No.205595

新・外史伝『希望』編 第17話『白帝剣』

皆さま、ご無沙汰いたしております。
あの一件以降、ふさぎこみがちでしたが、皆さまの心温まる応援のおかげで、少しは立ち直ることができたのではないかと思います。心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

2011-03-07 23:56:40 投稿 / 全30ページ    総閲覧数:3069   閲覧ユーザー数:2535

 

 

新・外史伝『希望』編 第17話『白帝剣』

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀は左慈を連れて洛陽に侵入していた

 

目的は董卓の救出

 

先ほど、葛玄の部下から袁紹が反董卓連合を呼びかけ始めたという報告を聞かされた

 

早くなんとかせねばならない。

 

もはや、一刻の猶予もないのだ。

 

 

 

 

 

洛陽は近々戦争が起こるかもしれないなんて嘘のような雰囲気だった

 

人々の顔は笑顔であふれ、兵士たちが子供達とじゃれている

 

今帝都は、華やかと言っていいにぎわいを見せている

 

「ここが、洛陽か…?

 

良い町だ…。にぎわっているなぁ。」

 

「観光に来たわけではないのだぞ、北郷。

 

何かおかしいとは思わんのか。

 

張譲に支配されているにもかかわらず、この賑いようだ」

 

左慈は真剣な目で状況を分析しはじめる

 

「連合軍の決起を呼び起こす為、袁紹が各地に手紙を送っている。

 

これは、間違いなく張譲の手によるもの。

 

しかし、いまだに町は董卓軍による善政が敷かれている。」

 

「あぁ。」

 

「おそらく、町の者達…いや、この洛陽の者達皆が張譲の復活を知らない。

 

つまり、何が起きてもその責任者は…董卓。

 

これは…張譲が全ての責任を董卓たちに押し付けるための罠だ。」

 

「『否定派』が関与している可能性は?」

 

「…大だ。

 

おかしいとは思わんか?北郷。

 

この町の人々は、一向に城門から出ようとはしない。」

 

「何かの術か!?」

 

コクリっと頷く左慈

 

「あぁ…。恐らくこれは、人の精神の奥深く…つまり、無意識の意識に作用しているんだろう。

 

『この町から出るな。』おそらく、そう刷り込まれているはずだ。

 

こんなこと、俺たち…仙人では、できやしない。

 

つまり、人間ではないもの達…神仙たちの仕業だ。」

 

「なるほど…

 

しかし、これでは、どこに張譲たちがいるか分からないな。

 

しらみつぶしってのも…なぁ?」

 

 

 

左慈は、一刀に振り向くと口元をゆがめる

 

「分かってねぇな、北郷。

 

張譲は絵にかいたような自己顕示欲の塊のような男だ。

 

今頃は、椅子で胡坐でもかいているんじゃねぇか?」

 

一刀は、その言葉にハッとする

 

「中央に位置する王宮…玉座の間!?

 

奴は、皇帝の椅子を奪うつもりだ!

 

よぅし、急ごう!左慈」

 

「おう!」

 

二人は王宮へと急いだ

 

 

 

 

王宮の城門前にやってきた二人

 

その二人の目に移ったのは…

 

「やはりそうか」

 

黒装束を着た董卓軍の兵士であった

 

「あれは、仙人の力を打ち消す呪いの武具!

 

これは…俺たちでも苦戦するかもな?」

 

「張譲の部下もちらほらと見られるな。

 

どうする?左慈」

 

「ふん。知れたこと。

 

すでに俺たちのことはばれているはずだ。

 

それに俺は、こそこそと動くのは好きではない」

 

「まさか、左慈!

