※CAUTION!※
こんなの華琳様じゃない!
でもこんな華琳様がいたっていいと思うんだ。
そんな人だけ次のページへ進んでおくれ(´・ω・`)
そしてAC711様。
毎度素敵なインスパイア元をありがとうございます!
ちょっとご機嫌な華琳様
時は定かではない。だが、一刀が曹操の客将となってからしばらく経った後のある日の事だった。
「………暇だな」
中庭で、一刀は独り呟く。
春秋姉妹は兵を引き連れて規模の大きい賊の討伐へと向かい、季衣は流琉と共に街へと繰り出した。凪たち三羽烏は兵の調練に精を出し、軍師たちは政務に励んでいた。霞は毎度の如くフラフラと酒を飲みに行っている。
そんな中、一刀だけが暇を持て余している。
「どうしたものか………」
街に出て季衣たちに合流する事も考えたが、つい先ほど昼食を終えたばかりだ。何か食べようとは思わない。春蘭がいれば、修行だ稽古だと絡んできて結局一日を費やすのだが、いまはその彼女もいない。
草の生えそろった木陰に寝転がりながら、空を眺めていた。蒼い空を白い雲が流れていく。その光景は緩やかな川の流れにも似ていて、それでいて遙か遠い。ゆったりと視界を右から左へ揺蕩う雲を眺めながら、一刀は次第に意識を落としていった。
どれくらいの間、その場所で眠っていたのだろうか。瞼の向こうに当たる太陽の熱に、瞳を開いた。太陽の日周運動から逆算して、だいたい1時間ほど経過している。ふと、すぐ傍に感じられる気配の方へと首を傾けた。
「……あら、起きたの?」
「華琳……」
一刀の視線の先にいたのは、この城の主であり街の刺史でもある少女だった。一刀の隣の地面に腰掛け、膝の上には書が開かれている。
「なかなか無防備じゃない。『天の御遣い』がこんな所で隙を見せてもいいのかしら」
「気配を感じたら目を覚ますさ」
両腕を枕にして転がったまま一刀は応えるも、華琳は悪戯な笑みを見せる。
「私が貴方を見つけてからけっこう経つのだけれど?」
「………訂正だ。不審な気配があったら目を覚ますよ」
「そう言う事にしておいてあげるわ」
それだけ返し、華琳は再び膝元の書へと視線を落とす。これ以上会話を続けるつもりはないように思えた。
※
少しの間沈黙が流れたあと、今度は一刀から言葉をかけた。
「仕事はいいのか?」
「えぇ。今日必要なものはすべて終えたわ。後は私の趣味の時間」
視線は固定したまま唇だけを動かす。少し低い位置にある一刀の眼には、喋りながらも彼女の視線が上へ下へと往復する様子が見て取れる。
「そっか」
「えぇ」
一言だけ返し、再び口を噤む。2人の間を流れるのは、無言の時間と緩やかな風。こんな風に華琳と過ごすのは初めてかもしれない。一刀はそんな事を考える。
「―――――――――」
「………………それは、貴方の国の歌?」
「………へ?」
突然の問いに、一刀は思わず声を上げる。
「いま貴方が口ずさんでいた歌よ。なに?気づいてなかったの?」
「………無意識だった」
自身の口から流れ出る旋律に、一刀は気づいていなかった。もはや、彼にも何の歌だったのか分からない。
「呆れた…どれだけくつろいでいるのよ………まぁ、いいわ。続けなさい」
「邪魔じゃないか?」
「続けなさいと言っているの」
「………何を謳っていたのか自分でも覚えてない」
「本当呆れるわね。では、貴方の好きな歌で構わないわ」
「言葉が違ってもいいか?」
華琳は何も言わない。それを肯定と受け取り、一刀は再び歌い出す。それは昔聞いた、外国の歌。この時代では形が違い、まだ存在しない言語で綴られたその歌詞は、華琳の耳を優しく叩く。
最後に聞いたのはいつだったか。それすらもわからないまま、うろ覚えの歌詞を旋律とともに紡ぐ。緩やかな風は、まるで伴奏の如く絶えず流れていく。
パタン、という音と共に華琳が本を閉じたのは、一刀の歌が終わるころだった。
「―――本はもういいのか?」
「えぇ、今日はここまで。これからまた複雑な章に入るから、続きはまた今度ね」
そう言うと華琳は立てていた膝を一刀の方へと倒し、彼のそばの地面に手をついた。
