yukito side
セミが鳴く夏の午後。魅音を抜いた部活メンバー+詩音は学校で古道具を磨いていた。
学校の机を繋げてその上に古道具を置いてそれを一つ一つ磨いていく。
机の上にあるのは鍋ややかん、マスクや果てはコケシまである。
「な~んで俺がこんな事を。村祭りのオークションとか言ってようは古道具の叩き売りじゃね
ーか!」
ぼやくな圭一。俺だって文句の一つも言いたい。つかそんなに力込めると……あ、折れた。
「あ゛ああもう! ガラクタばっかし、こんなの売れねーって!」
「売るんですのよ! 何のためにオークションの司会に選ばれたんですの?」
まあ、オークションの司会に選ばれた圭一にとって見れば皆持ってそうな鍋とかやかんなんて
売りにくそうな物を売らなくちゃいけないプレッシャーもあるんだろうけど。
「推薦したお姉の為にも頑張って下さいね」
そう魅音に髪型以外は瓜二つな少女が言う。
この人は園咲詩音。魅音の双子の妹。本当の名前は園咲魅音というが今は置いておこう。
性格はパッと見良家のお嬢様だが人の困った表情が好きというちょっと困った性格をしている
。まあそれは沙都子や魅音、圭一に向けられているため俺には実害が無いので遠くから見てい
るとしよう。他人の不幸は蜜の味。
圭一が騒いでいると教室の扉が開き、外から魅音が入ってきた。
「調子はどう? 家具とか大きなのは神社に運んでおいてもらったから」
「まだあんのかよ?」
魅音の言葉を聞くと圭一はガックリと肩をおろしてため息をつく。
心なしか魂まで出ているような気がするが……
「はいはいそこ~落ち込まない。差し入れ持ってきたから」
そう言うと魅音は持っていた包みを持ち上げる。
包みを解いて重箱を取り出した。
重箱のふたを開けると中にはおはぎが綺麗に並べてあった。
「おはぎですわね」
「ばっちゃの手作りだよ」
と魅音が言うがどう考えてもあのおばあちゃんがおはぎを作るところを全く想像できない。
見かけによらず甘い物好きなのだろうか?
「雪人さんはい、どうぞ」
「お、サンキュ」
沙都子がおはぎを渡してくれた。
食べてみる。うん、おいしい。
「はい、圭一君」
レナも圭一におはぎを渡そうとするが圭一はおはぎを見るだけで受け取ろうとしない。
「……? どうしたの?」
レナは圭一が何もしなかったことを不思議そうにしている。
「あ、いや。レナもおはぎ作るの上手だったよな? 小さいけど、丁寧で」
レナの言葉に圭一がハッとして言った。
「レナ、おはぎなんて作ったこと無いよ?」
「え!? あ、そっか?」
圭一はレナの答えに驚いた。まるで、レナがおはぎを作ったことは絶対にあってレナがそれを忘れているとでもいう様な反応だ。
「圭一、どうしましたですか?」
レナが女の子たちの輪に戻ると、梨花が圭一に話しかけた。
「デジャブ、だっけ? 初めてなのに見たことがあるって感じ」
圭一の言葉に梨花の目が鋭くなる。
「圭一、有りもしない記憶なんてありませんです。もし、圭一が覚えているのなら、それは本当にあったことなのですよ」
「本当にあった?」
「ここでなければ別の世界で」
「あはは、梨花ちゃんがそう言うんならそうかも知れないな。夢みたいなもんだけど」
圭一は困ったような戸惑ったような表情をする。
まあ、こんな話を聞かされれば戸惑いもする。
「夢でも良いのです。話してください」
「えっと……俺が家に居て……たぶん、学校を休んだんだよ」
圭一は思い出すように話し出す。
「それで、魅音とレナがお見舞いだっておはぎを持ってくるんだ。あ、いや……やっぱり俺の妄想だよ」
「話すのです」
「圭一、俺も聞きたい」
忘れてるからここで記憶を補完しとかないと。
えっと確か綿流しのお祭りの後、圭一が大石の話を聞いてからだったな。圭一の周りがどんどんおかしくなっていって、圭一は学校を休んだ。
「二人が帰ってからおはぎを食べるんだそれで……おはぎの中に……」
そこまで言うと圭一はかぶりを振る。
「もうやめよう。ただの夢だよ。」
「圭一!」
「針が……入ってた。」
そう、圭一が食べたおはぎには針が入っていた。
こんな物を入れるなんてやっぱりあいつらは俺を殺そうとしている。そう思った圭一は生き残るために行動を開始する。
でも、実際はおはぎに針なんて入っているはずもなく、魅音が圭一に悪戯してやろうとタバスコを仕込んだんだったな。辛さは他の味覚と違って痛覚で処理される。疑心暗鬼になっている圭一には針が入っているように思えたんだろう。
「圭ちゃん……おはぎ……嫌いだった? それなら無理しなくても……」
魅音が心配そうに言ってきた。
「お姉が持ってきたから何か仕込まれてるんじゃないかって疑ってるんじゃないんですか?」
「……いや、魅音のおはぎに針なんて入ってるはずない」
タバスコは入ってることはあるけどな~
「疑う俺がおかしいんだ。あむ……うめーじゃねえか!」
圭一は紛れもない本心で言う。
「もう、変な圭ちゃん」
その言葉で空気が柔らかくなった。……俺もおはぎ食うか。え? 一人二個まで!? 圭一、一個くれ。
小さい物が磨き終わったら次は家具類だという事で今度は古手神社に皆で来ている。
皆せっせと働いている。雑巾で拭いたり叩きではたいたり……圭一、マスクぐらいしようよ。
「ん? はう! これすっごく良いな! お持ち帰りしたい~!」
うむ、今日も竜宮レナは平常運行だ。
「レナさんさっきから家具ばっかり見てますよね。一人暮らしでもするつもりですか?」
あれ? レナが一人暮らしするなんてストーリーは無かったよな?
