No.223781

頑張れP坊主!「第三章:初陣」

Puuryさん

いよいよP坊主・バケツ・メリィの初陣です。彼らは無事、クエストを達成できるのでしょうか?・3・

2011-06-20 16:37:48 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:410   閲覧ユーザー数:391

<前回までのあらすじ>

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P坊主は、鉄の被り物を被り、赤い褌姿の『バケツ』という男と、人間とは思えない程小さく、

死んだキリン装備のハンターから装備を剥ぎ取り、見た目は一流ハンターの女性『メリィ』

の2人が仲間になった。

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第三章『初陣』

 

多くのハンター達が集う集会所では、ハンターズギルドから依頼されている依頼書を見ては、

急いで狩りに出かける者達で受付は大忙し。

エミルもその対応に追われ、忙しい中、近くのカウンターの席から声が飛んでくる。

 

「お嬢さん。ビールを1つ頂けますかな?」

「僕、小さく小分けされているお肉!」

「私も…」

 

バケツがビールを頼むと、P坊主とメリィも続いて注文をする。

 

そんな3人の所へ、エミルが早足で向かってくるが、その手に注文をした物を持っている様子はない。

3人が座っているカウンターの前に立ったエミルは、力強くカウンターのテーブルを手で叩きつけた。

 

「あんたら何やってんの?」

 

エミルの問いかけに、3人は声を揃えて、

 

「休憩です」

 

と、答える。

 

「休憩ってね…あれから一週間、ずーーーっと休憩しかしてないでしょ!」

「後、小さく小分けされている肉なんて無いわよ!そのまま食え!」

 

エミルはそう言い返すと、大量の依頼書を持ってきてテーブルの上に広げる。

小型モンスターの討伐・大型モンスターの狩猟・古龍と呼ばれるモンスターの狩猟等、

その種類は豊富だった。

 

「どう?ここはね、そこら辺と違ってクエスト依頼の種類・量が豊富なのが自慢なの」

「あなた達が受けたいクエストもきっと見つかるはずよ」

 

自慢げに話すエミルを余所に、3人は一枚の依頼書を見て何やら小声で話し合っている。

その依頼書の内容は『ランポス6頭の討伐』だった。

 

「ん?まぁ~あなた達もまだ新米ハンターだし、そのぐらいから始めてみるのも良いかも」

 

エミルがそう言うと、バケツが重い口を開ける。

 

「なんで…なんで6頭なんですか?」

 

バケツは、拳を握り締めエミルに問いかける。

 

「え?だってランポスよ?」

 

エミルがそう答えると、バケツはエミルに詰め寄ろうとするが、それをP坊主とメリィが止め

にかかる。

 

「止めてください!彼女だって悪気はないんですよ!」

「暴力はいけませんよ…」

 

3人の様子が理解出来ないエミルは、何が言いたいのか聞いてみると、

 

「なぜ大型モンスターのクエストは1頭なのに、小型モンスターは複数討伐なんだ?」

「小型モンスターだって、危険で…」

 

啜り泣くバケツの様子を見たエミルは、バケツの褌を掴み上に持ち上げ、

 

「はぁ~?何?あんた、私が紹介してあげている依頼にケチつけんの?」

褌が股間に食い込み、激痛に耐えることができなくなったバケツは、エミルの両肩を掴み、

顔を寄せる。

 

驚いた表情で見つめるエミルに、バケツは、

 

「いいですよ…すごく…いいです…」

 

息を荒くし、エミルにもっと引っ張るように要求するバケツの股間に向かって、エミルは

鋭い蹴りを入れる。

 

股間を蹴られ倒れ込むバケツを見たP坊主は、付いているのか分からないが、少し

前かがみになって嶮しい顔になっており、メリィはワクワクしている。

 

「あんた達ね。ランポス6頭の討伐なんて初歩よ?こんなのに怯えていたら一人前

のハンターになんてなれないわよ?」

 

