No.219944

魔法少女まどか☆マギカ ほむほむとまどパン

pixivより転載。魔法少女まどか☆マギカ全く知らないぜという方でも安心の設計。
初心者の方は興味を持たれたら原作に接してみて、騙されたと夜中に絶叫して頂きたい今日この頃です。
電車の中でも構いません。なお、警察に連行されても当方は一切関知しませんが。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない

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2011-06-01 00:57:06 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2996   閲覧ユーザー数:2708

魔法少女まどか☆マギカ ほむほむとまどパン

 

 

1 魔法少女ほむほむ誕生

 

『もう大丈夫だよ、ほむらちゃん』

『貴方たちは?』

『彼女たちは魔法少女。魔女を狩る者たちさ』

『いきなり秘密がばれちゃったね。クラスのみんなには……ナイショだよっ』

 

 私、暁美ほむらが魔法少女となった鹿目まどかさんと巴マミさんに命を救われてから約1ヶ月。私が2人の後について魔女退治に関連を持つようになってからも1ヶ月。

 私たちは遂に最強の魔女との戦いの時を迎えていた。

 でも、それは今までの戦いとはまるで次元が異なる過酷なものとなった。

 空を浮く、巨大なメリーゴーランドみたいにも見える逆さ姿のその魔女の持つ力は圧倒的過ぎた。

 それは私に「絶望」の2文字を抱かせる存在だった。

 

『じゃあ、行って来るね……もうワルプルギスの夜を止められるのは私しかいないから』

 

 巴さんは既に死んでしまっていた。

 戦いを前にしてバナナの皮に足を滑らせて頭を強く打って死んでしまった。

 巴さんは死因がバナナの皮でソウルジェム破損であるのにどこか誇らしげな表情で永遠の眠りについた。

 それはともかく巴さんの死により、あの強大な魔女に鹿目さんはたった1人で立ち向かわなければいけなくなった。

 

『さよなら、ほむらちゃん。元気でね』

 

 でも、鹿目さんはその逆境の中でも決して諦めなかった。

 魔女ワルプルギスの夜を相手に一歩も退かない戦いをしてみせてくれた。

 

『私は魔法少女だから。みんなのこと、守らなきゃいけないから』

 

 鹿目さんは皆を守りたいという想いを力に変えて必死に戦った。

 そして遂に鹿目さんはワルプルギスの夜を倒した。

 けれど──

 

『私ね、あなたと友達になれて嬉しかった……』

 

 鹿目さんもまた力尽きて空中からこの水辺と化した地上へと落ちて来た。

 変身が解けてしまい制服姿に戻った鹿目さんに向かって私は必死に駆け寄った。

 戦闘では何の役にも立てなかったから、せめて鹿目さんの体と心を労わりたかった。

 落ちて来る鹿目さんに向かって必死に、必死に走った。

 そして私は偶然にも見てしまった。

 

「し、白……っ」

 

 落下して来る鹿目さんのスカートの中身を。

 清純な彼女によく似合う真っ白な下着だった。

 私はその白さに心を奪われてしまった……。

 

 鹿目さんが水面にぶつかり、大きな音と水飛沫が上がる。

 それで私は我に返り、慌てて鹿目さんの元へ駆け寄った。

 

 けれど、鹿目さんは既に──

 

「どうして? 死んじゃうってわかってたのに……」

 

 鹿目さんは既に息をしていなかった。

 鹿目さんは魔女と相打ちとなり命を落としてしまっていた。

 

「私なんか助けるよりも貴方に……生きてて、欲しかったのにぃ」

 

 双眸から涙が溢れ出て止まない。

 悲しみが無限に押し寄せて来る。

 脳裏に鹿目さんと出会ってからの日々が浮かび上がって来る。

 

『私、鹿目まどか。まどかって呼んでね』

『私もほむらちゃんって呼んで良いかな?』

『せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんも格好良くなっちゃえば良いんだよ』

 

 心臓病を患ってずっと入院してて、運動ダメ、勉強ダメ、自分に全く自信が持てない私に初めて優しく接してくれたのが鹿目さんだった。

 彼女の明るさと優しさは私に生きる勇気をくれた。生きる意味をくれた。生きる楽しさをくれた。

 その鹿目さんが……死んでしまった。

 私を守って、私の目の前で死んでしまった。

 彼女の代わりに私が死んでいたのならどんなに良かっただろうと嘆いた。

 

「その言葉は本当かい? 暁美ほむら」

 

 私に話し掛けて来たのはキュゥべえだった。

 魔法少女に付き物のマスコットキャラだと思い、これまでは特に気に留めて来なかった存在。

 

「君のその祈りの為に魂を賭けられるかい? 戦いの定めを受け入れてまで叶えたい望みがあるのなら……僕が力になってあげられるよ」

 

