No.207718

孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝29

Seigouさん






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2011-03-23 01:11:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:21068   閲覧ユーザー数:14044

陳留の玉座

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華琳「みな、ご苦労だったわね」

 

稟「はっ」

 

風「ただいまです~」

 

零「身に余るお言葉です」

 

月「それで皆さん、一刀さんはどうなったんですか!?」

 

詠「そうよ!一刀はどうなったの!?」

 

霞「一刀のことや、そう簡単にくたばるとも思えんけど」

 

嵐「あの馬鹿者はどうなったのだ!?」

 

菖蒲「一刀様・・・・・」

 

雫「・・・・・・・・・・」

 

恋「・・・・・かずと・・・・・」

 

音々音「・・・・・早く帰って来いなのです」

 

徐栄「隊長はどうなったのですか!?」

 

張済「兄上は御無事なんですか!?」

 

董卓陣営一同は、一刀が雪蓮の代わりに矢を受けたと聞いていてもたってもいられず陳留へ飛んでいったのである

 

すでに徐州の陶謙との交渉は終わっていて、音々音と悠もすっ飛んできていた

 

凪「ご安心ください」

 

沙和「一刀さんは無事なの~」

 

真桜「ちゃんと解毒剤も渡したしな」

 

「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

一同はかなり長い安心の溜息を吐いた

 

月「よかったです」

 

詠「まったく、居ても居なくても人を心配させるんだから」

 

霞「それで一刀はどこにいるんや?」

 

雫「そうです!一刀様はどこにいるんですか!?」

 

菖蒲「お姿が見えませんが・・・・・」

 

嵐「どこにいるのだ?」

 

恋「かずと、どこ?早くかずとにかずとの剣返したい」

 

音々音「あの心配かけ野郎は何処なのですか!?」

 

徐栄「隊長はどこにいるのですか?」

 

張済「兄上はどこに?」

 

風「・・・・・お兄さんは、ここには居ません」

 

月「え?」

 

稟「一刀殿は、もう少し呉に留まるそうです」

 

詠「どうして?」

 

零「毒を解毒しきれていなくらしくて、もうしばらく時間がかかるらしいわよ」

 

霞「・・・・・そっか」

 

菖蒲「・・・・・でもよかったです」

 

雫「そうですね、話を聞いていると一刀様も近いうちに戻ってきそうですし」

 

嵐「早く戻って来い、一刀」

 

恋「・・・・・かずと・・・・・」

 

音々音「これ以上恋殿に心配をかけるなです!」

 

徐栄「隊長・・・・・・」

 

張済「兄上・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

華琳「・・・・・それで、呉との交渉はどうなったの?」

 

稟「はっ、では順を追って説明します・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稟「・・・・・・・・・・ということです」

 

華琳「そう・・・・・一刀にはまた世話になってしまったようね」

 

春蘭「まったく次から次へと」

 

秋蘭「こんどあ奴がここに来たら国を挙げて歓迎しなくてはな」

 

季衣「あの兄ちゃんにはすごくお世話になってるね」

 

流琉「今度ご飯を作ってあげたいな」

 

悠「(一体いつまで続ける気なんだ?あいつは)」

 

華琳「分かったわ、六人ともご苦労だったわね、部屋で休んでくれていいわよ」

 

風「分かりました~・・・・・」

 

稟「はっ・・・・・」

 

零「はい・・・・・」

 

凪「はっ・・・・・」

 

沙和「はいなの・・・・・」

 

真桜「はいな~・・・・・」

 

華琳「・・・・・それでは残った者で今後の許昌への都移設計画の会議を行うわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玉座の間を後にし、風、稟、零、凪、沙和、真桜は自分の部屋へと戻っていく

 

凪「・・・・・それにしても、風様」

 

風「なんですか~、凪ちゃん~」

 

凪「よろしかったのですか?あんな事言ってしまって」

 

風「・・・・・・・・・・」

 

稟「・・・・・・・・・・」

 

零「・・・・・・・・・・」

 

沙和「でも、ああ言うしかないと思うの~・・・・・」

 

真桜「せやな、本当の事言うたら、雫はんあたりは自害しそうやで・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   『俺は多分、今後二度と月達の下に戻ることは無いと思う』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風「・・・・・あんな事言えるはずが無いのです~」

 

稟「そうですよ・・・・・」

 

零「まったく・・・・・恨むわよ、北郷・・・・・」

 

凪「・・・・・・・・・・」

 

沙和「・・・・・・・・・・」

 

真桜「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呉との交渉を終えて蜀へと帰還した星と雛里

 

桃香に事の次第を報告するために玉座の間へと赴いた

 

星「桃香様、ただいま戻りました」

 

雛里「ただいまでしゅ」

 

桃香「おかえりなさい、星ちゃん、雛里ちゃん」

 

愛紗「ご苦労だった」

 

鈴々「おかえりなのだ」

 

朱里「それで星さん、雛里ちゃん、呉との交渉はどうでしたか?」

 

紫苑「そうね、気になるわ」

 

雛里「そのことなのですが、色々手順をふまえてご説明いたします」

 

星「桃香様、そして特に愛紗、落ち着いて聞くように」

 

桃香「???」

 

愛紗「???」

 

星「・・・・・実は、呉と交渉に行く時に、曹操陣営の新兵が孫策殿の暗殺を謀りまして」

 

桃香「ええ!?」

 

愛紗「なんだと!?」

 

紫苑「!!?」

 

桔梗「!!?」

 

焔耶「なに!!?」

 

白蓮「なんだと!!?」

 

鈴々「それで孫策はどうなったのだ!?」

 

星「落ち着け、孫策殿は無事だ・・・・・だが・・・・・」

 

