許都。
官渡における曹魏との決戦に勝利した一刀たちは、その後すぐさま、この現・漢の都へと入った。無論、曹操を始めとする、虜囚の身となった魏の諸将を引き連れて、である。
そしてすぐに、帝宮にいる筈の皇帝・劉協に目通りをしようとしたのであるが、城に残っていた禁軍の兵たちから、彼らは驚くべき事実を告げられた。
「陛下は既にこの地に居られません。気づいたときには、一部の禁軍の兵を引き連れ、董承将軍とともに、その姿を消されておりました」
その話を聞いた曹操ら魏の面々は、大きな衝撃とともに悲嘆にくれた。長安から逃れてきた皇帝を保護し、その皇帝と、そして漢朝のため、大陸に住む人々のためと信じ、懸命に働いてきた自分たちが、こうもあっさり捨てられるのか、と。
後ろ手に両手を縛られたまま、曹操たちはその唇を強くかみ締め、涙を流して嘆いた。
……そんな彼女たちを見かねた李儒が、一刀の許しを得て曹操のそばへと歩み寄り、その手を縛っている戒めを解く。
「っ!?……何を……」
「……孟徳よ。そちたちのその漢への忠義。そして、民へのその想い。妾は真に感心したぞ。……この地を去った”あれ”が、いったい何を考えて居るのかはわからぬが、”妹”の、忠臣に対する非礼は、”姉”である妾が、あれに代わって深く侘びよう。……このとおりじゃ。すまぬ」
曹操の前に土下座をし、彼女たちをあっさりと見捨てた妹の罪を、床にその頭をこすり付けて、李儒は深く深く侘びた。
「……なぜ、北郷の一臣下である貴女が、陛下を妹と呼び、代わりにと言って、その頭を下げるのかしら?」
目の前でただ黙って頭を下げているその李儒に対し、曹操は、彼女のその行動の理由をただ冷静に、低い声をもって問うた。そのような不遜な言質をとる以上、こととしだいではただでは済まさない、と。そう付け加えて。
「曹操さん、それは」
「よい、一刀。……孟徳、そして魏の諸将、ならびにこの場に同席するすべての者よ。……まことに、久方ぶりじゃの。皆、元気そうで何よりじゃ」
そう言って、下げていたその顔を上げ、身に着けていた仮面をそっとはずす李儒。今上帝である劉協と、ただ瞳の色が違うだけの生き写しのその素顔が、曹操らを初めとする衆目の前に晒される。
『な、なんと……!!』
思わずそんな驚きの声を上げる、曹操ら魏の諸将たち。そして、同席していた多くの禁軍の兵や宮殿勤めの官吏たち。その中には、李儒が皇帝であったころに使えていた者達も、何人か含まれており、前主である彼女が生きていたことに、思わず呆気にとられるものや、感激のあまり涙を滝のように流し始める者もいた。
「……ご存命、だったのですか、少帝陛下」
「……生き恥を晒しているだけ、ともいうがな」
曹操のその言葉に、ふふ、と自嘲気味の笑みをこぼす李儒。
「……おそれながら、なぜ、ご存命であるなら、そのことを天下に知らしめられないのでしょうか?陛下がご存命と聞けば、喜び勇んでこの場にはせ参じるものも多く居りましょう?」
「……今の妾は、李儒、という名の一将じゃ。少帝劉弁はすでに死んでおる。ただそれだけよ」
曹操からの問いに対し、再び仮面をその顔につけながら、冷徹にそう返した李儒。その仮面からわずかに覗く彼女のその瞳を見ていた曹操は、そこに確固たる強い意志と悲しみ-いや、懺悔の様なものを見た。
「……わかりました。では、もうこれ以上は追求いたしません。皆も、それでいいわね?」
『はっ』
曹操の言葉に間髪入れず、揃って頷く魏の面々。その他の者達、つまり禁軍の兵や官吏たちは何かまだ言いたげにしていたが、その場の空気を読んでのことか、魏の面々と同じくだまってそれに従った。
「……あの~。ちょっといいでしょうか?」
「ん?えっと、何でしょうか、曹洪さん」
「いやあ~。出来れば、あたしたちも華琳みたく、これ、外して欲しいんだけどな~」
と、自分の縛られたその両手を、一刀の方へと体ごと向けて曹洪がそう声を上げた。
