No.223775

少女の航跡 第2章「到来」 18節「アイアンゴーレム」

橋の上で激しく戦うカテリーナ達。アイアンゴーレムは次々と増殖して彼女らに襲い掛かります。

2011-06-20 16:20:32 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:453   閲覧ユーザー数:380

 

 鉄のような岩で出来たゴーレムは、私達の方へと近付いて来ていた。その体を砕かれても砕

かれても、不死身であるかのように起き上がって来るゴーレムは、私達を既に取り囲んでしま

っている。

 

 峡谷にかかる橋の手前に、まるで立ち塞がるかのようにして立っている女、アフロディーテ

は、そんな私達の事を、面白いものでも見ているかのような表情で見ていた。

 

 やがて彼女は呟く。

 

「なかなかやるわね、お譲ちゃん達。わたしの夫が、所詮は小娘なんて思っているのが、もった

いないくらいだわ…。でもね…、まだまだ、これからなのよ…」

 

 そう言った、アフロディーテは、その手に再び怪しげな光を溜め込み始めた。彼女の周りを流

れる空気が変わり、光は、彼女の手に集中する。

 

 彼女は、その手を地面へと当てる。すると、光は素早く地面へと流れていった。

 

 直後、地響きのような地鳴りが周囲に轟いだかと思うと、地面を割り、次々と地中からゴーレ

ム達が現れてくるではないか。

 

 新たに現れた4体のゴーレムが、私達の周りから襲い掛かってきていた。

 

 カテリーナ達は、どんどんゴーレムに攻撃を加え、相手の攻撃はかわし、どんどんゴーレム

達を破壊して行った。

 

 だが、私とフレアーの前にも、ゴーレムは現れる。騎士達の体を次々と吹き飛ばし、一体の

ゴーレムが現れた。

 

 そんな私達の間に入り、銃を掲げ、ゴーレムに向って撃ち放つ男の姿。それは、カイロスだっ

た。銃弾がゴーレムの頭に襲い掛かったが、まるで通じる様子は無かった。

 

「やっぱ駄目か…。こいつらは、オレの苦手なタイプの相手だぜ…、お嬢さん達、オレの後ろに

隠れていな…、こうなったら…」

 

 そうカイロスが言いかけた時、ゴーレムが大きく腕を振り上げていた、

 

「おい! ちょっと待て! 準備が…」

 

 カイロスが、何かをする間もなく、ゴーレムは彼の体を吹き飛ばした。

 

 次いで、そのままゴーレムは前進してきて、追い詰められている私達に向っても巨大な腕を

振り上げる。

 

「きゃ~! ちょっと! 嫌! 嫌!」

 

 フレアーが訳も分からないような悲鳴を上げ、私とメリッサにしがみ付いて来ようとする。そこ

にはシルアもしがみ付いていた。

 

「ちょ…、ちょっと離れてよ…! 危ないッ!」

 

 直後、ゴーレムは私達に向って鉄球のような腕を振るっていた。

 

 私は無駄と分かっていながらも、剣と盾を使ってゴーレムの攻撃を防ごうとする。だが、フレ

アーの防衛本能のようなものが爆発したのか、私の盾よりも更に前に、土が練り固まって出来

上がった盾が地面から付き上がって来た。

 

 その盾はゴーレムの鉄球のような腕の威力を、少しは軽減する。私も、腕を折らずに済んだ

ものの、鉄球によって薙がれた私の体は、フレアーと共に大きく吹き飛ばされてしまうのだっ

た。

 

 ゴーレム達の包囲の中から飛び出してしまった私達、落ちて行ったのは、今、ゴーレムに吹

き飛ばされたばかりの、カイロスの体の上だった。

 

 私達2人の体が彼の上に乗った事で、彼は呻いた。

 

「あっ…、ご、ごめんなさい…」

 

 と、私は、体の上に乗ってしまった彼に謝ったが、

 

「い、いや、いいんだぜ…、別にな…」

 

 何やらカイロスは嬉しそうにそう言うのだった。すぐに私は、身を起こし、カイロスの体の上か

ら離れるが、直後、一人の騎士が、私達のすぐ頭上を吹き飛ばされて行った。

 

