???「ううん、もう朝ですわね」
寝台の上で豊満な上半身を曝け出したままの状態で伸びをしながら金髪の美女がそう呟く
???「今日の目覚めはとても爽やかでしたわ・・・・・・あなたのお陰ですわね」
言いながら隣で寝息をたてている”愛しい人”を見やる
???「寝顔を見てるとまだまだ少年のように可愛らしいですのに”アノ時”はまるで万夫不当の武人もかくやって感じで・・・・・・」
昨夜の事を思い出したのか頬を赤らめる。
???「麗羽様。もうすぐ出立のお時間ですが起きていらっしゃいますでしょうか?」
扉の向こうから少し小声で呼びかける声が聴こえ
麗羽「起きてますわよ、斗詩さん。猪々子さんもご一緒ですの?」
同じように小声で扉の向こうにいるであろう家臣に返事をしながら寝台から降り薄衣を身に纏う。
斗詩「はい、文ちゃんも「斗ぉ詩ぃ~姫起きてる?」声が大きいよ文ちゃん」
何時もの調子の猪々子と咄嗟に相棒を嗜める斗詩の声を聞きながら微笑んでいると
???「もう行くのか?麗羽」
寝ていたハズの”愛しい人”が後ろから声をかけてきた。
寝台の方に振り返りながら
麗羽「えぇ華琳さんとの決着をつけに行ってまいりますわ、一刀さん」
一刀「そうか、麗羽これだけは言わせてくれ」
と、寝台の上に座るような形で麗羽の方に向き直ると
麗羽(もしや”行くな”とは今更おっしゃらないでしょうけど)「なんでしょう?」
一刀「もし負けそうになっても死ぬな、名誉ある死より不名誉な生を選んでくれ」
真剣な表情で訴えかけてくる。
麗羽「何をおっしゃるのかと思えば戦う前から「麗羽、物事には絶対と言う物がない」それは”北郷軍”国主としての言葉でしょうか?」
思いもしなかった言葉に少し憤りながら冷静に問い直すと
一刀「袁本初・・・・・・いや、”麗羽”を愛している一人の男としての言葉だ」
愛していると言われて顔がニヤケそうなのを堪えながら
麗羽「そこまでおっしゃるのなら頭の端にでも覚えておきましょう、あ・く・ま・で・も頭の端ですからね我が軍が負ける前提の話なんて」
勿論、”愛してる”って言葉はど真ん中に記憶された事は言うまでもない。
斗詩「あの~麗羽様?」
忘れてませんか?と言いたげな呼びかけに
麗羽「斗詩さん、猪々子さんお入りなさいな。出立の仕度をしますわよ」
と、忘れてたわけじゃないのですわよと思いながら二人を部屋に招きいれる。
「「失礼致します(しやす)」」
と、言いながら入ってきた二人だったが、寝台にいる一刀を見るなり
猪々子「あぁ~アニキだー」
と、猪々子が寝台に腰掛けている一刀の元に駆け寄って行った。
猪々子「アニキ、アニキ~」
斗詩「文ちゃんったら」
一刀に甘える猪々子を咎めるように斗詩が声を掛けるが一向に気にしない様子で
一刀「ほらっ斗詩もおいで」
と、右手で猪々子の頭を撫でながら左手を伸ばして招いてくる。
斗詩「でも・・・・・・「斗詩さん素直になりなさい」はい、では失礼して」
主君の顔色を一瞬窺ったが逆に背中を押されるような形で一刀の元に。
斗詩「ご主人様」
と、言いながら空いていた左手側から一刀に寄り添う。
斗詩と猪々子の頭を両手で抱え込むようにして顔を寄せ合うと
一刀「いいか、必ず生き延びてくれ。麗羽は頭ではわかっていても袁家当主としての矜持が邪魔をする可能性がある。お前達二人の力で無事逃げ延びてくれ、手筈は整えてあるから」
と、二人にしか聞こえないような音量で話しかけると
猪々子「アタイに任せとけってアニキ。姫や斗詩はアタイの命に代えても「ダメだ」へっ?」
何時もの調子で返そうとしたら遮られたので怪訝そうな顔をすると、