「……あのね、雹華。貴女、私たちの立場をわかってるの?」
「で~も~。縄が食い込んでもう痛いんだも~ん!」
自分たちは一応捕虜なのよ、と。駄々をこねる従妹をしかる曹仁に、ぷーっと、ほほを膨らませて曹洪がむくれる。
「一刀よ。別によいであろ?」
「……そうだね。まさか、自由になったとたんに暴れて、わざわざ曹操さんの立場を悪くしたりしないだろうし。でしょ?曹洪さん?」
「(ぎく)……や、やだなあ~。そんなことするわけ無いじゃん~(汗)」
「雹華……貴女、そんなことを考えていたの?」
「ははは。や、やだなあ、華琳までそんな~」
じろり、と。曹仁に続き曹操にまでにらまれた曹洪は、軽く口笛を吹きながら、その視線から逃れるようにしてそっぽを向いた。
「くくく。……良い従姉妹さんたちだね、曹操さん」
「……恥ずかしながら、ね///」
結局、曹操が配下全員に対し、大人しくしているようきつく言いつけた上で、魏の将たちを拘束していた戒めが解かれることになった。そして、話はいよいよ本題に入った。
「……それで?私たちの今後の扱いはどうなるのかしら?……まあ普通に考えれば、敗軍の将はその首をはねられるか、後はせいぜい、勝者の”慰み者”にでもされる、ってところでしょうけどね」
「”北の精力魔人”と名高い、この北郷のことです!どうせ、私たち全員を後宮にでも押し込んで夜な夜な口では言えないあんなことやこんなことをする気なんですよ華琳さま!」
「……いや、”北の精力魔人”って……。どんな噂話が流れてるんだよ俺……」
荀彧の口からついて出たそんな通り名に、思わず肩を落として意気消沈とする一刀。
「桂花、貴女はしばらく黙っていなさい。話がややこしくなるから」
「そ、そんな、華琳さま~」
「……け・い・ふぁ?」
「……はい」
曹操に一にらみされ、荀彧は小さくなって引っ込んだ。
「……それじゃ、改めてさっきの質問に答えさせてもらうけど。まず、俺達から望むものは唯一つだけ。……洛陽と許昌の割譲。それだけです」
「……それ……だけ?」
「ええ。で、今回の戦で俺達が占領した残りの魏領については、今後も曹操さんたちにその統治を担ってほしいと思ってる」
『なっ……!?』
一刀のその台詞は、魏の将たちの心に大きな衝撃を与えた。まあ、それも無理からぬことであろう。ほんの少し前まで矛を交えていた相手に対し、占領したその殆どの領地を、これまでどおり、彼女達に任せるというのである。
そんなことは、永い大陸の歴史においても稀有なこと。もし、曹操たちが始めから降伏でもしていたのであれば、多少はその処置も納得できるものではあるが、実際には一刀たち河北勢の手によって、魏領はそのすべてを占領されているのである。
「……寛大というか、なんというか。広い度量をお持ちなことね、貴方は。けど北郷?もし私達が、再び貴方に牙を剥いたら、一体どうするつもりかしら?……まさか、とは思うけど。それを考えていなかったとは言わせないわよ?」
一刀のその判断に、曹操が口の端をわずかに吊り上げ、笑みを浮かべたまま問いかける。それに対する一刀の答えはというと。
「……そんなことにはならないさ」
「っ!……なぜそう言いきれるのかしら?」
「……貴女が、”曹孟徳”だから、さ」
「っっ……!!」
曹操が曹操であること。それがその答えだと、一刀は笑って答えて見せた。彼女は、己の目指すものは覇道だと。常々周囲の者達に、そう嘯いているという。そしてその覇道には、決してなんらやましい行いは用いない、とも。……もし、その言葉を覆すことがあったなら、それは彼女にとって、己自身をも否定することになりかねない。
だからこそ、曹操が曹操である限り、自分は貴女を信用する、と。一刀はそう、曹操に答えたのであった。
「……」
暫しの沈黙が、その室内を支配する。時が止まっていたのではないかと錯覚した、と。その時その場に居合わせていた誰かが、後にそう語ったという。