 

正面突破かぁ!?」

 

「あぁ。だが、これが今一番確実な方法だ」

 

「ふむ…。

 

下手なことをするよりは…そっちの方がいいかもな。

 

わかったよ、左慈。

 

前衛は任せる」

 

 

 

 

二人は城門より数十メートル手前までやってきた

 

「北郷。俺の背中は任せたぞ?」

 

「OK!って言っても、俺は弱いぞ?」

 

「上等だ!俺は強い!!」

 

二人は顔を見合わせてニヤリと笑う

 

そして、

 

「「いくぞ!」」

 

兵士たちに向け駈け出して行った

 

 

城門前は大混乱となっていた

 

「敵襲!!!!!!」

 

董卓軍の兵士たちは二人に大慌てで襲いかかってきた

 

一刀「さぁ~って!」

 

左慈「派手にいくぞ!!」

 

左慈が突撃すれば、一刀はその後ろに続き背中を守る

 

左慈の拳が敵の腹部を捕らえる

 

「ぐわぁ!!」

 

ドガァ!!

 

「ぐぱぁ!!」

 

その左慈の後ろから、斬りかかってきた張譲の部下の剣を、一刀の刀が捕らえる

 

「小僧!」

 

「な、舐めんなよ…、おっちゃん!

 

俺だって、『一応』総大将張ってんだ!」

 

斬!

 

一刀の刀が閃いた

 

「ぐぁ!」

 

「安心しろ。みね打ちだよ」

 

二人の連携に次々と数を減らしていく

 

「チェスト!」

 

一刀が刀で敵を切り裂き、

 

「北郷!敵に情けをかけている場合か!?

 

まったく、甘い総大将様…だぁ!」

 

その背中を左慈が守る

 

「左慈!城門を突き破れ!」

 

左慈は飛び上がると、その足に気を一気にためる

 

「だぁあ!!!」

 

その足は、一撃で城門を突き破ってしまった

 

敵兵「城門がやぶられたぞぉ!!!!!」

 

 

「寝てろ!!」

 

ドガァ!

 

「ぐぅふぁ!」

 

左慈の足蹴りが兵士の腹部を捕らえた

 

兵士は悶絶しながら倒れこんでしまう

 

兵士たちが全員戦闘不能に陥ったのを確認すると、二人は宮廷の中に潜入した

 

「しかし、敵には情け容赦はないなぁ?左慈」

 

「敵に情けなどかけるものではない。

 

敵は殲滅、味方は援護、邪魔者は排除で任務完了だ!」

 

左慈のポリシーを聞かされながら、玉座の間へと急ぐ

 

 

「でも、何で監禁場所が玉座の間なんだ?

 

この宮殿なら地下牢ぐらいあるだろうに」

 

一刀は左慈に問いかける

 

「俺もわからん。

 

しかし、この城からは玉座の間にしか…生気を感じ取れない。

 

奴らは、人質を一箇所に集めているんだろう。

 

もしものときは、一人ずつ…」

 

左慈の言葉に顔をゆがめる一刀

 

しかし、換床に浸っている場合ではない

 

「兎に角、急ごう!」

 

「あぁ…。」

 

 

「そこまでだ!」

 

みると、張譲の部下達が完全武装で玉座の間の前に立ちふさがっている。

 

「あははは!!

 

呂尚の予言道理、来たねぇ~鼠ども。」

 

耳障りな笑い声が響いた

 

「誰だ!?」

 

一刀は声のした方角をみる

 

そこは玉座の間の扉前

 

「北郷!あいつが、張譲だ!!」

 

左慈は張譲を指差し、叫んだ

 

「あいつが…。

 

今回の事件の、黒幕!?」

 

一刀は剣を握りなおした

 

「押し通るぞ!左慈!」

 

「おう!」

 

突っ込んでくる二人をみて、張譲は部下達に命令した

 

「行け!」

 

張譲兵「「「うぉおお!!!!!!!!」」」

 

「北郷!俺が、こいつらを叩き潰す!!

 

お前は、張譲を!!」

 

「分かった」

 

一刀は、張譲めがけて真っ直ぐに突っ込んでいく

 

張譲兵「行かせるか!小僧!!」

 

張譲の私兵が一刀に切りかかろうとする

 

しかし…

 

「やらせるかぁ~!!!」

 

ズガァ!!!

