蓮華達が南蛮平定に出向いている頃ある2グループは巡業の旅に出ていた。
「お姉ちゃん…とうとう来たね」
「そ~だね~……」
巡業グループの1つである張3姉妹は今呉の首都である建業の見える位置までやってきた。
「ここからは気をつけて下さい姉さん方…特に天和姉さん」
「わかってるって…」
そう言うと3姉妹は建業に入るため歩き始めた。
同じ頃もう1つの巡業グループである小蓮,鈴々,思春は蜀の首都平原に近くやって来たのだった。
「あの城ですね…小蓮様、鈴々」
「そうなのだ!!あの城で食い倒れするのだ!!」
鈴々の発言に思春は唖然としてしまった。
なので小蓮が変わりにツッコミを入れた。
「ちょっと鈴々…そんな目的で来た訳じゃないでしょ」
「わかっているのだ…ちょっとした冗談なのだ」
「もう…頼むわよ鈴々」
「大丈夫なのだ…それより…」
笑っていた鈴々だったが不意に真剣な顔をしてある者の顔を見た。
「なんだ鈴々」
「鈴々より思春の方が心配なのだ~」
「確かにね~…興奮して競艇モードになってボロが出なければいいんだけど」
「む…大丈夫だ……それより行くぞ」
小蓮の言葉が図星だったのか思春は2人をおいて平原に向かって歩き始めた。
「思春待つのだ~」
「待ってよ~思春」
小蓮達も急いで思春の後を追うのだった。
「二人ともいい?」
「ええ…」
「問題ありませんわ」
建業に入った3姉妹の様子は何か違っていた。
衣装もステージ用ではなく3人とも違っていた。
広場に出た3姉妹はすぐに客引きを開始した。
「皆さん…時間があれば少し見ていただきたいんですが…雪村杏の暗記術と十条紫苑の暗算術」
地和の声で近くにいた者たちが3姉妹の周りに集まった。
本来3姉妹は真名で公演をしていたが場所が場所なので偽名を利用することになったのだった。
集ったお客の中で当然の質問が地和(偽名:梶浦緋紗子)に投げかけられた。
「なあ…暗記と暗算を芸にするとはそんなにすごいのか?」
「ええ…たとえばお客様の中で適当な数字を言ってください。全て足した答えを瞬時で出ますよ」
「ほ~…ならば125に61…それと925,268を足してもらおうか…」
緋紗子の回答にお客は少し怪しく思い適当に数字を言った。
その数字を聞いた人和(偽名:十条紫苑)はすぐに回答を言った。
「分りました………答えは1379ですわ」
「………確かに合ってる…」
「「「お~!!」」」
周りにいたお客どころか問題を出した本人も驚いた。
この時代計算が出来ると言うより読み書きが出来る人はすごく少なかった。
しかも計算できる人も答えを出すのに少し時間がかかってしまうのだが紫苑はすぐに回答したからだ。
するとまた違う方向から問題を出すお客が出てきた。
「じゃあ次は999と2975と394「…43」だったら」
「答えは4411よ」
紫苑は自信満々で回答したが質問者は笑いながら宣言した。
「間違いだ…4368のはず…暗算術って言ってもたいした事無いな」
「待って…」
「あ~ん!!」
今まで黙っていた天和(偽名:雪村杏)が口を開いた。
「確かにあんたの言った数字を足したら4368になるわ」
「だからその姉ちゃんが間違っている…」
「でもあなたが394と言ったと同時にあなたの近くにいた彼が小声で43って言ったわ」
「そんなバカな」「ック…」
杏に指摘に問題を出した本人は驚き小声で言ったお客は悔しそうな表情をした。
杏はさらに小声で言った男に追い討ちをかけた。
「何ならあなた方の言ったこと全て言い直しましょうか?確か…『じゃあ次は999と2975と394「…43」だったら』……だったわね」
雪村流暗記術を披露され小声で言った男は何も言えなくなってしまった。
そして問題を出した男は杏の言った数字を改めて計算しなおした。
「答えは4411で合っている…凄い」
その後いろんなお客から問題を提示されたが紫苑は次々と回答していった。
またお客が回答を間違っていたり多人数からの問題の場合は杏が問題を復唱した。
ある程度問題を回答すると周りが少し赤くなっていた。
「本日はこれまで…この芸を見て凄いと思ったらこの箱にお代をお願いします」
緋紗子がそう言い箱を出すとすぐに箱いっぱいにお金が入っていった。
お客が全員帰っていったのを確認すると3姉妹は宿に帰っていった。