 キュゥべえは私に契約を持ち掛けて来た。

 魔法少女になるということは、巴さんや鹿目さんのように魔女と戦い、そして最期には2人のように死んでしまう運命が待っている。

 それはとても怖いこと。逃れられない運命は私のような臆病者にはとても受け入れられるものじゃない。

 けれど、キュゥべえと契約すればどんな願いでも叶えられると聞いた。

 だから、それはつまり──

 

「教えてごらん。君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?」

「私は……」

 

 立ち上がりながらメガネを外し、涙を拭きながら脳裏に思い浮かんだ光景。

 それは──

 

 1 まどかの傷付いた顔の白さ(Tinami版では選択できません)

⇒2 まどかのパンツの白さ

 

 鹿目さんが落下した時に見えた下着だった。

 顔を上げてキュゥべえを振り向く。

 そして私は自分の願い事を述べた。

 

「私は鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女をほむほむし尽くす私になりたいっ!」

 

 キュゥべえは何も言わずに私を見ていた。

 そして数秒後、私の体に異変が起きた。

 胸の辺りが、急に苦しくなった。

 そして、胸の中から紫色の宝石が飛び出て来た。

 

「契約は成立だ。君の祈りはエントロフィーを凌駕した。さあ、解き放ってごらん。その新しい力を」

 

 キュゥべえは私の宝石を見ながらそう言った。

 その声に導かれ、私は両手で光を発する宝石を掴む。

 すると、私に魔法が掛かった。

 魔法としか思えない出来事が私に起きた。

 それは、長い長い時間旅行の始まりだった。

 

 

2 ほむほむ過去に戻る

 

「ここは? ……私、まだ退院してない?」

 

 目覚めると私は長い間入院していた病室のベッドの上にいた。

 カレンダーを見ると、この病院から退院する日の部分に印が付いていた。

 見滝原中学校の入学案内書も、備え付けのテーブルの上に書き掛けで置かれていた。

 それを見て私はこの1ヶ月の出来事がもしかするとみんな夢だったのではないか。

 そんなことを考えた。

 けれど違った。

 何かを握り込んでいた左手をそっと開けて確かめてみる。

 そこには紫色の卵の形で、それをチェスの駒の様に装飾した見慣れない物体があった。

 

「夢じゃない……」

 

 それは確かに見慣れないものだった。

 けれどそれは、キュゥべえと契約した際に私の体から出て来た宝石を装飾したもので間違いなかった。

 それで私は望み通りに自分が過去に戻ったのだと知った。

 それがわかって、私は例え様もない幸福感に包まれた。

 私はまた、生きた鹿目さんと会える。

 それだけで、私はこの上なく幸せだった。

 

 

 

「は~い。それじゃあ、自己紹介いってみよう」

「暁美ほむほむです。よろしくお願いします」

 

 私にとっては二度目となる見滝原中学への転入。

 今度はトチらずに言えた。

 

「えっ? あなたの名前は暁美ほむらではないので……」

 

 先生は私の事情を説明しようとしていたけれど、それを聞いている余裕は私にはなかった。

 だって鹿目さんの姿が視界に入っていたのだから。

 私は紹介の途中にも関らず彼女に向かって走り出していた。

 そして、席の座ったままの彼女の手を握ってこう切り出していた。

 

「鹿目さんっ、私も魔法少女になったんだよ。これから一緒に頑張ろうね」

「へっ?」

 

 私の言葉を聞いた鹿目さんは最初きょとんと目を丸くしてみせた。

 そして周囲を見回しながら徐々に顔を赤くしていった。

 そして私は、彼女に告げなければいけないもう一つの大事な用件を告げた。

 

「私、鹿目さんをいっぱいいっぱいほむほむするからぁっ!」

 

 それは私にとって一世一代の大告白だった。

 プロポーズにも等しい永遠の誓い。

 

「あのぉ……ほむほむって何?」

 

 だけど鹿目さんは私の勇気を振り絞った告白の内容を理解してくれなかった。

 でも、そんな鹿目さんが可愛いと思った。

 ほむほむし尽くし甲斐がある最高に可愛い子だと感慨を新たにする。

 私は自分の願いが間違っていなかったことを確信した。

 

 

 

 放課後、私と鹿目さんは巴さんのお家に招待されていた。

 

「もぉ、ほむほむちゃん。私の正体が魔法少女だっていきなりみんなの前で言うから驚いちゃったよぉ」

 

 鹿目さんは可愛らしく頬を膨らませながら怒ったポーズを取っている。

 本気で怒っている訳でないのはわかるのだけど、気分が良くなかったのは確かなはず。

 

「ごめんなさい、鹿目さん。つい、嬉しくて口走ってしまったの」

 

 目を伏せながら謝罪する。

 

「これで鹿目さんはコスプレイヤーか未だに魔法少女を卒業できないドリーマーとして学校内で認識されるでしょうけど、新しい魔法少女がみつかったことは嬉しいことだわ」

「恥ずかしくて明日から学校に行けませんよぉ……」

 