 今では、ゴーレムの包囲の中で戦う事ができているのは、カテリーナ、ルージェラ、ナジェー

ニカ、ルッジェーロ、そしてロベルトのみだった。彼女らはお互いに背を向けた円陣を組む形

で、狭い範囲でゴーレム達と対峙している。

 

 カテリーナが大剣を振るい、ついに一体のゴーレムの体を半分に砕いてしまう。直後、彼女

に飛び掛ってきたゴーレムも、彼女が剣を振り上げて砕く。

 

「おおっ、やるな。また一段と強くなった見たいだな…? カテリーナ?」

 

 と、嬉しそうにルッジェーロは言ったが、彼女の方から返事は無かった。

 

 だが、彼らが浮かれる間もなく、ゴーレム達の包囲の向こうから、更に新たなゴーレムが姿を

現していた。

 

「う、嘘は止めてよ!」

 

 ルージェラが信じられないと言った様子で言った。

 

 今度は、ゴーレム達が、次々と彼女達に飛びかかってくる。その巨体とは思えないような動き

で、野生動物のように飛び掛ってくる。

 

 素早く飛び退く、カテリーナ達。だが、ルージェラだけ、その場に立ったまま、ゴーレムを待ち

構えた。

 

 何をするのかと思ったら、彼女は、自分の頭上に飛びかかってきたゴーレムを、まるで岩でも

持ち上げるかのような姿勢にして受け止めてしまうではないか。

 

 彼女の脚が、地面にめり込んでしまうほどの衝撃。だが、ルージェラは立ったままの姿勢で、

ゴーレムを受け止めていた。

 

「こ、こんなものぉ…っ!」

 

 ルージェラは、ゴーレムの体を、そのまま投げ飛ばした。

 

 更に、彼女の前にゴーレムが現れるが、ルージェラは両手に構えた斧を使い、ゴーレムの攻

撃を受け止める。そして、相手の体を逆に押し返してしまう。

 

 ナジェーニカは槍を大きく振るい、次々とゴーレムの体を砕く。ロベルトは、銃の銃口を、ゴー

レムの目の前にまで持って行き、発射する事でゴーレムの体を確実に破壊していた。

 

「ちッ…! こんな硬い体だって言うのに、皆、普通じゃあないぜ…!」

 

 そんな中、ルッジェーロは、ゴーレムの攻撃とその硬さに閉口しながら言っていた。あまりに

硬い体に斬りつけていった彼の剣は既に刃こぼれしてしまっている。彼に出来る事は、背後か

ら迫って来るゴーレムの腕を、その剣で防ぐ事ぐらいだった。

 

 すかさずそのゴーレムの体をカテリーナが打ち砕く。彼女の体の周りには、既に青白い火花

が飛び散っていた。

 

 カテリーナが、彼女の持つ大剣、トール・フォルツィーラに宿る稲妻の力を使い始めている証

拠だった。

 

 ゴーレムの体に稲妻が流れ、まるで小石でもあるかのようにゴーレムが吹き飛ばされていく。

何も言わないゴーレムは、そのまま他の2,3体のゴーレムを巻き添えにして離れた場所まで

吹き飛んでいく。

 

 更にカテリーナは剣を振るい、側にいたゴーレムの体を打ち砕く。既に彼女の武器は剣だけ

ではなく、その剣や体から迸る稲妻も、刃と化していた。

 

「お、おい…! 俺達を、巻き添えにしないでくれよ…!」

 

 カテリーナの剣から迸る稲妻は、全く動きを読む事ができず、それは近くにいるルッジェーロ

達にとっても危険だった。

 

 しかし、今のカテリーナには、それは聞えていないかのようだった。

 

 稲妻を纏い、大剣を振るう。更に自分の何倍もの大きさのあるゴーレムを次々と打ち砕いて

いく様は、さながら闘神であるかのようだ。

 

 カテリーナの稲妻にも怯えることなく、ゴーレムは鉄球のような腕を振るって来る。しかし彼女

はそんな攻撃をも、宙に飛び上がり避け。落ちてくるついでにゴーレムを再び斬り捨てる。

 

 剣を振るうカテリーナは、更にゴーレムを次々と、まるで剣が鉄槌であるかのようになぎ倒し

て行った。

 