「………なんだか機嫌がいいな」
ふと思いついた事を口にしてみる。昔なら気づくことはなかったかもしれない。だが、今日の華琳は、いつも身に纏っている雰囲気とはどこか違っていた。
「わかる?」
はたして、一刀の想像通りのようだ。少し微笑むと、華琳は服が汚れる事も気にせずに、草の上にうつ伏せになって両腕で身体を支える。
「なんとなく、な」
応える一刀も、仰向けから身体を横に起こし、肩ひじをついて彼女に向き直った。
顔の距離が近い。大体30cmもないだろう。いつもならありえないその距離に、一刀は思わずドキリとさせられる。雰囲気にあてられたか、一刀は地面についてない方の腕をあげ、そっと華琳の頭に掌を置いてみる。振り払われない。そのままゆっくりと腕を動かして、陽の光を浴びて輝いている髪を撫でてみた。
「女性の髪に触れるなんて、なかなかの礼儀知らずね」
「そう言うくせに、振り払わないのな」
「うるさいわね」
言葉とは裏腹に華琳の顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。
「天の国では、男が女の頭を撫でる事にどんな意味があるの?」
単なる知的好奇心とは思えない問いかけ。
「秘密だ」
しかし一刀はその問いに応えない。華琳もそれ以上追及するような事もせず、軽く目を瞑って、その掌の感触を楽しんでいた。
正午と日没のちょうど半ばの頃合い。どれだけの間無言の時間を過ごしたかは定かではない。華琳はゆっくりと瞼を上げて口を開いた。
「………そろそろ行くわ。いくら私が休みになったとはいえ、桂花たちが政策の上奏に来る頃だし」
身体を起こして軽く伸びをする。蒼く澄んだ瞳の横で、カールしている金髪が少し揺れた。
「そうか。だったら俺も―――」
俺も行くかな。そう言おうとした一刀の唇は塞がれる。
「………………」
「一刀はもう少し此処にいなさい」
彼の口元には、ピンと立てられた華琳の人差し指。その指の腹は一刀の唇に当てられている。
「………どうして?」
指を触れさせたまま、一刀は問いかけた。小さく綺麗な手から視線を上げれば、先ほどと同じように、穏やかな笑顔。
「どうしても。これは命令よ」
それだけ呟くと、彼女は立ち上がる。ただその指は別れを惜しむかのように一刀の口元に添えられたままだ。結局華琳は、腰を屈めた体勢だった。
「また歌ってちょうだいね、一刀」
「………仰せのままに、お姫様」
すっと指先が離れる。その指を視線で追えば、その先には先ほどのままの少女の笑顔。それはどこか幼く、どこか、解放された雰囲気を出していた。
「…………………………」
地面に寝転がったまま、華琳の背を見送る。その姿が宮中に消えようかという頃、一刀はそっと呟いた。
「………こんな日も、ありなのかもな」
そんな陳留でのひとコマ。
あとがき
はい、という訳で華琳様でした。
一刀君がイケメンなのは、一郎太仕様の一刀君だから。
こんな風に彼女とゆったり過ごしたい………………いればだけどな!!
とまぁ、くだらない事は置いてといて。
如何だったでしょうか。
1時間で書き上げたにしては、なかなかの出来だと思うんだ。
楽しんでもらえたなら幸せだぜ。
ひとつ(どうでもいい)報告。
土曜日に髪を切りに行ったんだが、もう夏だしと、ぶっこんでみた。
具体的にはアシメで右側を短くして、ラインを入れてみたぜ。
大学で友達に聞かれた時は、
「土曜の夜にちっちゃいおっさんが現れて、草刈り機で俺の髪を刈っていった」
って説明してみた。
もうすこし面白い言い訳を考えておくべきだったか………。
とまぁ、本当にどうでもいい報告なので、流してくれ。
ではまた次回お会いしましょう。
バイバイ。
Tweet |
|
|
91
|
5
|
追加するフォルダを選択
はい、右上をご覧になればお分かりの通り、またもやAC711様のイラストにインスパイアされてSSを書かせて貰いました。
これこそツンデレの極みだと思うんだ。
ほんわか。