雛里「暗殺犯が放った矢を、一刀さんが代わりに受けたんです」

 

桃香「ええええ!!?」

 

愛紗「一刀様が!!?」

 

鈴々「お兄ちゃんが!!?」

 

紫苑「・・・・・そんな」

 

桔梗「・・・・・一刀殿」

 

焔耶「・・・・・・・・・・」

 

白蓮「・・・・・一刀」

 

桃香「それなら早くお見舞いに行かなくちゃ!愛紗ちゃん準備して!」

 

愛紗「はっ!桃香様!」

 

星「落ち着けと言っている!一刀殿は御無事だ!」

 

雛里「それに一刀さんは、すでに呉を旅立っています、今行っても無駄足にしかなりません」

 

桃香「・・・・・そっか・・・・・でも、無事ならそれでいいよ」

 

愛紗「はい・・・・・よかった、一刀様」

 

雛里「魏からも使者が参りまして、一刀さんが仲介してこれを納めました」

 

焔耶「それで、呉との交渉はどうなったんだ?」

 

桃香「焔耶ちゃん!一刀さんが怪我したのにそんなのないよ!」

 

焔耶「と、桃香様!わたくしは別に!」

 

桔梗「まあまあ桃香様、焔耶は内心一刀殿のことが心配でたまらないのです」

 

焔耶「き、桔梗様!わたくしは別にあんな奴のことなど!////////」

 

桔梗「おや?ならば何故顔を赤くしているのかな?」

 

焔耶「別に赤くなってなど!/////////////」

 

さっきよりもさらに赤面してしまう焔耶

 

紫苑「桔梗、あんまり焔耶ちゃんを虐めるものではないわよ」

 

桔梗「なんだ、これからがいいところなのに」

 

焔耶「・・・・・まったく/////」

 

朱里「それで呉との交渉はどうなったのですか?」

 

星「では、こんどこそ順番に説明していきましょう」

 

雛里「では・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雛里「・・・・・・・・・・ということなんです」

 

桃香「・・・・・そっか、一刀さんにはまたお世話になっちゃったね」

 

愛紗「感謝してもし足りません」

 

鈴々「鈴々達、お兄ちゃんのお世話になりっぱなしなのだ」

 

紫苑「我が国でも塩の問題は最優先課題の一つでしたからね」

 

桔梗「呉との交渉どころか、我が国の問題まで解決してくれるとは」

 

白蓮「次にあいつがこの国に来たら最大級のもてなしをしなきゃな」

 

焔耶「・・・・・・・・・・」

 

星「そういうことだ愛紗よ、一刀殿がここまでしてくれたのだ、荊州のことはもうよかろう」

 

愛紗「分かっている、わたしも過去のことは水に流そう」

 

朱里「荊州にいた有能な武官文官の方々も、桃香様につき従ってここ成都に来てくれていましたから」

 

紫苑「それにしても、一刀さんはその後どこに行ってしまったのかしら?」

 

雛里「わたし達が最後に見たのは魏の方々と一緒にいる一刀さんの姿です」

 

桔梗「ということは、一刀殿は董卓のもとに戻るということか・・・・・」

 

焔耶「今後あいつとは敵対関係になるということも考えなければいけないということですね」

 

桃香「そんなの駄目!一刀さんとは戦えないよ!」

 

愛紗「そうだぞ焔耶!我々が一刀様から受けた恩を仇で返すつもりか!」

 

焔耶「ならばどうするというのだ!?もしあいつがここを攻めて来たら何もせずに傍観すると言うのか!?それが将のやることか!?桃香様も愛紗と同じ意見なんですか!?」

 

桃香「・・・・・それは」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

桃香も愛紗も焔耶の正論に黙り込んでしまう

 

星「・・・・・おそらくそれはないでしょう」

 

桃香「え?」

 

愛紗「星?」

 

星「一刀殿は董卓のもとには戻らないということです」

 

焔耶「どうしてそのようなことが言えるのだ?」

 

星「前にも話したと思うが、あの方はあまりにも不器用なお方だ、今更一つの国に属して力を尽くすようなことはしないでありましょうな」

 

桃香「・・・・・でも、そんなことを続けていたら」

 

星「ええ・・・・・最終的に待っているのは自滅ですな・・・・・」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

鈴々「・・・・・心配なのだ」

 

紫苑「今度一刀さんに会ったら何とか説得できないものかしら」

 

桔梗「難しいであろうな、あの方はあの方でかなり頑固なところがあるしのう」

 

白蓮「・・・・・一刀」

 

蜀一同は、一刀が自分の行動を省みてくれることを心より願っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから二ヵ月後、華琳達は許昌への都移設を完了した

 

月達一同が洛陽から長安への引越しの経験があったため、本来なら半年はかかるはずだったものが三ヶ月余りで出来てしまったのである

 

華琳「では、今後の対呉蜀の軍議を始めましょうか」

 

桂花「はっ、華琳様」

 

華琳「稟、風、零、現在の蜀と呉の国内はどういった状況かしら?」

 

稟「はっ、物見によりますと蜀と呉の治安は優良とのことです」

 

風「なんでも、お兄さんが示した策を蜀の軍師達が的確に実施しているらしいです~」

 

零「呉でも同じね、蜀と呉の国内は北郷一刀の政策によって日々良くなっているわ」

 

稟「蜀と呉の内政状況は我が国と同格と見るべきでしょう」

 

華琳「・・・・・なんだかわたし達が軍議をするたびに、かならず一度は一刀の名前が挙がってくるわね」

 

桂花「はっ・・・・・癪に障りますが、あいつの出した政策は我々がどんなに既存の知識を紐解いても思いつかないものです」

 

華琳「・・・・・ところで、一刀はまだ戻らないの?」

 