 優雅な笑みを浮かべながらお茶とケーキを運んで来たのは巴マミさん。

 この街の平和を守るベテラン魔法少女で後輩の魔法少女を親切に導いてくれる優しい人。

 

「鹿目さんなら、魔法少女に憧れてるって設定の方が可愛らしくて人気出るわよ」

「そんなマニアックな人気、必要ありませんよぉ」

 

 巴さんと鹿目さんは仲良くじゃれ合っている。

 前の世界でもそうだったけれど、巴さんと鹿目さんはとてもいい仲良しコンビ。

 前の世界でちょっと聞いただけだけど、何でも魔法少女は互いに競争状態にあるらしい。

 だから信頼できるパートナーに巡り合えることはごく稀なんだとか。

 

「だけど、鹿目さんが校内でモテモテになってしまったら、私が独占することができなくなっちゃうわね。こんな風に」

 

 巴さんは両手を鹿目さんの頬に添えて顔を近付けた。

 

「マ、マミさんっ!?」

 

 鹿目さんは驚いて顔が真っ赤になっている。

 代わって欲しいと心の底から願う。

 私だったらあの添えた手を上下に擦っていっぱいいっぱいほむほむする所だけど。

 あっ、座ったままの姿勢で後ず去ろうとする鹿目さんのスカートが乱れて、中が見えてしまいそう。

 

「それで、暁美さんは、私たちと一緒に戦ってくれる善い魔法少女なのかしら? それとも、悪い魔法少女なのかしら?」

 

 もう少しで鹿目さんの下着の柄が確かめられるという所で目の前に巴さんがやって来た。

 巴さんのせいでその後ろの鹿目さんの姿がよく見えない。

 

「私が善いか悪いかは自分では判断できません。でも、鹿目さんの役に立ちたい。共に戦いたい。それだけは本当です」

 

 私は巴さんに素直な気持ちを述べた。

 

「それじゃあ、暁美さんも今日から私たちのチームの一員ね」

 

 巴さんはにっこり笑った。

 

「それで、暁美さんは魔法少女になってどれぐらいになるの? 魔女との戦いはどの程度経験しているの?」

「えっとぉ……魔法少女になってからまだ1度も魔女と戦ったことはありません」

「じゃあ、自分の魔力や武器はどうなっているのか知ってる?」

「いえ、全然」

 

 私は過去の世界に戻ってきたということ以外、自分に何が起きたのかわかっていない。

 それに巴さんの家に向かう途中、前回の世界で現れた魔女に襲われることもなかった。

 もしかするとここは単に時間を遡ったのではなく、ちょっとした平行世界になっているのかもしれない。

 

「これは指導し甲斐がありそうね」

 

 巴さんは大きく息を吐きながら優雅に紅茶を口にした。

 

 

 

3 ほむほむの挑戦

 

 私は、巴さんと鹿目さんに師事しながら魔法少女の特訓を始めた。

 だけど運動もダメ、勉強もダメ、勇気も決断力も行動力ない私は魔法少女になっても才能がまるでなかった。

 まず衣装からして可愛くも格好良くもなかった。

 私の変身後の姿は普通のセーラー服とまるで差がない。

 前の学校の制服ですと言えば見滝原中学校の中で誰も不審に思わない地味なもの。

 唯一、左腕に装備している機械仕掛けの砂時計だけがそれっぽい風采を放っている。

 でも、ピンクと白を貴重とした女の子らしく可愛い鹿目さんや、お洒落な洋式レストランのウエイトレスさんを連想させる洗練されたマミさんの衣装に比べてまるでダメ。

 私がダメなのは服装だけじゃなかった。

 私には魔法少女としての資質が根本的に欠けていた。

 魔力と呼べるものが全然存在しない。

 鹿目さんのように魔法の矢で攻撃みたいな真似ができない。

 巴さんのようにマスケット銃や大砲、巨大リボンを召喚して使うという真似もできない。

 更には接近戦時の体術も全然ダメ。

 魔法少女になった為か、私の体力は前に見滝原に転入した時よりは少し向上している。

 とはいえ、元がポンコツなので普通の女の子よりも遥かに劣る体力しかない。

 総評すれば、変身しても普通の女の子以下の能力しか持たない堕ち毀れポンコツ魔法少女。

 それが私だった。

 

「暁美さんは、自分が持つ特殊能力が何なのか。まずはそれを見つけ出しましょうね」

 

 師匠である巴さんは少し困った表情を浮かべながら、それでも優しく私に道を示してくれる。

 

「ほむほむちゃんも魔法少女なんだし、きっと私よりもすっごい才能が眠っているよ」

 

 そして兄弟子に当たる鹿目さんは私を優しく励ましてくれる。

 2人の優しい先輩に囲まれているおかげで私は魔法少女の特訓を続けていられる。

 けれど、2人の懸命な指導に反してまるで結果を出せない自分が情けなくて嫌だった。

 せめて2人の足を引っ張らない存在になりたかった。

 だから自分にできることは何かと必死に探して喘いでいた。

 