一瞬とも永劫とも言える緊張感が漂った後、それを破ったのは、少女の朗らかな笑い声であった。
「あっはははははは!……どうやら、完全に私の負け、ね。……北郷一刀、いえ、北郷一刀”さま”。私、魏王曹孟徳は、ここに、この魏王の位を返上し、貴方様に対する、臣下の礼を、とらさせていただきたく存じます」
『か、華琳(さま)?!』
「落ち着きなさい、皆の者!……敗軍の将となり、ただ生き恥を晒している私に対し、彼はそのあまりにも寛大すぎる心を示し、命を助けるばかりか、これまでどおり領地を治めて良いとまで言ってくれているのよ?なら、私はそれに誠心誠意応えるのみ。……わが臣下の礼、我が真名とともに、受けてくださいますでしょうか?」
魏王の位をこの場で捨て、一刀の一臣下となると宣言した曹操に、その配下の者達が思わず驚きの声を上げるが、曹操はその配下たちを一喝し、一刀に対して改めて礼をとった。拱手して跪き、その頭を深々と下げるという、正式な臣下の礼を。
「……曹操さん、頭を上げてください。俺は、貴女を配下にしようなんて気は、残念ながらこれっぽちも持っていません」
「……ッ!!」
「貴様あッ!華琳さまがこうまでおっしゃって居られるというのに、それを断るというのかっ!?」
「春蘭!落ち着きなさい!」
曹操のその申し出に対する、一刀のその答えを聞いた夏候惇が、今にも一刀に飛び掛らんとする勢いで激昂するも、曹仁がすぐさまそれをたしなめる。
「ですが彩香さま、こやつは……っ!!」
「春蘭!!」
「う。……も、申し訳、ありません……」
「……ありがとう、彩香。それで北郷さま?なぜ、私の臣下の礼を受けてくださらないので?」
激昂した夏候惇を、自身に代わっていち早く抑えた曹仁に礼を言ってから、曹操は一刀に対してそう問いかけた。
「……貴女のその申し出はとても嬉しいですよ。けど、俺が貴女に求めるのは、臣下の礼をとることではなく、俺のこの手を取ってもらうことです」
その優しい微笑みを顔に浮かべつつ、一刀は跪いている曹操の下に歩み寄り、その手をそっと差し出した。
「……私に、貴方と同盟を組め、と?」
「ええ。そしてその上で、皆で、共に歩んで行きましょう。ただ一人の頂点が立つ世ではなく、誰もが同じ立場に立って、大陸の、人々のことを考えていける、そんな世を造るために」
「……」
誰もが同じ立場で、同じように世のことを考えていく。一刀が語ったその言葉に、曹操は思わず、その疑問を声に出して聞いていた。
「……本当に、そんなことが出来ると?」
「出来る。「!!」……確かに、すべての人に、これを理解してもらうのは難しいと思う。……人間なんだから、それぞれに考えの違いだって生まれるし、時には、理性で制御できない感情に振り回されることだってあるとは思う。……現に俺だって、あの時は激情に駆られて、怒りのままに、この刃を振るってしまったし、ね」
「……いつぞやの、黄巾の一件、ね?」
「ああ」
鄴郡の、とある邑を襲った黄巾の賊徒。容赦なく人々を嬲り、辱め、そして殺したその賊たちを、一刀は姜維・徐晃の二人とともに、三万からいたその彼らを、ただ無慈悲に殲滅した。……普段、そのようなそぶりを見せることはないが、その時のことは、まるで抜けなくなった小さな棘のように、一刀のその心に突き刺さったまま残っていた。
「まあ、俺のその罪は、何をしたって消えるものではないけど、同じことを二度としないように、歯止めをかけることぐらいは出来る。……たとえ俺が暴走したとしても、それを止めてくれる、よき協力者がいてくれれば、ね」
「……私に、その役を担えと、貴方はそう言うのね?」
「……」
こく、と。曹操に静かにうなずく一刀。
「どうですか?俺のこの提案、受け入れてくれますか?曹操さん」
「……華琳、よ」
「え?」
『華琳(さま)!』
「私の真名、貴方に預けておくわ。同盟者ということは、よき友人ということになるのでしょう?なら、真名を預けるのは至極当然よ。あ、それから敬語ももう必要ないからね?そこにいる幽霊さんみたいに、気軽に話しかけてくれてかまわないわ」