悠「そろそろ戻ってきてもいい頃合だが」

 

霞「・・・・・まさか、また旅に出とるちゃうか?」

 

月「まさか!?」

 

詠「何で今更旅を続ける必要があるのよ!」

 

嵐「もしそうなら、あの馬鹿者をぶん殴る」

 

雫「・・・・・一刀様、何処にいるのですか・・・・・」

 

恋「・・・・・かずと・・・・・」

 

音々音「恋殿をこれ以上寂しがらせるなです」

 

一同が一刀の帰還を心待ちにしている中で

 

菖蒲「あの、月様、華琳さん」

 

月「なんですか?菖蒲さん」

 

華琳「どうしたの?菖蒲」

 

菖蒲「今度の出征なんですけど、わたくしも連れて行ってくださいませんか?」

 

華琳「いきなりどうしたの?」

 

菖蒲「わたくし、なんだかじっとしていられないんです、こうしている間にも一刀様が山賊を討ち、ご自分の手を汚していると考えると堪らない自己嫌悪を感じるんです」

 

月「・・・・・・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

菖蒲「ですから少しでも早く、あの方が手を汚す必要の無い世の中を創りたいんです」

 

雫「・・・・・月様、華琳さん、わたくしも出ます」

 

詠「雫まで出るの!?」

 

雫「わたくしも菖蒲さんと気持ちは同じですから」

 

華琳「・・・・・そう、では今回の出征には秋蘭と季衣と流琉も連れて行きなさい」

 

秋蘭「華琳様!?」

 

春蘭「華琳様!親衛隊隊長の季衣と流琉が離れてしまったら誰が華琳様の御身を守るというのですか!?」

 

華琳「季衣や流琉にも今のうちに経験を積ませておきたいわ、それにその間は春蘭が守ってくれるのでしょう?そうじゃないの?」

 

春蘭「そんなこと!この夏侯元譲!華琳様の御身を守るためならばどんな苦痛にも耐えて見せましょう!」

 

華琳「ふふ♪嬉しいわよ春蘭♪後でたっぷり可愛がってあげるわね♪」

 

春蘭「ああ~、華琳様~♪」

 

あたりの空間が一気に桃色に変わっていく

 

月「へう~~~/////////」

 

詠「この百合どもめ////////」

 

霞「この空気だけは慣れへんわ」

 

嵐「まったくだ」

 

菖蒲「うううう///////」

 

雫「//////////」

 

桂花「華琳様~、わたくしも忘れないでくださいね~」

 

華琳「分かっているわよ桂花、あなたも後でちゃんと可愛がってあげるから♪」

 

桂花「ああ~~、華琳様~~♪」

 

華琳「それに、雫と菖蒲」

 

雫「はい?」

 

菖蒲「なんでしょう?」

 

華琳「わたしの誘いを何度も断っているじゃないの、そろそろ承諾してくれてもいいのではなくて♪」

 

雫「わ!わたしは、一刀様に全てを捧げています!///////」

 

菖蒲「一刀様以外なんて、絶対ありえません!//////」

 

華琳「そう、残念ね、それに雫は一刀に全てを捧げていないのではなくて?」

 

雫「これから捧げるんです!///////」

 

いつも寡黙な雫と菖蒲とは思えないほどの慌て様である

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

音々音「まったく、この陣営はいつもこれなのですか?」

 

悠「まぁこんな感じだな・・・・・ところで華琳、あたしも今度の出征には行かせてもらうぜ」

 

華琳「あら?悠は徐州から帰ってきたばかりじゃないの、いいのかしら?」

 

悠「そろそろあたしも、本格的に体を動かしたいしな」

 

嵐「それならわたしも行こう、最近兵の訓練ばかりだったからな」

 

華琳「・・・・・いいでしょう、呉との戦はしばらく控えるわ、あんなことがあった後ではこちらも攻める気にはなれないわ」

 

桂花「それでは、今後は蜀への遠征が主な任務ということでよろしいでしょうか?」

 

華琳「ええ、構わないわ」

 

月「それでは、雫さんを筆頭軍師として蜀への遠征をお願いします」

 

詠「雫、油断しちゃだめよ」

 

雫「はい、相手はあの諸葛孔明と鳳士元ですから」

 

かつての水鏡女学院の仲間と一戦交えることに若干の抵抗を感じながらも、少しだけ歓喜に踊っている自分が胸の中にいた

 

それは裏を返せば、たとえ自分の親友の屍を越えなくてはならない事になろうとも、事をなす決意の表れだった

 

そう、一刀のためならば

 

雫「(朱里、雛里、勝負です)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一ヵ月後

 

成都の玉座

 

 

 

 

 

 

兵士「報告です!」

 

愛紗「なんだ!?」

 

兵士「魏の軍勢が我が国に攻めかかってきました!筆頭軍師に徐庶!先頭に徐晃、華雄が出ています!」

 

桃香「そんな、何かの冗談だと思っていたのに・・・・・」

 

実は華琳は蜀の国に事前に宣戦布告をしていたのである

 

桃香は何かの間違いだと思い、大して重要視していなかったのである

 

朱里「(とうとう来たんだね、雫ちゃん)」

 

雛里「(いつかこうなると思っていたけど)」

 

愛紗「桃香様!そんなことを言っている場合ではありません!」

 

焔耶「そうです!攻められている以上守らなければなりません!」

 

朱里「すでに各城にて防戦の準備はできています」

 

雛里「はい、魏への防御線は幾十にも張っています」

 

この二人は華琳の宣戦布告を受けてちゃんと魏への対策を練っていたのである

 

このあたりは流石伏龍と鳳雛である

 

桃香「でもなんで!なんで曹操さんが攻めてくるの!?これからお互いに貿易をしていい関係を築けばいいのに!なんで!?」

 