 

「ぐはぁああ!!!」

 

左慈の敵ではなく、

 

「うぁわああ!!巻き込まれるぞ!!!ぐわぁああ!!!!」

 

彼の蹴りを食らった兵士は後方の仲間を巻き込みながら飛ばされた

 

すると、そこに一本の道ができる

 

一刀が張譲にたどり着く為の一本道だ

 

「行け!北郷!!」

 

「左慈、流石だぜ!」

 

一刀は一気に駆け抜けていく

 

「お約束だが…張譲!覚悟ぉ!」

 

剣を振り上げ、斬りかかった

 

張譲の武器は無い

 

しいて言えば、彼の持つ黒色のぶ厚い本のみ

 

「いけ!北郷!!」

 

しかし…

 

「馬鹿めぇ…」

 

ガキィイ!!!

 

その剣が張譲に届くことは無かった

 

「な、何!?」

 

「ふふふふ・・・・・・・・

 

あははっあはははははははっ!!!!!!!!

 

よくやったぞ!呂尚!!!」

 

目の前に大剣が飛び出し、一刀の剣を受け止めていた

 

「面倒をかけないでいただけますかな?

 

北郷一刀殿。」

 

「お、お前は!

 

 

 

…がぁ!」

 

 

一刀は呂尚の剣で弾き飛ばされたが、何とか体勢を立て直し地面に不時着した

 

「ぐぁ!つぅ…」

 

殿部を思いっきりぶつけた一刀はよろよろと立ち上がる

 

その様子を見ながら呂尚の口が開いた

 

「私の名前は呂尚。

 

外史否定派の神仙・虞美人に仕える者。

 

またの名を…地獄の御遣い、と申します。

 

故合って、今はこちらの張譲殿の護衛をしております。

 

以後、お見知りおきを…」

 

「お前が…否定派の幹部か?」

 

「えぇ…

 

しかし、驚きましたよ。

 

肯定派の総大将が、人間だなんてね…。」

 

一刀は立ち上がると再び剣を構えた

 

「負けるかよ!

 

男は…度胸だぁ!!」

 

張譲の前に立つ男に再び挑もうとしている

 

呂尚も口元に笑みを浮かべる

 

「面白い…!

 

この瞬間をどれほど待ったことか!

 

さぁ、来たまえ「待て!」…なんですか?張譲殿?」

 

張譲は邪悪な笑みを浮かべて、二人の会話をさえぎった

 

「良い事ぉ~思いついたよぉ?

 

呂尚、呂布を出しなさい!」

 

「呂布…をですか?」

 

「あははははは!!

 

聞いたとこによると、あいつ…女には弱いんだろぉ?」

 

「(やれやれ…狂気の姫君を差し向けるとは…

 

いや、私の楽しみの邪魔をするとは…張譲、貴方は本当に愚劣だ…。

 

もはや、この者と組むのはやめにしましょう。)

 

いいでしょう。」

 

そういうと、呂尚は悔しそうに懐から一枚のお札を取り出した

 

 

お札が地面に投げられる

 

「あ~はははは!!」

 

張譲の狂気の笑いが響く中、お札の中から一人の少女が現れた

 

「な、なにぃ!

 

これは…いったい!?」

 

一刀の目の前にいたのは、褐色の肌・燃えるような紅い髪

 

「さぁ!

 

このねずみを排除しろ!呂布!!」

 

鬼神と謳われる少女、王允の養女:呂布奉先であった

 

「呂、呂布…だと!?

 

邪魔をしないでくれ!

 

俺は君たちを助けに来たんだ!」

 

一刀は呂布に呼びかけるが

 

「…排除…排除……」

 

彼女は機械のように排除っと連呼するのみ

 

目は光を宿していない

 

まるで硝子玉のような目だった

 

「ちょ、張譲!!

 

てめぇ!この娘に何をした!!?」

 

一刀は、激昂し張譲を怒鳴りつけた

 

「あぁ~怖い怖い!

