No.217438

鳳凰一双舞い上がるまで 1話

TAPEtさん

今作は、真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

続きを表示

2011-05-18 20:55:34 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:5202   閲覧ユーザー数:4388

雛里SIDE

 

「……うぅ……うう」

 

痛い……

どうなったの?

いきなり地面が崩れて……私……

 

「はっ!」

 

ぱっと目を開けて上を見あげてみます。

絶壁のような土の壁が見えます。

 

もう……戻れない。

 

「うっ……うぐぅ……」

 

どうしよう……

くらい。朱里ちゃんも居ません。

どうして私こんなところまできちゃったのでしょう。

あの時、朱里ちゃんが帰ろうって行った時帰っていたら、こんなことには……

 

「ふえぇ……」

 

怖くて…泣いてしまいました。

泣いても誰も助けに来てもらえないのに、泣いてしまいました。

泣くことは、他に何もすることがない時にすること。

今私にできることなんて、この状況に恐れながら泣くことしかできませんでした……

 

「…おい」

「!?」

 

ひっ!

 

誰か居る!

 

「だ……誰ですか?」

「……はぁ…」

 

今確かに、男の人の声が聞こえました。

暗くて良く見えません。

松明を持っていたせいで、ちょっと暗さに目が慣れるに時間がかかりそうです。

 

「だ、誰ですか……?」

「……お前の下の……バッグ……」

「え?」

「……一番下を開けてみろ」

 

私の下……

 

あ。

 

気づけば、私が倒れていた下は固い地面ではなく、何かちょっと柔らかいモノになっています。

 

「……動けないのか?」

「い、いいえ、あの……」

 

身体は……大丈夫。ある意味奇跡だよ。あんなところから落ちたのにちょっと痛いぐらいで怪我はないみたいです。

暗くて声しか聞こえないその人は、どうやらさっきまで私が探していた口笛を吹いていた人でしょうか。

 

「あの、……大丈夫、ですか?」

「………」

 

返事がありません。

 

「あ、あの…」

「バッグの一番下…」

 

声は先言った言葉を繰り返していました。

ばっぐって……これのことですよね。

 

私が乗っているその物体は、かなり大きいものでした。

暗くてよく分からないけど、取り敢えずそれから降りてきて手で私が乗っていた場所を触ってみます。

表面はちょっとカチカチしていて、押すと中へと入ります。

何かを入れる箱みたいです。

そうやって手で探ってみると、何か金属の飾りみたいなものがにひっかかりました。

 

 

「あの、これ…どうやって開ければ……」

「…………」

 

また返事がありません。

もしかしたら……もう…

 

「そのまま引っ張ってみろ」

 

引っ張る?

これを……

 

えいっ

 

ジィィーという音を立てながら、開く音がしました。

 

「……中にランタンがあるはずだ」

「らんたん?」

「……丸いやつだ。多分、そこにはソレしか入ってない」

 

あの人の言うことが良く分からなかったけど、取り敢えず中に手を入れて回してみると、何か丸い円柱みたいなものが手に引っかかります。

それを手にとったら…

 

カチッ

 

って音がしながら、いきなりその物体から光が出てきました

 

「あわわー!!!」

 

びっくりして持っていたモノをおとしてしまいます

落とした光を出すモノは地面に落ちて、光が指す先に人の影が見えました。

 

「……」

 

 

「あ」

「……」

 

やっと見えた。

口笛を吹いていた人が…

 

「あわ、あ、あの……」

「……」

 

木に背中を任せて座っているあの男の人は、顔をこっちに向けて、右手で反対側の脇の方を支えた姿勢でこっちを見ていた。

黒い上衣に、左手には白い上着が握られてあります。

 

「あの、それ…怪我したのですか?」

「……肋骨が折れたようだ」

 

男の人は小さく呟いて、

 

「それを持ってきてくれ」

「あ、はい…」

 

私は、先落としたらんたんというものをもう一度手にとって、あの人が座っているところまで行きました。

 

「……!」

 

近づいた私を見たあの人は、先までは見えなかった私の姿を見たらびっくりしたように眉を潜めました。

 

「…子供だと知ったら…ここまで誘い込まなかったことを…」

「へ?」

「…済まない。俺のせいで……」

 