「魔法の武器は、その人の心のあり方や、祈り、何の為に戦うのかといった目的に大きく左右される性質を持つの」

「それじゃあ、巴さんの武器は?」

「私は魔女から人を守る為に戦っているわ。だから守るべき対象を魔女にできるだけ近づけないで済む戦い方がしたいの。それで遠距離用の武器が多いのよ」

「なるほど……」

「でも本当は単なる銃マニアで、自分の好きな物を出しているだけかもしれないけれど」

 

 巴さんはクスッと笑った。

 

「じゃあ、鹿目さんの魔法の矢は?」

「う~ん。私もマミさんに似てるかも。私も人を側で守りながら戦うには遠くまで攻撃できる武器が良いなって思って。あっ、でも私の場合は魔女に近付くのが怖かったり、銃みたいな本物の武器を扱うのが怖くて魔法の矢になったからマミさんとは全然違うのだけど」

「鹿目さんらしいわね」

「えへへ。そうかな?」

 

 鹿目さんは照れ笑いを浮かべた。

 2人とも笑みを浮かべているけれど、その武器の選択基準は実に理に適っていた。

 それじゃあ私の場合はどうなるのか?

 巴さんや鹿目さんのように銃や矢を構えた自分を想像する。

 誤射して120%味方を撃ってしまいそうだった。

 じゃあ、剣や槍を構えて接近戦を挑む自分をイメージする。

 素手の小学生にも負けそうな自分しか想像できなかった。

 

「自分の適性で武器を見つけられない時は、自分が何の為に魔法少女になったのか思い出せば良いわ。多分、そこに答えはあるのだから」

 

 巴さんに言われて、キュゥべえとの契約内容を思い出す。

 

『私は鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女をほむほむし尽くす私になりたいっ!』

 

 私は鹿目さんにほむほむし尽くす為に魔法少女となった。

 けれど、その目標は少しも達成できていない。

 何故なら今回の世界での鹿目さんの服装は──

 

「どうしたの、ほむほむちゃん?」

「ううん。何でもないわ」

 

 ピンク色のドレスの下、スカートの中は真っ白いフリルショートドロワーズだったから。

 ドロワーズが昔のヨーロッパで初めて登場した下着だったことは私も知っている。

 でも、私はドロワーズじゃほむほむできない。

 前の世界みたいに変身後のスカートの中が白だったり、ピンクだったり、水色だったり、縞々だったり、水玉だったり、クマさんだったり、パンダさんだったり、黒だったり。

 そんな現代の女の子らしい下着でほむほむしたい。

 自分が選り好みできる立場にないのはわかっている。

 けれど、どうしてもドロワーズは私の心に火を点けてくれない。

 せめて、ドロワーズの下にもう1枚、可愛らしい下着を身に着けてくれていたら。

 でも、もしかすると──

 

「ねえ、鹿目さんはそのドロワーズの下にもう1枚下着を穿いていたりするの?」

「なっ、何を聞いているの、ほむほむちゃんっ!?」

 

 鹿目さんの顔が真っ赤になった。

 

「ティロ・フィナ~レ~~~~っ♪」

 

 巴さんがバク転からの3回転半捻りを加えながら優雅に私の隣に降り立った。

 

「それは何とも重要な質問ね。魔女の活動より地球の明日よりも重要な問題よ」

「そうですよね。それまでいた世界を投げ打ってでも知りたい問題ですよね」

 

 巴さんと目が合う。

 私はこの瞬間、巴さんと心の底からわかりあえたと感じた。

 彼女は、私と同じなのだと。

 巴さんもまた、鹿目さんをほむほむし尽くしたい人なのだと。

 同じ大志を抱く2人で鹿目さんを左右から問い詰める。

 

「さあ、鹿目さん。そのドロワーズの下は一体どうなっているのか教えて?」

「もう、何も怖くない。だって私、独りぼっちじゃないもの。だから教えてプリーズ」

「どうして2人とも、私のパンツにこだわるの? こんなの絶対おかしいよ」

 

 ところが鹿目さんはどんなにお願いしても私たちに真実を教えてくれない。

 それどころかスカートの裾を両手で押さえてドロワーズさえ見せてくれない。

 鹿目さんのドロワーズの中を確実に見る為には、時間が止まった世界で鹿目さんのスカートを捲り、ドロワーズをこの手で降ろすしかない。

 だけどその為には時を止める能力がどうしても必要だった。

 

「夢にまで見たほむほむは目の前なのに……どうして私はポンコツ魔法少女なのっ!?」

 

 私は天に向かって嘆きの声を発した。

 そしてその時、奇跡は起きた。

 

「嘘っ……私の周囲の時間が、みんな止まってる?」

 