朱里「桃香様、曹操さんはこの大陸を一つの国で纏めようとしているんです」

 

桃香「そんな無理やり統一したっていいことなんて無いのに!」

 

雛里「少なくとも、曹操さんはそうは思っていません」

 

桃香「・・・・・そんな」

 

???「劉備様!ここは私目におまかせを!」

 

雛里「あ、孟達さん」

 

名乗り出たのは孟達、字を子慶

 

朱里「孟達さん、お任せしてもよろしいですか?」

 

孟達「はっ!この孟子慶、必ずや魏軍の侵攻を防いで見せましょう!」

 

紫苑「それでは孟達さんだけ行かせるのは心苦しいのでわたくしも行きましょう」

 

桔梗「紫苑が行くか、ならばワシも出ようかの」

 

孟達「おお!黄忠殿と厳顔殿がご一緒とは頼もしい限りであります!」

 

桔梗「よいよい、ワシもそろそろ一暴れしたいところだったからのう」

 

そして、孟達、紫苑、桔梗は魏軍の侵攻を防ぐために急遽北へ急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蜀征を進める魏軍一同

 

 

 

その勢いは目覚ましいものだった

 

北原、糞城、上邦、上方谷と次々に落とし、その先頭を走っている徐晃公明と華雄はいつしかこう呼ばれるようになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                             不敗将軍と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成都へ向かって進軍中の一同は上方谷の麓で一泊を過ごしていた

 

 

 

 

 

 

 

秋蘭「それにしても菖蒲と嵐の活躍には舌を巻くな」

 

季衣「うんうん、僕驚いちゃったよ~」

 

流琉「菖蒲さんは、こんなにおしとやかそうに見えて、戦場では本当に一騎当千の活躍をしますね」

 

悠「最近では菖蒲と嵐のことを何て呼ばれているか知っているか!?不敗将軍だぞ不敗将軍!」

 

嵐「そんなに褒めるな////////」

 

褒められることになれていない嵐は御覧の有様である

 

菖蒲「止めてください・・・・・わたくしなんて一刀様や恋さんと比べたら大したこと無いです」

 

秋蘭「それは比べる対象がどうかと思うぞ・・・・・」

 

季衣「あれは反則だよ~・・・・・」

 

流琉「はい、正直勝てる気がしません・・・・・」

 

秋蘭「雫もよくやってくれているな、今回は十五万の大軍を率いてきているというのに」

 

雫「わたしも早く平和な世の中を作りたいという思いはありますから」

 

悠「だからさ、菖蒲も雫も胸を張っていいんだぜ♪いつもそんな暗い顔をしていたら一刀も悲しくなるぜ」

 

菖蒲「・・・・・はい」

 

雫「・・・・・そうですね」

 

悠「ほらほら~、そんな気の抜けた返事はしない、いっちょ揉んでやろうか~♪」

 

ヒュン!

 

そう言って悠は菖蒲の後ろに高速移動を敢行

 

もみもみもみもみ

 

菖蒲「ひゃああああああ!!?や、止めてください悠さん!!/////////」

 

悠「これが菖蒲の胸か♪この張りは春蘭に引けをとらないじゃないか♪」

 

菖蒲「うううううううう・・・・・いやーーーーーーーーーー!!!」

 

悲鳴と共に菖蒲は大斧、鬼斬を振り回した

 

菖蒲「きゃーーー!!きゃーーーーー!!」

 

ブンブンブンブン!!!

 

悠「よっと♪ほっと♪」

 

そんな菖蒲の大斧の連続攻撃を悠は自慢の高速移動でかわしていく

 

嵐「悠よ、からかうのはそれくらいにしておけ、でないと後で酷いぞ」

 

雫「菖蒲さん!それくらいにしてください!危ないです!」

 

菖蒲「きゃーーーーーー!!・・・・・はっ!?ご、ごめんなさい!皆さん怪我をしていませんか!?」

 

秋蘭「ああ、問題ない」

 

流琉「菖蒲さんは本当に悠さんが苦手ですね」

 

季衣「悠姉ちゃんは本当に特殊な人だからね~」

 

悠「酷い言い草だな・・・・・それにしても雫」

 

雫「(ビクッ)・・・・・な・・・・・なんですか?」

 

悠「雫もかなりいい体をしてるな~♪」

 

季衣「そういえば、雫姉ちゃんいつも厨房で牛乳飲んでいるよね」

 

流琉「ええ!?もしかして厨房の牛乳が無くなっていたのは雫さんのせいなんですか!?」

 

雫「うう・・・・・すみません」

 

悠「それでか~♪なんだか前見た時と違って胸が大きくなっていると思ったんだよ♪」

 

秋蘭「雫はそんなに牛乳が好きなのか?」

 

悠「そりゃ一刀のために飲んでるんだよな♪」

 

雫「い、言わないで下さい~////////」

 

菖蒲「・・・・・(わたくしも帰ったら飲み始めよう)」

 

悠「はっはっはっは♪・・・・・どれ雫にも一つ・・・・・・」

 

悠は手をワキワキしながら雫の間合いを計る

 

正直かなりいやらしい手付きである

 

雫「い・・・・・嫌です・・・・・わたくしの体は・・・・・一刀様のものです」

 

雫は超絶怪しいオーラを身に纏った悠から後ずさるが

 

悠「そんな事言われると余計触りたくなるね~~~・・・・・それっ!」

 

ヒュン!