エミルにそう告げられると、3人はランポス6頭の討伐依頼書を見て、エミルに何か

を訴えるかのように見つめる。

その目は、

 

「もう少し数の少ないのはないっすかね?」

 

と、読み取れるものだった。

 

困り果てたエミルの目に留まったのは『ランポス3頭の討伐』の依頼書だった。

エミルは3人に依頼書を渡すが、バケツが、

 

「……違うんだよな~」

 

と、不満を垂れる。

P坊主とメリィも、頷いてエミルを見つめる。

 

今にも殴りかかってきそうなエミルの許に、同僚である受付の女性が駆け寄る。

 

「ねぇ~エミル。あんたの知り合いでさ、このクエストを引き受けてくれるハンター

っていないかしら?」

 

受付の女性が見せた依頼は『ランポス1頭の討伐(急募集!)』だった。

 

なんでも、街の近くにランポスが1頭迷い込んだらしい。

街に入ってくれば大騒ぎになるので、一刻も早く討伐しなくてはならない。

しかし、ランポス1頭の為に狩りに出かけてくれるハンターはここにはいない。

ましてや、報酬金の額も少ないこの依頼に目向きもしないだろう。

 

しかし、今のエミルには打って付けのハンターがいた。

P坊主・バケツ・メリィの3人だ。

この3人なら喜んで引き受けるだろうと思ったエミルは、3人の前に立ち、

依頼書を付き付ける。

 

「ほら。あなた達のご希望通りの依頼があったわよ」

 

エミルに渡された依頼書を見つめる3人の顔には、笑みはなかった。

バケツが依頼書をテーブルの上に置き、エミルの顔を見つめ、太太しい態度

で問いかける。

 

「え?それが人にものを頼む態度ですか?」

 

バケツがそう言うと、P坊主とメリィも不気味な笑みを浮かべ、エミルを見つめる。

 

 

 

エミルは、今すぐにでも殴ってしまいたい気持ちを押し殺し、丁寧にお願いをする。

 

「あ、あの~。申し訳ございませんが、こちらのクエスト依頼を受けては貰えない

でしょうか?」

 

バケツとメリィは納得したような顔で依頼書にサインをするが、P坊主だけは

サインをせず、エミルの許へコロコロと転がって一言、

 

「脱げ」

 

プツン!と、何かが切れた音がした瞬間、P坊主の頭上にエミルの足が勢いよく

降り注ぐ。

何度もエミルに踏まれてモチモチ感が増したP坊主を、エミルは掴み、依頼書に

サインするよう促す。

 

「ふぅ~。これで契約完了ね。それじゃ~お願いね」

 

3人は、笑顔で見送るエミルを後に集会所を出る。

ランポスは、街を少し離れた場所で確認されているらしく、街を出ようとするP坊主

とバケツに、メリィが話しかける。

 

「あの…皆さん、どのような武器を使うのか確認した方が良いのではないでしょう

か?」

 

確かに、複数人で狩りをする場合、それぞれの武器を把握する必要がある。

 

「僕は、見ての通りランス(盾無し)です!」

 

P坊主は、自慢の特注ランスを見せる。

それはまるで針のように細く短い物ではあるが…

 

「私は、このハンマーです!」

 

バケツは、自身の筋肉を強調するようなポーズで、自称ハンマーと称する小さな

トンカチを見せる。

 

「皆さん、なかなか良い武器をお持ちですね…」

 

そういうと、メリィは自身の背丈を遥かに超える程の大きな剣を持ち、P坊主と

バケツに見せつける。

 

武器の名前は『アギト改』

『アギト』と呼ばれる竜骨等で作られた大剣を、更に強化した物だ。

間違い無くこの中で一番良い武器だろう。

しかし、本来ならバケツの背丈ほどある大きさのはずが、食器のナイフのような

小さいサイズだった。

P坊主とバケツは、大きさよりも気になることがある。

 

「この武器も…ハンターから剥ぎ取ったやつなんだろうか…」

 

疑う2人を見たメリィは、

 