「ううん。お父さんがやっと就職したから心機一転、家の模様替えでもしようかと思って」
「え?」
レナの言葉に空気が凍る。
レナのお父さんはレナのお母さんに離婚されたショックで気力が無くなっちゃたんだっけ?
確かレナのお母さんはデザイナーかなんかで、仕事の関係で都会に。レナのお父さんは家庭を守るために仕事をやめて主夫になったんだったよな? で、レナのお母さんは浮気してそれが元で離婚。レナの母親マジどうかしてる。
「え? ……何かな?」
レナが不思議そうに聞く。今、自分は変なこと言った? そんな言葉が聞こえてきそうだ。
「就職って、今まで仕事は?」
「茨城の頃にね。離婚のショックかな? 働こうとしなくなっちゃって。ずっと、ブラブラ」
「そうだったんですの……」
「雛見沢に来てからも相変わらずで」
レナは皆に辛い顔を見せないようにする為か笑顔で言う。それがとても痛々しい。
「おまけに変な店に入り浸っちゃって……酷い金使いにもうビックリ。お母さんから貰ったたくさんの慰謝料を知らない女の人に貢いだり……娘としては大ショックだよ」
そこまで言うとレナは顔を少し伏せる。
「おかげで変な夢ばっかり見るようになっちゃうし……」
レナは小声で言ったが皆には聞こえてしまった。
「夢? どんな夢なのですか?」
「私が……その女を殺す夢」
レナは暗い表情で言った。
レナがレナのお父さんの交際相手、間宮リナ。
そいつをレナが殺すというと罪滅ぼし編だったな。
間宮リナはレナの家にまで来ていて、レナ自身も再婚に関しては別良いと思っていたはず。
で、レナがどこかの喫茶店に入ったときに沙都子のおじ、北条鉄平と間宮リナが一緒に居て借金取りをしていたはず。その場に偶然居合わせた詩音とボディーガードの葛西さんにリナの事を聞いて鉄平とリナは愛人関係であることが分かった。
しかも、二人で美人局をしており、レナのお父さんにもそれをやろうとしていることがわかった。レナはリナを呼び出して父親と別れるように言うが逆上したリナがレナに襲い掛かってくる。レナは何とかリナを返り討ちにして殺してしまう。それが罪滅ぼしの発端。
「レナさんも?」
詩音が不思議そうに言う。
「何だよ詩音。」
「あ、何でもないです~……それにしても物騒な話ですよね」
「確かに物騒な話しだ。それに気味が悪い」
「でも、それってただの夢だろ?」
圭一が場を明るくしようと努めて明るく言う。
「そう、ただの夢。でも、すごくリアルな夢」
「レナ……」
「私……どうして良いか分かんなくなっちゃってこのままだったら本当に夢のとおりになっちゃうと思った。だからね? 魅ぃちゃんに相談したの」
とりあえず回想は割愛させていただくぜ!