 

あっという間に背後に回りこまれてしまう

 

軍師と武将の身体能力の差を考えれば当然のことである

 

もみもみもみもみもみ

 

雫「いやーーーーーーー!!助けてください一刀様ーーーーー!!//////////」

 

悠「そんな嫌がること無いだろ♪」

 

もみもみもみもみ

 

雫「一刀様ーーーーーーー!!/////////////」

 

菖蒲「・・・・・こんなことがこの遠征中にずっと続くんですか?」

 

嵐「正直堪らんぞ・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・まぁ、早く慣れることだ」

 

菖蒲「慣れたくありませんよ~」

 

嵐「冗談ではない」

 

秋蘭「ふふふふ・・・・・お、どうやら食料が切れてしまったようだな、季衣、流琉、ちょっとそこら辺に狩にいくぞ」

 

流琉「え?狩にですか?」

 

季衣「食料ならたくさんあるじゃないですか~」

 

秋蘭「これからも行軍は続くんだぞ、食料はなるべく確保しておかねば」

 

季衣「あ、そっか~」

 

流琉「では手伝いますね」

 

秋蘭「うむ・・・・・悠よ、あまりやりすぎるなよ」

 

悠「おう♪分かってるよ♪」

 

もみもみもみもみ

 

雫「一刀様ーーーーーーー!!/////////////」

 

「・・・・・・・・・・」

 

雫の叫びは空しく辺りに響いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして秋蘭と季衣と流琉は獲物を探しに森まで来た

 

秋蘭「さてと、どこをどう探すか」

 

季衣「・・・・・・・・・(くんくんくん)」

 

流琉「季衣、どうしたの?」

 

季衣「なんだかいい匂いがするよ♪」

 

流琉「え?・・・・・(くんくん)・・・・・あ、本当だ」

 

秋蘭「これは、美味そうな匂いだな」

 

季衣「(くんくん)・・・・・こっちですよ♪」

 

流琉「あ!もう季衣ったら!」

 

秋蘭「ふふ・・・・・こういった時の季衣は頼りになるな」

 

二人は季衣の後を付いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチパチパチ

 

森の中をしばらく行くと、小川の岸辺で鍋を煮て、外套をかぶった者の後姿があった

 

小川の向こうには見事な巨体をした白馬がいた

 

季衣「(はぁ~~~~、いい匂いだね♪)」

 

流琉「(これは・・・・・熊鍋ですね)」

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」

 

秋蘭と季衣と流琉は草叢からその者を見つめていた

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」(スック)

 

季衣「(あ、秋蘭様?)」

 

流琉「(秋蘭様?)」

 

突然秋蘭が立ち上がり何の迷いも無くその者に近づいていった

 

そして

 

キリキリ

 

季衣「(え!?)」

 

流琉「(秋蘭様!?)」

 

秋蘭は自身の愛弓餓狼爪を引き絞りながら近づく

 

とうとうその者との距離は手が届くまでになり

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

ドンドン殺気を濃くする秋蘭

 

今にもその者を後ろから射殺しそうな勢いである

 

季衣「(うううう~~、戦場でもあんな秋蘭様めったに見れないよ~~)」

 

流琉「(いったいどうしちゃったですか?秋蘭様)」

 

普段の秋蘭らしくない行動に二人はかなり戸惑っていた

 

しかし、これほどの殺気を放たれているのにも拘らず、その者はぴくりとも動かない

 

まるで、いつでも殺してくれていいと言わんばかりである

 

秋蘭「・・・・・ふっ・・・・・しばらく見ない間に腑抜けたか?北郷よ」

 

季衣「え!?」

 

流琉「ええ!?」

 

一刀「ああ・・・・・誰かと思ったら、夏侯淵さんか」

 

秋蘭「ん?わたしは名乗ったことは無いと思うが?」

 

一刀「前に戦場や洛陽で見た時、華琳の脇をしっかり固めていたから、もしかしてって思ったんだよ」

 

秋蘭「なるほど、よく見ているな・・・・・季衣、流琉、二人ともこっちに来い」

 

餓狼爪を降ろし秋蘭は草叢に隠れている季衣と流琉を読んだ

 

季衣「あ、はい」

 

流琉「はい」

 

一刀「君達は?」

 

季衣「僕は許緒って言うんだ、よろしくね兄ちゃん」

 

流琉「わたしは典韋と申します、兄様」

 

一刀「(この子達があの曹操孟徳親衛隊隊長に悪来典韋だって!!?)」

 

なんでこんなに小さい子達がそんな重要な役職に就けるのか疑問に思うだろうが、今までのことがあるために投げ出し気味に納得するしかない一刀であった

 

一刀「そうか、もう分かっているだろうけど、北郷一刀だ、許緒ちゃん、典韋ちゃん」

 

季衣「兄ちゃんのことは月様達から聞いているよ、僕のことは季衣って呼んで、兄ちゃん♪」

 

流琉「はい、わたしのことも流琉とお呼び下さい、わたしは兄様とお呼びします」

 

一刀「分かったよ、季衣、流琉」

 

季衣「それにしても、それ美味しそうだね~♪」

 

一刀「よかったら食べていいよ」

 

季衣「本当!?ありがと、兄ちゃん♪」

 

流琉「では、失礼します」

 

一刀「夏侯淵さんもどうですか?」

 

秋蘭「うむ、では御相伴に預かろうか」

 

季衣「いっただっきま~す♪(ガツガツガツガツ)」

 

流琉「もう、季衣ったら、汚いよ」

 

一刀「いいよいいよ、熊はまだあるから」

 

流琉「・・・・・はい」

 

そうして流琉と秋蘭も熊鍋を食べ始めた

 

季衣「美味しい~~~♪」

 

秋蘭「うむ、なかなか美味だな」

 

流琉「はい、熊はなかなか調理が難しいはずなのに、よく味が出ています」

 

一刀「この鍋には香草を入れて熊の悪臭を消しているんだ」

 

流琉「・・・・・やっぱり兄様は、料理が上手なんですね」

 