 

ただボクは、彼女の中の獣を起こしてあげただけだよぉ~

 

御使い君~!優しい~優しい~君に、この娘が斬れるかい?

 

無理だよねぇ~!

 

さぁ、そいつらを血祭りに上げろ!

 

そうすれば、大好きなお義母さんを返してあげるよ~呂布!」

 

「ぐあぁあああああああ!!!!!!!!!」

 

呂布は獣のような叫び声をあげながら、一刀に斬りかかる

 

「なぁ!?」

 

同じ頃、玉座の間

 

そこには、人質の董卓たちが縛られていた

 

外が騒がしい

 

なにやら侵入者があったようだ

 

「情けない…わらわに、わらわにもっと…力があれば…

 

今外にいるもの達の力を煩わすことも…

 

おぬし等に…このような、このような辛い思いをさせることも…

 

無かったというに!」

 

「へ、陛下!

 

どうぞ、ご自分をお責めにならないでください!!

 

ボクも、月も、王允殿たちも…誰も陛下のことを憎んでおりません!」

 

泣きそうな彼女を賈駆が必死に諭す

 

「へぅ…

 

そうです…陛下。私たちは諦めません

 

必ず、貴女様を…。」

 

董卓も泣きそうになりながら彼女をかばう

 

「おぬしら…。すまぬ…」

 

その様子をさびしげにみる王允

 

彼女の…王允の養女呂布はあの一軒以来から行方不明になってしまっている

 

顔にこそ出さないが、不安で不安で仕方が無い

 

自分の命よりも大切な娘なのだから…

 

「(恋ちゃん…。無事でいて…)」

 

その時だった

 

???「ぐあぁあああああああ!!!!!!!!!」

 

「!?!?!?」

 

聞き覚えのある少女の声が響き、地響きがした

 

「今の声は…恋ちゃん!?」

 

 

ビュン!!

 

 

 

神速とはまさにこのこと!

 

一刀は神仙葛玄の作った戦闘用の薬を服用ているとはいえ、捕らえることさえ難しかった

 

そこからは、防戦一方

 

一瞬でも気を抜けば…

 

「(一瞬でも気をぬけば、アウトか!?)」

 

一刀は全ての感覚神経を無意識の意識を集中し、呂布の攻撃を剣で受けたり、紙一重で避けていた

 

「(自我が無いから、攻撃がいい加減だ。

 

でも…これにあたったらたぶん…俺なんて、かけらも残らんぞぉ!!!)」

 

一刀が交わした槍が地面を抉り取る

 

「洒落んならん!!!」

 

一刀は大慌てで体勢を立て直す

 

意外にしぶとい一刀に張譲は段々とイラつき…

 

「呂布!速く殺しなさい!」

 

すると、張譲が手にした本が怪しく光った

 

「がぁあああ!!!!!!!!

 

あぁあああああ!!!!!!!!!!!

 

痛い!!!!痛いぃ!!!!

 

恋を!!!!いじめないでぇええええええええ!!!!!」

 

呂布は苦しげに叫ぶ

 

「これ以上苦しい思いをしたくなければ、さっさとそいつを消すんだよぉ~!!」

 

呂布は再び槍を構え一刀を攻撃していく

 

ズガァアア!!!!!

 

「あぁああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

涙を流しながら攻撃を繰り返す彼女に一刀の心は乱される

 

「しっかりしろ!呂布!!」

 

「がぁあああ!!!!」

 

そして…

 

一刀の剣がついに叩き壊された

 

「ぐぅうう!!し、しまった!」

 

一刀は焦る

 

目の前には涙をぼろぼろとこぼし、自分に槍を振りかぶっている少女

 

「あ~ははははは!!!!

 

無駄ぁ~無駄ぁ~!!

 

呂布はこの 太平妖術の書 で操っている!

 

ボク以外の声は聞こえないよ!」

 

「張譲!