 それは悪い冗談のような現象だった。

 けれど、私の周りの世界は確かに停止していた。

 鹿目さんは焦り50%、怒り30%、テレ20%の複雑な表情を浮かべたまま文字通り固まって動かなかった。

 巴さんは召喚したマスケット銃を器用に足で操りながら、鹿目さんのスカートを優雅な顔で捲ろうとする姿勢で止まっていた。

 周囲を見れば、風で舞った葉っぱが宙に浮いたまま固定していた。

 水滴が地面に落ちる直前に球状のまま浮いていた。

 世界は私を残して停止していた。

 世界全部が本当に止まっているのかはわからない。

 けれど、少なくとも私に見える範囲全部は固まっていた。

 

「ど、どうしたら良いの……?」

 

 確かに私は時の停止を願った。

 けれど、実際に停止してしまうとそれは大変に怖いものだった。

 それは全てのものが死に絶えてしまった世界と大差がない。

 

「こういう時はとりあえず、鹿目さんをほむほむしてまずは気を落ち着けないと……」

 

 恐怖に駆られておかしくなってしまいそうだった。

 だからとりあえず余計な思考を停止させ、当初の目的を果たすことにする。

 鹿目さんの後ろに回り込む。

 後はスカートを捲り、ドロワーズを降ろすだけとなった。

 そして、鹿目さんのスカートに私が実際に触れようとしたその時だった。

 

「あっ、あれっ? ほむほむちゃん? いつの間に私の後ろに?」

 

 時は再び動き出してしまった。

 

「えっ? 何でもないよ。鹿目さん、考え事していたから私の動きに気付かなかっただけだと思うよ」

 

 結局、私は鹿目さんのドロワーズの中を確かめることに失敗した。

 けれど、これが私の能力となる時の世界への入門となる出来事だった。

 

 

 

4 ほむほむの挑戦2

 

 時の止まった世界を体験してから2週間ほどの時間が過ぎた。

 その間に私はこの現象について自分なりに研究を進めた。

 その結果、幾つかのことがわかった。

 

 まず、この現象を引き起こしているのは私だということ。

 時を止める能力は、私の魔法少女としての力で間違いなかった。

 私はタロットカードに倣い、この能力を「ザ・ワールド」と名付けた。

 

 2つ目、時間を停止できるのは最大で約20秒ほどであること。

 時が止まった空間で秒という話をするのは変なのだけど、心の中でゆっくり目に20数えるほどの時間が経過すると世界は再び動き出す。

 世界を永遠に停止しておけるような強大な力を私は有していない。

 

 3つ目、1度時を停止させてしまうと、次に時を停止させるのに20~30秒待たなくてはいけない。

 つまり、連続使用はできない。

 1秒にも満たない油断が命を落としかねない戦いの最中では、タイミングを間違えての発動は致命的な失敗に繋がりかねない。発動には細心の注意が必要となる。

 

 4つ目、時が停止した空間でも私が触れたものは元通りに動けるようになる。

 だから私が触れている武器は時が停止した空間でも使用可能になる。

 ヤクザの事務所から持ち出した銃も撃てるし、インターネットを参考に作り上げた手製の時限爆弾を起動させることも可能。

 相手が動けない中で自分だけは攻撃できるというチートにも似た状態が実現できる。

 けれども、誤って敵に触れてしまえばその敵も動き出してしまう。

 だから、ザ・ワールドの発動中に魔女に触れるようなことがあってはならない。

 また、逆に魔女に触れている状態ではザ・ワールドを発動させても意味はない。

 

 

 自分の能力の長所と短所が段々とわかるにつれ、魔女との戦いで自分には何が出来るのかおぼろげながら見える様になってきた。

 

「暁美さんっ、お願いっ!」

 

 セーラー服を着た、腕が何本もあって代わりに首がない魔女との戦い。

 私はその委員長っぽい魔女に止めを刺す役割を与えられていた。

 鹿目さんが魔女の使い魔たちを射ち、巴さんが魔女へと続く道を切り開く。

 そして私は巴さんが巨大リボンで作った道を時を止めた状態で駆け上りながら魔女へと近付き──

 

「えいっ」

 

 手製の爆弾を魔女に向かって放り投げた。

 時が動き出し、大爆発が起きて炎と共に消滅する魔女。

 私は、対魔女戦で初勝利を挙げた。

 

「やった……やった」

「やったぁあああぁっ。あははは♪」

「お見事ねえ」

 

 鹿目さんは自分のことのように喜んでくれた。

 こうして私たちは連携プレイによる魔女撃退という新しい戦法を編み出した。

 大した魔力を持たない私でも、戦い方次第でみんなの役に立てる。

 それがわかって嬉しかった。

 

 

 そして私の能力ザ・ワールドは、過去の世界へと戻って来た本来の目的を果たす為にある面では効果を発揮し、ある面では役に立たなかった。

 

「ほむほむちゃん。おっはよぅ~♪」

 

 通学路をゆっくり歩いていると後ろから声を掛けられる。

 振り返るまでもなく鹿目さんの声だった。

 私は彼女の愛らしい顔を今日も見られる幸せを噛み締めながらゆっくりと振り向く。

 