あ。

この人はどうやら、自分が私たちを呼び寄せたせいで私が自分と一緒に遭難するはめになったのだと思っているようです。

 

「大丈夫です。それより、あの……ちょっと見せてもらえますか?」

「……大した外傷はない。ただ中から肋骨が何本折れただけだ」

 

男の人をちゃんと見たら、他のところは掠った傷ぐらいで、大したことないようですから、手で支えているところが主な負傷のようです。

怪我したところを見せてもらおうとしたら、怪我をした男の人はそう言いながら見せてくれません。

 

「手で支えていても何も良くなりません。何かを入れて、ちゃんと支えを作っておかないと後で傷がひどくなるかもしれません」

「………」

 

そうは言いましたけど、暗くて何か支えにできそうなものも見当たりません。

 

「……お前に見せてなんとかなるものではない」

「こ、子供だって見くびらないでください。わ、私だって応急処置することぐらいできます」

「……お前は……?」

「私は、水鏡女学院の生徒で、名前は鳳統って言います」

「…………」

 

また男の人が黙り込みます。

代わりに呻き声を出している様子が、どうも怪我しているところが痛くて話がうまくできないみたいです。

とにかく、早く誰か来てくれないと本当に大変なことになります。

 

「誰か―!!誰か助けてください!朱里ちゃん!せんせいーー!!」

 

大声を出しながら持っているらんたんを振ってみます。

とにかく、ここに居るってことを伝えなければなりません。

 

「誰か――!」

「………ほうとう……」

 

ふと、男の人が私を呼びました。

 

「ちょっと待ってください、今助けを……」

「鳳統……ここはどこだ」

「はい?」

「どこだ?」

 

突然そんなことはどうして……

 

「ここは荊州の水鏡先生の私塾の水鏡女学院の近くの……」

「けいしゅう……」

「はい……あの…」

「お前は……鳳士元か?」

 

!?

この人、どうして私が教えても居ない私の字を……

 

「ど、どうして分かっちゃったのですか?」

「………うぅ……」

 

そしたら、その人はまた呻き声を出しながら顔を俯きました。

 

「だ、大丈夫ですか?!」

「っ!」

 

その時でした。

あの男の人はいきなり、

私を襲うように口を塞いで自分の身体に私の背中を密着させました。

 

 

「うぅぅっ!!」

「静かに……」

 

何!?

どうなってるのですか?

も、もしかしてこのまま私を襲ったり……!

 

「うぅぅぅっ!」

「……っ!」

 

口を塞いでいた手を思いっきり噛んだら、男の人は痛みで手を放しました。

 

「な、なななななんですか?私はあなたを助けてあげようとしましたのにどうして……」

「シーっ……」

 

私が訴えることも聞かずに、男の人は静かに噛まれた手の人指し指を口に付けます。

何なのです、この人って……

わけがわかりません。

 

「……おい、こっちに来い」

「い、ヤです!」

「いいから来い。気づかれた」

「え、気づかれ……」

 

アウーーーーー!!

 

「あわわーっ!」

 

お、おおおお

 

「狼の群れだ。数がかなりある。いつもなら追い払われるが、この体じゃうまく連携がとれている狼の群れを相手するのは無理だ」

「あ、あわわ、あわわわー!!」

 

し、私塾の山に狼があるって聞いたことはありますけど、こんな夜にまさか本当に狼が……!

 

「ふ、ふえええぇーー」

 

もう駄目……これじゃあ水鏡先生たちが来る前に、狼たちに食われて私……

 

「うるさい奴だ……」

「ふえぇーー」

「おい、そこに俺の剣がないか?」

「ふぇーー……」

「……鳳士元!!」

「ひぃっ!」

 

泣いていた私は、男の人が叫ぶ声に怯えて我に戻りました。

 

「泣くな。今泣くことはお前が生きて帰ることに何の役にも立たない」

「ひ、ひぐっ……」

「…………」

 

アウーーーー!!

 

アウーー!