 既に、彼女は人間ではない、何者かのような姿になってしまっている。戦っている時の彼女に

は、余裕の表情も、必死の表情も無い。ただ、ゴーレムを斬り捨てる事のみに集中しているよ

うだ。

 

 ゴーレム達も負けてはいなかった。彼らには恐怖も何も無い。ただ、カテリーナに襲いかかる

事だけを目的としている。

 

 幾ら彼女に体を打ち砕かれ、腕や脚を破壊されても、まだ襲い掛かっていた。

 ゴーレムのしぶとさに、カテリーナさえも、少し押されかかっていた。

 

 また、一体のゴーレムに斬りかかるカテリーナ。腕を根元から粉砕する事で、相手の攻撃能

力を失わせるのは良い手段だった。

 

 だが、背後から現れた新手のゴーレムに、彼女は、鉄球のような腕を浴びせられた。

 

 たまらず後方に吹き飛ぶカテリーナ。普通ならばそのまま何メートルも吹き飛ばされてしまう

だろう。

 

 しかし彼女は、ゴーレムからのダメージなどものともせず、空中で一回転してから体勢を立て

直し、両脚で着地した。

 

 ゴーレムからの攻撃の勢いも残っているためか、何メートルも後方へずさる事にはなった

が。

 

 しかし、カテリーナには焦りの色が少し伺えた。彼女の方へと、まだ何体ものゴーレムが迫っ

てきていた。

 

 剣を構え、身構えるカテリーナ。彼女の大剣を持ってすれば、ゴーレムの体を粉砕する事が

できるだろう。だが、こう何体も現れては…。

 

 だが私は、はっと思い付いた。どうせ、自分は彼女達の戦いには付いて行けていなかった。

ならせめて…。

 

「カテリーナッ!」

 

 私は叫び、自分の一振りの剣を彼女の方へと投げ込んでいた。

 

 せめてこの武器が、カテリーナの手助けになってくれるかもしれない。

 

 カテリーナは、すかさず私の剣を受け取った。すると、私の剣にまで、彼女の体から迸る稲妻

の光が流れていくではないか。

 

 右手に自らの大剣を。左手に私の剣を持ったカテリーナは、目の前に迫って来る一体のゴー

レムに向けて、その2つの刃を叩き込んだ。

 

 事実、斬り付けたというよりも、叩き込んだと形容した方が正しい有様だった。

 

 ゴーレムの体が、粉々に粉砕され、岩の塊が飛び散った。それは、ゴーレムの体の一部など

ではなく、体の大半が粉々になってしまったのである。

 

 カテリーナは剣を構え直す。彼女は2振りの剣を構える姿を見る事など無かった。

 

 いや、彼女自身も2本の剣を構える経験など無かったかもしれない。だが、2つの剣で圧倒

するその様子は、今までの彼女よりも、さらに威圧的に見えていた。

 

「さあ、これからが本番だ…」

 

 そう言い放ったカテリーナは、再びゴーレム達の中へと飛び込んでいった。

 

 ルージェラ達に襲い掛かるゴーレムに、カテリーナは剣を叩き込んでいく。ゴーレムは粉砕さ

れ、その破片が飛び散った。

 

「カ…、カテリーナ…?」

 

 いきなりゴーレムを粉砕したカテリーナを、驚きの目で見ながら、ルージェラが呟く。しかし、カ

テリーナは何も言わずに、続いて飛び掛ってきたゴーレムの体を粉砕した。

 

 カテリーナを中心に、ゴーレム達が次々と飛びかかってくる。だが、カテリーナは、2振りの剣

を大きく回転させ、次々とゴーレムの体に叩きつけていた。

 

 ゴーレムの体は、何キロほどの重さがあるのだろう。おそらく、ただの人間だったら押し潰さ

れてしまうほどの重さがあるに違いない。何しろ、私には、鋼鉄の塊にしか見えないのだから。

 

 だが、カテリーナと私の剣に叩き飛ばされたゴーレムは、まるで、軽い玉であるかのように吹

き飛んでいく。

 

 そして、吹き飛ばされたゴーレムは、まだその体から青白い火花を放っていた。

 

 カテリーナ達は、ゴーレム10体ほどに囲まれていたが、カテリーナの善戦で、次々とゴーレ

ム達を狩っていた。

 

 ほとんどが、カテリーナの剣により吹き飛ばされるか、倒されてしまう。

 