「おはよう、鹿目さん」

 

 そして私は挨拶が済んだ瞬間、鹿目さんに気付かれない様に瞬時に変身を済ませ、更にザ・ワールドを発動させる。

 

「ダイビング・ローリング・ほむほむシャッターッ!!」

 

 そして地面に跳びながら寝転がって、ゴロゴロゴロゴロと高速回転しながら鹿目さんの周囲を回り、ローアングルからスカートの中を前から後ろから確かめつつ携帯で連続激写。

 再び転がりながら元の位置に戻って立ち上がり、ザ・ワールドを解除すると共に変身を解く。

 そして何事もなかったかの様にごく自然に鹿目さんとの朝の会話に興じる。

 

「ほむほむちゃんって毎朝メール打ってるよね? 好きなんだね」

「好きって言うか、義務報告みたいなものかな?」

 

 メールの送り主は巴さん。

 メールの内容と添付ファイルは私が今しがた見たものと、その証拠物。

 

[ 今朝は うさぎさん でした。この所2日間動物プリントが続いています ]

 

 先ほど激写した写真データと共に巴さんに送る。

 

「報告って誰にメール送ってるの? やっぱりご両親?」

「う~ん。同好の志を持った人、かな?」

 

 ちなみのその同好の志を持った人は、変身した状態で電柱の上に立って私にティロ・フィナーレをいつでも撃てる体勢を取っている。

 私がデータを送らなければ即座に撃って来るに違いない。

 ザ・ワールドが連続使用できないことを知っているからこその効果的な威圧。

 それが私と巴さんの間柄。

 それが鹿目さんとそのパンツをほむほむし尽くすことに生涯を賭けると決めた者たちの生き方。

 倫理とか道徳とかはまどパン(まどかのパンツ:命名巴さん)の前には無意味。

 私と巴さんの立ち位置が逆ならきっと私も同じことをしていると思う。

 故に恨み言はない。

 私は彼女を出し抜く更に奥の手を用意すれば良いだけなのだから。

 

「へぇ~。同好の志なんて何だか格好良いね~」

「最高に頭の切れてる……切れる人であることは間違いないわね」

 

 巴さんには私がザ・ワールドの話をした翌朝にはその使用法の意図を見抜かれていた。

 私が鹿目さんに接触した10秒後に、鹿目さんの今日のパンツの色と柄が何であるのか教えるように催促のメールが来た。

 そしてメールの到着とほぼ同時に、私のすぐ横を転がっていた小石が弾け飛んだ。

 巴さんのマスケット銃の仕業で間違いなかった。

 こうして私と巴さんは運命共同体になった。

 

 けれど、私と巴さんが束になっても敵わないのが魔法少女となった鹿目さんのフリル付きドロワーズだった。

 私は時間を止めることができる。

 けれど、ドロワーズを脱がそうと体に触れれば、鹿目さんは動き出してしまう。

 動き出してしまえば私の行動と意図がばれて、最悪鹿目さんに嫌われてしまう。

 つまり私のザ・ワールドは脱がさないと見られない下着の前にはあまりにも無力だった。

 結局私は、ドロワーズの壁を突き破れないまま最強の魔女ワルプルギスの夜と戦う日を迎えてしまった。

 

 

 

 

5 ワルプルギスの夜との戦い

 

 最強の魔女は今回もまた圧倒的な存在感と破壊力を持って私たちの前に姿を現した。

 巴さんは既に死んでしまった。

 今回も戦いを前にしてバナナの皮に足を滑らせて頭を強く打って死んでしまった。

 巴さんはきっと、バナナを見ると踏まずにはいられない芸人気質な人だったのだと思う。

 

『鹿目さんのドロワーズの下がどうなっているのか……それがわからずじまいだったのが唯一の心残りよ……』

 

 巴さんの死に顔はどこか誇らしげだった。

 そしてその遺言は私の胸を熱く、熱く滾らせた。熱い血潮が涙となって零れ落ちた。

 巴さんの死により、あの強大な魔女に私たちは2人だけで立ち向かわなければならなくなった。

 けれど、亡くなった巴さんの分まで私たちは絶対に負けられなかった。

 

「行こうっ、ほむほむちゃん!」

「うんっ、鹿目さん!」

 

 最強の魔女との戦いが今、ここに始まった。

 

 

「きゃぁあああああぁっ!?」

「わぁああああああぁっ!?」

 

 ワルプルギスの夜は相変わらず強かった。

 ううん、前回鹿目さんが1人で戦った時よりも強くなっていた。

 前回の戦いで鹿目さんはワルプルギスの夜との戦いで命と引き換えに相打ちになった。

 けれど今回は私と2人でコンビネーション攻撃を行い、戦力がアップしているのにも関らずこの魔女に歯が立たないでいた。

 こちらの戦力がパワーアップした以上に魔女は強力になっていた。

 私の爆弾が通じない。銃が通じない。

 鹿目さんの魔法の矢が通じない。

 私たちのあらゆる攻撃が通じない。

 ザ・ワールドは専ら退避専用に使っていた。

 しかしこのままではジリ貧になるのは目に見えていた。

 