 

狼の鳴き声がまた聞こえます。今度はもっと近いです。

このままだと本当に……

 

「いいからこっちに来い」

「……っ」

 

怖い。

あの男の人に近づくのも

狼の群れも……

 

でも、

 

どっちも危ないのならあの人のところに行くと、生きれるかも知れない。

 

「う、うぅぅ……」

 

私はしびれる足で一歩ずつまた男の人の方に近づきました。

 

「そこに大人しく座っていろ。目も閉じてろ。声も出すな。いいな?」

「は……はい」

「………」

 

私があまりの恐さで絞るような声でやっと頷くと、男の人は少し眉を潜めて、

 

なでなで

 

「あわわっ?」

 

帽子越しで私の頭を撫でてくれました。

 

「な、ななんですか?」

「……安心しろ」

「へ?」

「俺の責任だ。お前は俺が命を賭けても守ってあげよう」

「あ……」

 

その時、私は気づきました。

この人は悪い人じゃないんだって。

本当に、私のことを助けてあげようとしているんだなって。

 

「っと、きたな」

「!」

 

グルルー

 

お、狼……

 

「親か……いや、様子見の奴か?」

 

グルルー

 

一匹の狼が私と男の人を影の中から睨みつけていました。

 

「雑魚は失せろ。親玉はどこだ」

 

グルルー

 

「飢えに目を眩んで群れの命を聞かず勝手に駆けてきた奴が雑魚でなければ何だ」

 

グルルルーーー

 

男の人の声を聞いたかのように狼の鳴き声は更に荒くなります。

 

「………すー」

 

グルルルルルーー

 

でも、何故か狼はこっちに襲ってきません。

どうして……

こっちには女の子一人とと、怪我した男の人だけ。

最近この山にはあまり狼に食われそうな動物が残っていないはずですからかなり飢えているはずですが……

 

 

あウゥゥーーー!

 

ぐぐる!!!

 

「大将のお出ましか」

 

男の人がそうつぶやくと、前に立っていた狼一匹が突然後に下がりました。

だけど、もう大丈夫なのだろうかと思ったその次、

 

「ひぃっ!」

 

さっきの狼の倍は大きい狼の影がこっちに来ていました。

 

 

あ、あわわ、あわわ、あわわーー!!

も、もう本当にどうしようもないです!

あんなに大きい狼なんて聞いたこともありません。

 

「鳳士元、落ち着け。相手に乱れた姿を見せては食われる」

「ひっ!」

 

男の人の静かな声に、私は更に怯えてしまいます。

この人は、一体何をしようとしているのでしょう。

 

「随分と飢えているな。群れの連中も……お前は親玉で間違いないな」

 

………

 

大きい狼は何も言わずにこっちを睨みつけています。

 

「そうだな。このまま俺とこの娘をお前の群れに食わせることは難しいことではないだろう。正直、お前ほどの立派な親玉がある群れなら、私が傷ついてない身体だとしても勝てる自身がない」

 

男の人はそう狼に話をかけつづけます。

 

「けど、所詮は子供一人に人間の雄一匹だ。群れに食わせたところで、飢えを鎮めるほどにはならない」

 

グルルーー

 

「見逃してくれれば、近いうちにお礼をしよう。群れがお腹いっぱいに食えるほどの肉を用意してやる」

 

ぐルルーーっ!

 

「……人間を信用しないか……なら聞くが、彼女が水鏡の弟子だということを知っているか?」

 

………

 

私の話を聞いた狼が突然唸ることを辞めました。

 

「そう、こんな山の中の狼だ。いくら人間が嫌いと言えど、それほどの人物を侮るはずはないだろう。この娘はあの水鏡先生の弟子だ。この娘を食えば、彼の悲しみは言葉では言い切れないものだろう。一瞬の口の満足のために犯すことにしては罪が深すぎると思わないかい」

 

ガルルー!

 

「………」

「あ、あの、どう、なってるんですか?」

「………」

 

男の人が黙ってしまって、私は嫌な気がしてあの人を促しました。

 

「……俺を信用できないというのなら俺は食って構わん。だが、この娘は見逃せ」

 

………

 

「だが、ここで俺を見逃せば、これの何倍の肉がお前らの腹を満たすことになる。俺一人食ったところで、どうせ群れで飢え死ぬものが出るのは同じはずだ」

 

………

 

大きい狼の唸り声が静まりました。

 

「あ、あの……」

「しっ」

 

私が何か訊こうとしましたが、男の人はまた私を黙らせます。

 

グルルーっ

 

「…感謝しよう」

 

最後の狼の鳴き声に、男の人は安堵の息を出しながら頭を下げました。

 

アウゥーーー!!!