 

自分の手は汚さぬ…卑怯者がぁ!」

 

「勝てば良いんだよ!勝~て~ばぁ~!

 

さぁ、これで終わりだぁ!!

 

やれ~!呂布ちゃ~ん」

 

呂布はまるで何かに抗うかのように首を激しく振る

 

一刀の危機に気が付いた左慈は焦る

 

「ほ、北郷!!

 

待ってろ!今、助ける!!」

 

一刀を救おうと、駆け寄ろうとするが

 

「おっと!行かせねぇぜ!!」

 

左慈の前に多くの私兵が囲っていた

 

「き…貴様らぁ!

 

いいだろう、障害は排除するのみ!」

 

蹴りで弾き飛ばし、拳で敵を穿つ

 

「どきやがれぇ!!!」

 

左慈は、一刀を救うため修羅と化す

 

 

一刀の目の前には涙をぼろぼろとこぼし、自分に槍を振りかぶっている少女

 

しかし、その手は微動だにしなかった

 

彼女は泣き喚きながら、

 

「やだぁあああああ!!!!!」

 

槍を振り下ろした

 

 

SIDE 一刀

 

目の前に呂布の槍が迫る

 

俺は…身動きが取れないでいた

 

「(やられる!?)」

 

刃が俺の頭上に迫ってきた

 

「(桃香…鈴々……すまん。

 

左慈、干吉、葛玄、そして…皆。

 

先に逝く…)」

 

できれば、目の前で苦しむこの娘を救ってあげたかった

 

「(すまない…。呂布、そして董卓。)」

 

苦しみ、悲しんであろう人達を…

 

まだ、会ったことの無い人たちを…

 

救いたかった。

 

「(あ~。俺も桃香の夢をどうこういえないなぁ。

 

俺も…随分と甘ちゃんだ…、左慈の言うとおりだ。)」

 

人の命を奪った時点で、奪われる覚悟はできていた。

 

その業を背負って生きてきた

 

怨まれてもかまわない、憎まれてもかまわない

 

それでも、突き進むしかない

 

この外史を美しいと思ってしまった時点で…こうなることは予測していた

 

それでも、最期に浮かんできたのは…あの娘の顔

 

美しい黒髪をしたあの少女

 

「(まったく、我ながら…)」

 

「北郷ぉ!」

 

左慈が何かを叫んでいる

 

でも、分からない

 

「(あっけない…最期だ。

 

なぁ?

 

愛紗…。)」

 

 

 

「あぁあああ!!!!!!」

 

呂布が叫びながら最後の力を込めてきた

 

 

どうやら、ここまでのようだ

 

「(愛紗…ごめんね。)」

 

 

瞳を閉じて覚悟を決めた

 

 

 

 

しかし…

 

痛みは何時までたっても訪れない

 

恐る恐る瞳を開ける

 

そこで俺が目にしたものは

 

「なんだ?こりゃ!?」

 

真っ黒な何にも無い空間だった

 

先ほどまでの玉座の間の入り口(戦場)ではない

 

先ほどまでいた兵士、張譲、左慈、そして呂布もいない

 

たった一人闇の中にいた

 

「なんだぁ?俺は、もう死んだのかぁ!?」

 

ここが地獄なのか…

 

あたりを見渡す

 

地獄なら、閻魔大王により裁判がかけられるはずだ

 

…まぁ、いったいどれだけの命を奪ってきたことか…

 

どれだけの人を騙してきたものか…

 

「ただじゃあすまねぇだろうなぁ~」

 

―SIDE 一刀―

 

そんなことを思っていたときだった

 

「!?!?!?」

 

俺は頭痛に襲われた

 

今まで、味わったことの無い…

 

頭が割れそうな痛みだった

 

「ぐぅ……」

 

頭を抑えてうずくまっていると、頭の中に映像が浮かんできた

 

「なんだ?こ、これは?」

 

まず見えたのは、テレビの砂嵐のようなひどい映像だった

 

次第に砂嵐があけていくと、一つの映像が浮かんできた

 

 

そこは何処かの荒野

 

屍が転がるその世界に、一人の男がいた

 

顔はなぜかぼやけている

 

男は、瞳から目から大粒の涙を流しながら…

 

『なぜだぁ!?なぜ葬らねばならんのだ!!!!!?