「どうしよう、鹿目さん? このままじゃ、私たちあの魔女に勝てないよ……」

「あの魔女を倒すにはもっと高い攻撃力が必要……だったらっ!」

 

 鹿目さんは何かを決意した強い意志を灯した瞳で私を見た。

 

「前からほむほむちゃんは私のドロワーズの下がどうなっているのか気にしていたよね?」

「う、うん……」

「それね、正解なんだ」

「えっ? 何が?」

 

 鹿目さんの言いたいことがよくわからない。

 

「私ね、いわゆる二段変身魔法少女なの。このドレスの下には、防御を捨てて攻撃に特化したバージョンのコスチュームが眠ってるの。もう一つの力を隠しててごめんね」

「そ、そうなんだ……」

 

 別に私は鹿目さんの魔法少女としての力を知りたかったんじゃない。

 純粋にドロワーズの中がどうなっているのか知りたかっただけ。そしてほむほむしたかっただけ。

 だから鹿目さんに謝られることなんて何もないのに。

 

「それで、その姿を見られるのが恥ずかしくて2人にもずっと黙っていたのだけど、攻撃が通じない以上、恥ずかしがっている場合じゃないよね」

 

 鹿目さんはキッと瞳を細めながら空中に浮かぶ巨大な魔女を睨んだ。

 

「行くよ……脱衣(トランザム)ッ!」

 

 気迫の篭った掛け声と共に鹿目さんのドレスが眩い光を放ち吹き飛ぶ。

 

「魔法少女まどか☆マギカ。第二形態変身完了っ!」

 

 そして変身を終えた鹿目さんが私の目の前に立っていた。

 その姿は──

 

「透け透け前開きベビードール、赤いセクシーレースショーツ、ガーターベルト……」

 

 第二形態に変身を遂げた鹿目さんはまさしく女神に変身していた。

 おへそは丸見えだし、待望していたドロワーズの下には、予想以上のセクシーパンツが眠っていた。

 ベビードールは胸の部分も生地が薄いのか、その奥が少しだけ透けて見えていた。

 その姿を女神と言わずして他に何と表現するべきなのか私は知らない。いや、知る必要はない。彼女こそ、私の唯一にして絶対の女神様だった。

 

「やっぱりこの格好は女の子同士でも見られるのが恥ずかしいよぉ」

 

 鹿目さんは自分の服装を見ながら照れ笑いを浮かべている。

 鹿目さんは全然理解していない。

 自分のその姿がどれだけ規格外に魅力的であるかを。

 どれだけの希望と欲望を人に与えるものであるかを。

 ほらっ、巴さんの死体だって起き上がって720mm望遠の超大型カメラを構えて激写を始めている。

 死体を起き上がらせるぐらい彼女の魅力をもってすれば造作もないこと。

 そしてそれは当然、生きている私にだって影響を与える訳で

 

「えっ? ほむほむちゃん? 体全体から金色の光が湧き出ているよ」

 

 私もまた究極のパワーアップを遂げていた。

 

「ありがとう、鹿目さん。貴方のおかげで私はパワーアップできたわ」

「へっ?」

「穏やかなる心を持ちながら激しい情欲によって目覚めた伝説のスーパーほむほむ。それが今の私なの」

 

 ほむほむには無限の可能性がある。

 今の女神鹿目さんはそれを私に教えてくれた。

 そして私の体はその無限の可能性に答えたのだ。

 

「鹿目さんもパワーアップしたのでしょ? 2人で、あの魔女をやっつけましょう」

「うん。この第二形態になると、攻撃力が5%上がって代わりに防御力が90%落ちるの」

「……私1人でワルプルギスの夜を倒してくるわね」

 

 私は先ほどまで圧倒的力を誇っているように思っていた魔女に正面から飛び込んでいく。

 そして──

 

「ほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむほむまほむほむほむほむどほむほむほむかほむほむほむらほむほむほむほむほむほむぶほむほむほむはほむほむほむあほむほむはほむほむあほむほむほむほむほむほむほむッ!」

 

 拳のラッシュによりワルプルギスの夜を完全撃破した。

 私と鹿目さんの蜜月の日々を邪魔しようとするものは何であれ容赦はしない。

 ワルプルギスの夜の敗因はたった一つシンプルな理由。

 ヤツは私の鹿目さんを怒らせた。

 

「ほむほむちゃん、すご~い♪」

 

 スーパーほむほむ状態を解きながら地上に降りて来る私へと駆け寄って来る。

 彼女を元気に迎えたいが体中がどうにも痛い。

 スーパーほむほむはパワーが大きな分、消費する魔力や体力も桁違いに大きかった。

 消費した分は鹿目さんに実際にほむほむすることで補給するしかない。

 けれど、ここで予想だにしなかった悲劇が鹿目さんを襲った。

 

