それは、ある晴れた日に行われた白銀学園中等部の入学式。

その学園は下は小等部から上は大学まである県屈指の私立の共学校でありその偏差値は計り知れない。

そんな過酷な受験を乗り越えた、新入生を祝うかのように満開の桜は風によって花びらを紙吹雪のごとく舞い踊らせている。

まさに、今日は入学式をやるための日と言っても多言ではない。そう、普通ならば今日は新入生にとって喜ぶべき日なのである。

ただ１人、鈴村実を除いて、

彼女は、体格は中学平均を下回るほどの小柄、中性的な顔立ちに茶色がかった肩に着かない程度に切られた髪。そんな特徴をもった少女である。しかし、彼女は今来ているのはブレザーではなく学ラン。

彼女はある事情により「男子生徒」ととしてこの入学式に臨んでしまったのである。入学を祝福するすべての事柄は、今の彼女にとってマイナスの要素でしかない。

『私は、一体どうなってしまうんだろう…』

誰も答えることの出来ない問いであると、分かっているのに投げかけてしまうのであった。