一刀「?・・・・・というと?」

 

流琉「前に雫さんから聞いたんですよ、兄様とはよく一緒に料理をしていたって」

 

一刀「そっか、雫は元気か?」

 

流琉「はい、今我々は蜀へ遠征に来ているのですが、この遠征軍の筆頭軍師として来ています」

 

季衣「雫姉ちゃんだけじゃないよ、菖蒲姉ちゃんと嵐姉ちゃんも来ているよ」

 

一刀「・・・・・そうか」

 

秋蘭「・・・・・北郷よ、どうして月達のもとに戻らないんだ?いい加減旅をするのも疲れたろう、それに・・・・・前に見た時よりやつれていないか?」

 

一刀「そんなことはありませんよ、ちゃんと食事はとっています」

 

秋蘭「・・・・・まぁ今はそんなことはどうでもいいか・・・・・とにかく、すぐ近くに雫と菖蒲と嵐がいる、会ってやるといい」

 

一刀「・・・・・すまないけど、それはできない」

 

季衣「兄ちゃん?」

 

流琉「兄様?」

 

一刀「俺は今更、みんなに会うことはできない」

 

季衣「ええ!!?」

 

流琉「ど、どうしてなんですか!!?」

 

一刀「あの連合軍との戦いで、俺はあまりにも多くの人を殺してしまったから・・・・・」

 

流琉「それは兄様だけの責任ではないはずです!」

 

季衣「そうだよ!兄ちゃん達を攻めちゃったのは僕達なんだし!」

 

一刀「それでも、俺が前居た所では、俺のやったことは許されざる大罪でしかないんだ・・・・・」

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・北郷、さっきわたしが弓を引き絞った時、何故何のそぶりも見せなかったのだ?わたしの予想が正しければ、さっきわたしはお前のことを簡単に殺せたと思うが?」

 

一刀「・・・・・殺してくれてもよかったよ」

 

季衣「兄ちゃん!?」

 

流琉「兄様!?」

 

秋蘭「・・・・・どうやら本当に腑抜けたようだな、なぜこんなやつに姉者が真名を預けたのかまったく理解できん!」

 

流琉「秋蘭様!待って下さい!」

 

季衣「そうだよ!秋蘭様も知っているでしょう!兄ちゃんは凄く強いってこと!」

 

一刀「季衣、それは違う、俺はもともとてんで強くない弱い人間なんだ」

 

季衣「・・・・・兄ちゃん」

 

秋蘭「・・・・・こんな奴と話していても時間の無駄だな・・・・・季衣!流琉!行くぞ!」

 

季衣「あ!待って下さいよ秋蘭様!」

 

流琉「兄様!熊鍋ありがとうございました!」

 

一刀「いいよ、それより流琉達は狩に来たんだろう、だったらこれを持っていってくれていいよ」

 

一刀は仕留めた熊を差し出した

 

季衣「でも、それだと兄ちゃんのが」

 

一刀「どうせ一人じゃ食べきれないし、持ち歩けないよ、ちゃんと全部食べないともったいないじゃないか」

 

流琉「・・・・・分かりました、大事に預かります」

 

一刀「それと、俺に会ったことはみんなには内緒にしてくれ」

 

季衣「え?」

 

流琉「そんな」

 

一刀「俺がすぐそこにいると分かったらみんなは戦に集中することができなくなる、それこそ死ににいくようなものだよ」

 

季衣「・・・・・うん、分かったよ」

 

流琉「・・・・・はい」

 

秋蘭「二人とも何をしている!行くぞ!」

 

季衣「あ、はい!秋蘭様!」

 

流琉「はい!・・・・・では兄様」

 

一刀「ああ、みんなをよろしくな、季衣、流琉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝

 

 

 

 

 

 

雫「それではこの先にある武都の攻略に入ります、そこを超えれば定軍山は目と鼻の先です、定軍山を押さえてしまえば今後の展開がかなり楽になり、後方からの援助が受けやすくなります」

 

秋蘭「雫よ、物見の報告によれば武都にはつい最近黄忠と厳顔が入ったようだぞ」

 

雫「・・・・・思ったよりも早いですね、あわよくば定軍山まで蜀の武将とは当たりたくは無かったのですが」

 

嵐「何を言う!どの城もあっけなく落ちてしまって肩すかしを喰らっていたところだ!そろそろ骨のある奴とやれると思うと腕が鳴るぞ!」

 

悠「まったくだ、黄忠と厳顔といえば蜀の大将軍だからな、久々に暴れ甲斐がありそうだぜ♪」

 

菖蒲「はぁ・・・・・なんだか一刀様が居なくなってから、嵐さんは前と同じようになっているんじゃないでしょうか?」

 

秋蘭「あの猪武者と言われていた頃の嵐か?」

 

雫「・・・・・菖蒲さん、嵐さんの補助をお願いできますか?」

 

菖蒲「はい、任せて下さい」

 

雫「では、武都へ向けて進軍して下さい」

 

そして一同は武都へ向けて進軍する

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

季衣と流琉は昨日の一刀が気になって仕方がなかった

 

季衣「・・・・・ねぇ、流琉」

 

流琉「何、季衣」

 

季衣「姉ちゃん達に言わなくていいのかなぁ」

 

流琉「・・・・・今更言ったってしょうがないと思うよ」

 

季衣「・・・・・そうだよね」

 

二人は憂鬱そうに秋蘭の後をついていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって武都の城壁

 

 

 

 

 

 

桔梗「・・・・・来おったな」

 

紫苑「旗印は・・・・・漆黒の華一文字、白銀の徐旗・・・・・間違いないようね」

 

孟達「後ろには虎模様の張旗に夏侯に許に典・・・・・情報通りですな」

 

桔梗「では、作戦通りにいこうかの」

 

