董卓が目を覚ますと、目の前の光景は地獄だった。
死体が転がっている。右も左も前も後ろもすべてが死体が。
「あ、ああ、ああ……あああああああ―――っ!」
吐き気がした。
しかも、止まらない。止めることができない。
さらに次の瞬間、董卓は腹部に気が狂いそうになるような激痛に襲われた。
「!」
斬られていた。
「……な、んで……」
董卓の口から、自然に赤い水が流れる。
「……皇帝の勅命により、逆賊董卓一族を斬っただけ」
董卓は呆然とした。
それは、目の前の彼女からはあまりに似つかわしくない言葉だった。
「恋……さ……ん」
膝から下の力が抜ける。脳に無断で膝が折れる。そしてそのまま、董卓は天を見上げるように地面にドサリと倒れた。
「……さようなら」
恋はそういい残すと董卓の首を斬った。
―――こうして、董卓の時代は終わりを迎えた。
最終話
『新時代』
呂布らが率いる董卓軍が戦い、華雄が討たれるなど大敗した。このため、董卓は長安に撤退して体制を立て直そうとしたが、董卓に反感を持つ官僚及び呂布を天下統一を夢見る陳宮の策略により、皇帝の勅命の元、呂布に殺害される。
さらに、その時に董卓の一族や関係者も殺され天下は呂布の時代へと移った。
だが、その時代は長くは続かなかった。
難を逃れた董卓一族が、呂布を長安から追い出し皇帝を我が物とした。しかし、その呂布自身を復讐したかっただけだったのか、すぐに自決してしまう。
そして、その後の実権は曹操へと移るのだが……。
この世界において、一人だけ『存在』しない男がいた。
北郷という男。
彼は『同じ世界』に複数いた。
「……俺は見てみたいだ。彼女達が演じる『三国志』を」
一人の北郷が微笑む。
「だけど、人数が足りないよ。歴史通りにはいかないね」
隣の北郷が注意する。
「なら多少は変えていくしかないか。でも、最終目的は二つ」
その隣の北郷はため息をつく。
「……創造した彼女達の命と記録」
ボソリと呟く控えめの北郷。
「ハッハハハ―――ッ! どうでもいいじゃね――かよ、どうせ女を支配する運命だからなっ!」
暴虐に満ちた北郷は叫ぶ。
「おやおや……『支配』とは。『絆』の間違いでは?」
ニコニコした北郷は叫ぶ北郷に注意した。
「うう…どちらでもいいよ~。と、とにかく、次は呂布と袁術だね」
弱腰の北郷は『すべて』の北郷をまとめた。
「ああ……では、呂布の方は俺が行こう」
「なら、袁術は俺が……」
「じゃぁ……お、俺は……劉備のほうを…」
それぞれの北郷は新たなる目的を持ち動きだす。
―――堕天使は確かに人々の前に光臨した。
だが、天はその天使を生贄した。
己の目的のために。
己が神だと知っているから。
何度でも『新世界』を誕生、破壊することを―――
完
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終わり