一刀「麗羽・斗詩・猪々子の三人誰一人欠けてもダメなんだ。だから猪々子・斗詩頼んだぞ」
真剣な眼差しで見詰めながら言い聞かせる。
斗詩「ご主人様、必ず私達三人で無事逃げ延びて見せます。だから安心してお待ち下さい」
一刀の真意を読み取った斗詩がこちらも真剣な眼差しでそう返すと、
一刀「あぁ約束だぞ。そしてこれが誓いの証だ」
と、言いつつ二人の唇とそれぞれ重ねた。
一刀「戻ってきたらもっとしような」
先程とは打って変わった笑顔で二人に話しかける。、
猪々子「そんときはアニキがアタイのち○こになるんだぜ」
ニヤニヤしながらそう返すと、
斗詩「も、もう文ちゃんったらでも・・・・・・ご主人様さえよければ「斗詩~?」し、知らないっ!!」
隣で赤くなりながら拗ねる斗詩。
麗羽「それでは斗詩さん、猪々子さん行きますわよっ。一刀さんあなたもお達者でこの部屋を出た時から”袁紹本初”と”北郷一刀”の関係ですわっ」
仕度が終わりいざ出立とばかりに声をかける。
一刀「あぁ、わかってるよ”麗羽”」
その言葉を背中に聞きながら振り返らずに部屋を出て行く麗羽を追っかけて二人も出て行った。
???「姫、こっちです」
闇に紛れて動き出す三つの影その遠くでは烏巣が赤々と燃えているのが見て取れた。
???「麗羽様、烏巣が焼かれてしまっては兵糧が持ちません。ここは一旦退きましょう」
麗羽「きぃーっあのちんちくりんな華琳さんに負けるだなんてこの私のプライドが許しませんわ」
と、言葉とは裏腹に大人しく逃げの一手を打つ麗羽を見ながら
(よっぽどご主人様(アニキ)の言葉が嬉しかったんだなぁ)
と、思う二人だった。
麗羽「はぁはぁ。そ、そろそろ休憩いたしませんこと?」
流石に疲労の色が見えてきたのか苦しそうに提案すると
斗詩「麗羽様もう少しです頑張って下さい」
猪々子「アニキの話だとこの茂みを抜けた先に舟が用意してある”ガサササ”誰だっ!?」
自分達以外の物音に歩を止めると
???「いやいや袁紹様ではござらんか探しましたぞ」
と、茂みより一人の男が現れた。
斗詩「張郃さん、無事だったんですね」
現れた男が見知った顔だったことに安堵して声を掛けると
張郃「お陰様でな、顔良殿と文醜殿もご無事そうでなにより」
と、笑顔で返してきた。
猪々子「(何かがおかしい)アンタは確か曹操の本陣攻めてたんじゃなかったっけ?なんでココにいるんだ?いや、こられるんだ?」
居るはずの無い人間しかも”普通”ならココに来れない人間がココに居る。その事が猪々子の勘にひっかかった。
張郃「くっくっく、流石は文醜殿。私は曹操様に降る事にしたんですがお土産を持って行きたいと思いましてね」
猪々子「土産かぁ。名物でも持っていくのかい?」
忌々しげに軽口を叩きながら腰に佩いた得物を構える。
張郃「袁紹様の首を持っていこうと思いましてねぇ。どうです?いい手土産だと思いませんか?」
言い終わる右手を挙げると物陰から部下が現れた。
「「ハァハァっ」」
肩で息をする二人、その周りには張郃の部下の死体が散乱するがまだまだ生きて襲い掛かってくる数のが多い
斗詩・猪々子(逃げることを一番に考えてこんな刀しか持ってなかったのが裏目に出たなぁ)
何時もの得物であればこんな一個小隊を蹴散らすのもワケがないのだが逃亡の為を思って置いてきたのが裏目に出た。しかも麗羽を護りながらの戦闘である為動きが制約される。
張郃「ふ~むなかなかに粘りますな。ですがそのようななまくら刀ではこの張郃の一撃は受け切れますまい?」
今まで部下に任せて見てるだけだった張郃が自ら武器を構えて突進してきた。
ガキンッ
猪々子「くっ」