 

ウゥーーー!!

 

大きい狼が上を見上げて鳴き声をあげると、森のあっちこっちからまた鳴き声が上がってきます。

 

「はぁ……うまくいったな」

「今…狼と協商をしたのですか?」

「まぁ、そういったところだ」

「ど、どうやって……」

「狼はなかなか人間と同じところが多い。考えていることぐらい、狼の立場になってみれば分かる。…頭が回る親玉で運が良かったってところだがな」

 

どうってこともないかのようにそう言った男の人は先私が自分から逃げる時に落としたらんたんを拾って上の方を照らしました。

さっき私が落ちてきた鉄壁のような坂が見えます。その上に上がれば人が通れる道ですが……

 

「遠いな。この負傷で上がるのは危険か」

 

そうでした。

狼から食われる危険が消えたとしても、まだ私たちが遭難されたって事実に代わりはありません。

 

「……あっ!」

「どうしたんですか?また胸が痛んで……」

 

 

 

 

「さっき親玉に人探してくれと頼んどけばよかったーーぁぁ俺って奴はいつもこう……!」

 

 

「あわわ…」

「あぁ、この馬鹿……」

 

そう言いながら頭を抱いて空を向く気を抜ける男の人の姿を見たら……

 

「え、えへへ……」

「?」

「あ、いえ、ごめんなさい、でも、ちょっと思ったのと違うなぁと思いまして…」

 

思わず笑ってしまった私を見て、男の人はキョトンとした顔で私を見つめました。

 

「……鳳士元」

「あ、はい、…私は姓は鳳、名は統、字は士元って言います」

 

ふと自己紹介がまだでしたので、危険も去ったところで、私は改めて自分の名を言いました

 

「やはり……か」

「あの、ところで、先私がまだ字もいっていないのに、どうして私の字がわかったのですか?」

「………その質問に答える前にだ…」

 

男の人は凄く難しい顔になりながら、

 

「先水鏡私塾と言ったな。それは確かに司馬徽の字だ。そしてお前は鳳統士元………更お前は、先ここが荊州と言っていた」

「は、はい……あ、そういえば、あなたはお名前は…」

「……北郷一刀だ。姓は北郷、名は一刀、字はない」

「北郷…一刀さん」

 

不思議な名前です。

字もないって珍しいですし、二字姓に二字の名前……。

 

「どうしてこんなところに……」

「………」

 

男の人は言葉に迷っているように視線を泳がせました。

 

「分からない。もしかすると、俺は今夢の中に居るのかも知れない」

「夢?」

 

突然何を言っているのでしょう。

 

「俺は鹿児島に行く電車に乗っていた。そこで突然地震の警告で電車が急停止して、俺はその衝撃で倒れた……そこで気がついたら、そこの地面に伏せていた。……お前はどう思う?」

「あわわ……」

 

正直、何を言っているのかさっぱりわかりません。

 

「とは言うが、この痛みはかなりリアルだ。きっと夢ではない。それに、夢だとしたらお前みたいなかわいい娘が俺の夢に出てくるはずもない」

「あわわ?!」

 

か、かわいいって

初めて会う男の人にかわいいなんて言われちゃいました!

 

「ということは……やはりこれが現実と認めるべきだな……鳳士元、今の皇帝は誰だ?」

「………<<かぁ>>」

「……鳳士元?」

「あわ!?は、はいっ?」

「…どうした?」

「だ、大丈夫です。なんでもありません」

「……」

 

あまりの言葉にまた我を失っていました。

一刀さん……でいいのでしょうか。

一刀さんは私を心配げに見つめてくれますが、何かあんな言葉を言われた直にそんな顔をされたらちゃんと顔を見れないです。

 

「……本当に大丈夫なのか?」

「だ、大丈夫でしゅ!<<カジッ>>うぅっ!」

「大丈夫か?!」

 

かみました!

盛大にかみまひた!