 

なぜ、殺さねばならんのだぁ!!!!?』

 

そう、泣き叫んでいた

 

いったい、誰なんだろう?

 

その右腕には、小さな女の子を抱きかかえている

 

そして、左手には…血で真っ赤に染まりきった真っ白な剣を握り締めていた

 

まさか…この男が殺したのか!?

 

でも、そうだとしたら…なぜ、泣いているんだ!?

 

俺は、唖然としてしまう

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

再び、映像が砂嵐に覆われた

 

今度はなんだ!?

 

俺の頭にはまた、同じように映像が浮かびだした

 

誰かと誰かが剣で戦っている

 

白い服を着た男と黒い服を着た男だ

 

「皆を守る王として、戦ってきたんじゃないのか!?」

 

白い服の男の問いにもう一人の男が答える

 

「それはそうだろう!

 

オレは、王だったからな。

 

乱世を終わらせるため・・・戦うしかなかった

 

誰かのためにあらねばならない・・・

 

誰かの支えにならねばならない・・・

 

誰かを守り続けなくてはならない・・・・

 

 

 

そんな強迫観念に似たものに突き動かされ続け…8の人間を救うために・・・2の人間を犠牲にし

 

一部の人の幸せを作るために、それ以上の人間に絶望を与えたりもした。

 

絶望を与えた人間を救うためにより多くの命を救おうとした!」

 

黒い服の男がそういっている

 

この男は、最初の映像に出ていた男なんだろうか?

 

その手にもつ剣は同じものだった

 

二人の戦いはなおも続いている

 

俺は、いつの間にか…その戦いから目を離すことができなくなっていた

 

 

その時だった

 

「待っていたぞ、北郷一刀。

 

よくぞ、我が心の入り口に辿りついた。」

 

俺の頭に浮かんだ映像と頭痛は、その声と共に消え去っていた

 

 

SIDE OUT

 

一刀の目の前に、一人の男が立っていた

 

黒い服導師服を着た男だった

 

顔は…フードで覆い隠されていた

 

一刀には一発で先ほどの映像の男だということが何故だか分かった

 

思わず身構える

 

「お、お前は!さっきの映像の!?」

 

男は、一刀から視線をはずし呟いた

 

「そうか…お前、アレを見たのか。

 

あぁ…、そうだ。北郷一刀よ。

 

オレが貴様の見た映像の男、神仙・韓湘子だよ。」

 

「韓湘子!?

 

お前が、あの夢の声の主だったのか!?

 

答えろ!この外史を壊すつもりか?

 

返答次第では、刺し違えてでも……」

 

一刀は、韓湘子を睨みながら言う

 

「いいや…。

 

そんなことはせぬさ。

 

オレは、既に滅んだ身。

 

たいした力も無い、亡霊だよ。」

 

男は、自嘲気味に呟いた

 

一刀はこの言葉に毒気を抜かれてしまった。

 

何故だか分からないが、それが嘘ではないと分かってしまったからだ

 

「詳しくはまだ、話すことができない。

 

ただ、オレは別の外史で月…いや、董卓の友人だったのだ。

 

だから、お前に彼女を救うように頼みたかったのだ。」

 

すくなくともオレはお前の味方のつもりだ。と言い加えた

 

いい終わると、韓湘子は一刀の瞳を真っ直ぐに見る

 

「…わかった。お前を信じる。」

 

「…うむ。」

 

韓湘子は頷くだけだった

 

 

一刀は、韓湘子に現在の状況を確認した

 

韓湘子の言うことではここは、あの外史ではなく…一刀の心の世界

 

そして、ここはその一部…闇を司る部分であるという

 

韓湘子は一刀の心に直接語りかけるために、この空間に来たのだという。

 