振り下ろされた一撃をなんとか刀で受け止めたが刀が耐え切れずに半分の長さを残して折れた。
張郃「くっくっくさ~てその刀では次の一撃は受け止めることは出来そうにありませんなぁ。今からでも遅くはないそこを退いて袁紹の首を差し出すのです」
大上段に武器を構え直しながら反意を促すが
猪々子「馬鹿なことを言ってんじゃねぇここを退いちまったらアニキに会わす顔がねぇんだよっ!!」
張郃「ここまで馬鹿だったとはでは死ぬがいい」
一気に武器を猪々子目掛けて振り下ろす
斗詩「文ちゃんっ!!」
麗羽「猪々子さんっ!!」
猪々子(アニキィアタイはここまでみたいだ約束守れなくてごめんな)
白刃が猪々子の体に迫った瞬間一筋の影が飛び出てきた。
カキーン
???「させないよ」
張郃「な、何奴!?」
間違いなく文醜の体を切り裂く一撃を弾かれて動揺しながら問い質す。
斗詩(やっぱり、あたなは私達のご主人様です)「ご主人様~!!」
麗羽(やはりあなたは私がこの身を奉げたお方ですわ)「一刀さん!!」
猪々子(へへっアニキかっこよすぎるぜ)「アニキーっ」
一刀「北郷一刀だよ、その三人は俺の大事な人達なんでねここで殺させるわけにはいかないのさ」
と、弾いた時に手が痺れたのはおくびにも出さず刀を構えたままそう答えた。
張郃「ほう、これはこれは袁紹の首だけでなく北郷軍国主の首まで手に入るとはな重畳この上ない」
張郃「者どもかかれぇ!!褒賞は思いのままぞ!!」
改めて号令をかけると
???「そうは問屋が卸さへんのや」
???「蛆虫共ーさっさと雑魚を蹴散らすの~グダグダしてるとお前らのタマタ○を引っこ抜いて鼻の穴に詰めるのなの~」
???「隊長に対しての狼藉はさせません」
突如現れた第三の部隊に張郃の部下が蹴散らされていく。
一刀「さぁっ、麗羽・斗詩・猪々子あっちで愛紗が待っている早く」
猪々子に肩を貸しながら待ち合わせ場所に誘導していると、
張郃「ま、待てぇ!!」
呆気にとられていたが我に返り武器を振り下ろすが
???「させないと言ったハズだっハァァァ」
右手より気弾が発射され武器の軌道を逸らす。
???「こっちはもうカタがついたでぇ」
女性のシンボルが目に入りすぎる少女がそう言うと
???「こっちも蛆虫どもがお前の部下をけちょんけちょんにしちゃったの~」
眼鏡を掛けたそばかすの似合う少女が追い討ちをかけて
???「後はお前だけだ」
全身に傷痕がある凛々しい顔立ちの少女がトドメをさした。
張郃「お、お前らは魏の李典・于禁・楽進じゃないかっ!!何故魏に降る私の邪魔をする、しかも袁紹の首や北郷の首を取る絶好の機会だったのに」
三人の正体に気づくとわなわなと震えながら激昂する。
李典「だってなぁ~ウチら」
当然のような顔をしながら
楽進「魏の将である前に」
何を言っているんだコイツは?と思いながら
于禁「北郷隊三羽烏なの」
ピースでキメた。
一刀「その通り、真桜・沙和・凪ありがとう。お陰で無事三人を保護できたよ」
無事送り届けてきたのか一刀が戻ってくると
「「「隊長・たいちょ・たいちょー」」」
と、三人が駆け寄り抱きついてきた。
目の前で広げられている光景に唖然としながらも
張郃「えぇいこうなればそなたら全員の首を「張郃殿」おお、これは夏候淵将軍ではありませんか」
今正に襲い掛からんとしようとしたところに声をかけたのは誰あろう夏候淵だった。
夏候淵「如何致しましたかな?約束の刻限が来ても此方に来られないので心配致しましたぞ」
冷静に話しかけると、
張郃「これはいいところに夏候淵将軍こやつ等は北郷隊とかワケわからない事を言って私が北郷の首を取ろうとするのを邪魔したのです」