「ふ~…お姉ちゃん,人和お疲れ」
宿の部屋に入った後地和は2人に労わりの言葉をかけた。
「おね~ちゃんがんばったよ~」
「これで噂が呉の文官達にも広まればいいけど」
「ま~今日だけでそうなる訳じゃないよ人和」
「そうね地和姉さん…明日もするんでしょ」
「もちろん♪いい小銭稼ぎにもなるし…ねえ天和姉さんって」
「zzz…zzz…」
天和は疲れすぎてすぐ眠ってしまった。
2人はその寝顔を微笑ましく見ながら話を続けた。
「いつもの天和姉さんの性格と逆の性格を演じたのだから疲れたんでしょう…それと地和姉さん…売り上げは全て私が管理しますから」
3姉妹の財布は全て人和が握っていた。
そもそも財布以外にスケジュールなど全て人和が管理していた。
地和は売り上げを人和に渡すと同時に釘を刺した。
「はいはい分っているわよ…でもそのお金で一刀のお土産買わないでよね」
「!!!!…ばれた?」
人和は巡業の度に一刀にお土産を買っていたのだった。
しかも2人にばれないようにして買いに行ってた。
しかし地和は気づいていた。
最近お土産の量が多くなっていっていたので釘を刺したのだ。
「買ってもいいけどほどほどにね」
「分ってるわ地和姉さん」
その後2人は談笑をし眠りについた。
建業で公演していた頃平原でも公演を開始していた。
3人も同様に偽名を使用し活動していた。
「きゃきゃきゃ~さくらコンビによる手品が始まるよ~…みんな見てね~きゃきゃきゃ~」
進行役の思春(偽名:ツボミ)の紹介で鈴々が前に出てきた。
「それじゃ~1番目…高瀬さくらいっきま~す」
そう言うとツボミがある薬剤を高瀬に渡した。
「まずこの材料と合わせて…そして火にかける…すると完成っと誰か何か植物の種ありませんか?」
高瀬の問いかけに見に来たお客が声をかけた。
「これでいいか?」
「ありがと~♪その種をこの薬に漬けると~」
「「「「お~~~~!!!!」」」」
種を入れて数十秒でその植物は著しく成長した。
「こんなもんかな~…おいしそうな大根完成~♪」
そう言うと高瀬は蛇矛で大根を切り前列のお客さんに配った。
切った大根を食べたお客さんは驚いた。
その大根は本物の大根でみずみずしく美味しかったからである。
「はにゃ~…こんなん見せられたら緊張するにゃ~……2番目芳乃さくらいっくよ~」
高瀬が一歩引くと次は小蓮(偽名:芳乃さくら)が前に出てきた。
「手の中には何も無いよね~…だけど握って念じると~」
「「「「お~」」」」
「はい…肉まんが出てきたにゃ~…ほかにもお菓子なら出せるにゃ~」
そう言うと肉まんを見ていた子供に渡しリクエストを募った。
「じゃあ…桃まん!!」
「うん♪………はい」
「「「すげ~」」」
その後ツボミはお客さんに箱を渡しお金を募りその日の公演を終えた。
「お疲れ様でした…小蓮様,鈴々」
「やっと戻れたのだ~久しぶりに演技をしたら疲れたのだ」
「そうよね~でも意外と思春の演技凄かったよね~」
宿に戻った3人は通常状態に戻った。
一番の不安要素であった思春が一番演技が上手だったのでアイドル組は驚いた。
「うむ…恥ずかしかったのだがいざやってみたら楽しかったな」
「でもこんなことして本当に大丈夫なのか~」
「そうよね~…なんで本気で武芸を披露しちゃ駄目なんだろうね」
「それは知らん…冥琳様がそう言ったのだ何か考えがあるのだろう」
今回の巡業先は冥琳が独断で決めたのだった。
しかも6人は火国に名前はあるものの冥琳が事実上在野扱いにしたのだった。
「そんなことどうでもいいのだ!!とっとと鈴々達が凄いって言う噂を立ち上げるのだ」
「そうだな…そうすれば蓮華様も動きやすくなるだろうしな」
「そうね…思春,鈴々明日も頑張ろうね」
「御意」
「お~なのだ~!!」
いろいろ思う所はあったが明日のこともあるので寝ることにしたのだった。
つづく
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ご無沙汰しています
水無月さん復活です
1ヶ月ぶりの更新です
女々しいですが言い訳させてもらいます
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