「ほむほむちゃ~ん……きゃっ!?」

 

 鹿目さんは自らが脱ぎ捨てたドロワーズに足を引っ掛けて転倒。

 転んだ衝撃で自らのソウルジェムを砕いてしまった。

 

 

6 離別と再生

 

 私が地上に降り立った時、制服姿に戻った鹿目さんは既に虫の息だった。

 

「せっかくほむほむちゃんが大勝利を収めたのに……私がドジしちゃって……ごめんね」

「そんなことない。私は鹿目さんがいてくれたからパワーアップできたんだよ……」

 

 私は泣きながら鹿目さんの手を握っていた。

 握りながら彼女に第二形態変身をさせたことを後悔していた。

 鹿目さんは第二形態に変身しなければ、ドロワーズを脱ぎ捨てることもなかった。

 そうすればドロワーズに足を引っ掛けてソウルジェムを砕くこともなかった。

 全ては、私が未熟だったから鹿目さんは死ぬことになってしまった。

 

「最期に一つ……頼んで…いい?」

「まどかっ!」

 

 私の呼び掛けに対して鹿目さんは精一杯の笑顔を見せてくれた。

 

「ほむほむちゃん…やっと名前で呼んでくれたね。嬉しい」

 

 言われて私は鹿目さんを、ううん、まどかを初めて名前で呼んでいたことに気付いた。

 彼女を求めて止まなかったのに、彼女と親しくなりたくて必死だったのに、彼女をほむほむし尽くしたくて狂いそうだったのに、私は彼女と1歩距離を置き続けていた。

 そんな自分にやっと気付いた。

 まどかを悲しませていたバカな自分にやっと気付いた。

 

「それで、願いって何なの?」

 

 まどかにはどんなに謝っても許されるものじゃない。

 けれど、せめてまどかの願いだけでも聞き届けておきたかった。

 

「ほむほむちゃんって……私のパンツに興味があるんだよね?」

「まっ、まあそうね……」

 

 正確にはパンツだけでなくまどかの全てにだけど。

 

「でもね……私はほむほむちゃんのパンツに興味があるんだよ。ほむほむちゃんのパンツも一度で良いから見てみたかったなあ……」

 

 まどかのその言葉を聞いて私は雷に打たれたよりも大きな衝撃を受けた。

 

「ま、まどか……」

 

 私は今まで自分のことばかり考えてきた。

 私がまどかに何を望んでいるのかばかり考えてきた。

 まどかが私に何を望んでいるのか。

 それに思いが至ったことはなかった……。

 

「生まれ変わったら……今度はほむほむちゃんのパンツも見せてね」

 

 その言葉を最後にまどかは瞳を閉じ、二度と開くことはなかった。

 

「まどかぁあああああああああああぁっ!!」

 

 幾ら泣き叫んで絶叫してもまどかはもう瞳を開けてはくれなかった。

 

 そして、左腕に装備している機械仕掛けの砂時計がカチンと大きな音を奏でた。

 

「お前は私にまどかの死に悲しむ暇さえ与えてくれないと言うの……」

 

 それは以前体験した、過去へと戻る予兆で間違いなかった。

 私の願いはまどかをほむほむし尽くすこと。

 まどかが死んでしまえばこの願いは叶わないものとなる。

 だからまどかとの出会いの時点に強制的に巻き戻されることになる。

 

「ごめんね、まどか。私、貴方の側にもっといたいのに、それさえも許されないの」

 

 まどかの遺体に駆け寄りそっとその頭を撫でる。

 

「それから追い剥ぎみたいで悪いけど、私がこの世界を生きた証として、まどかの遺品をもらっていくね」

 

 私はまどかの体からその遺品をそっと抜き取る。

 

「次の世界では必ず貴方をほむほむし尽くしてみせるから。まどかに幸せな一生を過ごしてもらえるように頑張るからっ!」

 

 まどかに向かって誓いを立てる。

 次の瞬間、私の体はこの世界から消失した。

 

「まどか、私、頑張るからっ! 絶対に諦めないからっ!」

 

 時の回廊とでも呼ぶべき異空間で私は決意を新たにする。

 そして決意の証にまどかの遺品をハチマキのように頭に締めてみせる。

 まどかの白パンツは、まだ暖かかった。

 

「私は何度でも繰り返す。同じ時間を何度も巡り、たった一つの出口を探る。貴方を絶望の運命から救い出す道を。そして貴方をほむほむし尽くせる道を」

 

 まどかのパンツさえあれば後10万周は戦えそうだった。

 ワルプルギスの夜が私よりいつも強ければ、永遠にまどパン回収の旅が続けれるのかも。

 そんなことを思いながら次の戦場を私は目指した。

 

 こうして10万周に及ぶ私がまどかをほむほむし尽くす為の旅が本格的に始まりを告げたのだった。

 

 

 了

 

 

 

 


 
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