No.223436

遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第二章・序幕

月千一夜さん

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫
第二章【愚かな王の、愚かな願い】
いよいよ、スタートしますw

今回は序幕ということで、短めです

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2011-06-18 23:29:03 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7802   閲覧ユーザー数:6452

覚えているか?

自分で、自分に問いかける

 

覚えている

自分で、自分にそう返した

 

瞬間、広がった光景

その光景を・・・やはり、“儂”は覚えていた

 

 

 

『あぁ・・・そうか・・・“終わり”か』

 

 

広がっていくのは・・・“赤”

その中心に横たわるのは、一人の“王”

 

 

『そうだ・・・これが、“貴様”の“最期”だ』

 

 

その“王”の呟きに答えるのは、目の前の光景の中

浴びた“赤”に染まる“自分自身”

 

 

『これが・・・“愚かな王”の末路だ、■■よ』

 

『そうか・・・』

 

 

呟き、“奴”は笑った

否・・・“嗤った”のだ

腹の底から湧きあがる、不快感も関係なく

奴は、大声で嗤ったのだ

 

 

『くはははははははははは!!!!

良いだろう、ならば私はここで終わるとしよう!!!』

 

 

“だがな”と、“王”は不気味な笑みを浮かべた

その笑みを見つめた瞳が、微かにブレる

 

 

『一つ、教えてやろうっ!

貴様らのその“理想”も“正義”も、全ては無駄に終わるのだっ!!!!』

 

『・・・なんですって?』

 

 

その言葉に、儂の隣にいた“女”が表情を微かに歪めた

無論、この儂自身も

この“王”の言葉に対して、言い知れぬ“不安”を感じたのだ

 

 

『よく聞くがいい!!!!

“劉玄徳”では、天下を取れない!!!!

お前らは中途半端な“理想”に振り回され、そして終わるのだっ!!!!!』

 

 

言って、“王”は嗤う

嗤い続ける

 

 

 

 

『忘れるな!!!!

この私の言葉を!!!!

そして、思い知れ!!!!

お前らがしたことは、全てが“無駄”だったのだとな!!!!』

 

 

 

声が、響き続ける

その声を、その嗤いを、その不気味な笑顔を

儂は、未だに忘れることはない

 

いや、違う・・・

 

 

 

 

 

 

“忘れることが出来ないのだ”

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第二章 序幕【悪夢】

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・・っは」

 

 

勢いよく体を起こし、“彼女”は荒れた息を整える

それから、静かに辺りを見回し・・・深く、息を吐き出した

 

 

「夢、か・・・」

 

 

呟き、見つめる先

閉じられた窓の向こう

太陽は、ようやく昇り始めたのだろう

辺りは未だに、微かに暗かった

 

 

「参った、な・・・」

 

 

そう言って、彼女はゆっくりと寝台から出た

そして乱れた衣服を整え、再びため息を吐き出したのだ

 

 

「何故、また・・・“あの時”の夢を見るようになったんじゃ」

 

 

“あの時”

呟き拭った汗が、妙に気分を不快にさせる

そう思いついた溜め息も、いつもよりも“重い”

 

 

「ふぅ・・・いかんな」

 

 

“少し、気分を変えなければ”

そう思い見つめた先

彼女の部屋に備えつけらえた窓の向こう

徐々に明るくなる空を見つめながら、彼女は小さく笑みを漏らした

 

 

「ふむ・・・少し、“顔を見に行くか”」

 

 

言って、彼女はいそいそと準備を始める

その顔には、先ほどまでの“暗さ”は微塵も見えなかった

 

 

 

彼女の名は“厳顔”

真名を“桔梗”

 

西は益州の地にある国・・・“蜀”

その王である劉備に仕える“武将”である

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「あら」

 

「む・・・?」

 

 

廊下を歩いている時、ふと感じた視線

視線を向ければ、そこには一人の妙齢の女性が立っていた

彼女はその女性を見つめたまま、フッと微笑を浮かべる

 

 

「“紫苑”、どうした?

このような朝早くから」

 

「それは私の台詞よ桔梗

貴女こそ、こんな朝早くからどうしたのよ?」

 

 

桔梗の言葉

“紫苑”と呼ばれた女性は、艶やかな笑みを浮かべながら返した

それに対し、桔梗は苦笑しながら持っていた“花”を見せる

 

 

「“見舞い”じゃよ」

 

「あら、なら私と一緒ね」

 

 

そう言って、微笑む彼女

その手に、果物が入った籠を持っていたのだ

 

 

「そうか、ならば一緒に行くか?」

 

「それがいいわね」

 

 

言いながら、二人は並んで歩き出す

その手にそれぞれ、お見舞いの品を持ちながら

目指すのは、“彼女達の古くからの友のもと”

その足取りは、どこか軽い

 

やがて、辿り着いたのは城内でも特に奥の方

殆どの者が近づかないほどに、奥まで進んだ先にある扉の前だった

 