「……孟徳よ。それはもしかして、妾のことをいうておるのか?」
「あら?私は別に誰のこととも言っていないわよ、”李儒”どの」
「ぬぐ」
「ははは。……それじゃあ、曹そ、いや、華琳。君の真名、喜んで受け取らせてもらうよ。俺のことも、これからは一刀と呼んでくれていい。俺にとっては、これが真名みたいなものだと思うしね」
「わかったわ。……これから、いろいろと大変だけれど、私の期待、裏切っちゃ駄目よ?……よろしく頼むわね、一刀」
「こちらこそ」
立ち上がり、そっと一刀にその手を差し出し、笑顔を見せる曹操と、その曹操のか細くも力強い手を握り返し、彼女と同じく笑顔を見せて返す一刀であった。
その翌日。
北郷軍、曹操軍、そして公孫賛軍の主だった将が一堂に会し、三国による同盟の詳細が話し合われた。
まず、一刀のその要望どおり、魏より戦後賠償という形で洛陽と許昌が北郷軍に移譲されることになった。そして洛陽に董卓が太守として赴任することが決定し、そのことが、当日の早朝になって合流して来た彼女へと伝えられた。
「へぅ。ご主人様のメイドが出来なくなるのは、正直寂しいです……」
と、董卓本人は心底残念そうにそう呟いてはいたものの、ご主人様のご期待には必ず応えて見せますと、すぐにその顔に笑顔を浮かべて、その任を拝領した。なお、その彼女の下には、参謀として賈駆、将として華雄とその副将である胡診がつくこととなった。そしてそれに加え、これは曹操の心配りというべきか、張遼とその配下である高順が、董卓の配下に戻ることになった。
「霞だって元々董卓のところの将だったんだもの。元の鞘に納まった方が、霞もこれから張り切り概があるでしょう」
「……あんがとな、孟ちゃん」
「私からも、お礼を言わせてください。本当に、お気遣いありがとうございます、曹操さん」
「……別にお礼なんかいいわよ。あと、私のことは華琳でいいわ。……これからは、いろいろよろしくね、董卓」
「月、と。私も真名で呼んでください。こちらこそ、よろしくお願いします、華琳さん」
フフフ、と。互いに笑顔を交わした両者であった。
次に許昌のほうであるが、こちらには一刀自身が、徐庶や李儒らの家臣団とともにその居を移すことになり、常駐してこの地の政務にあたることになった。
ただ、例えわずかの間とはいえ、これまで一応は漢の都となっていたこの街を治める以上、何がしかの軋轢が生まれるかも知れないと、曹操が一刀たちに対してそう懸念を示した。
「だから一刀?貴方にお願いがあるんだけど?」
「ああ。なんだい?」
「彩香と雹華……曹子孝と曹子廉の二人を、暫定的に貴方の指揮下において、この地に留まらせて欲しいの」
『え?華琳?』
曹仁と曹洪。その二人をこの地に残らせ、今後の統治に役立てて欲しいと。曹操は一刀にそう提案したのである。
「どう?受けてくれるかしら?……ああ、それから。もしこの二人の方から望んだ時は、一刀、貴方の后候補に加えてくれて構わないわ」
『な、ななっ……!?』
「ちょ!?華琳貴女何を……!!」
「……私としては、もし、この二人のどちらかが、あなたの子種でも授かることになれば、願ったり叶ったり、なんだけどね」
と。従姉妹のそのトンでも発言に驚き、その言を遮ろうとした曹仁を無視し、さらに一刀の後ろですさまじい形相をしている徐庶たちにはそれこそ目もくれず、同意の上であれば二人を己がものにして構わないと、曹操はきっぱりと一刀に言い切った。
「こ、子種って……!!///」
「あれ~?彩香ってば顔真っ赤だよ~?……意外とまんざらでもなかったりとか?にゅふふふふ」
「貴女は黙ってなさい!」
ごちん、と。自分をからかう曹洪の頭に、その鉄拳をお見舞いする曹仁。少々赤らんだその顔で。
「ふぎゃっ!ぼ、暴力反対~!!」
「……一刀さん?ドウサレルンデスカ?(ゴゴゴゴゴ)」