紫苑「ええ、では孟達さん、お願いします」

 

孟達「心得た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の一刀は

 

一刀「はぁ・・・・・結局見に来てしまったか」

 

やはり雫達が心配で戦の様子を見に来てしまっていた

 

一刀「先頭には・・・・・菖蒲と・・・・・嵐か・・・・・」

 

森の中から見えたのは漆黒の華一文字と白銀の徐旗

 

一刀「・・・・・さて・・・・・武都の方は・・・・・」

 

今度は武都の城壁に目をやると

 

一刀「・・・・・っ!!?まさか!!・・・・・菖蒲!!!」

 

城壁の上に翻る孟の旗を見ると、一刀は狛煉を降り駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孟達「魏の将華雄よ!貴様は一騎打ちもろくにできない臆病者か!数にものをいわせて城を攻めることしかできない無能者か!たかだか数回勝ったからといって不敗将軍となったつもりか!悔しければこの孟達と戦って見せよ!」

 

嵐「何だと貴様ーーーーーー!!!いいだろう!!そこを動くな!!今こちらから行ってやる!!!」

 

季衣「あ~~~~~、嵐姉ちゃん簡単に敵の挑発に乗っているよ」

 

流琉「あんなのみえみえの挑発ですよね、秋蘭様」

 

秋蘭「むぅ・・・・・」

 

悠「汜水関でのあいつの姿は幻だったんじゃないのか?」

 

雫「・・・・・仕方ありません、菖蒲さん、嵐さんの補佐をお願いします」

 

菖蒲「分かりました」

 

秋蘭「・・・・・わたしも援護に向かおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孟達「よし、かかったな」

 

桔梗「どうやら華雄は噂通りのやつらしいのう」

 

紫苑「そのようね、こっちもやり易くなるわ」

 

城壁の前には嵐が単騎で突撃してきてその後を菖蒲とその部隊が追ってきている光景があった

 

孟達「では、迎撃部隊を出して奴らの体力を減らしてやりましょう」

 

桔梗「・・・・・いささか不本意ではあるが、これも戦だしの」

 

紫苑「贅沢は言っていられないわよ、わたし達は迎撃部隊の援護に回るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紫苑達は城から迎撃部隊を出して城壁に張り付くのを防ごうとする

 

しかし、流石魏にその人ありと謳われた武将達

 

嵐「でやーーーーーーーーーーー!!!」

 

菖蒲「はあああああああ!!!」

 

悠「どらーーーーーーーーーーー!!!」

 

秋蘭「はぁっ!!」

 

季衣「でりゃーーーーーーーー!!!」

 

流琉「はぁーーーーーーーーー!!!」

 

迎撃に出た部隊は悉く切り倒され、どんどんこちらへ迫ってくる

 

紫苑「・・・・・流石ね」

 

桔梗「まったくだ、一度は乱れたのに瞬く間に体制を整えよった」

 

孟達「どうやら、もう一押し必要ですかの・・・・・そらそら!!どうした華雄!!そんなことで不敗将軍を名乗るつもりか!!さっきからワシはここで待っているというのに!!そろそろ退屈になってきたぞ!!」

 

嵐「おのれ言わせておけばーーーーーーーーーー!!!」

 

菖蒲「嵐さん!駄目です!」

 

菖蒲はなんとか嵐を冷静にさせようと宥める

 

しかし

 

孟達「(どうやら、あの者が邪魔な様だな)」

 

孟達は菖蒲に向けて弓を引き絞った

 

嵐「ええい!そこをどけ菖蒲!」

 

ドンッ!

 

菖蒲「きゃあっ!?」

 

嵐が菖蒲を押しのけ菖蒲の体制が崩れてしまう

 

孟達「(捕った!)」

 

ヒュバッ!!

 

嵐「っ!?菖蒲!!」

 

季衣「菖蒲姉ちゃん!!?」

 

流琉「菖蒲さん!!?」

 

秋蘭「菖蒲!?」

 

悠「おい!!」

 

菖蒲「え?」

 

嵐も季衣も流琉も秋蘭も悠も、そして菖蒲自身もこの矢は間違いなく自分に当たると一瞬で分かった

 

菖蒲「(嘘・・・・・これで終わりなのですか?)」

 

矢の軌道からして、この矢は自分の頭を直撃するだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菖蒲「(・・・・・一刀様・・・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菖蒲「・・・・・・・・・・え?」

 

目の前に迫る死の恐怖に耐え切れずに目を瞑ってしまった菖蒲

 

目の前で発生した金属音に疑問を感じ、もう一度目をあけるとそこには

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

菖蒲「・・・・・一刀・・・・・様・・・・・・」

 

灰色の外套を纏った綺麗な長い髪を後ろで縛り、忠久を抜いた愛しき男性の後姿があった

 

一刀「(まったく、徐晃が孟達に殺されるのは襄陽城のはずだろ、なんでこんな山奥で菖蒲が死ななきゃならないんだよ)」

 

またまた正史とは違うこの世界の流れに一刀はうんざりしていた

 

菖蒲「一刀様!!」

 

ガバッ!

