※注意※
この作品には以下の点が含まれる可能性があります。
・作者の力量不足によるキャラ崩壊(性格・口調など)の可能性
・原作本編からの世界観・世界設定乖離の可能性
・本編に登場しないオリジナルキャラ登場の可能性
・本編登場キャラの強化or弱体化の可能性
・ストーリー中におけるリアリティ追求放棄の可能性(御都合主義の可能性)
・ストーリーより派生のバッドエンド掲載(確定、掲載時は注意書きあり)
これらの点が許せない、と言う方は引き返す事をお勧め致します。
もし許せると言う方は……どうぞこの外史を見届けて下さいませ。
プロローグ2
広い剣道場の内部に夕日が差し込み、周囲を赤く照らし出している。
既に部員達はその日の部活動を終え家路についており、姿はない。
そんな中、一人の少年が竹刀を構え、足運びや素振りを幾度も繰り返している。
その動きは剣道に見られる動きとは異なり、初撃に全てを込めるかの様な気迫があった。
少年の名は北郷一刀、ここ聖フランチェスカ学園に通う高校2年生の男子生徒である。
剣道部に所属している彼は先輩であり剣道部部長である不動如耶、および顧問の龍禅寺に頼み込み、
部活終了後の自主鍛錬を鍛錬終了後の掃除・整理と引き替えに許可されていた。
何故自主鍛錬を希望したのか、それは彼の実家に理由が存在する。
彼の実家は鹿児島にあり、祖父が道場を開いていた関係で彼もその技を叩き込まれた。
祖父に叩き込まれた剣術は一子相伝の流派だ、等という大層な肩書きや由来こそ無かったが剣道とは一味違っていた。
実戦を想定した剣の理念や鍛錬は、今もこうして修行を欠かさぬ程に彼の中で大きな、また重要な物となっている。
「ふぅ……今日はこれで終いにするか」
鍛錬でかいた汗を拭い、手早く剣道場を掃除していく一刀。淀みのない動作はその作業に慣れている証拠、
彼がどれだけ自主鍛錬とその対価である掃除を続けてきているかを物語っている。
やがて掃除を終えた彼は手早く制服に着替えると、剣道場の中心へ深く一礼しその場を後にした。
すっかりと日も暮れ辺りが暗闇に包まれ規則的に並ぶ電灯の明かりが点る帰り道。
寮へと戻る道すがら、彼は友人の及川に博物館へ行かないかと誘われた事を思い出していた。
(確か、歴史関係の出展だったか……楽しみではあるけど、折角の週末に男二人というのもなあ。
『モテモテの早坂は放って置いて寂しい男二人で友情を分かち合おうやないか!』とか……あいつらしいけどさ)
剣術を叩き込まれる傍ら祖父の蔵書であった軍記物・歴史物にも目を通していた結果、
戦国時代の話や三国志などに強い興味を抱き、歴史好きと呼べる位に知識も増えた。
そんな事を及川と話したのは、確か先月の小テストの後だっただろうか。
(あの時は良い反応してたなぁ、あいつ。日本史の点数に自信満々で話しかけて来たのに、
『何で他の教科はワイと同じくらいやのに歴史と漢文だけ大差やねん!?』とか転げ回ってたっけな。
それがきっかけで歴史趣味の事を聞き出されたんだっけ。あいつ聞き上手だし話すのが楽しいんだよな)
多少大げさに脚色された光景を回想しつつ、彼は手帳を開き週末に予定がない事を確認する。
これなら一緒に行っても良いだろう、寮に戻ったら早速そう伝えようと決め、足取りも軽く寮へ向かって行った。
そして週末、博物館の前には彼を含めて5人の人影があった。予定では2人だった筈だよな?と首を傾げる。
男子3名に女子2名という組み合わせであり……どう見ても、自分以外の男女はカップルの様だ。
カップルその1は剣道部の不動先輩と、同じ学年の早坂章仁という男子生徒。
早坂とはクラスこそ違うが不動先輩を通して知り合った事もあり、また剣道経験者だったと言う事や
男子寮で部屋が近い事もあり、数少ない男子生徒の中でも比較的仲の良い相手だ。
二人は楽しそうに博物館の中へと入っていく。畜生羨ましくなんて……いや、そりゃあ羨ましいけどさ。
それはさておいて、もう一組は……。
「なあ、及川?この前誘ってきた時にお前はなんて言ってたっけ?寂しい男二人で友情を深めるって言ったよな?