「……よかったのう一刀よ。肉親合意で愛人が増えて(メラメラメラ)」
「……あの、輝里サン、命、サン?お二人とも、その、背中に何か”見えてるんですけど?」
自身に対して、ものすっごい笑顔を見せている徐庶と李儒のその背に、”何かしらの”恐怖を感じる幻影を、一刀はその目に幻視し、体中のあらゆる場所からいや~な汗をかいて、口の端を引きつらせて無理やり笑顔でそう返す。
『……それは多分気のせいです(じゃ)。……あとで、ちょっと”オハナシ”がありますからね(の)?』
「……はひ」
蛇ににらまれた蛙状態の一刀。そんな三人のやり取り見て、曹操は必死でその笑いをこらえていたのだった。
そのあたりのやり取りは、ともかくとして。
結論から言えば、一刀は曹仁と曹洪の二人を受け入れることにした。現実問題として、元々この地を治めていた魏の将が、その統治に力を貸してくれるというのは、大変にありがたい話である。
……ただまあ、その二人が加わることに関連して、徐庶らによる毎度恒例のオハナシが、その日の夜一刀に対して行われたが、それもまたいつものことなので、ここでは割愛させていただくとする。
残る今回の戦の最大の功労者である公孫賛についてだが、最初に一刀から公孫賛に提案されたのは、南皮と平原二つの郡の、公孫賛領への移譲というものだった。だが。
「……そんなに増えたら、私たちだけでは統治しきれないっての」
と。人員不足をその理由にして、南皮一郡の移譲という形でおちつくことになった。とはいえ、それでもさらに統治が大変になるのは目に見えているがと、そうぼやく公孫賛に対し、思わぬところからその助け舟が出された。
「だったら、一人ぐらいいい人材を紹介するけど?」
と、そう声を上げたのは、張郃・高覧の二人の補佐役である荀諶であった。
「本当か、荀諶?!それで、それはどこの誰なんだ?!」
「……関靖、字を士起っていうの。まあ、内政官としてなら、あいつ以上の適任者は居ないでしょ。手紙を書いておくから、後は自分で口説いて頂戴」
一応、公孫賛は彼女の目上になる人物なのだか、荀諶はそんなことこれっぽっちも気にせず、ぶっきらぼうな言葉遣いのまま、公孫賛に自身の古い友人を教え、紹介状を用意する旨を告げた。
「内政官か、そりゃありがたいな。……恩に着るよ、荀諶。このとおりだ」
「……別に、礼を言われることをしたわけじゃあないわよ///」
ぷい、と。頭を下げる公孫賛からそっぽを向く荀諶。それは、彼女なりの照れ隠しなのだと、こっそり張郃から耳打ちをされ、公孫賛は「なるほど。素直じゃないんだな」と、そうつぶやいたのであった。
最後に残ったのは、曹操たち魏軍の面々についてであるが、こちらは元々の魏領である兗・徐の二州と、許昌を除く豫州そして寿春という二州三郡を、これまでどおりに統治することを改めて確認し、三者間による合意が交わされた。
こうして、中原以北の情勢は、とりあえずの落ち着きを見せた。
とはいえ、まだまだ問題は山積みである。許を離れ、姿を消した漢帝劉協がどこに向かったのか。荊・揚・益の三州の諸侯、そして、馬騰を筆頭とする西涼連合。それらが今後どのように動いてくるのか。
大陸の情勢はいまだ混沌とした様相を呈し、これからどこへと流れていくか、誰にも予測のつかない情勢のままである。
それぞれが目指す、平和という名の目的地。そこに至るためには、越えなければならない山がまだまだ多く存在し、尚且つ、その道の一寸先は闇の中である。
それ故に、いまはただ、久方ぶりに訪れた平穏にその身を委ね、その心と体の英気を養うのみ。
穏やかに流れるその日々を、優しき友たちとともに……。
~第五章・了~
~第六章に、続く~
狼「はい、皆さんこんにちは、もしくはこんばんわ。ひょっとしたらおはようございます、なのかもしれませんが、作者こと狭乃狼でございます」
輝「はいはい、輝里で~す。どーもおひさしぶりです」
命「命じゃ。みな、元気でやっておるかの?」