 

「おい、“緑(リョク)”

起きておるか?」

 

 

扉の向こうに、声をかける桔梗

その声に反応するよう、部屋の中から微かに音が聞こえた

次いで、優しげな声が響く

 

 

「桔梗、ですか?」

 

「私もいますわ」

 

「まぁ、紫苑まで

どうぞ、入って下さい」

 

「うむ」

 

 

部屋の主の言葉に、桔梗はゆっくりと扉を開く

瞬間、眩いばかりの日の光が差し込んだ

その光りが、寝台に入っている一人の女性の姿を美しく照らしていた

 

 

 

 

「おはよう・・・桔梗、紫苑」

 

 

そう言って、ニッコリと笑う彼女

名前通りに長く緑色の髪を靡かせ微笑む彼女

その両目には、幾重にも包帯が巻かれていた

そんな彼女の笑顔に、2人も笑顔を浮かべたまま寝台の近くにある椅子に座り込む

 

 

「元気そうじゃな」

 

「それはもう

ここは、お優しい人ばかりですから」

 

「そうか、それはよかった」

 

「ええ、そうね」

 

 

2人は、そう言ってクスリと笑う

そんな二人の目の前で、彼女もクスリと笑いを零していた

 

 

「でも、今日は特に気分がいいのよ?」

 

「あら、いったいどうしてなの?」

 

 

紫苑の問い

彼女・・・緑は微笑を浮かべたまま口を開いた

 

 

 

 

「今日・・・“縁(エニシ)様”の夢を見たの」

 

「「っ!」」

 

 

 

 

“縁”

その名が出た途端、二人の表情が変わる

そこにあるのは先ほどまでの笑顔ではない

 

 

「ねぇ、桔梗

縁様が“自らの命を絶ってから”、もう大分経つのですね」

 

「ああ・・・そうじゃな」

 

 

緑の言葉に、桔梗は頷いた

その体が、微かに震えている

 

 

「あの縁様が自らの命を絶つなんて・・・よほど大きな悩みを抱えていたはずなのに、私はそのことに気づけなかった

そんな自分が許せなくて、私が“この両目を潰してから”もう大分時が流れてしまった

それでも、私は思い出せるのです

あの方の、あのお優しい笑顔を

夢の中・・・未だに、思い出すことができるのです」

 

 

“これほど嬉しいことはない”と、彼女は本当に嬉しそうに微笑んでいた

 

その笑顔が、唯々眩しくて

2人にとって、その笑顔は本当に“苦しかった”

 

 

「そうか・・・よかったな、緑」

 

 

震える手を、グッと握り締め・・・桔梗は笑った

その笑顔が、どれだけ不自然だったとしても

彼女には、わからないだろう

それでも笑わなければいけない

自分にそう言い聞かせ、桔梗は笑ったのだ

 

そうして、そっと彼女の頬を撫でる

 

 

「よかったな・・・」

 

 

辛かった

今は唯、辛かったのだ

 

この、自分に向けられた笑顔が

彼女は・・・胸が張り裂けてしまいそうなほどに、苦しかったのだ

 

それでも、彼女は笑うのだ

 

 

 

「ああ、本当に・・・」

 

 

 

呟き、“思い出す”

 

彼女は、“何度も思い出す”

それはもう二度と忘れることの出来ない・・・“ある記憶”

 

 

『忘れるな』

 

 

その言葉と共に、心の奥に刻まれた

 

“罪の記憶”

 

 

 

 

「よかったな・・・緑」

 

 

 

 

 

“忘れるな”

 

言われなくとも、わかっている

 

そもそも、そのような言葉は無用だ

どれだけ、楽しくとも

どれだけ、月日が流れようとも

 

 

“忘れられないのだから”

 

 

それなら、背負ってやる

そう意気込んで、そのたびに“後悔”の念が押し寄せてくる

 

あの笑顔を見るたびに

あの声を聞くたびに

 

何度も何度も、何度も何度も・・・

 

 

 

『忘れるな』

 

 

 

昨日も、きっと今日も

夢の中・・・“あの声”が響いていくのだろう

 

 

ああ、そうだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

『あの“愚かな王”の嗤い声が、また今日も・・・夢の中、この儂を縛り続けるのだ』

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第二章【愚かな王の、愚かな願い】

 

・・・開†幕・・・

 

 

 

★あとがき★

 

どうも、皆さんこんにちわ

月千一夜です

 

ついに、二章が開幕致しましたw

今回の章の舞台は“蜀”

当然の如く、蜀の皆が活躍するお話です

 

さらに、またまた登場したオリキャラ

今回もまた、様々な人物が物語に深く係ってきます

 

 

最初は少しの間、“蜀”の視点で物語が進む予定

“彼ら”の活躍は、ほんの少しお待ちくださいw

 

 

それでは、またお会いしましょうw


 
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