 

菖蒲は鬼斬を投げ捨て後ろから一刀に抱きついた

 

菖蒲「うあああああああああああん!!一刀様~~~~~~!!!」

 

戦の最中だというのに菖蒲は盛大に泣き出してしまった

 

一刀「・・・・・ごめんな、菖蒲」

 

菖蒲「ぐすっ・・・・・いいんです・・・・・一刀様の姿が見れただけでも・・・・・ひっく・・・・・わたくしは・・・・・」

 

嵐「・・・・・一刀」

 

一刀「・・・・・すまなかったな、嵐」

 

嵐「気にするな」

 

一刀「落ち着いたか?」

 

嵐「ああ、どうやらわたしは自分を見失っていたようだ、相手の挑発にのった挙句、菖蒲の命を危険に晒してしまうとは・・・・・我ながら恥ずかしい」

 

季衣「・・・・・よかったね、嵐姉ちゃん、菖蒲姉ちゃん」

 

流琉「ぐすっ・・・・・よかったです」

 

悠「まったく、遅い帰りだぜ、一刀」

 

秋蘭「・・・・・まったくだ」

 

蜀兵士1「あのお方は・・・・・」

 

蜀兵士2「・・・・・そんな」

 

蜀兵士3「北郷一刀殿・・・・・」

 

迎撃に出ていた蜀の兵の中には汜水関、虎牢関、南蛮平定で一刀を見たことがある人達が殆どであったためにその戸惑い様は隠せなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孟達「くそっ!あと少しだったというのに!孟達隊!やつらに矢の雨を降らせてやれ!」

 

紫苑「孟達さん!?」

 

桔梗「孟達!一刀殿に矢を向けるようなことは許さんぞ!」

 

孟達「ならばどうするというのですか!?今は戦!そんなことをしている余裕は我々には無いはずであろう!」

 

紫苑「それは・・・・・」

 

桔梗「・・・・・・・・・・」

 

孟達「孟達隊!放てーーーーーーーー!!!」

 

シュバババババババババババババババババ!!!

 

武都の城壁から物凄い量の矢が放たれる

 

嵐「何!!?」

 

菖蒲「え!?」

 

季衣「わわっ!?」

 

流琉「きゃあっ!?」

 

悠「これからがいい時だってのに!!」

 

秋蘭「くそっ!!」

 

全員が矢を迎撃するための態勢を取ろうとするが、その前に一刀が動いていた

 

一刀「はあっ!!」

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

一刀は忠久を回転させ氣の膜を広範囲に張り全員を矢から守る

 

一刀「みんな!ここは退いてくれ!」

 

季衣「う、うん分かったよ兄ちゃん!」

 

流琉「絶対に生きていてくださいね!」

 

悠「また後でな、一刀!」

 

嵐「菖蒲!我々も退くぞ!」

 

菖蒲「嫌です!!もう二度と一刀様を失いたくありません!!」

 

一刀「菖蒲!!!」

 

菖蒲「(ビクッ)・・・・・一刀様・・・・・」

 

一刀「・・・・・すまない・・・・・でも、これ以上俺を困らせないでくれ・・・・・」

 

菖蒲「・・・・・絶対、後で会いましょうね・・・・・・」

 

一刀「ああ、嵐、菖蒲を頼む」

 

嵐「分かった」

 

嵐は菖蒲と共に後退していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「(・・・・・本当にごめんな・・・・・みんな・・・・・)」

 

秋蘭「北郷!」

 

一刀「っ!?なんだ!?」

 

秋蘭「わたしの真名は秋蘭だ、この名をお前に預けよう!」

 

一刀「いいのか!?俺は御覧の通りの腑抜け野郎だぞ!」

 

秋蘭「今もこうして矢から守ってくれている奴の言う台詞ではないぞ!」

 

一刀「・・・・・分かったよ、秋蘭!」

 

秋蘭「うむ!」

 

そして秋蘭も戦場を離脱して全部隊が武都から撤退していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

孟達「おのれ!よくも邪魔してくれたな!孟達隊!あの者に一斉射撃だ!!」

 

紫苑「あなたという人は・・・・・」

 

桔梗「いい加減にせんか!!!」

 

ドガッ!!!

 

孟達「ごはぁっ!!??」

 

桔梗の強烈な当身により孟達は気を失った

 

城壁から矢が放たれなくなり一刀は城壁の上の紫苑と桔梗を見上げた

 

一刀「・・・・・・・・・・」(ペコッ)

 

紫苑「・・・・・・・・・・」

 

桔梗「・・・・・・・・・・」

 

そして、最後に二人に一礼して去っていった

 

紫苑「あの方は本当に誰からも好かれるみたいね・・・・・」

 

桔梗「まったく、罪作りなお方よのう・・・・・」

 

紫苑「・・・・・まったくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫「ええ!!?一刀様が!一刀様が来ていたのですか!!?」

 

菖蒲「はい、わたくし達を敵の矢から守ってくれました」

 

雫「それで一刀様はどちらに!?」

 

季衣「・・・・・それが」

 

流琉「またどこかに消えてしまいました」

 

菖蒲「ええ!?」

 

嵐「・・・・・あの馬鹿者が」

 

雫「そんな・・・・・そんな・・・・・」

 

そしてその後一刀は、結局雫達のところへは戻らなかった

 

雫はあたりに捜索隊を出すが一刀の行方どころか手がかりさえ掴めなかったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嵐「一刀!!!いい加減帰って来い!!!」

 

菖蒲「一刀様!!どうか!どうか今一度お姿を見せてください!!」

 

雫「一刀様!!一刀様!!・・・・・・うあああああああああああ!!」

 

雫は一刀を思うあまりその場で泣き崩れてしまった

 

悠「一刀、本当に罪作りな奴だよ、お前は・・・・・」

 

秋蘭「女をここまで泣かせるなど・・・・・お前というやつは・・・・・」

 

季衣「雫姉ちゃん、凄くかわいそう・・・・・」

 

流琉「兄様・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、魏軍の勢いは完全に失われ、今まで落とした城も悉く奪い返された

 

雫達は失意のうちに帰途につき、ここに第一次蜀遠征は終了したのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもseigouです

 

悲しいニュースが飛び交っていると言うのに、悲しい文章しか書けない自分が悲しいです

 

次回は楽しい文章が書けるように頑張りたいと思います


 
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