母さん(孫堅)、俺は今大変なことになっています。
事の発端は数日前に遡る。
「暑いわね~」
いつものように政務を行っていると、隣で作業をしていた雪蓮姉さんが突然机に突っ伏して言った。
「夏だから仕方ないだろ」
「ぶ~ぶ~。でも今年はとても暑いような気がするわ」
「呉は土地の位置上暑いのは仕方が無いことだ。
……しかし、この暑さは例年以上だな」
同じく政務を行っていた冥琳も姉さんの意見に賛同した。
「なんとかならないかしら…」
「どうにか冷をとることが出来れば良いのだが…」
「冷ね……そうだ!海に行きましょう!」
この一言で呉の主だった将は海水浴へこととなった。
今俺達の目の前に広がるのは水平線の彼方まで水で覆われている。つまり海だ。
「じゃあ、さっさと着替えて泳ぎましょうか。一刀、また後でね♪」
俺と姉さん達は着替部屋の前で別れてそれぞれ着替えることなった。
数分後。
俺の目の前には今、桃源郷が広がってる。
「はぁ~い、お待たせ♡」
姉さんは黒のスリングショットの水着を来て出てきた。
この水着ほとんど布が無いぞ!その格好で泳ぐのか?
そんな水着で大丈夫か?大丈夫だ、(俺的に)問題ない!
「ふふ。雪蓮、その水着は少し大胆じゃないか?」
姉さんと一緒に冥琳もやってきた。
冥琳は黒のビキニであった。
姉さんに比べると幾分ましだが、あの胸である。
肌の露出が増えるとこらはまた……凄い。
「お着替え終わりました~」
のほほんとした声で出てきたのは穏である。
穏は青のビキニの腰に同じく青のパレオを巻いている。
穏と言えば呉でも一二を争う胸だ。
普段も胸元がはだけた服を着ているが、水着になるとまた別の味が出ている。
素晴らしい…
「この歳で水着は、ちと恥ずかしいのぉ」
「とてもお似合いですよぉ」
祭も穏とほぼ同時に出てきた。
祭は普通の上下一体型の白い水着であった。
やはり歳を気にしているのかおとなしめだな(ゴゴゴゴ)
……どこかから殺気を感じる!これ以上歳の話はだめだな!
「はうぅ~。海なんて久しぶです!」
「私は初めてで…泳げるかな…」
「だったらシャオが教えてあげる!」
明命と亞莎、小蓮の三人は一緒に出てきた。
明命は花柄のタンキニ水着を着ていた。
前の人達の水着と比べると露出は少ないが、活発な明命にはぴったりの水着と言える。
亞莎は水色の水着に上着を羽織っている。
やはり恥ずかしいのだろうか、顔が少し赤い。
でもその表情がたまらない!
シャオはピンクのワンピース型の水着にフリルがたくさん付いている。
シャオらしい、女の子っぽい水着だ。
……ただこの三人は少し残念だ。どこが残念とは言わないが…
「ほ、本当にその格好で泳ぐんですか?」
「ええ、問題ありません」
なにやら言い合いながら出てきたのは凌統(真名は烈火)と諸葛瑾(真名は茶々)である。
烈火はシャオとは色違いの青いワンピース型の水着を着ている。
多分シャオと一緒に買ったのだろう。この二人は仲が良く、いつも一緒にいるしな。
茶々の方は……
「なに……」
思わず声が出てしまった。
茶々を見ると囚人服のような白と黒のしましまでフルボディの水着を着ている。
肌が出ているのは顔と手足ぐらいである。
「茶々…その水着は何だ?」
あっけに取られた冥琳が思わず聞いていた。
「はい、これは日除け対策です。私にはここの日差しは少し強すぎるようですので」
そう言うと茶々は手に持っていた麦わら帽子をかぶり、準備完了だと言わんばかりにメガネをキラリと光らせた。
「みんな~でてきたわね。それじゃあ、泳ぎましょうか!」
姉さんが号令をだすと、各々思い思いに海を楽しみだした。
あれ?何か忘れているような……
【甘寧 side】
私はまだ更衣部屋を出れずにいた。
雪蓮様の案で海に行くことになったのだが、水着を持っていなかった私は街に買いにゆくことにした。
その時たまたま本屋の雑誌売場に「阿蘇阿蘇」という雑誌が目に入った。
阿蘇阿蘇を何気なく手に取り読んでみると、その号は丁度水着特集が組まれていた。
「なになに…『この夏、彼を落とす水着特集!』だと?」
そこには今流行の水着が紹介されており、男が喜ぶ水着はこれだ!と書かれていた。
「『男は露出の多い水着を好む』だと?……一刀様もそうなのだろうか……」
思い返せば、一刀様の周りには女性が多い。
そしてその周りの女性は少なからず皆一刀様を思っているだろう。私もその一人なのだから……
「『これで好敵手に差をつけろ!おすすめ水着』!?これだ!」
そうして私は阿蘇阿蘇で薦めていた水着を買いにゆくことにした。
……今思えば私は少し焦っていたのかもしれない。
「こんな破廉恥な水着だったとわ……」
買ってから今まで着る機会がなく、今はじめて着てみたのだが、これが凄い露出である。
あの雑誌には確か『モノキニ型』と書かれていたな、横腹の部分がバッサリと露出している。
胸も横の部分が少し見えそうだ。恥ずかしい…
こんな姿をみんなに見せたくない!
