―――友奈―――
戦い始めてどんだけ経ったのか・・・
さすがに呂布と二人では戦わせてくれねぇ
俺が九人、呂布が十人相手にしている。
こっちに来たのは張飛・趙雲・馬超・魏延・厳顔・甘寧・周泰・許緒・典韋
はっきり言ってまともに相手になるのは
張飛・趙雲・馬超・厳顔そして何とか甘寧
他の奴らの動きは遅すぎる
俺の攻撃はほとんど見えてないだろう
厳顔は動きは速くないが、経験が豊富で戦いづらい
・・・めんどくせえ
だがちょっとでも数を減らさねぇと・・・
張飛・趙雲・馬超の連携がまた厄介だ
趙雲への攻撃が止められたと思ったら、すぐに両脇から二人の突きが迫ってくる
それを避けると、もうすでに趙雲が攻撃態勢に入っている
あいつの突きは結構速い
でもさばけねぇ程じゃない
全部しっかりさばいて、槍を引いた瞬間に趙雲の首めがけて朱雀を一閃する
だが、これもまた馬超に防がれ、張飛の反撃が来る
後ろに飛んで避けるんだが、飛んでる途中に厳顔がなんか撃ってくる
体をひねってそれも避けると着地の瞬間にでっかい武器が迫ってくる
これは正直余裕で避けれる
だが問題はこの後
いつの間にか背後に回り込んでいる奴がいる
甘寧だ
そしてちょっと遅れて周泰も来る
この二人の攻撃なら朱雀で防げる
そしたらまた張飛たちの攻撃が始まる
こんな感じでずっと戦い続けている
さすがに雑魚たちは後ろで黙ってみている
入ってきても邪魔なのはわかってるみたいだ
こんだけ戦ってても俺は平気なんだが、さすがに呂布は疲れてるみたいだ
ちょっとずつ動きが遅くなってきている
奴らも当然それに気づいてるみたいだ
だんだんと俺と呂布の距離が開いている
この距離じゃ、さっきみたいに助けに入ることもできねぇ
さっさとこいつらを何とかするしかないか
もうちょっとだけ耐えてくれ
お前が友哉の支えなんだ!
でもそんな俺の願いははかなく散った
関羽・孫策・夏侯惇の斬撃
黄忠・黄蓋・夏侯淵の矢
同時に呂布に迫っている
全ての攻撃が完全に同時に呂布に当たるようになっている
打ち合わせを下でもなく、それは歴戦の猛者にのみ為せる技
呂布は斬撃を防ぐことを選んだ
矢を諦めて・・・
全ての斬撃をその戟で呂布が受け止める
ドスッ!!!
三本の矢が呂布の腹に突きささる
真っ赤な血が流れ落ちる
痛みに顔がゆがむ
俺の中で、いや友哉の中で何かが沸き起こるのを感じた
ここまでか・・・
「クソッ!!お前らももう終いだ!もう知らん!呂布に手を出したお前らの責任だ!
せいぜい地獄を見るがいい!」
プツっと俺の意識がそこで途切れた
―――友哉―――
またここだ・・・
何もない、真っ暗な場所・・・
いやただ一つ、ここに存在するものがある・・・
「憎い・・・殺す・・・お前も一緒だ・・・・」
鬼のようなものと昔の俺のすがた
だが今回は少し違っている
昔の俺には鎖がなく、なんというか鬼と一体化している
「だから違う!俺はお前とは違う!」
「まだわからんのか・・・お前の本質は俺であり、俺こそがお前だ・・・」
また黒い触手が俺を引きずり込もうとする
「やめろ!お前なんかと一緒にするな!」
「まだ抗うか・・・ふむ、ちょうど良い・・・俺が目を覚まさせてやろう・・・・」
急に頭の中に映像が流れ込んでくる
荒野で武将と戦っている恋の姿
そして恋に矢が刺さる
「恋・・・・」
抑えられない
何が?
わからない
自分の中で何かが暴れ出している
そしてまた違う映像が思い浮かぶ
――――
また二人の女が殺される場面だ
でも今回はその二人が誰かがはっきりとわかる
母親と妹
父親がはやくに他界した友哉にとって二人だけの肉親
その二人が拷問されている
気が狂いそうになった
そして最後の場面がやってくる
二人の腹に剣が突き刺さる
そしてその剣を持っているのは・・・俺
――――
「やっと思い出したみたいだな・・・お前の本質を・・・俺の本質を・・・」
「うぐぅぅ・・・・うあああああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
―――孫策―――
「グッ!!」
「やったわね!」
ついに呂布が傷を負った
三本の矢が呂布の腹に突き刺さっている
これで呂布はもう終わった
残った友哉を適当に気絶させて連れて帰ればこの長かった茶番劇が終わる
「クソッ!!お前らももう終いだ!もう知らん!呂布に手を出したお前らの責任だ!
せいぜい地獄を見るがいい!」
むこうで紅蓮の天災が何か叫んで、再び体から炎があふれ出す
「うぐぅぅ・・・・うあああああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
叫び声とともに炎の中から現れたのは、友哉でも紅蓮の天災でもなかった
真黒な髪と瞳で、両手に握られているのは私の背よりも大きい細身の剣
腰の鞘は縦に割れて開いている
「がはっ!?」
突然腹部に強烈な痛みが走る
ゆっくりと確認してみると、自分の腹から細い黒い棒が生えていた
刺されたんだと少し遅れて気づく
そしてこの棒がさっきの男の剣であることにも
周りを見回すと、他の武将も全員が腹を押さえて四つん這いになっている
その全員の視線の先にいるのは、やはり先ほどの男
「こんな・・・・」
ゆっくりと意識が遠のいていく
意識がなくなる前、最後に見たのは男の頬を流れる一筋の涙だった
つづく
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第二十二話
『天災覚醒』