張郃の告白を聞き夏候淵の眉間に皺がよるのを見て動揺する三人の様子に内心ほくそえんでいたが。
夏候淵「誰が?誰の首を取るというのですか?どうやって?張郃殿?」
と、質問され
張郃「この私めがこの剣でもちまして北郷の首を”シュバッ”ギャーーーーーーー」
質問に対する答えを言い終わる前に張郃は変わったものを目にした”剣を握ったまま宙を飛んでいく右手”である。尤もそれが自分のモノだと気づくのにはそんなに時間はかからなかった、痛みが教えてくれたのである。
張郃「ぐあぁぁぁぁ何を何をなさ「黙れっ!!」」
痛さでのた打ち回りたかったが身体が殺気に晒されて動かせない。
夏候淵「私達のイヤ、ワタシノカズトニムカッテヤイバヲムケタダナンテ」
”シュバッ””シュバッ””シュバッ”
夏候淵の怒りの三連射の前に張郃であったであろうモノが単なる肉塊になるのにそんなに時間はかからなかった。
一刀「秋蘭おいで」
両手を広げて招くと
秋蘭「一刀、一刀ぉ~」
泣きながら抱きついてきた。
一刀「よしよし、ありがとうね。俺の為にあんだけ怒ってくれて、そして愛してくれて」
いとおしげに髪を梳きながら宥めていると
秋蘭「だって、だって逢いたかったもっと早く逢いたかった私のせいで私を助けたせ「コラっ」”ペシっ”イタっ」
おでこを痛そうにさすってる秋蘭に向かって
一刀「俺が助けたくて愛してる人を失いたくなくてやったことなんだから誰のせいでもないのわかった?」
秋蘭「うう、でも~”ペシッ”痛い~」
一刀「ごめんごめん、”チュッ”これで痛くないよね?」
秋蘭「うん、おでこは痛くないけどココが痛い」
と、言って唇を指差す。
一刀「それは後でね。華琳いるんだろ?こっちにおいでよ」
闇に呼びかけると
華琳「全くあなたはいつも無茶するわね」
呼びかけに応じて出てきた華琳それに近づく一刀。二人の距離は縮まると抱き合った。
一刀「華琳、華琳」
華琳「かずとぉ一刀ぉ」
落ち着いた二人は石に腰掛けて
華琳「しかし、いち早くあなたと合流できる麗羽が羨ましいわ。いっそ此方が負けてあなたのとこに行けば良かった」
一刀「だから説明したじゃないか。大局に逆らわずに大きな戦いを消化していって極力歪まずに一国で統一するって」
華琳「わかってるけど、わかってるんだけどね」
一刀「今回の張郃みたいに記憶がない(出番がない)武将がどう動くかもわからないからね。俺達が合流するのはそれこそ天下分け目の戦い後じゃないかな?」
華琳「んじゃそれまで我慢できるように”んっ”」
一刀「”んっ”
そうして唇を重ねた二人。
一刀「真桜・沙和・凪」
別れ際に三羽烏に呼びかけて
「「「はいな・はいなの・はいっ」」」
一刀「今度は大陸中を警邏しような北郷隊でっ!!」
「「「了解や・了解なの・了解ですっ」」」
そうしてまた別れていく北郷隊。今度は消えませんようにと胸に思いを秘めて
-全ては君がため- 完
-あとがき-
駄文製作者のshirouです。なんかダイ・ハードで正義役だった兵隊達が実はワルとグルだったってのがわかる時にですね、トラックで移動してるシーンがあってグラナダに来てれば死なずに済んだのにみたいなセリフと共に殺されたのを思い出して、思いつきました。
北郷との記憶があれば死なずに済んだ>恋姫武将じゃないから記憶が無いって感じで以降していき今回のようなお話に。
また細々と書いていきますのでよろしくお願い致します。
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この作品は駄文遅筆作者がふとある映画の1シーンを思い出してそこから空想を広げたものです。