 

「うぅぅ……」

「…ふっ、面白い娘だな」

「ひ、酷いでひゅ!」

「あ、すまん、それで、今の皇帝は誰だ?」

 

少しばかり笑った顔を直ぐ平然に戻して、一刀さんは先の質問を繰り返しました。

 

「霊帝…です。あのどうしてそんなことを…」

「……まだ時間はあるのか」

「あの……」

「鳳士元」

「は、はい」

 

淡々としていた一刀さんの声が何かを決めたかのようにはっきりとした声に変わりました。

 

「俺は、どうやらこの世界の人間ではなさそうだな」

「……へ?」

「先ず、俺はこの大陸の人間ではない。俺が住んでいたところは大陸で東へ進み更に海を越えたところにある。二つ、俺はこの時代の人間ではない。俺はこの時代から約1800年後に生まれた人間だ。三つ、俺の時代で、鳳士元という人間は男ということになっている。よってここは俺が住んでいた世界とは場所も、時も、歴史も全く違う別の世界ということになる。何か質問はあるか?」

 

………

この人は、何を……

 

「…………はい」

「何だ?」

「……頭は大丈夫ですか?」

 

先ずそこから確かめていきましょう。

 

 

「負傷があるのは胸の方だけだ。が、頭を打った記憶もなくはない」

「………」

 

やはり、ちょっと頭がおかしくなったのでしょうか、この人。

話し方もちょっと変ですし。

 

「……鳳士元、お前は俺の言うことを信じていないな」

「はいっ、いきなりそんなこと言われたって信じられるはずがありません。まずは言っている相手が何か勘違いをしているか、それともどこか頭がおかしな人ではないのかと確かめるのが普通です」

「合理的だな。だが、これを見てもそんなことを言うのか?」

 

そう言いながら一刀さんは手に持っていた光を出すらんたんと言ったものを見せました。

 

「こんな火でもないのに光だけを発するモノがこの大陸に存在するか」

「それは……」

 

確かに、こんなもの、見たことも聞いたこともありません。

まるで、この時代のモノとは思えません。

 

「そしてあのバッグも、この時代の識物ではない」

「……確かにそうですね」

 

先触った感触…ガチガチなのが麻のそれと似てましたけど、それとはまた違う感触でした。

 

「ポリエステルと言った未来の識物だ。この服も、あれと同じ材料を持って、少し細かくして作られている」

「……」

 

一刀さんは地面に落ちてあった白い上着を私に出しました。

それを触ってみると、凄く柔らかそうな感触です。これとあれが同じ識物で作られたとは考えにくいです。

ですが、この辺りでは見ないものということは確かに納得できます。

でも、だからって一刀さんのことを信じることはまだ早いです。

 

「……更に、俺は聞いてもないお前の字を知っていた。それは、俺の時代でお前のことが歴史に残され物語られているからだ」

「!」

「鳳統士元、諸葛亮孔明と共に司馬徽が劉備に紹介した荊州稀代の天才たちで、各々鳳雛、臥龍と呼ばれた。司馬徽曰く、その二人のどっちかを得ることができれば天下を手に入れられるだろう、そう評価している」

「………<<パクパクっ>>」

 

私だけではなく、会ってもいない朱里ちゃんのことまで……それに今日与えられたばかりの道号まで知っていました。

もしかして…この人は本当に……

 

「そうか。鳳雛……中々面白い話だ」

「一刀さん……分かりました。一刀さんを信じます」

「…ありがとう、鳳士元。俺は俺のことを信じてくれる人には嘘は言わない主義だ……ところで一つ言っておこう」

「何ですか?」

「先から遠くからだが人の声が聞こえてくる。さっきのお前の連れが誰かをよんできたのではないか?」

「!」

 

……ちゃーん

 

 

雛里ちゃーーん

 

雛里ぃぃーー!

 

聞こえる!