そして、一刀が危機に陥ったことを感知した韓湘子は仙術を用いて、一刀の心をこちらに召喚した

 

彼曰く、現実世界では一秒間もたっていないそうだ。

 

「さっき、俺が見た映像はなんなんだ?」

 

「先ほどの映像がなんなのかは知らぬが、恐らく心をつなげた影響で、オレの過去を垣間見たのだろう。

 

あの映像は、オレが正史による外史の抹殺『外史喰らい』をさせられていたときのものだろう。」

 

「『外史喰らい』!?」

 

「あぁ…。お前らの言う、『肯定派・否定派』のどちらでもなく、正史に仕える神仙が与えられる仕事だ。

 

正史が不要・有害と判断した外史…つまり、リスクファクターを取り除くための掃除屋だ。

 

そいつは、神仙にとっては名誉…らしいのだが。

 

オレにしてみれば…地獄以外の何者でもなかった。

 

オレは、自分を心底怨んだよ。何百・何千・何万年も…怨み続けた」

 

韓湘子は悲しい顔で語る

 

「オレは、外史に対して償いをせねばならない。

 

だから、北郷一刀…

 

今、このときのみだが…お前にオレの力を貸してやる。

 

だから…」

 

 

一刀も口を開いた

 

「おれは…今目の前で苦しんでいる呂布ちゃん達を救いたい。

 

だから、韓湘子!」

 

韓湘子・一刀「「お前の力を貸してくれ!!」」

 

二人の言葉が重なり合い

 

あたりは、真っ白な光に包まれた

 

 

現実世界に戻った一刀の目の前には死が迫っていた

 

「(やべぇ!)」

 

すると

 

「(恐れるな…、北郷一刀。)」

 

韓湘子の声が一刀の頭に響いた

 

「(お前の敵は、張譲という下郎一人。

 

呂尚は、もはやこの闘いに興味がなくなっている。

 

つまり、敵も一人、お前も一人だ。

 

何を恐れることがある。

 

目の前にいるのは…貴様に救いを求めているか弱い少女に他ならぬ。

 

もう一度言うぞ…何を恐れることがある。

 

さぁ、拳を握り前に差し出せ!)」

 

一刀の体は言うとおりに動く

 

頭の中にある言葉が響いた

 

「(―――私の心を闇が覆う―――)」

 

すると、

 

ガキィイ!!!

 

一刀の拳から見えない剣が出現したかのように、呂布の槍を止めた

 

「な、何!?」

 

驚愕する張譲は呂布に指示が出せずにいた

 

「ぐぅううう!?!?!?!?」

 

呂布もうなり声をあげるのみ

 

 

 

「(―――闇を力に、絶望を糧に―――)」

 

一刀の見えない剣から眩い光が放たれていく

 

「こ、これは!?」

 

「(剣がお前を呼んでいる。

 

応えよ、北郷一刀。我が剣の名を……)」

 

 

一刀の頭に一つのワード(言葉)が浮かんできた

 

 

 

 

気が付くと、それを迷わず叫んでいた

 

 

「白き光よ!我らを導け!」

 

「(我が黄泉への道を切開け!)」

 

一刀と韓湘子の声が重なった瞬間

 

 

一刀の右手に、純白の日本刀が現れた

 

刀身から握りまで全てが純白

 

かつて、多くの外史を消し去った剣

 

同時に、誰よりも多くの外史を救ってきた剣

 

その銘を…

 

 

 

「『白帝剣』!!!!!」

 

 

 

 

つづく

 

 

 

あとがき

 

皆様の心温まるご支援のおかげで、少し立ち直ることができました

 

投稿のペースは以前より遅くなるかもしれませんが、これからも、どうか変わらぬお付き合いをよろしくお願いいたします。

 

最後になりましたが、皆様へ心からのお礼を申し上げます

 

本当にありがとうございました。

 

 

それでは、次回のあとがきでお会いしましょう。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
25
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択