「それで……お父さんと話したんだ。『しっかりしてよ!』って怒ったの。お父さん分かってくれたよ」
「良かったな? レナ」
全くだ。
「危なかったよ~お父さん、その女の人にマンション買うところだったんだから」
「もしそうなっていたら夢が本当になっていたかも知れませんわね」
その前に俺が恐怖を与えて追い払うか、壊すか殺すかしていたけどな。
「うん。魅ぃちゃんに話してよかった」
「あははっ。あたしは何もしてないよ。レナが自分で決めたんだし」
「ああ、レナが魅音に相談した。それで未来を変えたんだ」
「うん。人に相談するって大事なことだよね。私、ずっと一人で抱え込んでて……『それじゃダメだ!』ってきっと、悲惨な未来の私があの夢を見せてくれたのかもしれない」
「そうかも知れないな」
いや、きっとそうなんだろう。
夕方になって皆で帰る時間になった。
「もしかしたら、詩ぃも変な夢を見てるんじゃないですか?」
学校の出入り口を潜った時に梨花が詩音に聞いた。
「え? そんな事……」
詩音らしくないハッキリとしない返事だ。
「隠さないでほしいのです」
「別に隠してなんか……」
詩音が魅音をチラッと見る。
「馬鹿馬鹿しい話しだよ。詩音があたしや沙都子を殺すんだってさ~」
「え!?」
魅音の話を聞いて沙都子が驚く。
「詩ぃはそれを魅ぃに話したのですね?」
梨花に言われると詩音は顔を伏せる。
「みょ~に深刻な顔しちゃってさ。それで言ってやったの。詩音が人を殺す? バッカじゃないの~ってさ」
「詩音さんがそんな事する筈ありませんわ!」
沙都子がそう言うと詩音は沙都子に抱きつく。
「そうですよね?」
沙都子と詩音はさながら仲の良い姉妹のようにも見えた。
帰り道
俺は圭一と二人で歩いていた。
俺の家と圭一の家は結構近いのだ。そのおかげで父親役の藤隆は圭一の両親とも仲が良い。
…………世界が変わっても、忘れてもついてまわる前の世界の記憶……か。
俺は今日の出来事を思い出していた。
圭一もレナも詩音も惨劇を回避しようとしている。それが最善なのかは分からないけど。
「そう言えば……雪人は何か夢とか見たのか?」
圭一が思い出したように俺に聞いてくる。
「……なんで……そう思ったんだ?」
「いや、皆夢見てるだろ? 俺もレナも詩音も。だから雪人も見てるのかなって思って」
……夢……だったら良かったんだけどな……
「俺の見た夢はだな……サバイバルゲームをやっていたんだが、どんどんメンバーが増えていって最期は世界中の人間全員でサバイバルゲームをやるって夢を見た」
「何だそれ。俺たちの夢とはずいぶん違うな?」
圭一は笑いながら言った。
「大変だったぞ? 世界にあるものは何でも使ってよし。ヘリ、飛行機、篭城もあり。サバゲーだけど竹刀有りって何だよwww」
「なんだそりゃwww」
そんな話をしていると家に着いた。
「じゃあな圭一。また明日」
「おう!」
俺は圭一と別れ家に入っていった。
次回予告
ヒロインというのは物語で主人公もしくはメインキャラクターと付き合ったりするキャラクターの事なのですよ
じゃあこの世界でのヒロインはレナに魅音に詩音に……
何言ってるの。この世界のでもリリカルな世界でもヒロインは私に決まってるじゃない
え? でも付き合うって……梨花は誰と付き合うのですか? 富田ですか? 岡村ですか?
そんな物語の端に出てくるようなモブキャラなわけないでしょ!
じゃあ誰なのですか!
赤坂よ!
赤坂には奥さんがいるでしょう!?
妻が居るけどあの愛くるしい梨花ちゃんのことを考えて夜も眠れない赤坂。そのもやもやの正体が知りたくて雛見沢にきて梨花とであって赤坂は気づく!「ああ、この子が僕の運命の人だ」ってね! ぐふふっ
り、梨花が腐っちゃったのです! えーせーへー! 誰か来てくださいですー!
次回
月殺し編 其の伍
私の救世主
次回は私と赤坂の濃厚なラブシーンに!
それだけは絶対にないと作者が言ってるです
くそっなんて世界だ!
あとがき
ごきげんよう私です。
今回はちょっと短めに書きました。
さらに主人公が空気で最初からその場所にいて喋っているのですが少しだけ。
最後には出てきても嘘をつくという主人公らしからぬ行動しかできませんでした。
仕方ないね。
最後の梨花ちゃんはむちゃくちゃ腐らせてみました。
梨花ちゃん好きでこんな梨花ちゃんは認めないふざけんなって人はすみません。
まあ、次回予告だけなので勘弁してください。
こんな感じで次回もがんばります。
それでは次回も見てくださいね? バイバイ!
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交通事故によって死んでしまった主人公。しかし、それは神の弟子が起こした事故だった!?主人公はなぜか神に謝られ、たくさんの世界へ冒険する。