 

「朱里ちゃん!!先生ーー!!」

「雛里ちゃん!」

「雛里!」

「先生ー!こっちです!」

 

私が声が残っている力一杯で思いっきり叫んだら、あそこからバサバサっとする音が聞こえて、やがて……

 

バサッ

 

「あっ!雛里ちゃん!」

 

朱里ちゃんが……

 

「朱里ちゃん!!」

「雛里ちゃーん!!」

 

朱里ちゃんを見た私はその瞬間、朱里ちゃんに向かって走っていって、朱里ちゃんをガシッと抱きつきました。

 

「朱里ちゃん……朱里ちゃーん!」

「よかった。雛里ちゃん…本当に…無事でよかったよ」

「う……ふえぇーー」

 

朱里ちゃんを見つかって安心できた私は、思わず先まで我慢していた涙を流してしまいました。

 

「雛里」

「!先生ー!」

 

先生も見えてきて、私は今度は先生に抱きつきました。

 

「ごめんなさいー!ごめんなさい…!」

「いいのですよ。二人の気持ちを考えずに無理矢理帰らせようとした私の間違いでした……本当に無事で良かったです」

「先生……」

 

朱里ちゃんと先生と私は、そうやって暫く三人で抱きついて泣いてばかりいました。

 

 

 

 

「……っん」

「!」

 

ふと、呻き声を聞いて、二人に抱きつかれて泣いていた私はパッと気がつきました。

 

「あ、先生、朱里ちゃん。あそこに、怪我をした人が居ます。胸の肋骨が折れて、動けないままずっとここに居たそうです」

「はわわ!」

「まぁ…大変ですね」

 

先生は再開の嬉しさは少し後にして、一刀さんのところに行きました。

 

「大丈夫ですか?」

「……予測するに、あなたが水鏡先生と見て間違いないでしょうか」

「はい、そうです。あなたは……」

「………北郷一刀と言います。少しばかり事故にあって……夜中に助けを求めていたことが弟子の娘を危険に晒すような嵌めになって申し訳ありません」

「それよりも、今はあなたの方が重要です……いつからここに居たのですか?」

「…気がついた時は既に暗くなった後でした。詳しい時間は……」

「急いで治療をしましょう。取り敢えず、何か支えになれるものを詰めて、私たちの塾まで案内します」

「……お助け感謝します」

 

一刀さんはそうやって先生の支えで座った場所から立ち上がりました。

 

「朱里、雛里方をのちょっと手伝ってください」

「はいっ、雛里ちゃん、行こう」

「うん……あ、待って」

 

大して怪我したところはなかったのですから、朱里ちゃんと一緒に歩いて行こうと思ったら、ふと一刀さんの荷物箱が残ってあるということに気づきました。

これ、持っていった方がいいよね……ちょっと重そうだけど……

 

「よいっしょっと……あ」

 

以外と軽い。

良くみたら下に車輪がついてあって地面に転がせながら持っていけるようになってる。

 

「雛里ちゃん、それは……?」

「一刀さん…あの男の人と一緒にあった荷物…朱里ちゃん、これ持っていくの手伝って」

「うん、分かった」

 

私は朱里ちゃんと一所にその箱の柄を掴んで先生が行った後を追いました。

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

また結構長い話になりました。

狼とか茶番入ってますが、今後のために必要な状況だったのでいれておきました。

 

北郷一刀の性格ですが、大体あんな感じです。

状況を理性と勘をもって冷静に分析し、自分が考えたことを信じて突き進む。

だけど独特な考え方のせいか、周りから変な風に見られることが多い。

前々回にて助けてあげたJKたちに暴言を食らったのも、単にその人の性格問題だけではないというわけでしょう。

 

今後話すことになりますが、この北郷一刀は祖父さんの死からまた二年を過ごしてます。

もちろん流れ星で来ました。天の御使い専用乗り物です(笑)

 

雛里ちゃんのことですが、

今後当分はあまり噛まないかもしれません。

言葉を噛むということは緊張しているということでもありながらある程度気を緩めていくという意味でもあります。初めて会う人の前であまり噛むのもおかしいと思いますので……

噛みまくるかわいい雛里ちゃんを見たかった方にはもうしわけありませんが、

ここの雛里ちゃんはもっとしっかりもののつもりです。

少なくとも自分の脳内の雛里ちゃんはすごくしっかりしてます。

 

では、次回は……日曜のこの時間ぐらいにまたお会いしましょう。

ご感想及び誤字指摘待ってます。

ノシ


 
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