しかし一刀様には見てもらいたい。一刀様の為に買ったのだから…
「って、私は何を考えているんだ!このような姿を見ても笑われるだけだ」
部屋の窓から外の様子を伺うと、皆それぞれ遊んでいた。
今のうちに帰るか?いやしかし…
「ん?あれは何だ?」
外を見ていると波打ち際に不思議なものを見つけた。
「!これは……」
これがあれば私とはバレずに、一刀様だけを連れ出すことができるかもしれない…
「フフフフ……」
待ってろよ!一刀様!!
【甘寧 side end】
「あれ、思春はどうしたの?」
誰かいないと思えば思春の姿が見えない。
「思春?部屋に入るまでは確か一緒だったわよ」
「でも姿が見えないよ。まだ着替えているのかな?」
思春はどんな水着を着ているのだろう。
いつもふんどしを履いているから、まさか水着もふんどし!
…いや、さすがにないな。
思春をみんなで探していると、
「フフフ、なにやらお困りのようだな!」
「!何奴!?」
崖の上から声がし、思春を探していたみんながそちらに目を向けると、
「鈴の音を鳴らし、悪を黄泉路に誘う一匹の蝶!華蝶仮面/鈴(Rin)!ただいま推参!」
ドーン!と華蝶仮面/鈴?の後ろでなにやら赤い煙が起こっている。
「いや、その声は思しゅ「お前は何者だ!何が目的だ!」へ?」
どう見ても変な仮面を付けた水着姿の思春に、冥琳は真面目な顔で叫んだ。
「先程も申したとおり私の名前は華蝶仮面/鈴(Rin)!(ドーン!)
要件はそこにおられる、か…孫権様にある!」
「一刀に?その要件って何?」
「一人のか弱き少女の願いを叶えるため。その少女の願いで、他の方々にはお話できません!」
思しゅ……華蝶仮面/鈴は「とうっ」といって崖から砂浜に飛び降りてきた。
結構な高さがあったのに無傷である。
「そんな理由で一刀を渡すわけ無いでしょ!明命!烈火!そいつを捕まえなさい!」
姉さんは降りてきた華蝶仮面/鈴を指差すと、明命と烈火に命令した。
顔が笑っているぞ!さてはわかっててやってるな!
「わかりました!主の命により捕まってもらいます!」
明命と烈火は正体がわからないのか、真面目に姉さんの命令を聞く。
「そうはいくか!はあっ!!」
「なっ!?」
取り押さえようと同時に飛びかかった明命と烈火を華蝶仮面/鈴は一撃で叩きのめした。
砂浜にたたきつけられた明命と烈火はそのまま伸びてしまった。
いくら思春が強いからといって、襲いかかる二人を同時に倒すなんて不可能だ!
「説明しよう!華蝶仮面/鈴(Rin)は悪の秘密結社により、その肉体を改造された!
しかし手術の途中で脱出した華蝶仮面は、悪の秘密結社を打ち倒すのをこころに誓うのであった!
華蝶仮面/鈴(Rin)は改造手術により、常人の数倍の力を手に入れたのである。
その力を使い今日も華蝶仮面/鈴(Rin)は悪と戦うのであった!」ナレーション 立木○彦
……どこからともなくいい声が聞こえてきた。
「くっ!このままじゃ被害が増える一方ね!
仕方がないわ…一刀をあなたに渡すは!
でも用事が終わったらすぐに返しなさいよ!」
姉さんが芝居がかった台詞で言う。
おい、顔が笑っているぞ!
「いいだろう。孫権様には危害を加えるつもりはない。
用事が済み次第、解放しよう」
「そういう事よ…一刀、行ってらっしゃい…ぷっ」
我慢できなくなったのか吹出す姉さん。
他に祭と穏が笑っている。
……明命や烈火は仕方がないとして、冥琳まさか正体に気がついていない!?
歯がゆそうに華蝶仮面/鈴を睨んでいる。
「……わかった。ちょっと行ってくるよ」
そう言って華蝶仮面/鈴の元にいくこととなった。
華蝶仮面/鈴の後ろをついて行き、数分。
周りが岩に囲まれたと所にやってきた。ここからではさっきまで居たみんなのいるところが見えない。
いわゆる死角という奴である。
「では、ここで少し待たれよ」
そう言うと華蝶仮面/鈴は岩の裏に隠れた。
そして出てきたのは仮面をとった思春出会った。
「お待たせしました……」
顔を赤くし、もじもじしながら思春は現れた。
「思春!どうしてあんな事を?」
「それは…実は一刀様に私の水着姿を見てもらいたかったのですが、他の皆に見られるのは少し恥ずかしく、こうして二人きりになれるようにと華蝶仮面/鈴(Rin)に『頼んだ』のです」
あくまで自分は華蝶仮面ではないと言うつもりだろう。
まあいい、別に正体をばらさなくても。
しかし、理由を聞いて、
「そ、そうだったのか……うん!その…すごく似合っているよ」
改めて面と向かって言われると少し恥ずかしいではないか!