由「由やで~。最近なんか影が薄くなっとるけど、ウチのことも忘れんといてな~」
瑠「ども。影薄いその弐、瑠里です」
狼「えっ・・・と。もしかして、怒って・・・る?」
由「べつに。出番がないんやからしゃーないやん」
瑠「ですね。別に怒ってなんかいませんよ?」
狼「・・・そういいつつ、目がめっちゃ怖いんだけど?」
由・瑠『ソレハ多分気ノセイデスヨ』
狼「そ、そーですか・・・。(ひぃ~、あの笑顔が怖すぎる~!!)」
輝「えっと、とりあえず、この章のまとめからいきましょうか」
命「そうじゃの。とはいえ、孟徳率いる魏との決着がついた、それだけだがの」
狼「そんな身もふたもない言い方wまあ、確かにそのとおりなんだけどさ」
由「気になることちゅうたら、向こうの真の黒幕の正体がはっきりしたことぐらいやろ?」
瑠「ですね。命さんの妹さん、真っ黒けになってましたね」
命「・・・そうじゃな。はあ、あの可愛かったゆm、ごほん!・・・協はどこに行ってしもうたのやら」
狼「とりあえず、あの娘が今どうなっているかについては、次章・冒頭にて明かされますので、それまで待っててください」
輝「父さん?たしか何か報告があるんじゃなかった?」
狼「ああ、あれね。えー、実はですね、すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、この『真説・恋姫演義 ~北朝伝~』の、旧バージョンについてなんですが」
命「ああ。途中で止まったあれか。どうかしたのか?まさか、また再開するなんてことは」
狼「いや、さすがにそれは無い。ただ、公開停止したというだけです。未完成品をそのまま公開し続けてるのも、なんとなく居心地が悪かったもんで」
由「公開停止、やの?削除やのうて?」
狼「そ。もし、本~~~当っっに、もし!要望がそれなりにあった場合は、再公開を一応は考えてはいます。ただし、あっちは本当にもう二度と続きが出ることはありません。それでも、過去の作品と照らし合わせて見てみたい、という方がいた場合のみ、再公開をするかもしれません」
瑠「ということなんで、ご希望の方はコメではなくあしあとの方に書き込んでください。その件数次第で判断するそうです」
狼「さて、それについてはこのぐらいにして、こっちの北朝伝については、次回はまた幕間の話を投稿予定です。ツン√を先に更新する可能性のう方が、断然に高いですけどね」
輝「というわけで、次がどっちになるかはわかりませんが、また、今しばらくお待ちくださいませ」
命「今回の話についても、支援やコメント、いつもどおり待っておるからの?」
由「誹謗中傷以外はなんでもござれや。よろしゅうたのむで」
瑠「じゃ、今日はここまでということで」
狼「また次回の投稿にてお会いいたしましょう。それではみなさん」
全員『再見~!!』
追伸です。
今回、siriusさんが描かれた曹洪、つまり雹華を、この作品での曹洪として今後も出演させていただく事となりました。
そのため、五章の二幕、彼女の紹介のところを修正し、それにあわせて彩香の方も少しだけいじりました。このこと、今後ともよろしくお願いいたします。
そしてsiriusさま、このたびは本当にありがとうございました。
それでは。
おまけ
彩音「・・・で?私はどうなるわけ?」
狼「まあ、多分そのうちどっか(の外史)で出番があるかもね。・・・まったくの別人として」
彩音「・・・嘘だったら承知しないからね?」
狼「・・・・・・・・はい(がたぶるがたぶる)」
えんど。
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北朝伝、五章の終幕を投稿です。
曹操率いる魏軍との官渡決戦に勝利し、許へとその軍を進めた一刀たち。
その戦後処理の様子をお届けします。
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