 上空から迫ってきていたゴーレムを、カテリーナは即座に反応し、剣を振り上げ、逆に上空へ

と投げ飛ばしてしまう。

 

 続いて、横から飛び掛ってきたゴーレムを、カテリーナは剣で粉砕する。そのゴーレムは弾か

れながら、きりもみに回転し、他のゴーレムを巻き添えにしながら、何メートルも吹き飛ばされ

た。

 

 別のゴーレムの上に飛び乗ったかテリーナは、更に、真正面に迫ってきていたゴーレムに、

大砲のような突きを2本の剣で突き出した。

 

 それは、事実、大砲だった。本当に、大砲の砲弾が炸裂したかのような音が周囲に轟き、撃

たれたゴーレムは後方に吹き飛んでいく。

 

 そのゴーレムは、半壊状態になりながら、この様子を見守る女、アフロディーテのすぐ側まで

吹き飛んで行った。

 

 アフロディーテは、吹き飛んできたゴーレムにちらりと目を落としただけで、再びカテリーナ達

の方に目を戻して言った。

 

「まだまだ…、これからよ…」

 

 と、彼女が言った直後、再び彼女の周囲に妖しい気配が撒き散らされた。

 

 カテリーナ達は次々とゴーレムを粉砕して行っていた。カテリーナの大剣に加え、私の剣も唸

りを上げ、ルージェラが、その素早い動きで次々と敵を狩っていき、ナジェーニカの鉄槍が敵を

粉砕する。

 

 ロベルトの銃弾が火を吹く中、ルッジェーロも何とか長剣を使ってその場を凌いでいた。

 

 しかし、そこへ、アフロディーテが、大地の底から呼び出したゴーレムが、更に次々と現れる。

その数は、20を超えていた。

 

「ちょ…! 本気…!」

 

 帽子をかぶり直したフレアーが、驚愕の目でその有様を見ていた。

 

 地面から次々と現れたゴーレムが、大軍をなしてかテリーナ達へと襲い掛かっていく。

 

 私達からの位置では、カテリーナ達の様子は全く見えなかった。

 

「カ、カテリーナッ!」

 

 私は叫んだ。

 

 火花が飛び散り、再びゴーレムが、カテリーナの前から吹き飛んでいく。外周から次々と追加

されて来るゴーレムをも巻き添えにして、一体の岩の塊が吹き飛んでいく。

 

 一つの軍勢に囲まれてしまったかのようになってしまったカテリーナ達。今では30を超える巨

体のゴーレム達に彼女らは取り囲まれていた。

 

「ど、どうするってんだ? カテリーナ!」

 

 ルッジェーロは叫んだが、カテリーナからは何の返事も無かった。

 

 その時、ルッジェーロを直撃しようとする鉄球のようなゴーレムの腕。彼は、ゴーレムの攻撃

に、髪のように吹き飛ばされた。

 

 彼が吹き飛んで行った先は、大軍のように迫って来るゴーレムの真っ只中。別のゴーレム

に、彼の体は押し潰されてしまいそうになる。

 

 しかしそこへ、馬を駆りながら、割り入って来る者の姿。それはロベルトだった。ロベルトは、

ゴーレムの大軍へと銃を次々と打ち鳴らしながら、大軍の中に飛び込んで行ってしまったルッ

ジェーロの体を拾い上げる。

 

 彼はそのまま、ゴーレム達の包囲網から脱出しようとしていた。

 

「お、おい…。カ、カテリーナが…」

 

 ゴーレムに吹き飛ばされた事で、意識朦朧としているルッジェーロ。

 

「今は、自分の事だけを心配しろ…!」

 

 ロベルトはそれだけルッジェーロに言い、ゴーレム達の中から脱出しようとしていた。

 

 カテリーナが再び剣を大きく振るい、次々とゴーレム達の体を砕いていく。既に、自らの馬か

らも落ちてしまった彼女達は、身一つでゴーレム達に挑まなければならなかった。

 

 次々とゴーレムの砕けた体の破片が舞う。ゴーレム達の包囲の中心にいるのは、もはや3

人。カテリーナと、ルージェラ、ナジェーニカだけだった。

 

 全速力で戦い続ける彼女達。さすがのカテリーナも、既に息を切らせ始めていた。

 