「いや~…“運ぶ”のに苦労しました…」

 

と、意味深な発言をする――

 

3人は街の出口に辿り着くと、1人の男がこちらをじっと見つめている。

P坊主が何をしているのかを尋ねるが、男は何も答えないままじっとこちらを

見つめている。

 

3人は、不審に思いつつも街を出た瞬間、男が立ちあがり、腰に挿していた

笛のような物を口に銜えて勢いよく息を吹き込み、

 

「プ~~~フ~~~!」

 

と、大きな音色を奏でる。

 

3人は足を止め、男に目をやると、男は満足したのかその場に座り、

笛の手入れを始めた。

P坊主とメリィが、永くここに住んでいるバケツにあの男のことを聞いてみると、

 

「私も詳しくはしらないが、彼は街を出る者を見かければ笛を吹くそうだ」

「なんでも『C』と呼ばれる神様に頼まれたとか…」

 

Cと呼ばれる存在は、この世で絶対的な権力と力を持っている者らしく、

逆らえばこの世から消されると噂されている。

 

――3人は、Cと呼ばれる存在について話しながら草原を進んでいくと、

 

「ギャー!ギャー!」

 

直ぐ近くで獣の鳴き声が轟く。

3人は、身を構え辺りを見渡すと、茂みの中から1頭のランポスが現れた。

ランポスとは、肉食の小型モンスターである。

普段は群れをなして行動するが、今回は仲間から逸れたのか1頭で現れた。

 

「1頭とはいえ、肉食のモンスターだ。侮ってはいけませんよ」

 

バケツの言葉に頷くメリィであったが、P坊主は一直線にランポスに向かって

走っていく。

狙いはランポスの腹部で、柔らかい腹部をランスで突いてしまおうという考えだ。

 

「僕だってやる時はやるんだー!」

 

ランポスの腹部に向かって飛びかかったP坊主だったが、ランポスが前足で

P坊主を掴む。

ランポスに掴まれたP坊主は、グネグネと蠢くがしっかりと掴まれており、

抜け出すことができない。

 

 

 

「……い・今です!僕がこいつの片足の自由を奪った隙に、やぁ~~ちゃって

ください!」

 

P坊主は、目的を達成したかのように清々しい顔でバケツとメリィに命令する。

 

「ど・ど・ど~しましょう…」

 

慌てるメリィを見たバケツは、メリィの頭に手を置き、

 

「ここで待っていなさい」

 

と、優しい言葉で指示する。

メリィが頷くと、バケツはランポスに向かって少しずつ歩いていく。

 

「どうしました?私が怖いのですか?でも、もう遅いですよ…」

 

自信満々に近寄って来るバケツを見て、ランポスが怯えているのが分かった。

ある程度ランポスに近づくと、バケツは立ち止り、褌の中を弄り始め、取り出し

たのは緑色の小さな玉だった。

P坊主もメリィも、バケツが取り出した緑色の玉の正体を知らない。

 

何やら凄いアイテムなのか?

期待に胸が膨らむ2人。

 

「ふふ…いくぞ!」

 

バケツはそう叫ぶと、緑色の玉を自分の足元に向かって勢いよく投げつける。

ボン!っと、破裂した玉から緑色の煙が噴出し、バケツを包み込む。

P坊主とメリィとランポスは、何が起こったのか理解できないまま、

緑色の煙が消え去るのを待つ――

 

少し経って、緑色の煙が消え去ると、そこにはバケツの姿が無かった。

 

………

………

 

「に・逃げたなー!」

 

P坊主とメリィは、バケツが逃げたと確信した。

バケツが使ったのは『モドリ玉』と呼ばれるアイテムで、使うとキャンプまで

戻ることができる代物だ。

ちなみに、今回キャンプは用意されていないので、おそらく街に戻ったと思われる。

P坊主は捕まり、バケツは逃げ、残されたのはメリィ1人になってしまった。

 

「ギャー!ギャー!」

 

