★学園祭ぱにっく! その1★
ゼ=オードとの長く苦しい戦いが終わり、アガルティアには平和が訪れていた。
地上から召喚されたトウヤたちは、それぞれの世界へと還って行った。
そして、月日は流れ、翌年の秋--------
「おい、マジで言ってんのか?」
「あったり前でしょ」
「アイちゃんと二人で話して決めたのよ」
女のコ二人の明る~い声にトウヤはハァーと盛大なため息をついた。
「知らねーぞ、どーなっても」
ここはトウヤの家である。先ほど遊びに来たカスミとアイが、トウヤにある計画を持ちかけたのだ。
それは、まもなく開催されるトウヤの学校の学園祭に、アガルティアのセリカとユミールを招待しようというものだった。
「大体、あのおっさん、どーやって捕まえんだよ? 神出鬼没だからな、フォルゼンは」
「ま、そ、それはそーなんだけどぉ」
そこまでは考えてなかったけどさーとアイが笑えば、カスミもアハハと、力なく笑う。
「だめじゃねーかよ」
「お呼びですか? 皆さん」
思いっきり聞き覚えのある声に、ギョッとして振り返る三人。ちゃっかり玄関に上がり込んだフォルゼンが、いつものニコニコ笑いを浮かべていた。
「ホンットに神出鬼没だな、あんた・・・」
半ば呆れてトウヤが呟いた。
アイとカスミの計画を話すと、フォルゼンは二つ返事でOKしてくれた。
(暇なのかよ・・・;)
トウヤは喉元まで出かかったそのセリフをかろうじて飲み込んだ。
そして、学園祭当日--------
模擬店で喫茶店をやることになっているカスミは開店の準備に追われ、とくに何もすることのないトウヤと、朝イチで遊びに来ていたアイは、"アガルティアご一行様"が到着するのを今か今かと待っていた。喫茶店に改造された自分の教室の前で、トウヤはチラチラと腕時計を見た。
「おっせーな、フォルゼンのヤツ」
「ホント、何してんのかしら?」
アイもため息をつく。
「ここがわかんないってコトないよね?」
「大丈夫だろ?」
十時を回って一般客も来場し始め、校内はにわかに活気づいて来た。廊下を行き交う人々も増えて来た。
廊下の突き当たりに何やら人だかりができているのを見咎めたトウヤの耳に、女生徒の叫びが飛び込んで来た。
「何、あれ? コスプレじゃない?」
(コスプレ?)
なんだかイヤ~な予感がして、トウヤとアイは思わず顔を見合わせた。
「トウヤ・・・」
「ああ」
アイの言葉に頷くと、トウヤは人だかりの方へと走って行った。慌ててアイも続く。
得てして悪い予感というものはよく当たるものである。廊下の真ん中に、フォルゼンに引率されたコスプレイヤー、もとい"アガルティアご一行様"がいた。セリカと、そしてなぜだかローディスとフェインもいる。セリカは珍しいドレス姿だし、ローディスも皇太子の正装をしていた。フェインはアガルティア騎士団の制服にマントをつけている。
「フォルゼン」
トウヤは、相変わらずニコニコしている超マイペースな男の腕を引っ張って、隅っこに連れて行った。
「アイツらの服、なんとかしろよっ。なんであんな目立つカッコさせんだよ!」
「ハ、ハハ・・・。少し浮いてますかねぇ」
「浮きまくりだよ。どこぞのイベント会場じゃねーんだぞ」
「わかりました。すぐに調達して来ましょう」
あまりに目立つので、フォルゼンが戻るまでセリカたち三人は、使われていない隅っこの教室で待機することになった。
「セリカとユミールしか呼んでないんだケド;」
アイはボソッと呟いた。
「そういえばユミールが来てないな」
「うん、どーしたんだろ?」
そうこうするうちにフォルゼンが着替えを持って戻って来た。トウヤがユミールがいないことを尋ねると、
「錬金学士の会議があって少し遅れるとのことなので、先にセリカ様たちをお連れしたんですよ」
と、教えてくれた。相変わらず忙しいらしい。
着替えを終えて出てきたセリカにアイが耳打ちする。
「セリカとユミールだけじゃなかったの?」
「うん。こっちに来ることを言ったら兄さんがどーしてもついて来るって・・・。フェインも、その、カスミに逢いたいからって」
「まー、賑やかなほうがいいやねー。セリカ、トウヤんとこの制服似合うね」
「そう?」
セリカはにっこり笑ってくるりと一回転して見せた。ちなみにローディスはトウヤの学校の制服で、フェインは学ランを着ていた。全員それなりに似合っているようだ。
さてどこから案内したものかとトウヤが思案していると、
「あら、兄さんがいないわ」
セリカが小さく叫んだ。
「さっきまでここにいたのに・・・。ねぇ、フェイン。あんた知らない?」
「い、いえ。私が気づいたときにはすでに殿下は・・・」
「たくもー」
不案内な土地で勝手に行動されてもと、トウヤたちは慌てて捜し始めた。
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らいぶれ同人誌『絶対無敵ライブレード』より、元の世界に戻った後の平和なエピソードを書いてみました。
(全3回予定)