 その体を砕かれても砕かれても、起き上がって来るゴーレムは、恐れる事など全く無く、カテ

リーナ達の周囲を取り囲んでいた。

 

 3人それぞれが、背中をくっ付け合わせ、円陣を組む形になったカテリーナ達。その周囲をゴ

ーレム達およそ30体が、がっちりと取り囲んでいた。

 

 その有様は、さながら、壁のよう。

 

「ど…、どうするのさ…?」

 

 ルージェラが後ろにいるカテリーナに背中で尋ねる。彼女はもう、両手に持った斧が刃こぼ

れするほど戦っていた。肩で激しく息を切らせている。

 

「さあ…? どうしようもない…。この周りの敵を倒す自信はあるけれども…。またどんどんゴー

レムを増やされて行ったら…」

 

 ゴーレム達に剣を向け、その動きを牽制しながらカテリーナが言った。

 

「そ、そんな…、冗談でも無い事言わないで…」

 

 そうは言ったものの、ルージェラはまだやる気だった。

 

 しかし、その時、ルージェラの上に尖った長い耳で、彼女は何かを聞き取ったようだった。

 

「待って…! やっと戻って来た見たいだよ…!」

 

 ルージェラが声を上げた。彼女がさっと目を向けた方向に、カテリーナや私達の視線も向け

られた。

 

 空の向こうから飛んで来る影。それは、遠くから見れば、一見、鳥のようだったが、鳥ではな

い。

 

 それは、シレーナだった。

 

 3人の翼を持つシレーナ達が、上空から羽ばたいてくる。それはあっという間に私達の頭上

に達し、ゴーレムの包囲を意図も簡単に飛び越え、カテリーナ達へと近付いて行った。

 

「カテリーナ様ぁ~」

 

 1人のシレーナが呼びかけながら、カテリーナの方に向って、そのカギ爪となっている脚を伸

ばした。続いて、他の2人のシレーナ達も、ルージェラとナジェーニカへとそれぞれ脚を伸ば

す。

 

 カテリーナが、シレーナの脚を掴み、体を引き上げられる。しかし、ゴーレム達も、そんな彼

女らを逃がそうとはしなかった。一気にゴーレム達が飛びかかっていく。一体のゴーレムがル

ージェラの脚にしがみ付こうとしたが、それを、カテリーナが蹴り飛ばした。

 

 シレーナ達は、カテリーナ、ルージェラ、そしてナジェーニカの体を持ち上げ、一気に羽ばた

く。

 

 重厚なゴーレム達は、カテリーナ達の高さにまで、飛び上がろうとするが、体の重さが付いて

いけないらしく、彼女達のいる地点に、山のように積み重なるしかなかった。

 

 シレーナ達に連れられたカテリーナ達は、ゴーレム達の包囲網を空から飛び抜け、さらには

峡谷をも飛び越えていった。

 

「おいッ! 俺達も早くこの場所から撤退する…! 5キロ北にも橋がある。そこからかテリー

ナ達に追い付くんだ!」

 

 直後、ゴーレム達の中から飛び出してくる馬の姿。そこには、急いで騎士達に指示を出すル

ッジェーロと、彼を連れたロベルトの姿があった。

 

「あ、あなたは…! 大丈夫だったんですか…?」

 

 と、私はロベルトに尋ねるが、

 

「急いだ方がいい…」

 

 ロベルトはそう言うだけで、私もゴーレム達に吹き飛ばされていた騎士達に従い、自分の馬、

メリッサを見つけて、急いでその上へと飛び乗った。

 

 シレーナ達に連れられたカテリーナ達は、峡谷を飛び越え、その先、『ベスティア』の大地へと

飛び去っていく。ゴーレム達も、崖を飛び越えては彼女達を追えないようだった。

 

 一人、その場にゴーレム達と取り残されたアフロディーテは、カテリーナ達が飛び去って行っ

た崖の向こう、『ベスティア』の大地を向き、一人、高笑いと共に呟いていた。

 

「やるわねぇ、お嬢ちゃん達…、やっぱり、こうでなくっちゃあ、ねえ…」

 

 と言った彼女の背後では、カテリーナ達に襲いかかっていた大量のゴーレム達が、次々と、

崩れながら地面へと戻って行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

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19.べスティア


 
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