ランポスは大きな声で叫び、メリィに向かって走ってくる。

怯えるメリィは、その場で身構えることしかできなかった。

 

すると、空から、

 

「ギャァーーーー!!!」

 

と、大きな鳴き声が轟く。

次の瞬間、羽の生えた大きなモンスターがランポスを押し倒し、息の根を

止める。

 

空から降りてきたモンスターの名は『リオレイア』

大型のモンスターで、羽はあるが地上での戦闘が多く、口から放たれる

火の塊(ブレス)や、尻尾の毒針を振り回す(サマーソルト)による攻撃は、

多くのベテランハンター達を悩ます。

 

ランポスよりも遥かに強いモンスターの登場に、メリィは腰を抜かす。

しかし、リオレイアはメリィやランポスには目もくれず、気を失っている

P坊主を掴むと優雅に大空へと羽ばたいていった。

どうやらP坊主を自身の卵だと勘違いしたらしい。

 

メリィは急いで街に戻り、エミルに助けを求める。

が、その前にランポスから素材を剥ぎ取る――

 

街に戻り、集会所に着いたメリィの目に飛び込んだのは、優雅にビールを

啜るバケツの姿だった。

 

「ん?………ずずずぅ~……」

 

バケツは、にじりにじりと寄ってくるメリィと目が合わないように、視線を逸らす。

 

「あら?お帰りなさい。遅かったのね」

 

エミルが笑顔で迎えると、メリィが事の事情を話す――

 

「それは大変!でも、その前に…」

 

エミルがバケツの許に近寄り、肩をトントンと叩く。

 

「あんた…クエストを終わらせて帰ってきたって言ったわよね?」

 

エミルがバケツの耳元で話しかけると、バケツは、ドン!と、大きな音を立て、

ビールジョッキをテーブルに置くと、

 

「……酔っちゃった」

 

と、可愛らしい声でエミルと目を合わせるが、その瞬間、エミルの放った拳により、

バケツは数メートル先まで吹っ飛んだ。

 

「っつーー!思わず顔を殴っちゃったじゃないの!」

 

バケツの被っている鉄製の被り物を殴ったせいで、エミルは拳を痛める。

殴られたバケツは、むくりと立ち上がり、腰に手を当て何事も無かったように自身の

筋肉を強調し、ほそく笑む。

すると、エミルは鼻で笑いバケツの近くに寄ると、右足を勢いよく降り上げバケツの

股間目掛けて蹴りを入れる。

 

「げ・外道め…」

 

そう言い残してバケツは崩れ落ち、倒れ込む。

 

「どっちがよ!」

 

エミルがそう言うと、メリィに近寄りP坊主が襲われた場所と、リオレイアが飛んで

行った方角を聞き出す。

 

「恐らくP坊主は、リオレイアの巣に連れて行かれたと思うの」

「あなた達だけじゃリオレイアを討伐するなんてまず無理だし…」

 

エミルが悩んでいると

 

「戦う必要はないであろう」

 

バケツが立ちあがり、エミルにそう告げる。

確かに、P坊主だけを救出するだけならば戦闘は回避できる。

しかし、リオレイアはP坊主を自身の卵と勘違いしている。

卵を奪われたことに気づかれた場合のことを考えると、非常に危険だ。

 

エミルがバケツにそれなりの覚悟が必要だと伝えると、

 

「仲間が…待っているんですよ」

 

と、爽やかに答える。

エミルとメリィは、この時思った…

 

「見捨てたくせに」っと…

 

本人が乗り気なので、2人はあえてこのことを口に出しはしなかった。

 

エミルに渡された地図を手にすると、バケツとメリィは急いで集会所を飛び出し、

P坊主がいる場所に向かった――

 

「ふぅ~…やれやれ」

 

エミルが疲れ果てていると、1人のハンターがエミルに話しかける。

 

「エミル…大丈夫?」

 

話しかけてきたハンターを見て、エミルは何やら相談を始めた――

 

第四章『救出』へ続く――

 


 
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