……そのお前が何で幸せ一杯にカップルのオーラ撒き散らしてんだあっ!」
そう、及川の奴がクラスメートの女子生徒と手を繋ぎ、私は勝ち組ですと言わんばかりの笑みを浮かべているのだ。
これが叫ばずにいられようか?何故、何故だ!?
「ワイも最初はそのつもりだったんやけどな、事情が変わったんや……と言う訳ですまんが一人で見て回ってくれ!
ワイには出来たばかりの彼女を楽しませてやるっちゅー崇高な使命があるんやっ!!さらばかずピー!」
おい、と言いかけて手を伸ばした時には既に女子生徒の手を引いて博物館へと駆け込んでいった及川。
くそ、逃げられた……月夜ばかりと思うなよ?
「はぁ、こうしていても始まらないか……まあいいさ。一人でのんびり見て回るとするか」
溜息を一つ吐くと気持ちを切り替え、博物館の中へと入る事にした。
現在展示されているのは中国の歴史コーナーをメインとした品物の数々。
色々な時代の物が飾られているが中でも目を引くのは三国時代の品物や出土品だった。
錆付きながらも立派な意匠が施されているのが見て取れる武具や刀剣類、素朴に焼かれた壺や瓶などの日用品。
今なお輝きを失わない装飾品などを見ていると、その時代に思いを馳せる事が出来る気がする。
やはり、来て良かったなと満足感を覚えながら、彼は次の展示室へと向かった。
――――――それが全ての始まりの合図であったと、この時の彼は知らず。
次の展示室に飾られていたのは、曰く付きの品物という触れ込みの物だった。
と言ってもその殆どはただの道具であり呪いの掛かったと言われる品物や何人もの血を吸った危険物ではない。
所謂オーパーツ……『本来その場所から出土する筈の無い品物』がメインとなっていた。
クロムでメッキされたと説明される棒やアルミニウムの帯など、展示品はあり得ない物ばかり。
別の一角には竜のウロコという、竜退治の逸話と説明文が添えられた巨大なウロコが飾られ、
またある一角には黄巾党所縁の品として何故かアイドルが着ている様な衣装の一部が飾られている。
彼の先程までのロマンに溢れた気分はどこかに消え去り、代わりに笑い出したくなる衝動に駆られてきた。
「酷いな、でもこれはこれで面白いし、土産話に丁度良いかな?お、こっちは武器の類か……うわ、また凄いな」
その一角に立ち並んでいたのは錆付いたり欠けたりしながらも、存在を主張する幾多の武器。
説明によれば三国時代の武将達が振るっていた品物だ、という事であったが……。
(剣や槍、戟はまだ分かるけどアレってどう見てもヨーヨーだよな?流星錘じゃないよな?あっちは……鉄球?
おいおい、この馬鹿でかいのは何だ?剣?弩?おまけに猫の手?まで……え?この人形も武器?)
心の中でひたすらに突っ込みを入れる、それほどまでに常識から外れた種類の武具がそこには並んでいた。
いずれも(実際に使われていたのであれば)素晴らしい武器だったのだろうな、と呟き彼は最後の一角へ向かう。
そこにあったのは壁一面に飾られた、無数の銅鏡だった。
欠けた物もあれば完全な形の物もあり、錆びた物もあれば磨き上げたばかりの様な物もある。
その全てに共通するのは、見ているだけで引き込まれそうな感覚を覚えると言う事。
そして全ての鏡が、ほんの一瞬だけ光り輝いた様な気がした事。
その感覚に首を捻りつつも、彼は博物館を後にした。
出口で合流した友人達と笑い、ふざけあい、軽口を叩きながら彼らは家路につく。
帰ったらまずは及川から恋人らしい女子の事を強制的にでも聞き出してやろう、そう心に決めて。
誰も居なくなった博物館で、無数の銅鏡の一つが大きく光を放った事など知らぬまま。
プロローグ2は此処まで、次回のプロローグ3をもって本編に入らせて頂きます。
次回の予定は本編開始前のヒロイン役のあれこれ。
しばらくはこの様に地味な話が続くかも知れませんが、ご了承下さい。
それでは、またいずれ。
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こんにちは、進みは遅いながらも完結まで筆を投げる事はするまいと思っております。今回はプロローグその2、主人公たる少年のお話。まだ物語が始まる前のお話です。
どうぞ暖かく、時に厳しく見守って下さい。