「そうですか!よかった…」
赤い顔を嬉しそうにする思春。クソっ!カワイイ!
しかし思春は俺の大切な部下!ここで早まった行動をとっては駄目だ!
「と、とりあえず一緒に泳がないか?」
……チキンな俺であった。
思春の手を取り俺達は海に入っていった。
海に入ると今までの暑さを忘れるくらい冷たく気持ちが良かった。
「ほら思春。えいっ」
俺は手で思春に海水をかけてやった。
急なことに驚き、思春は「きゃっ」とカワイイ声を出した。
「やりましたね。ほら、お返しです!」
すると思春も手で海水をすくい俺に向けて飛ばしてきた。
「冷たっ!やったな~」
バシャ、バシャ、バシャ…キャッ、キャッ、キャッ…
俺と思春…二人だけの世界はとても甘いものとなった。
「じゃあ、あがって少し休憩しようか」
ある程度海を堪能したので、浜辺に上がり休むことにした。
浜辺に上がり休憩しようとすると、思春がふらふらとしていた。
「っ!思春!」
倒れそうになる思春を抱きとめると、思春の顔は紅潮していた。
「どうしたんだ!?」
「…すみません。どうやら…暑さにられたようです…」
「どれ……」
両手がふさがっているので、俺は熱を測るため、思春の額に自分の額を当てた。
「!?」
「そうだな、すこし熱があるよ…う…な…」
日射病にかかった思春の瞳は潤んでおり、その瞳が間近にある。
少し下に視線を移すと、唇はかすかに開き、息も荒い。
そして俺達の体は今密着していて、思春の体温が伝わってくる。
「かずと…さま…」
そのささやきは、いつもの思春からは想像できないほどの弱々しさであった。
思春を抱きとめる手に力を込めると、
「思春…」
どちらかともなく唇を近づけてゆく…
そして…触れそうな距離になったその時…
「何やってんの~?」
……雪蓮姉さんの声がした。
「「!?」」
思春と二人、声のしたほうを向くと、そこにはさっきまであっちで遊んでいた姉さんたちが立っていた。
姉さんや祭はニヤニヤとしており、明命や亞莎は顔が真っ赤である。
シャオと烈火は頬をふくらませ、
「「いつまでひっついてるの!!(ですか!!)」」
とこちらに近づいてきた。
ばつが悪くなった俺達は思わず飛び離れてしまった。
その後右手をシャオ、左手を烈火に捕まれ小一時間ほど尋問され、祭や穏にはからかわれてしまった。
【甘寧 side】
もう少しだったのに~!
皆に見つかってしまい、驚いた私は一刀様から離れてしまった。
その後一刀様はみんなにいろいろと言われ困っておられた。
そして日も暮れてきたので私たちは帰ることとなった。
私も帰る準備をするため、更衣部屋に向かっていると隣に雪蓮様が並び、
「どうだった?いい思い出になった?でも口付けはダメよ!一刀の初めては私がもらうんだから♪」
と言い、そのまま駆けて行った。
……これは明らかに宣戦布告!
雪蓮様は姉であるため、一刀様と一緒にいた時間は長い
しかしこの夏私と一刀様の距離は近づいたはず!
私も負けません!
拳に力をこめ、海にそう誓う私であった……
【甘寧 side end】
今回は『第1回同人恋姫祭り』の為の作品ということで、外伝という形になりました。
本編は淡々と書いていますが、今回は祭ということではっちゃけてみました。ので、キャラ崩壊が止まらない…
水着の名称を出すために天の言葉を受信したり、何故か思春が華蝶仮面になったりと酷い有様です。
水着の名前はググるとすぐ出てくると思います。なにぶん描写不足なので、どんなのかわからなかったら調べてみてください。
そして外伝なのに、これまでの作品で一番長いものとなってしまった。本編もっと頑張れよ…
『第1回同人恋姫祭り』に作品書くに当たってはじめ、「夏」がテーマなのでどういったものがいいかと悩みました。
最初に出てきたのは、赤壁の戦いが何故か水着で水上騎馬戦を行う『ドキッ☆恋姫だらけの水泳大会!!ポロリもあるよin赤壁』と言うものを考えたのですが、オチが全く思い浮かばずボツに。
そして「水着」というテーマのみを残して今回の作品となりました。
夏といったらやっぱ海っしょ!という安直な考えのもと書いたこの作品。他の作品とかぶらないことを祈るのみです。かぶってしまったらごめんなさい!!
この作品をきっかけにたくさんの人が私の拙い文を読んでいただければ幸いです。では、また。
P.S.誰か『ドキッ☆恋姫だらけの水泳大会!!ポロリもあるよin赤壁』書いてくれないかな~?
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この作品は、『第1回同人恋姫祭り』の為、自分が今書いている作品の外伝的なものです。
夏がテーマと言う事で海で水着回!
あまりにも平凡な考えで、他の皆様とかぶってしまう可能性が…
いや、逆に平凡だからこそ皆避ける可能性も…
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