を正拳突きでことごとく迎え撃ち破壊し尽くしていた。
その戦況を眺めている于吉はあまりの光景に自身の目を疑っていた。
于吉「冗談じゃありませんよ……化物ですか彼らは!」
于吉は自身の額に汗が浮き出ているのを感じていた。自身の体が目の前の二匹の獣に恐怖を抱いていることに于吉は気付き始めていた。
于吉「何体倒せば倒れるんですか彼らは……規格外すぎる。これほどの強さを持っているとは想定外です予定外です計算外です!!これはすぐにでも鏡を割って彼らを外史に飛ばす必要がありますね……」
于吉が呟くのと同時に資料館の二階から二人の男が飛び降りてきた。
飛び降りてきたのは鏡を盗んだ男と北郷一刀であった。
男は于吉の元に、一刀は兵衛と烈矢の元にそれぞれ駆け寄った。
一刀「大丈夫か二人とも!?」
兵衛「だ~いじょうぶだって一刀!余裕余裕」
烈矢「準備運動にもなんなかったぜ、コノヤロー」
兵衛は暢気に、烈矢は自慢気に答えた。
男は于吉の元に駆け寄るとすぐさま盗んだ鏡を取り出した。
于吉「おお!!よくぞ手に入れましたね。」
???「まあな、だが予定外に、そして予想外にこの世界の北郷一刀は強すぎる。本来ならこちらで始末したかったが、外史に送った後にゆっくりと消す事にしよう」
于吉「そうですね、こちらの二人も十分すぎるほど化物でした。予定では北郷一刀だけだったのですが……仕方がありませんね。あちらの二人にも外史で消えてもらいましょう」
二人は話を終えると鏡を持ったまま、一刀達に振り返った。
???「おい!北郷一刀」
男に呼ばれて一刀も振り返る
一刀「何だ?」
???「貴様との……いや、貴様らとの決着はあちら側でつけてやる」
烈矢「何をいってんだてめーは!?」
???「俺の名は左慈!この名前、覚えておくんだな!!」
そういうと左慈と名乗った男は鏡を地面へと叩きつけた。
一刀・兵衛・列矢「「「なっ!!??」」」
その行動に驚愕した三人はその場を動けずにいた。
そして、叩きつけられた事によって割られてしまった鏡から強烈な光が放出された。
鏡から光が放出し終わると-----
そこには-----
誰もいなかった。
どうも勇心です。
いかかだったでしょうか?
戦闘シーンって難しいですね。
自分でもしっかりイメージ持っていないので
読んでくださる方々には突っ込みどころの多い話だったでしょう?
文章もヘタクソで皆様の応援に応えられてるか正直不安ですが、次回も
精一杯に頑張ろうと思います。
次回は遂に恋姫の世界に突入です。
だめだめなところばかりですが、どうぞ寛大な心で読んでいただければ幸いです
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投稿が遅くなりました。
読んでくれる方々には大変申し訳なく思います。
さあ、いよいよ三人が外史に飛ばされる事になります。
今回は戦うところも頑張って書きたいと思います。